ポンコツ勇者 VS クソガキ魔王 VS ダークライダー 作:やーなん
それは次回になりそうです。
クラリッサとレイアの双子の姉妹は、質素なあばら家に住んでいた。
二人とも、まだ十五歳くらいなのに両親は見当たらない。
「配給品でも申し訳ないですけど」
そう言って、クラリッサは包装紙に包まれた固形栄養食を差し出してきた。
私達レジスタンスが、家畜の餌と呼んでいる代物だ。
女神メアリースは上位の優良な世界からの食品ロスを、こうした高たんぱく高エネルギー長期保存可能な食べ物にしてしまう。
おかげで、飢え死にする人間は格段に減ったんだろう。
その尊厳を神に売り渡して。
「こんなスラムでも、食べ物は貰えるんだな」
「神様は私達に飢え死にしてほしくないみたいだから。
それに、診療所も無料で行けば薬も貰えるし」
「じゃあどうして、レイアは……」
「受けられる医療は最低限だけよ、病気が蔓延したら困るからでしょ。
レイアの眼は、私が借金して闇医者に頼んだの。
そしたらあいつ、あんな骨董品で出せるような物をレイアに!!
後で文句言おうと怒鳴りこんだら、女神様の役人に連行されてた」
それ以降誰も見てない、と憤り交じりのクラリッサは言った。
私は、“更生”させられているんだろうな、と思った。
よほど酷いなら、それ以上かもしれない。
「もっと稼いで、もっといいデバイスを買わなきゃ」
「お姉ちゃん、私はこのままで良いよ」
しかし、姉の努力を妹のレイアを否定した。
「何を言ってるのよ!! 視界が灰色のポリゴンとか、二十一世紀初期の3Dゲームでも無いレベルなのよ!!」
「私にとっては、それで十分なの。
お姉ちゃんに負担が掛かるとか、そう言うのじゃない。
──私にとって、この世界はこの目で見える程度の存在なの」
レイアは俯いて、この世の無情に嘆いていた。
「私は、これ以上鮮明に見たくない。嫌いなの。
お姉ちゃんを苦しめる世の中なんて」
「そんなこと言わないの。
今のままじゃ歩くのも大変でしょ?」
姉はそんな妹を嗜めて、支給品を食べ始めた。
私も、貰った手前突き返すことも出来ず、包装紙を剥いて食べ始めた。
……相変わらず、味は悪い。
§§§
結局昨日は二人の厚意に甘えて寝泊りまでさせて貰った。
「行くところが無いなら、一緒に働きますか?
クラリスさんには妹がお世話になったので、ここでの生活の仕方を教えましょうか?」
「それはありがたい」
私は、少しだけ考えてこう言った。
「なぜ、私によくしてくれるんだ?」
「きっと、逆の立場でも同じことをしたはずよ」
多分、その通りだろう。
私達は、お互いに他人の気がしない。
「私の事はクラリスでいい、クラリッサ」
「そうね、クラリス。
お互いにかしこまったら変になりそう」
私と彼女は、なぜか笑っていた。
「ホントに、不思議。
大人なんて簡単に信用しないのに」
「それなら大丈夫だ、私は知り合いによくちゃんとした大人になれって言われる。
つまり私はまだ大人ではないってことだ!!」
「うん……うん?」
なぜだか、クラリッサは首を傾げていた。
「まあいいか、それより早くしないとお昼になっちゃうわ!!」
「そうだな、早くお仕事しよう」
そうして、私のスラム暮らしが始まった。
都市部では完全にキャッシュレス化しているおカネだが、スラムではそうもいかない。
完全に管理された貨幣など、扱いにくいだけだ。そもそも電子機器が高価なのだから。
だから、スラムでは昔使われていた紙幣が流通している。
そういうわけで、独自の文化が形成されていた。
露店もそのひとつで。
「クラリス、早く野菜切って!!」
「わかった!!」
「そんなにちんたらしてたら仕込みが間に合わないわよ!!」
「頑張る!!」
私は、彼女の知り合いの露店で、仕込みの作業の手伝いをしていた。
「うう、剣なら得意なのに……」
何分、私は包丁を握ったことは無かった。
仕込みが終わったら、今度は別の露店で売り子だった。
「パンの耳はいかがでしょうかぁ~。
揚げたてで美味しいですよ~」
都市部から貰って来たパンの耳を揚げて砂糖をまぶした安価なお菓子を売る仕事だった。
この仕事は比較的楽だった。
私は昔から声が大きく肺活量が多かったから。
そして次は賭博場だった。
「おい新入り、三番テーブルに酒を届けろ」
「はい!!」
「次こぼしたら給料から差っ引くからな!!」
「はいぃ!!」
そこは賭博場、というより酒場で客たちがトランプをして賭け事をしている感じで、客たちはディーラーと向かい合って勝ち負けに一喜一憂していた。
「なんだクラリッサ、こいつ新入りか?」
「ひぎゃ!?」
トランプを酔っ払いが、私のお尻を触って来た。
「何勝手に触ってんのよ飲んだくれのダメジジイ!!」
しかし、即座に同じ給仕の仕事をしてたクラリッサが割り込んできて顔面パンチ。
他人の気がしないとは思ったけど、即座に手が出るのは親近感が出てしまった。
「何すんだてめぇ!!」
「止めとけって、じゃじゃ馬クラリッサの暴れっぷりに付いてく体力無いだろ、お前」
「そうだそうだ、このメスゴリラの相手するなんて命が幾つあっても足りねぇ」
客たちは大笑い、誰がメスゴリラよ、とクラリッサは怒鳴っていた。
何だかんだで、彼女は客たちに愛されていた。
他にもいくつか仕事をこなして、私は二人の家に戻った。
私はもう、クタクタだった。
「あ、お二人さん、お疲れさまです」
家の中には、レイア以外にもキョウコが居た。
二人はカードゲームで遊んでいた。私はもう今日はカードを見たくなかった。
「お帰り、姉さん、クラリスさん」
「今日も稼いできたよ。あの連中はまた来なかった?」
「ううん、大丈夫」
レイアは首を横に振った。
どうやら、あのチンピラどもは今日は来なかったらしい。
「私も心配だからレイアちゃんに会いに来たんです。
あの怖い人たちが来たら、ひとりで逃げられるとも限らないですし」
「そっか、ありがとう」
「いえいえ、本当はレイアちゃんと遊びたかっただけですし」
と、キョウコは笑ってクラリッサに答えた。
「お客さんもいるし、今日は何か作るよ」
「私の事はお構いなく」
「そうはいかないって」
そう言って、クラリッサは食材を買い求めに家から出て行った。
「勇者召喚の儀で、勇者を召喚。デッキから運命の旅立ちを発動。
手札を一枚捨てて、ライダーを手札に。今捨てた魔法使いを除外して召喚の儀をもう一枚手札に。更に場に勇者が居るからライダーも召喚できる。召喚に成功したから運命の旅たちの効果で聖剣を勇者に装備できる。ターンエンドです!」
「じゃあ私はデッキから邪龍と黒魔術師を落として、魔王ドラグーンを融合するね。
魔王ドラグーンは融合素材の数だけ相手を破壊できるのだー!!
追加効果で攻撃力分のダメージもくらえー!!」
「あーッ、また負けたー!!」
レイアが頭を抱えて敗北宣言した。
私はドヤ顔のキョウコを遠巻きに見ていた。
「それにしても、遅いですね」
「そうだな、クラリッサは要領がいいから絡まれても大丈夫だろうが」
「ああいえ、そっちではなく」
そこまで言ってから、何でもないです、とキョウコは首を横に振った。
私が怪訝に思う暇もなく。
「レイア!! ここから逃げるよ!!」
クラリッサが飛び込んできたのだ。
「またチンピラどもか?」
私は警戒しながら立ち上がるが。
「違うわ、とにかく早く!!」
焦ったクラリッサがレイアの腕を掴み、外に出て行った。
私も気になり、追って行ったが。
「動くな、我々は都内第三警備隊である」
外には、十名以上の武装した兵士たちが居た。
「わ、私達に何の用ですか!!」
レイアが、震えて姉の腕に縋りついた。
「……チンピラの通報だと期待していなかったが、本当に双子が居るとは。
あの必死さに仕方なしに出てみれば、これはアタリか?」
「隊長、魂の波形計測完了です。
タイプW-4810──命令にあった形状のようです」
「そう、か。連行しろ」
隊長格が、部下に指示を下した。
「何をするお前たち!!
やめろ、離せ!!」
「大人しくしろ!!」
クラリッサとレイアが、警備隊に羽交い絞めにされ引き離された。
私は、その時点で体が動いていた。
「なッ、なんだ貴様──!?」
私は警備隊を殴り飛ばし、二人の前に立ちはだかった。
「彼女たちは私の恩人だ、彼女たちを連れていくなら私を倒していくんだな!!」
「この、これは公務執行妨害だぞ!!」
「……まあ、待て」
同僚を倒され、憤る隊員たちを隊長は諫めた。
「これは女神メアリース様の中央事務所の直々のご命令なのだ。
我らを退けても、次は軍隊がやってくるだろう。
そうなれば、ここの住人の安否は考慮されない」
ヘルメットで表情は見えないが、隊長は淡々と語った。
「我らは、ある特定の波形を持つ魂を有した、双子を探せと命ぜられた。
そこの彼女のことだ。これは数年越しの大捜索の結果だ。今更あとには引けない」
その言葉に、私は思い当たることが有った。
そうだ、彼女は、レイアは、クレアと同じように魔王に狙われているのだと!!
「我らは、双子のどちらかを見つけて連れていければそれでいい。
素直に渡すのなら、双子の片割れには何不自由ない生活を約束するとお達しも出ている」
「ふざけるなッ、あんたらは妹に何をする気だ!!」
「さて、な。そこまでは聞いていない。
魔王様は案外、生贄を求めてらっしゃるのかもな」
皮肉気に、隊長は肩を竦めた。
それでも、仕方がないと言わんばかりに銃を向ける。
「ようやく見つけたのだ、逃がしはしない。
今ならまだ、お互いに無傷で終われる」
「クラリッサ!! 耳を貸すな!!」
だが、私は肩越しに二人に言った。
「私も、同じことがあった!!
私も、私も双子の妹が居たッ、だがあいつは私の目の前で魔王に殺された!!
虫のように手を引きちぎって、足で頭を潰されたんだ!!
絶対に連れて行かせてはダメだッ!!」
そこまで言ってから、私は警備隊に向けて両手を広げた。
「たとえ、二人が頷いても、この私が行かせない」
私の胸に、ある種の使命感が芽生えていた。
この二人を、命に代えても守らなければならない、と。
例えそれで魔王討伐が困難になっても、それだけは成さねばと!!
会ってまだ丸一日も経っていない筈なのに、私の魂がそうしろと命じているのだ!!
「二人を連れていくなら、この私を殺してから行け」
「隊長……」
部下たちが息を呑み、恐る恐る隊長の指示を待つ。
「……止めだ」
「え?」
「通報は所詮チンピラのイタズラだったのだ。
目的の双子など、ここには居なかった。
我らは警備隊、人殺しの片棒など真っ平御免だ」
撤収、と隊長は部下たちに命じた。
彼らは戸惑いながらも、それに準じた。
私は、去って行く彼らを見送り息を吐いた。
「クラリス、ありがとう……」
振り向くと、恐怖から解放されたクラリッサが涙目で頭を下げた。
「クラリスさん、なんで、なんであんなことを。
私の事なんて、さっさと突き出せばよかったのに。
それでお姉ちゃんが楽に暮らせるなら、私はそれでいいのに」
「バカッ、あんたなんて事を!!」
「言ったじゃないか、私にも双子の妹が居たって」
妹を叱るクラリッサ、そんな二人に私は胸の内を打ち明けた。
「私はただ、自分が出来なかったことをしてるだけだ」
レイアはそれきり黙ってしまった。
「怖い人たちは帰りましたか~?」
すると、家の中から覗き込むようにキョウコが顔を出した。
「ああ、だがどうするか。
一度バレた以上、二度目は必ずあるはず」
「かと言って、私達にここ以外に住む場所はないし」
魔王の手下は、恐らくまた来るはず。
その時に必ずしも、レイアを守れるとは限らない。
そんな時、言い難そうにクラリッサが言った。
「……キョウコさんは、日本人だよね? しかも純粋な」
「まあそうですけど?」
「そんな貴種がどうしてIDも持たずにスラムなんてうろついているのかは知らないし、詮索もしない。
少しだけで良いから、ほとぼりが冷めるまでどこかでレイアを匿ってくれないかな」
「お姉ちゃん?」
両手を合わせて頭を下げる姉を、不安そうにレイアが見つめる。
キョウコは小首を傾げて頬に指を当ててから、こう言った。
「それは、私への
「ああ、一生のお願いだ、頼む!!」
「女神的に優しい私ですけど、大抵の人は私に頼みごとをすると後悔するらしいですよ?
もう一度言いますが、──それを私に願って良いんですね?」
「勿論だ、絶対にレイアが安全なら私にできるお礼なら何でもする」
「わかりました、“絶対”に安全な場所に匿えば良いんですね」
何だか妙な念押しだった。
まあ、この世に絶対安全なところなんてあるわけないし、クラリッサもキョウコも大げさだった。
「それと、お礼なんて要りませんよ。
なにせ、レイアちゃんは私のお友達なんですから!!」
キョウコは胸を叩いてにっこりと笑ってそう言った。
「ありがとう、恩に着る」
「お姉ちゃん……」
「大丈夫だ、すぐに二人で暮らせるようになるさ」
「ささ、あっちに悟られる前に身を隠しましょう、レイアちゃん」
「うん……」
レイアはキョウコに手を引かれ、スラムの奥へと歩いて行った。
「あっちには何も無いのに、キョウコさんってどこから来てるんだろ」
「さあ、昨日もあっちに帰って行ったけど」
「まあいいや、人数は減ったけど、食事にしよう。
レイアが戻ってきたら、もっとおいしいモノを食べれるようにお金を稼がないとね!!」
私は、そのクラリッサの強さが羨ましかった。
数日後。
「弁明の機会を与えましょう」
魔王ローティの四天王が一人、ハイティが冷たい目で警備隊長を見ていた。
「我々は、任務の際に詳細な説明を受けていませんでした。
何の理由か教えられずに、市民を連行などできません!!」
「……この際、相手はスラムの住人だったということは脇に置きましょう」
警備隊長の任務放棄は、当然ながら露呈した。
なにせ、機械のデータは全て管理されているのだから。
草の根分けても探していた魂の持ち主が発見されたことが、検査装置のデータに残っていたのだ。
「あなたの背任は度し難い裏切りです。
あなたは魔王様、ひいてはメアリース様の勅命の意味を理解していない」
「罰は謹んで受けます」
「そうですか、では貴方には暇を与えましょう」
クビ、それを覚悟していた彼は肩の力を落としたが。
「あなたの責任は、主上に直接問いなさい」
ビシッ、と目にも止まらぬ速さで何かが振るわれ、彼の首が胴体から弾け飛んだ。
血飛沫が、彼女の執務室を穢す。
「おーい、ハイティ。まだ仕事か?」
すると、自動ドアが横に開き、通路から若々しい偉丈夫が入って来た。
「ハイボール兄さん」
ハイティは眼鏡に飛んできた血をハンカチで拭い、入室してきた義兄に視線を向けた。
彼は新しくこの地に着任した魔王スズの四天王の一人だった。
そして彼と同じ主君に、彼女の実の父親も仕えている。
「おいおい、こんなところで処罰するなよ。
親父だったら一度くらいチャンスはやるぞ」
「これで彼の部下全てを許すのです、安い代償でしょう」
「お前、俺よりよっぽど悪魔族らしいよ。
クソ真面目なところは親父に似てるしさ」
彼女の義兄は、にぃっと笑う。
そこには、ヒトにはあり得ざる鋭い牙が有った。
それもそのはず、彼の頭部には捻じれたヤギのようなツノがあるのだから。
「そうでしょうか、私は兄さんが羨ましい。
お父様は人間を愛し、私を産みました。半分だけ人間のこの身は、合理性を無視して時折激情に駆られそうになる」
「分かれよ、妹よ。
親父はその人間らしさを愛したんだぜ」
飄々と笑う四天王ハイボールは軽く指を鳴らした。
青白い炎が巻き起こり、たった今死んだ男の死体が延焼することなく、灰も残さず消え去った。
「そんな調子で、あの気性難で有名なローティ様の元でやってけるのかねぇ。
よし、兄ちゃんが今度お前の任務に付いて行ってやろう。どうせ俺はここでやること無いしな」
「必要ありませんッ、余計なお世話です!!」
感情を露わにして抵抗する義妹を、兄は愉快そうに笑って見ていた。
「あの、キョウコさん。
どこまで歩くんですか? いえ──」
レイアは不安になり、尋ねた。
「ここはどこですか?」
彼女の視覚補助デバイスには、灰色の平面しか映らない。
どこを見ても、どこまでも何もない。
転移の酔いを感じ、どこかにワープしたのは感じた。
だが、こんな場所が地球上にあるとは思えない。
彼女は不安を紛らわすように、手のぬくもりを握り締めた。
「ふふ、もうすぐ着くから、安心してください」
そう言われても、もう既にレイアは何時間も歩いた気がするし、数秒前にここに来た気もしていた。
だが彼女は結局、キョウコに縋るほかなかった。
そうしていると。
「あれ、こんなところに龍のハンバーグと、トマトジュースが有るぞ♪」
急に彼女が足を止めた。
「このままじゃ話せないですね。
そーれ、ちちんぷいぷーいっと♪」
「…………これはこれは、“女王”様。
蘇生ありがとうございます、もう百年はこのままかと思ってましたよ」
レイアの視界に、ポリゴンの人型が出現した。
だがその造形が余りにも、そう人間より一メートル以上大きい。
「義姉さんも、どうしてぐちゃぐちゃに?」
「こっちの人が私に許可なく人を通したからですよ。
お陰で私までとばっちりです」
「それは、申し訳なかった」
おかしい、とレイアは思った。
自分以外にここには三人が居るはずなのに、もう一人は彼女の視界に映らないのだ。
「それよりも“女王”様、その子は?」
「女王だなんて、私みたいな女の子は王女が良いんだけどなぁ」
「ははは、ご冗談を……いえ、凄まないでください。ハンバーグ状態はしんどいのです」
レイアは思った。
もしかして、自分が手を握っている相手は、とんでもなく偉い人だったのでは、と。ちょっと戦慄していた。
「彼女はレイアちゃん、絶対に安全な場所に匿ってほしいって頼まれちゃって」
「────つくづく、あなたに好かれるのと嫌われるのは同じだと思ってしまいますな」
心底憐れむように、大きな人影が嘆息した。
「一応、尋ねておきます」
見えない女性の声が、レイアに言った。
「この先の御方に会うのなら、まずその姿を見てはいけません」
「見ての通り、目は不自由でして」
「あの御方を、知ってはなりません」
「あの、ええと、誰が居るんですか? やっぱり皇族とかですか?」
「……では最後に、これが一番大事ですが」
「はい……」
「──あの御方に、何も願ってはなりません」
「これから匿って貰うのに、何かをお願いするなんてとても」
「なるほど」
なんとなくだけど、女性の声の主が頷いたようにレイアは思った。
「あなたなら、無事に生きて帰れるでしょう」
ごごごごご、と何か重いものが動くような音がレイアに聞こえた。
まるで、大きな門が開くかのようだった。
彼女の眼には、何も見えないのに。
「さあ、この先です」
キョウコに連れられ、レイアは辿り着いた。
“絶対”に安全な場所に。
「おい」
また、レイアの視界に映らない人物の声だった。
だがなぜか、不思議と彼女には聞き覚えがあるような響きだった。
それこそまるで、
「何でお前、そいつを連れて来たんだよ」
「ダーリン♡ この子ここでしばらく匿っておいて♪
大丈夫、この子はあなたを不快にはさせないから」
え、キョウコちゃん結婚してたの? 偉いっぽいしそう言うこともあるのかな、とレイアは思っていた。
「お前……ホントお前って奴は……」
「それとも義姉さんやマスターロードみたいに私をお子様ランチにしますか?
気に入らないからドメスティックですか?」
「もういいよ、わかったから!!」
キョウコちゃんは自由奔放そうだから旦那さんも大変そうだなぁ、と夫婦の会話を見てそう思うレイアだった。
「じゃ、私はクラクラコンビの様子を見てきますんで!!
レイアちゃんはしばらくダーリンに遊んでもらっててよ!!
そこは絶対に安全な場所だから!!」
「それこそ、ありとあらゆる神々を敵にしても、ね♪」
そして、ごごごご、と再び重いものが動く音がした。
ごとん、と巨大な何かが閉じるような音も。
「…………」
「…………」
そうして、そこに残されたレイアと彼女の眼に映らないもう一人。
「おい、そこに置いてやるから、僕に話しかけるな。良いな?」
「あ、はい」
しかし彼女の視界は、見渡す限り瓦礫のようなポリゴンが浮いているばかり。
このまま何もせずにここに居るのは、至難だと思うレイアだった。
アンズちゃん「あ、そうだ忘れてた!! みんなに質問です!!」
「最強の剣と、最高の仲間。
勇者に本当に必要なのはどちらだと思います?」
「これはルート分岐ですよ!!
ルート次第ではどちらかが・・・おっとこれはネタバレですね。前作じゃ顰蹙買ったんでもう言いません~♪
さあ、選んでください。運命の分岐点を」
「選ばれなかった方は、あとで一話だけIF編でやるかもだって♪
アンズちゃん「勇者に本当に必要なのは?」※ルート分岐アンケート
-
最強の魔剣
-
最高の仲間