ポンコツ勇者 VS クソガキ魔王 VS ダークライダー 作:やーなん
現象:神々の干渉
基本的に、神々は実体を持たない存在である。
彼らが現世に影響を及ぼすには強大すぎて顕現には大規模な破壊を引き起こす。
それを防ぐために天啓や使徒を使いお告げなどをするのである。
異様にフットワークの軽い女神メアリースは、錬金術師という経歴もあり人間の頃と同じ魂と肉体の分体を無数に作り上げ、より直接的に自分が干渉するという裏技を駆使しているのである。
ある意味、数を揃えるという人間の文化の象徴とも言える行動である。
「クラリス、感動の再会は十分か?」
「ああ、もう大丈夫だ」
娼館からクラリスが出て来たのを後ろ目に確認しながら、俺は頷いた。
「それで、待ってくれてありがとう、とでも言えば良いのか?」
俺は目の前で余裕そうに笑みを浮かべている吸血鬼にそう言った。
「まさか、隊長に貴様を丁重に持て成せと言われてね。
吾輩は貴族ゆえ、決闘の作法は弁えている。
我が名は真に不死なるレッドバロン!! 大いなる血の王である!!」
「嘘は良くないよ、ヨコタさん。故郷じゃ“恥知らず”のヨコタなんて言われてたんだって?
眷属を作るのは神聖なことなんだろ? グールしか作れないのは程度の低い吸血鬼だからって、そう聞いたぞ」
「き、貴様ぁあああ!!!」
目の前のエセ貴族気取りは俺の挑発に即座に激高した。
:我が世界の汚点が迷惑を掛ける。いやホント済まない、我ら吸血鬼を誤解しないでくれ…… :吸血鬼ニキ元気出して。俺は全種族で一番吸血鬼が好きだぞ!! :そうだぞ、単純に強いだけの龍人だけと違って、吸血鬼は人類のロマンの体現者だからな!! :これからもオサレ№1種族でいてくれよ!!
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「お前、同族を悲しませるなよ……」
「キサマに何が分かる!!」
グールの群と共に、吸血鬼の身体が無数のコウモリへと変化し飛び立つ。
「聖鎧起動ッ、出力二十パーセント!!」
直後、俺の背後に太陽が現れた。
「やッ、やめろ!? それは、太陽の再現だと!?
か、体が崩れるぅぅううう!!!!」
太陽の光の一閃が、吸血鬼をグールごと薙ぎ払った。
「真の強者は、己一人で完結するものだ。
死者を従え良い気になっている貴様には、真の高貴さとは程遠い」
一太刀で吸血鬼を滅ぼしたクラリスがそう吐き捨てた。
:同じ吸血鬼として耳が痛い……今一度己を見直そう @魔法技師:ヤバい、私もワンちゃんの鎧がどういう仕組みか全くわからない あの大きさとデザインで核融合炉搭載してるとか、神の御業としか…… :魔法技師ネキでもわからんか。滅茶苦茶高度な文明がレジスタンスのバックに付いてるってことかね :こっちでも計測してみた。推定文明レベル90以上の代物だそうだ、完全にレギュレーション違反の代物だわ :文明レベル90以上!? メアリース様の支配下でも五指に入るレベルだぞッ、そこまで発展してるのは!! :かなりうまくいかないと、文明レベル80に行く前に人間社会が崩壊するからな。神の御業と言っても差し支えないだろうな :そりゃあそんな装備があれば魔王様とも渡り合えるわ…… :実際に目にするとすさまじいな、アーカイブじゃ感覚共有モードは文字に自動変換されるだけだし
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「……次撃つ時は一言言ってくれよ」
「あ、ごめんなさい!!」
こっちは肝が冷えたわ。
グールたちが一瞬で蒸発したんだぞ!?
「それよりも、隊長はどこだ……?」
「わからない。化け物どもが無秩序すぎて、スラムのどこに居るのか見当も……う、あ!?」
すると、急にクラリスが苦しみだした。
「おい、どうした!?」
「うふッ、うふッ、うふふふふ」
不気味な笑い声に、俺はとっさにそちらに向かい身構えた。
「若い女、憎らしいわぁ。あなたのその顔、ぐちゃぐちゃにしてあげるわぁ!!」
新手は、煽情的な格好のサキュバスらしき女だった。
何かしらの呪術を行使しているのか、その両手は誘うように妖しく輝いている。
「くそッ、魔術は専門外だぞ!!」
:奴は……おい、運び屋!! ワンちゃんを一旦連れて逃げろ!! スピードで翻弄するんだ、呪術は距離が近いと効果が大きいからな!! :お、ここに来て的確なアドバイスがようやく出たぞ!! :未知の敵が出てきたらとりあえず距離を取る。鉄則だな!!
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「分かった!!」
住人たちのアドバイスを受け、クラリスを背負いバイクのアクセルを踏んだ。
「逃がすかぁ!!!」
だがサキュバスが背中の翼を広げ、空を飛んで追って来た!!
「はぁ、はぁ……」
「クラリスが苦しそうだ、解呪はどうすればいい!?」
クラリスは熱病にうなされているように息が荒い。
恐らく、即効性の高い強力な呪詛だろう。
:運び屋、今は俺を信じて時間を稼げ!! 呪術はたいてい、術者を倒せば解けるから今は心配するな!! :だが、逃げ回ってるだけじゃ勝てないのでは? :……いや、奴を見てみろ!!
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俺はミラーを通して、背後のサキュバスを見た。
「はぁ、はぁあ、待てぇええ!!」
飛行しながら呪術を使うのは消耗するのか、サキュバスの表情は壮絶なモノが浮かんでいた。
今だッ、という住人達の指示に従い、反転して電磁バリアを展開。
サキュバスに正面から挑みかかった。
「くッ、くうぅ!!」
だが、奴も咄嗟に魔法で防御した。
弾かれながらも、態勢を崩した程度で終わった。
だが……。
「お前、それ……」
俺は、見てしまった。
そのサキュバスの顔を。
「み、見るなぁあああ!!
私を見るなぁあああ!!」
見る者に生唾を呑ませるような煽情的で若々しい肌が、枯れていた。
若く美しかった美貌が、老婆のようにしわがれていた。
:奴は悪魔族のように人体の構成比率が魔力に寄っている種族に極稀に起こる、先天性の病気なんだ。魔法の行使などで魔力を消耗すると、急激に老化が進行する。 それを補う為にエナジードレインで魔力を奪い、奴は何十人もの若者の生気を啜った。 :ああッ!! 聞いたことがある!! 世の悪女百選にも出てくる“鮮血”のエリザベスか!! :ただ普通に生きるだけなら寿命の長いサキュバスは病気の進行なんて幾らでも遅らせられるのに、哀れな女だ……
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「エサ、エサぁ、早く、魔力を補充しないと、私の、私の美しさがぁ……」
もはや、狂ったサキュバスは俺たちを見ていなかった。
芋虫のように地面を這いずりながら、獲物を求め手を伸ばした。
「懲罰部隊、か」
俺はその意味をようやく、噛み締めた。
この女はもはや、どんなに老いても死ぬことすらできないのだ。
俺は護身用のレーザーガンを抜き、ミイラのように干からびた老婆の頭に光線を射出した。
「わか、さ……」
妄執に満ちた女は、この世界での戦いを終えて消え去った。
「クラリス、大丈夫か!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、なんとか……」
幸い、クラリスの顔色は先ほどよりもマシになっていた。
:呪術への耐性はガバガバなんか :魔法防御と呪術への対策は全く別だからな :ワンちゃん、典型的な戦士タイプだもんなぁ @魔法技師:運び屋さん、ドローン飛ばした!! 敵リーダー発見したから座標を送るね!! :ナイス!! 魔法技師ネキ!! :ようやく的確な支援が出来るようになってきたな
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魔法技師ネキから、座標が送られてきた。
早速、端末のマップアプリにその場所を表示してみる。
そこは、スラムでも長屋が連なってるところだ。
「ここはッ、二人の!!」
「この場所がわかるのか?」
「そこに、敵が居るんですね?」
「そうらしい、協力者が探してくれた」
「行きましょう。二人の住まいを荒らさせるわけにはいきません」
「ああ、わかった」
脂汗をぬぐいながら、クラリスは俺に頷いて見せた。
俺は彼女を乗せて、バイクを走らせた。
§§§
「度し難い遅延です」
四天王ハイティは眉をひそめていた。
その理由は、リーパー隊が彼女の想像以上に合理性に欠ける連中だったことだった。
「あなた達は仕事が早いと、同僚からは伺っていたのですが」
「安心しろ、仕事はちゃんとさせている。おい」
「隊長、ここに」
仕事中に私物の携帯端末を弄っている隊長にいら立ちを隠せない彼女だったが、彼が呼びかけるとリーパー隊所属のエルフ達がそこら中から現れた。
軽業師のように縦横無尽に、神出鬼没であった。
「衛星? 写真? ってやつで確認した目的のガキですけど、隅々まで探しました。
少なくともこのスラムにはどこにも居ません」
「そうか、うすうすそんな気はしていた」
“人食い”マンティスを族長と仰ぐ彼女たちエルフは優秀な戦士でありスカウトだった。
隊長たる彼が何よりも損耗を嫌うほどである。
欠点は文明の利器に理解が無いことだが、それも全く気にならないレベルだった。少なくとも彼にとっては。
「隊長」
「お、そっちはどうだ?」
「呪術探知、魔法感知、占星術、卜占、その他もろもろ反応なしでございます」
「お手上げだな」
老いたオークの呪術師が、恭しく頭を下げて上司に報告した。
リーパー隊の連中はあらゆる世界から集められたクズの中のクズどもだが、それだけでは隊員資格は満たされない。
専門技能を持っている者、戦士として優秀な者、部隊運用が可能な者、そしてそれをまとめる隊長。
単なる使い捨ての懲罰部隊を、彼が精鋭に変えてしまった。
「空振りだ、逃がしたみたいだ」
「そうですか。スラムの連中を殺せば、炙り出せると思ったのですが」
「この反応だと、始めから居ない感じだな。
だが解せん、まるでこの世界から消えたみたいな無反応だ。
果たして誰が手引きしたのやら……」
「それを調べるのは私の仕事です」
そこまで言って、ハイティは手元の資料を見た。
「そう言えば、双子の姉はまだ確保していなかったそうですが、殺したのですか?」
たった今、その双子の家の家探しを命じていたところだ。
勿論、そこに目的の人物はいなかった。
「そういう使えそうな駒は殺すなと命じている。
これから確保させるか?」
「お願いします。拷問が得意な者のひとりやふたり、居るでしょう?」
「あんたのようにこちらのやり方に口出ししてこない上官はやりやすいよ。
任せな、とっ捕まえてどこに消えたか聞き出してやるさ」
だが、と隊長は笑みを深めた。
「その前に邪魔者を排除しないといけないみたいだぜ?」
彼はバイクで現れた二人を見て、愉快そうに笑った。
「ハイティ!!」
俺がバイクにブレーキをかけて、あいつらの前に止まった。
長屋の前はあのエルフ達が集結している。ほかのリーパー隊の連中もいる。
そこに混じるように、無表情のハイティも居た。
「これはどういうことだ!!
なぜ、こいつらがスラムの連中を殺して回ってやがる!!」
「どういうことだ、はこちらの台詞です」
ハイティは眼鏡のふちを抑えて、溜息を吐いた。
「我らの邪魔をしている正体不明の相手とはあなたでしたかか。
あまつさえ、テロリストと一緒にいるのはどういう了見ですか?」
「質問に答えろ!! 俺はこんなこと聞いてない!!」
「ではそちらの疑問から処理しましょう。
これは魔王様の仕事の代行、あの御方の指示です」
内心、そうだとは思っていた。
彼女は無意味なことはしない女だ。行動のすべては合理性で片付けられ、行動原理は魔王の為にある。
「それではそちらの番です。
何故にテロリストと一緒に、私の任務の邪魔をするのですか?」
「納得がいかないからに決まってるだろ!!
あんたら、誰かを探してんだろ!! それをするのにここまでする必要は無いだろ!!」
「全ては魔王様のご指示、ご意思です」
「その魔王様は家でアニメ見てるよ!!
何でもかんでもあいつを理由にするんじゃねえ!!」
「あなた、自分が無茶苦茶なこと言っているとわかっていますか?」
話にならない、とばかりに首を振るハイティ。
「ではその女の所為でしょう。
私としては通常戦力で虱潰しでも良かったのですから。
その場合、その女が抵抗して彼らが殺されれば良かった、あなたはそう言いたいのですか?」
「そういうことを言ってんじゃねえ!!」
「じゃあハッキリとモノを言えッ!!」
ごう、と魔力が吹き荒れた。
「あれもだめ、これもだめ、でも代案も出さない!!
遊びじゃねぇんだよ!! 私の仕事を邪魔して楽しいのかお前は!!」
……ヤバイ、ハイティがブチ切れた。
@運び屋:……こわい :草、と打ち込んだがマジで怖くて草枯れる…… :あれが純粋な人間の気迫か? :ほら、普段おとなしい人が怒ると怖いし…… :四天王に選ばれる奴が弱いわけないしなぁ :今のところ運び屋の方が無茶苦茶言ってるし、そらキレるわ :マジで無計画で行き当たりばったりなだけだからなぁ
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「もういいです、親切な人」
俺がビビってると、バイクのシートからクラリスが下りた。
「これは、私の戦いですから
あなたはここまでで大丈夫です」
そう言って、彼女は俺の前に出た。
:トゥンク…… :惚れた :ここで引き下がる男おるぅ? :答えは一つだよなぁ?
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「わかった!! あとは任せた!!」
:おいwww :ここで草生やさすなww :そこは一緒に戦う流れだろ!! :なんでそこで日和るんだお前は!! :失望しました、運び屋のファン止めます @運び屋:だって俺、所詮運び屋だし…… :リーパー隊の殺人鬼連中に相手どれる時点で一般人を名乗る気かお前は!!
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「はぁ」
そこでなぜか、端末を見ていた隊長が溜息を吐いた。
「ボス、ところであれは反逆者ってことで良いのか?」
「……客観的な事実を述べるなら、反逆者でしょうね」
「じゃあ、好きに甚振って良いんだな?」
「そうなりますね」
一応落ち着きを取り戻したハイティが眼鏡のずれを直して、隊長にそう答えた。
「聞いたかお前ら、あれはお前らにやるよ」
「わーい!! 男だ!! 隊長大好き!!」
「どこから犯して食べようかなぁ!!」
「私右足ね!! 右足!!」
「じゃあ私が仕留めたら左腕貰うね!!」
肉食系(直球)のエルフ達が隊長の言葉でキャッキャ喜んでいた。
:わー、逆レ展開とか羨ましいわ(白目 :良かったな運び屋、より取り見取りだぞ(遠い目 :エルフ達に(四肢を)取り合いになるなんて色男ですねぇ :平和なエルフの村を襲うオークも裸足で逃げ出す連中なんだよなぁ…… :↑そのミーム名誉棄損でこの間勝訴出たぞ、覚えとけてめぇ :名誉棄損は事実の場合も含まれるという事実 :↑絶対エルフ族だろ、汚い、エルフ族汚い :でも目の前の人喰い蛮族よりはマシだろ、お前ら :それはそう :あれには食指は動かんわ :速攻意見一致してて草ww
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お前ら、他人事だと思って!!
「貴様ら、無関係な人たちを殺して何とも思わないのか!!」
おっと、クラリスいきなりシリアスなセリフ止めて!!
いやお前にはわからんのだろうけどさ!!
「うーん、何とも思わない、か……」
すると、隊長は目を瞑った。
その目元の毛が、涙で濡れ始めた。
「悲しいなぁ、未来ある子供たち、仲のいい夫婦、威勢のいい老人たち。
誰もかれもがまだまだ生きたかっただろうに……」
隊長は、涙を流していた。
他ならぬ、己の指示した非道による惨劇で。
「彼らを想って涙を流せるなら、なぜ……」
「戦場が、戦争の緊迫こそがこの俺の生きた実感だからだよ、お嬢さん。
この手で誰かを殺す時、部下が誰かを殺す時、仲間を殺される時、自分が殺される時」
隊長は泣いていた。
だが同時に、笑っていたのだ。
楽しそうに、笑うしかないと言うように。
「この苦しみ、この悲しみ、もっともっと俺に与えてくれお嬢さん。
君は俺が失うものは無いと言ったがそれは違う。俺の心は喪失感に飢えているのだよ」
「……狂ってる」
そう、彼はどうしようもなく正気で、正気ゆえに狂っている。
「さあ、殺そうもっと殺そう!!
お前らも俺の仲間を殺せ、俺も殺せ!!
はっはっは!! 戦争だ、戦争を始めよう!!
お互いに失い合い、傷つき合い、血を流し、生の素晴らしさを確かめ合おうじゃないかッ!!」
一人でやってろ、この狂人が!!
本当なら今回でリーパー隊戦を終わらせようと思ったのですが、長引いてしまったです。
明日も頑張って更新してみようと思うので、私の頑張りを評価してくださるのなら何卒高評価や感想をよろしくお願いします!!
それでは、また次回!!