ポンコツ勇者 VS クソガキ魔王 VS ダークライダー 作:やーなん
352:運び屋
クラリスに助け求められた
スラム街でリーパー隊っぽい連中が虐殺してるらしい
今から助けに行ってくる
353:名も無き住人
おい、いきなりだな!!
354:名も無き住人
虐殺って、マジかよ
いや、あの連中ならするだろうな
355:名も無き住人
ちょっと待て、運び屋!!
仮にもリーパー隊は魔王軍だ!!
あいつらは許可が無ければ何もできないはず!!
まずは何が起こってるのか確認しろ!!
356:名も無き住人
リーパー隊も仕事中かもしれん
まずは誰が指揮を執ってるか把握しる!!
357:名も無き住人
そうだ、場合によってはお前が魔王様に弓引くことになるんだぞ!!
冷静になりやがれ!!
358:運び屋
指揮を執ってるのは、同僚のようだ、クラリスに聞いた
あいつらの目的は、クラリスが知り合った双子の妹らしい
でも、その子は今スラムに居なくて、あの連中はスラムの住人を皆殺しにするまで止まらないだろうって!!
そんなの許せるわけないだろ!!
359:名も無き住人
おおう、マジかよ
アンズ様が出て来た時点で、嫌な予感はしてたが
360:名も無き住人
お前完全に巻き込まれてるじゃん!!
どうせスラムの連中なんて市民IDの無い、メアリース様に貢献してない連中だ!!
何でお前が、身を切る必要があるんだよ!!
361:名も無き住人
お前は仮にも四天王なんだぞ!!
任務の邪魔をしたら、お前もおサルさんにされるぞ!!
362:運び屋
知ったことか!!
ここで見捨てるなら人でなし、サルの方がまだマシだ!!
363:名も無き住人
!?
364:名も無き住人
!?
365:名も無き住人
!?
運び屋、お前って奴は……
366:名も無き住人
生粋の、ナチュラルボーンヒーローなんだなお前
リーパー隊の連中が、生まれついての殺人鬼なように
367:名も無き魔王
運び屋よ、周囲の意見に惑わされる必要は無い
お前はお前のやりたいことをするのだ
368:名も無き住人
あ、魔王様!!
あんたは止めるべき立場だろ!!
369:名も無き住人
そうですよ、運び屋がメアリース様の任務の邪魔をしようとしてるんですよ!!
370:名も無き魔王
それの、何が悪い?
なあ諸君、正義と悪の定義とは何だ?
371:名も無き住人
急に哲学の話をしないでください魔王様!!
372:名も無き住人
あんたがその邪悪の化身でしょうが!!
373:名も無き魔王
そうだ、私は邪悪の化身として、我が母によって産み出された
その我が母が、悪とはこのように定義した
曰く、悪とは基本的に無計画で行き当たりばったりの粗暴なだけの連中である、と
374:名も無き住人
本物の邪悪を司る御方が言うと説得力が違う
375:名も無き住人
まあ世の中の凶悪犯のほとんどがそう言う連中だろうけど
376:名も無き住人
犯罪のほとんどが、計画性なんて無いもんな
377:名も無き魔王
ならば、その対極にある正義とはなんだ?
悪が行き当たりばったりの無計画のそれならば、反対となる正義は計画的で入念な準備をして行うものなのか?
私は、そうは思わない。悪が全てを蹂躙した後、おっとり刀で駆け付ける連中なぞ、私は正義とは認めない。
悪とは、正義とは、その本質は同じなのだ。
故に行けよ、運び屋よ。行って、お前の正義を成せ。
ああ、お前が、我が前に現れる勇者でなかったことがこれほどまでに惜しいと、そう思ったことはないぞ。
378:名も無き住人
運び屋、魔王様に最上級の賛辞を受けたやん……
379:名も無き住人
これが魔王様達が恋焦がれる、正義の光か
なるほど、どうして俺たちがニチアサや英雄譚に心魅かれるのか、その一つの答えを見た気がするわ
380:名も無き住人
ヒーローの本質とは、自己犠牲だもんな
そんなの下らないと思ってたけど、実際こうして目の当たりにすると、な・・・
381:名も無き住人
俺たちは戦いに赴く、運び屋を見送るほか出来ないのか
382:運び屋
ありがとう、みんな
もうスラムに着く
何が有っても、俺は後悔しないよ
383:名も無き住人
運び屋ぁ!!
384:名も無き住人
行くな、行かないでくれ!!
385:名も無き住人
……よし、決めた
386:名も無き住人
>>385 あ、あんたは、魔法技師ネキ!!
387:名も無き魔法技師
コテハン付けるわ
運び屋さん、私も協力する
だって、私の担当なら、きっと同じように居ても経っても居られずに飛び出すから
388:名も無き住人
おお、おお!!
あんたが居るなら百人力じゃないか!!
389:名も無き住人
魔王様ともやり合える魔法少女の技術面担当だもんな
これ以上の助力は無いぞ
390:名も無き魔法技師
でも、急だから何も用意してない
みんなも協力してほしい
391:名も無き住人
え、俺らに協力できることあるん?
392:名も無き住人
俺らは所詮傍観者やぞ?
393:名も無き魔法技師
この掲示板をリアルタイムで流せる自作のプラウザを使って普段作業してる
それを運び屋さんの端末にインストールする
みんなが、感覚共有モードを使用してリアルタイムで助言を送れるようにするの!!
394:名も無き住人
あ、相変わらず謎技術……
395:名も無き住人
なるほど、相手はリーパー隊の連中だ
どいつもこいつも指折りの精鋭だからな
396:名も無き住人
もしかしたら対処法を教えられるかもしれん!!
397:名も無き魔法技師
じゃあ、そう言うことで、運び屋さん!!
私達を信じて!!
「ありがとう、みんな!!」
俺は掲示板の皆に感謝を送った。
すぐに、魔法技師ネキのアプリが俺の腕の端末にインストールされた。
:おお、こいつは便利だ!! :まるで隣にいるみたいだぞ!! :あとでこのアプリ俺にもくれ技師ネキ @魔法技師:後で技術板にアップしとくわ :ここに神が居た
|
俺の視界に、掲示板のスレが投影される。
しかしそれは思考や視界の邪魔にならず、独立して俺の脳に反映されている。
この前のアニメの件といい、彼女の技術は底知れない。
「スラムに着いたぞ!!」
孤児院から、スラムまでの距離はそう遠くない。
俺たちがバイクに乗って、数分の距離だ。
バイクを止め、スラムの入り口の光景を見て俺は絶句した。
「な、なんだこれは!?」
:ひどい…… :冗談抜きで虐殺起こってるやん…… :ゴメン、俺グロ耐性ない、離脱する :死体だらけだ、無理も無いさ
|
住人達が言っているように、スラムの入り口は死体だらけだった。
俺もここに出入りするからよく知っている。
ここはもっと人通りが多く、賑わっている筈なのに見える範囲で人間は居ない。
「良いヒトさん、あれを!!」
俺の背にしがみついていたクラリスが、指を差した。
そこには、見覚えのある集団がそこにいた。
リーパー隊だ!!
「あの女、どこいったんすかねぇ」
「それより族長、肉焼けましたよ」
「おッ、それじゃあ今日の糧に精霊に感謝しましょうや」
女エルフの集団が、たき火を囲んで肉を焼いている。
ただ、問題なのは彼らが食べているそれが、──人間の腕だということだった。
:ぎゃあああぁぁ!? “人喰い”マンティスだ!? :嘘やろ、ヒトを喰ってるぞあいつら :あれがエルフ!? マジかよ…… :知ってるやつおるなら解説しろ!! :“人喰い”マンティス。ワイの世界に居た、人喰い部族の頭目や!! こっちのレートで数億の賞金をギルドに掛けられた、人類扱いさえされてない駆除対象だぞ!? あいつら、リーパー隊に居たのかよ!? :早速超ド級にやべー奴で笑えん、流石リーパー隊だわ :ワイ、エルフ族。あれと同族扱いは甚だ心外なんだが :ワイ、オーク族。初めてエルフに同情したわ……
|
マジかよ、イカレてやがる。
「ひ、ヒトを食べてる……」
人類の禁忌を容易く踏みにじっているあの連中に、クラリスも恐怖していた。
俺もそうだ。やべーよ、あいつら!!
「お、あれって、あの女じゃん?」
「殺して良いんだっけ?」
「良いんじゃない? 死んだらそれはそこまでの奴ってことで」
「でもあれ、鉄馬の前に乗ってるのこの間の召喚主じゃね?」
「あっちは男だから殺さなくていいじゃん」
「それじゃあ、お仕事の続きをしようか」
「あいつを殺したころにはお肉焼けてるかな」
血化粧で口の周りを穢したエルフの集団が、一斉に武器を取った。
「マズい!!」
俺は即座にバイクのアクセルを踏んだ!!
数瞬後には、俺たちのいた場所には無数の弓矢が降り注いだ。
車体を斜めにして足で後輪をスリップさせ、連中に車体の正面を向ける。アクセルターンという技だ。
あいつらは俺たちがバイクに乗っているってわかっているのに、臆することなく鉈を手にもって襲い掛かって来た!!
「突っ込むぞ!!」
だが、その程度なら何も問題は無い。
このバイクは軍用で、電磁バリアが付いているからだ!!
俺はアクセルを踏みしめ、襲い掛かってくるエルフどもを薙ぎ払いながら突っ込んだ!!
「あのちっこいのがボスだ!!
やれ、クラリス!!」
「分かった!!」
連中の前でブレーキを踏み、その遠心力を使ってクラリスが剣を振るった。
「ひんぎゃ!?」
「あッ、族長がやられた!?」
「撤退、撤退!!」
魔力を帯びた斬撃が、小柄な人喰いエルフを真っ二つに引き裂いた。
残りの連中も、散り散りになって逃げて行った。
:倒したのか!? :数億の賞金が出ないのが悔やまれるな :それにしても結構逃げられたな :あのクソモンスターども、戦士として優秀なのがムカつくわ :引き際を完全に弁えてたしな
|
「くそ、追うだけ無駄か。
次の奴を倒すぞ!!」
「ねえ、あれを見てくれ!!」
クラリスが俺の肩を叩いて、空を指差す。
そこには、一匹の女ハーピーがその鋭い足のかぎ爪で人間を鷲掴みにして地面に叩き落しているところだった。
「次はあれだな、飛ばすぞ!!」
俺はアクセルを踏み、ウィリー状態で建物の壁に乗った。
「うわぁあああ!!」
地面すれすれ状態のクラリスは悲鳴を上げたが、俺は無視して壁を走った。
そのまま建物の屋上に乗り、加速して建物の上をジャンプしながら奴を追った。
:あの女ハーピー、“撃墜王”ピアじゃね? :嘘だろ!? 俺、ファンだったのに…… :解説、解説!! :“撃墜王”ピア。有翼種専門のG1レース、ハーピーズクイーンレースで一番人気だったこともある有望選手。 だが、事故に見せかけて他の選手を次々と地面に突き落とすから、ついた異名は“撃墜王”。記録によると、レース中に十三人は殺してる。 :ああ、撃墜王ってそういう…… :マジか、俺、彼女のレースを見たことあるぞ。あんなに人相変わるのか、一目じゃわからんかった :やっぱりマジもんの殺人鬼だったか、まさかリーパー隊に居るとは
|
住人たちの言うように、あそこに居るのは将来を嘱望された選手ではない。
他人の命を弄ぶ、人でなしの魔物だ!!
「次のジャンプで、合わせろクラリス!!」
「分かった!!」
ぴょん、とバイクのシートに足を揃えて、クラリスが乗った。
俺は次のジャンプで、高度を奴に合わせた。
「今だ!! 行け!!」
「はあああああぁぁぁぁぁ!!」
俺のバイクをジャンプ台にして、クラリスが跳んだ。
「え?」
俺たちに全く興味を示していなかった撃墜王は、クラリスの一撃で今度は自分が地面に撃墜されることになった。
「お前に地面に叩き落される連中の気持ち、少しは理解しろや」
俺は落下するクラリスの下に回り込み、すとんと彼女は俺の後ろに納まった。
「これでやっと二人か」
連中が最も恐ろしいのは、集団として指揮された時だ。
それを俺は身を以て知っている。
でなければ、
連中の油断が、俺たちに味方している。
「そこだ!! 隠れてないで出て来い!!」
「ひ、ひぃぃ、助けてくれ!!」
俺が思考を巡らせていると、油断とは無縁のクラリスが物陰の人影を見咎めた。
そこには、銃を持って震える人間が俺たちを見てホッとした様子で銃を下ろした。
「あんた達、化け物の仲間じゃないな?
良かった、助けてくれ」
「なら、今のうちにあっちの方に──」
俺がスラムの入り口を指差そうとしたその直前だった。
「はッ」
クラリスが、剣を薙いだ。
「な、なぜ……」
「その声、その銃、忘れたと思ったのなら業腹だ。
くたばれ、遊びは終わりだ化け物めが」
人間だと思っていた男が、その化けの皮が剝がれていく。
クラリスに切り裂かれた男は、見る見るうちに毛皮に覆われた正体を現した。
:あっぶな、人狼か :油断するな運び屋!! :ワンちゃんに救われたか :さっきからワンちゃんの戦闘センスヤバない? :頭よわよわなのをセンスでカバーしてるしな :言うて、俺らも役に立ってるか? :↑それを言っちゃお終いよ!!
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勢いで飛び出したものの、クラリスの戦闘能力は頼りになる。
しかし、このまま一人ずつ倒すのは埒が明かない。
「本丸を倒すぞ、同僚にも聞きたいことが有るしな」
「リーダーを倒すのか?
その考えは理解できるが、あの連中は恐らくあの獣人にしか従わない」
「隊長しか、リーパー隊を止められないってか」
恐らく目的を達しても、ハイティも隊長無しじゃ部下たちを止められないだろう。
そんな生易しい連中ではない。
@軍人:それはどうだろうか? :あ、軍人ニキ!! 丁度いいところに!! :遅かったなロリコン野郎!! お前の頭が必要な時だ!! @軍人:お前の勇敢さは、誰もが知っている。それこそ、我らが女神様もな。 ここの魔王様も認めたその蛮勇を示せ、結果で納得させろ!! 神々へのその悪逆さえも、お前に認められた自由意思なのだからな!! :お前それ感情論やん…… @魔王:だが、我が母がこういう展開が大好きなのも事実。恐れずやって見せろ、運び屋よ。 自分のやり方が気に食わないなら叛逆してみせろ、そう言う女神だメアリース様も。 :せや、魔王様も言うとる。価値を示した者だけが、己の尊厳を神の前で語れる!! 俺の昔居た世界は、それが出来なかった……。 :お前はお前のやりたいようにやれ!!
@軍人:待ってるぞ、運び屋
|
「……わかったよ、みんな。
ちゃんと役に立ってるから安心しな!!
これ以上ないほど、俺はみんなから勇気を貰ってる!!」
「誰と話してるのか分かりませんけど、行くんですね?」
「もう迷ってる時間も無いしな」
「分かりました、共に参りましょう」
俺はアクセルペダルを踏み、惨劇が続くスラムの奥へと足を踏み入れるのだった。
視界に瓦礫しか映らないレイアは、ただ膝を抱えて蹲っていた。
この場に居る見えないもう一人も、黙して語らない。
今、自分の姉はどうしているだろうか、仲良くなれたクラリスはどうしているだろうか。
ふと、不安で彼女は涙が流れ、嗚咽が漏れた。
時間の感覚も、暑さも寒さも感じない、距離感さえもよく分からないこの場所にいることに、まだ幼さの残る少女には耐え難いものがあった。
「おい」
早くもうんざりとしたような、声が発された。
「うるさい、泣くな」
「だって、ぐす、だって、お姉ちゃん、もしかしたら私の所為で、軍に捕まってるかも、ひぐッ」
無神経な声に言い返すように、彼女は不安を口にした。
一度口にしてしまうと、もう不安は無制限にあふれ出て来た。
「……そんなに心配なら、見せてやろうか?
今お前の姉が、何をしているのか?」
「うう、ぐすッ、えぇ?」
「ほら、見たいのか見たくないのか、どっちだよ」
「……知りたい、です」
「じゃあほら」
それは、いったい如何なる技術や魔法なのか。
レイアはスラム街に立っていた。
「これは、VR空間ですか?」
生まれつき目の不自由な人間が、目の治療後、初めて色を認識するとパニックに陥ることがある。
だからレイアの居る地球では、治療の一環でVR空間に脳を接続し、現実の景色をあらかじめ慣れさせておくのだ。
だから彼女はそれを知っていた。
だが、すぐにそれを気にする状況ではなくなった。
「ふはッ、ふはッ、ふはははは!!
見よ、この我を!! 女神の加護により真祖を超えし不死を体現した、真なる不死者の姿を!!」
グールと化した亡者を従える、吸血鬼が哄笑を挙げていた。
「若さ、若さ、若さ若さ若さぁ!!
お前たち全員、私の美貌の糧となれぇええ!!」
狂気のサキュバスが、住人たちをエナジードレインでミイラのように干からびさせていた。
死体。
死体、死体。
死体死体、死体死体。
どこを見ても、積み上がった死体の山だった。
「あ、ああ、なに、これ……」
「お前が見たくなかった、大嫌いな現実だよ」
見えない声の主が、嘲るように少女に言った。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんは……?」
彼女は必死に、姉の姿を探した。
そして、見つけた。カーテンが閉め切られた娼館の窓の中だ。
「姐さん、外はどうなってます?」
「スラムの住人は、もうほとんど殺されちまってる。
あいつらはどうやら、私達みたいな市民IDを持ってるやつは狙わないみたいだ。
お前さんたちはそこで黙って隠れてな」
娼館の中には、怯えて震えている娼婦たち以外にも、そこに駆け込んで逃げて来たスラムの住人も多数いた。
リーパー隊は殺しを楽しんでいるのか、建物の中は後回しのようだが、その中も時間の問題だろう。
「なんなんだ、なんなんだよ、あの化け物どもは。
こっちに移住してきた異種族どもとは大違いじゃないか」
「……きっと、レイアを探してるんだ」
「なんだって?」
「どうしよう、レイアはスラムに居ない。
あいつらはみんなを全員殺すまで、終わらない」
クラリッサの声は震えていた。
リーパー隊は彼女の想像を超えて残虐非道な連中だった。
彼らの起こした惨劇を見せつけるように、女神に逆らう愚か者に自らの過ちを認識させていた。
「私があの時レイアと一緒に行けば、苦しむのは私達二人で済んだのに!!」
「甘ったれんじゃないよ!!」
しかし、クラリッサが姐さんと慕う娼婦の平手が彼女を頬を打った。
「ここの連中は、自分たちの尊厳は自分たちで決めているんだ。
お前さんの所為だって? 馬鹿言うんじゃない、その尊厳を奪ってるあの化け物ども以外の誰が悪いって言うんだい!!」
「姐さん……」
「それが通るんなら、あたしらは生きてるだけで悪ってことになるじゃないか……」
彼女の悲し気な言葉に、クラリッサも俯いてしまった。
「どうして、なんで、なんで私の所為なの?
私の所為で、みんなが殺されてるの?」
「気持ち悪いだろう?」
姿の見えない、声だけのもう一人が世間話のようにレイアにそう言った。
「え?」
「人間なんて生き物は、集まってひしめいて気持ち悪いって言ってるんだ。
冬場の石の裏をひっくり返してみなよ。集まって暖を取るテントウムシみたいに、触るのも踏みつぶすのもしたくない気持ち悪さだ」
レイアは、この生意気な少年のように聞こえる声が何を言っているのか分からなかった。
「そんな連中が、他のどんな生き物よりも生き汚くしぶといと来た。
中途半端に小賢しいのがより拍車をかける。賢いゴキブリなんて身の毛もよだつだろう?」
「……あなたが何を言ってるのか、わかりません」
「すぐにわかるよ。ほら、お前の姉が死にそうになってる」
「えッ!?」
言われてみてみれば、扉を蹴破ってリーパー隊の一人が娼館の中に侵入した。
そして、殺して良い連中を認識した彼は、手始めにクラリッサにその魔の手を伸ばした。
「お姉ちゃん!!」
「君もすぐ分かるよ、僕もそうだった。
この世はおぞましい吐き気を催す肥溜なんだから」
彼女を庇った娼婦が、払いのけられた。
そして今この瞬間、クラリッサが断末魔の悲鳴を上げようとした。
「させるかああああぁぁぁ!!」
その寸前で、敵を背から真っ二つに切り裂いたクラリスが現れた。
「あッ」
助かった。
レイアはその事実を認識して、膝を突いた。
「くだらない予定調和だ」
「どうして、どうしてそんなことを言うの?
なんで、なんで、そこまで悲しそうに諦めてるの?」
レイアにはわかってしまった。
この声だけしか聞こえない存在は、やろうと思えばクラリッサを助けることなど造作も無かったはずだ。
それどころか、今の惨劇すらどうにでもできるだろう。
その確信が、なぜだかレイアにはあった。
「……お前はさっき、どうしてと言ったな?
自分がなぜここまでして狙われなければならないか、と」
話を逸らされた、とはレイアは思わなかった。
その答えこそが、全ての本質なのだと本能的に理解したからだ。
「ドッペルゲンガーの法則は知っているかい?
僕は異世界同一性存在の法則と名付けたけど、そちらの方が分かりやすいか」
レイアは当然知らないが、相手もそれを承知の上で話を続けた。
「君の住む地球以外にも、同じ地球という名称が付けられた並行世界は無数に存在する。
もしかしたらそこには君とまったく同一人物がいるかもしれないね。
そこまで似なくても、魂だけは全ての、ありとあらゆる世界で共通して同一の個体が存在するんだ」
「どの世界にも、私に相当する人間がいるってことですか?」
「理解が早いね。
そうさ、勿論人間に限らない。異種族、動物、もしかしたら物かもしれない。
魂の宿るものならなんでもさ。だけど、お前はその中でも特別だ」
特別、それこそ、血眼になって女神が探し当てようとするほど。
だけど、返って来た言葉はレイアの予想以上だった。
「お前の魂は、この世で最も度し難く愚かでおぞましい最低最悪な人間の。
────つまり、この僕と同じなんだよ。
君は、一つの世界で最もハズレの魂を引いたあまりにも不幸な人間ってことさ!!」
声の主が、嗤う。
何よりも自分自身を笑っている。
「ああ、そうなんですね」
ストン、と胸の内に落ちて来たその答え。
疑うことすらなく、彼女はその真実を確信した。
「あなたは、私だったんだ」
レイアはふと、鏡合わせのように抱き合ってお互いの無事を喜び合う姉とクラリスを見て、涙を流した。
自分だけじゃなく、そこにいるはずのもう一人の自分の分まで、彼女は泣いたのだ。
まえがきに書いた通り、これで今年最後の更新となります!!
前回が最後じゃ、胸糞悪い終わりですもんね!!
年始も更新速度を維持したいですが、それにはね、ほら、ね?
私のモチベーションを錬成するには高評価とか感想とかがね? 必要でしてね?
面白いと思ってくれたらでいいんですのでね?(ちらちら
良ければお願いします、頑張りますんで(媚び媚び
それではまた、来年!!
今度こそ、よいお年を!!
アンズちゃん「勇者に本当に必要なのは?」※ルート分岐アンケート
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最強の魔剣
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最高の仲間