ポンコツ勇者 VS クソガキ魔王 VS ダークライダー 作:やーなん
驚きましたか? 私は結果を確認してくださいと言ったのに、この小説を非表示にするというドッキリは!!
私以外に人気投票の票を入れた人がいるからこんなことになるんです!! あははは!!
……。
無理ありますよね、ごめんなさい。理不尽でした。イタズラしたかっただけです。
結果はこの通りですl
文明の女神メアリース 11%
邪悪の女神リェーサセッタ 40%
神賽と天秤の女神アンズちゃん 49%
ええ、私が勝っちゃったんですよ。
ホントは私負けたらドッキリするつもりだったのに、読者の皆さんのネタ潰し!!
これはもう強行するしかないじゃないですか!! ぷんぷん!!
もしかして、酷いことするって、キャラの誰かに私が意地悪するって思ったんですか?
あなたたちにとっては文字の上の人物に過ぎないですけど、私にとっては現実の存在なんですよ、私が彼らに進んで酷いことするわけないじゃないですか。
しかしまあ、マジかー。
私が一番人気ですか。これはちょっと予想外。私自身、嫌われてると思ってたので。
てっきり、リューちゃんあたりが一位かと思ってました。
まあ、何はともあれ、一位に成ってしまった以上、役目を果たさねばなりません。
安価、いえ、アンケは絶対!!
登場未定だった、隠しキャラを特別に出現させてあげます!!
(あいつへの嫌がらせにもなるし)
さて、もう一人、最後の四天王はいったい、誰になるんでしょうね?
いやぁ、楽しみです。ではまた、その時に!! 本編どうぞ!!」
俺はクッキングメイカーにクラリスが買ってきた材料を入れる。
俺みたいな独身の男には自動調理器が必要不可欠なのだ。
こんなもの、数年前まで一部の富裕層向けの代物だった。
資源の枯渇は百年以上前から深刻であり、庶民の食べ物は安い合成食料が普通だった。
それですら、支給品のエネルギーバーの足元にも及ばないデキだ。
全てはメアリース様の恩寵で変わったのだ。
俺たちは二十一世紀頃のように天然の食材を惜しげもなく使用した食べ物を作り、食べられるようになった。
ここ数年で、美食の概念が復活したくらいだ。
資源も、燃料も、何もかも、俺たちは人間らしい文化的な生活を取り戻した。
どれだけ文明が発展しようとも、手に入れられなかった豊かさを手に入れた。
俺たちの文明でさえ解明できてないアルツハイマー型認知症も、我らが造物主にとって治療は造作も無いもの。
あれは死の恐怖を忘れさせるための人間の機能だ、と医者たちとの対談番組でメアリース様は語っていた。
人間が長年病気だと思っていたのは、女神の慈悲だったのである。若年性はバグらしい。
故に私に貢献したい者は認知症の治療薬を無償で提供する、と彼女は言った。
誰だって、自分が自分でなくなるのは怖い。
俺たちの人類は、造物主にひれ伏した。
それが悪いことだとは俺は思わない。
俺が子供の頃には想像がつかない生活が出来ているし、俺は今の生活に満足している。
「にぃに!! ごはん早く!!」
「レイジさん、音鳴りましたよ!!」
リビングに集まった同居人たちが料理を催促している。
どうやら、考え事をしている間に、調理が完了したようだ。
「待ってろ、今持っていく」
思うところはある。
だが、今の生活に不満はない。それを与えてくださるメアリース様に文句を言うのはお門違いなんだろう。
「わーい、オムレツだー!!」
「合成食品じゃない卵なんて何年ぶりだろ……」
二人は喜んでいるようだ。
合成食のオムレツとかお麩より食べごたえだもんな。
いや、それはお麩に失礼か。本物の味噌汁の味を知ったらもう昔の食生活には戻れん。
「今日は奮発して、ミルクもあるぞ!! ちゃんと異世界産だ!!」
「本当ですか!?」
「ああ、しかもココアにできる」
「わぁ!!」
俺は冷蔵庫からこれみよがしに牛乳パックを取り出した。
紙容器だなんて、なんて贅沢なんだろうか。
本物の牛乳なんて、金持ちしか飲めない代物だった。今でもそこそこ高級品なのである。
しがない配達業の俺にこんなのが買えるかと言われると、買えるのだ。
つい昨日、四天王の役員報酬を貰えたのである。
最初は辞退しようとしたのだが、じゃあ私も辞退せねばなりません、とハイティが真顔で言うのでしぶしぶ受け取ったわけだ。
その後、バンブスさんにコッソリ返して貰おうとしたのだが。
「貴方はその報酬に相応しい行いをしている。貰っておきなさい」
と言われ、結局持ち帰った。
そして給与データの中身は、俺の月給の二十倍だった。
大して儲からない仕事をしてるが、その二十倍となれば結構な金額だ。
しかも、建物の修繕費とかじゃなく、俺の自由にしていいカネである。
正直、修繕費はこっそり少しだけ多く見積もって申告して差額を懐に入れてたりしてたが、それがバカバカしくなる金額だった。後で自主的に返還しようと心に決めた瞬間だった。
とはいえ、こんなに要らない。
「クラリス、仕事前に孤児院に行くがお前も来るか?」
「え? あ、はい。行きます」
正直こいつにはローティの面倒を見ててもらいたいが、まあアニメでも見ててもろて。
「にぃに!! 私も付いてく!!」
「サイドカーがあるならまだしも、三人乗りは流石にマズイっての。
今日はアニメ見てろよ、すぐに帰ってくるから」
俺はローティの我儘を跳ねのけた。
それに昨日の今日でこいつを連れ歩くとかたまったもんじゃない。
「むぅ、いいもん、フェアリーサマーの続き見るから」
朝食を食べ終えたローティはそう言ってテレビでアニメを再生し始めた。
テレビの中では夏をイメージした装束の純血の日本人っぽい少女が怪獣の肩に乗る二人相手に怒鳴っていた。
『またあんたかティフォン博士!!
いつもいつもいつもいつも、周りに迷惑をかけて!!
というか、今日はなんで私のメカニックまで巻き込んだ!!』
『ふははははは!! ようやく来たなフェアリーサマー!!
早く我が新たな傑作を倒さねば町に被害が出るぞ!!
ついでに人質のウインター博士はここにいるぞ!!』
『助けてー!! ちょっとノリでキメラ作成の手伝ったらヤバイの出来ちゃったから早く倒してー!!』
『お前のせいでもあるんかい!!』
『今日も例によって例のごとく暴走状態だ!! 制御不能だぞ、早く早く人々に害を成す怪獣を倒して見せろ!!』
とても純粋な瞳でわくわくしながら魔法少女の活躍を特等席で高笑いしながら堪能している悪の科学者と、頭を抱えている主人公の図だった。
「おい魔法技師ネキ……」
いや、何も言うまい。
彼女は何度も手助けしてくれたんだし。
しかし、住人達にクソつよと称されるだけあって主人公は強かった。初手必殺技ぶっぱで怪獣は木っ端みじんである。
『ちッ、やはりこの程度では 我が宿敵は歯牙にも掛けぬか』
『やっぱり安定性を取ったのが間違いじゃない?
せっかくだから次こそ怪獣の王を再現しようよ、核融合炉内臓させればいけるんじゃないかな!!
ちょうど使ってもらいたい新兵器作ったし』
『え、何その発想、こわ……』
「お前の方がマッドなのかよ!!」
アニメ相手にツッコミを入れる俺の身にもなってほしかった。
おい、これ本当に教育に良いんだよな!!
§§§
アニメの内容に少々不安を抱きながらも、俺とクラリスは部屋から出てバイクを引っ張り出した。
「お前、ちゃんと謝れるのか?」
「う、うん。私のせいで孤児院壊しちゃったから。
マザーや子供たちにもちゃんと謝らないと」
「まあ、なんだ、あんまり自分を責めるなよ」
「まあね、あの時はテロリストに洗脳されてたから。でも私がしたことだから」
「そうか……」
俺はその言葉に複雑な心境になって、曖昧に頷くことしかできなかった。
「あ、そうだ!! レイジさんッ、あの時はゴメンなさい!!
まだあなたに謝って無かったよね」
「気にするなよ、結局はメアリース様に生き返らせてもらったし」
「でも、それって結局一回は死んでるってことだし」
クラリスは大きく腰を折って俺に頭を下げた。
そして、顔を上げると涙目になっていた。
「責任を取ります、何でも言ってくださいレイジさん」
「おっと、そういうセリフはぐっとくるから止めな」
ちなみに、確認したところクラリスの年齢は21歳。うーん、彼女にするなら理想的な年齢だ。
しかもこいつ、結構スタイル良い。鍛えてるしな。鎧着てたからわからなかったけど。
「負い目に漬け込むのは趣味じゃない。
お互いに遠慮が無くなったら、その時は俺から口説くわ」
「え? えッ!?」
俺がからかうと、クラリスはあわあわと狼狽え始めた。
可愛いなコイツ。まあ満更冗談ってわけでもない。たとえそれが、洗脳によってもたらされた幻想だとしても。
「ほら、乗れよ」
「は、はい!!」
俺がバイクにまたがると、クラリスに後ろに乗るように促した。
ぎゅ、ふにょん。
やっぱり、大きなこいつ。テロリストにしておくのはもったいなかったな、うん。
ローティは人類の宝を守ったのだ、そう思うことにしよう。
さて、荷物の集積所に行く前に俺は孤児院へと向かった。
「おーい、マザー。いるか?」
バイクを下りて、俺が玄関からインターホンを鳴らすと。
「はいはい、どちら様」
「クリスティーン、俺だよ」
「あん? お前か、用も無いのにごくろうなこった」
「用はあるから出てこいこの野郎」
俺がそういうと、程なくして出てきたのは、若い女だった。
金髪の少々やさぐれた印象を受ける、神官服の女だ。
こいつ、これでもリェーサセッタ様の神官なのである。
「マザーはどうした?」
「婆さんなら、手術をするから入院中だ」
「なに? どこか悪いのか?」
「いいや、サイボーグ手術だよ。
あの婆さん、あの年でまだまだ迷える子羊を養うために骨格の強化するんだと。
素晴らしいねぇ、メアリース様もあの婆さんを良い来世に導くだろうさ」
この態度である。
このスラムのチンピラに神官服を着せたような不真面目な女が、バンブスさんと同じ神官様なのだそうだ。
「お前はどうなんだ、クリスティーン。
俺が聞いた話だと、神官様はくそ真面目じゃないと成れないって聞いたぞ」
「俺の師匠、大神官。リェーサセッタ様の教団の最高幹部。
俺も実績でのし上がったクチ。わかったら媚びへつらえ、未来の大神官様だぞ」
「あっそ、俺は魔王様の四天王だぞ。あんまり不真面目だと魔王様に言いつけてやる」
「魔王の四天王ねぇ」
俺の返しに、クリスティーンは鼻で笑った。
「所詮は雇われだろ。馬鹿馬鹿しい。
それより、用件はなんだ」
「子供たちの顔を見るついでに、寄付でもしてやろうかと思ったんだが、お前にカネは預けらんねぇな」
「お前、神官の給料しらないだろ?
俺は特権階級でな、お前みたいな貧乏人が施すはした金を着服してキャリアを捨てたりなんざしないんだわ」
この性別が男でも全く違和感のない女は、つい最近スズ様の要請でこの孤児院に派遣されてきた。
なぜなら、スラムが解体されたからだ。
あそこに居た子供を、十人近くここで預かっている。流石にマザーが一人じゃ人手が足りないという事で、クリスティーンを含めた数人がここに常駐することになった。
「子供たちは? 勉強中か?」
「ああ、授業中だ。他の奴らが見てる、だから会うのは終わってからにしろ」
「いや、こっちもこの後仕事だし、それが終わってからまた来るわ」
「ふーん、好きにしろよ」
じゃあな、と彼女はドアを閉めた。
「全く、アレで聖職者かよ。悪魔族のバンブスさんの方が何倍も信用できるわ。
……クラリス?」
俺は振り返ると、クラリスがこわばった表情でゆっくりと警戒を解いてる姿が見えた。
「今の女、レイジさんの知り合いか?」
「ああ、リェーサセッタ様の神官だよ。神官様だからな、あんな態度でもどこの誰よりも信用は置ける奴のはずだ」
「……わからなかった」
「は?」
「勝てるかわからなかった。こんなの初めてだ。武器を持って万全の状態で正面から戦って、勝てるかどうかわからない。本当にあれが聖職者なのか?」
「マジで言ってるのか、お前」
「少なくとも、レイジさんが百回戦っても一回も勝てない。それくらいの猛者だよ、あの女」
クラリスが額に浮かんだ汗を拭う。
彼女の言葉は冗談を言っているようには見えなかった。
「あのチンピラ女が? 冗談だろ」
「だとしたら、あの品位の無さも擬態なのかもしれない。
あいつが魔王の四天王だったら、私は戦いを避けるかな。戦いたくない部類だ」
クラリスの直観、戦闘センスはスバ抜けてる。
だが俺はいまいち信じきれなかった。
「あ、レイジさんに、クラリスさん!!」
その声に釣られ、振り返るとそこには身の丈もある節くれだった木の杖を抱えた少女が居た。
「お、レイアじゃないか」
「レイアッ、どうしてここに!?」
俺の言葉にかぶせるように、クラリスが声を上げた。
「クラリスさんッ、大丈夫なんですか!?」
「私は大丈夫だ、それより君は目が見えるようになったのか?」
「はい、もうちゃんとこの世界を見ることができます。
クラリスさんの顔も……だけど……」
レイアは悲痛な表情を浮かべて、躊躇いがちにこう言った。
「本当に、妹さんのこと忘れちゃったんですか?」
「うん? ローティがどうした? あいつのことを忘れるわけないじゃないか」
「……ええ、はい、そうですね」
泣きそうな表情を隠すように、レイアは俯いた。
ああそうか、こいつら知り合いだったな。
「ショックなのはわかるが、クラリスはクラリスのままだ。
今は見守ってやろう、俺達にはそれしかできん」
「そう、ですね」
こいつはレイア、スラム出身でついこの間この孤児院にやってきた双子の片割れだ。
彼女は目が不自由だったのだが、神官たちの計らいで目の手術をさせて貰えたようだ。マザーの手術もそうだろう。
今時、目の手術なんて義肢の付け替えと変わらない。10分くらいで済むお手軽な物だが、スラム育ちの彼女には難しいことだったのだろう。
これもまた、神の恩寵という奴だ。
「とりあえず、目が良くなってよかったな。
義眼に付け替えたりはしなかったのか? 肉眼より高性能で劣化に強いのもあるだろ」
「はい、肉眼の方が魔法の行使に都合がいいので」
と言って、魔法使い志望らしいのだ、この子。
今時、木の杖を持って魔法の練習とか微笑ましい。
「そうか、何か教材でも買ってやろうか?
魔法の補助デバイスでも良いぞ、木の杖で練習するよりはいいだろ」
「むしろ、この杖よりすごいのを売ってたら見てみたい……」
「どうした?」
「いえ、何でもないです。クリス先生に教えてもらうので、大丈夫です。あの人、あれで魔法の達人なんですよ」
「そ、そうか。わかった」
あいつに教わるというのはそこはかとなく不安だが、仮にも神官はエリートだし、教養のない俺が口を出すのも良くないか。
しかし、本当に給料の使い道どうしようか。
「クラリス、そろそろ行こうぜ」
「あ、ああ、クラリッサにもよろしく言っておいてくれ。また会いに来るよ」
「わかりました。姉も喜ぶと思います」
俺たちはレイアと別れて、バイクで走り出した。
荷物の集積所で以来の荷物を受け取って、目的地へと走り出す、
「この辺に来るのは、初めてです」
背中のクラリスが周囲を見渡し、そう言った。
確かにこいつの行動範囲を推察するに、こちらの方には来ないだろう。
「こっちは、スラムがあった居住区画と違って、工場や研究棟がある場所だからな。
その境が、ほらあれだ」
「わあ!! キレイだ!!」
ちょうど、遠くにバカでかいエメラルドの塊が見えた。
「あれが碑文公園だ、あのエメラルドの塊があと世界に6つ存在するらしい。
あれは別の場所から研究目的で移設された物だな、あれに書かれた碑文の解読は昔の学者の悲願だったらしい」
「もう解読されたんですよね?
なんて書いてあるんです?」
「え? さあ、俺は興味なかったし。
結構長い条文で、設計図みたいな部分もあるらしいからな」
「へぇ、そうなんですか」
クラリスもすぐに興味を失った。コイツ勉強できなさそうだしな。
「でもあれ、あんなところに置いておいて大丈夫なんですかね。
削って持って行ったりするひとも居そうですけど」
「あれ、壊れないんだよ、今のところ人類がどんな手段を用いても削ることすらできてない。
組成はエメラルドのそれと同じらしいだけどな、説明不可能な硬さらしい」
「へぇ~すごいですねぇ」
クラリスがまるでおのぼりさんみたいで可笑しかった。
そうして、俺たちは聖碑文大学の敷地へとやってきた。
学生たちが敷地を歩いているのを、クラリスは物珍しそうに見ている。
「どうした、クラリス」
「いえ、私も普通の人生だったら、彼らみたいに学生生活をしてたのかなって」
「お前の学力で大学に入れるのか?」
「そんなこと言わなくてもいいじゃないですか!!」
クラリスはぷんすかと怒ってたが。
「じゃあ学生気分だけでも味わわせてください」
とか言って、俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
こいつ、自分の魅力わかってないのか? 無自覚だとしたら相当だぞ。
「お前、学生生活を何だと思ってんだよ」
「えへへ」
まあ、こいつが嬉しそうだから何でもいいか。
「シノノメ教授ですか? お届け物です」
俺は受付で教授の研究室の場所を聞いて、そこへ向かった。
教授たちの研究室が並ぶ建物の一角に、目的の人物は居るらしい。
「はぁい、なにか御用ですか?」
中から出てきたのは、いかにも身だしなみに無頓着の女教授だった。
教授というからにはいい年だと思ったが、かなり若い。
「お届け物です、サインお願いします」
「はい、どうぞ」
教授が端末を操作すると、こちらの端末に受領のサインが送られてきた。
「それじゃあ」
「あ、ちょっと待ってください!!」
「まだなにか?」
「実は、自分、魔王ローティ様の四天王をやっておりまして、お話を伺いたくお願いします」
俺はステータス画面を開いて、名前の所の称号欄を示した。
<四天王ダークライダー>、とそこには書かれている。正直恥ずかしい。
「なるほど、汚いところですがお入りください」
ステータス画面は偽れぬ神の恩寵、教授はすぐに信じて俺たちを部屋に入れてくれた。
「それで、私になんの用でしょうか?」
室内に入ると、彼女の雰囲気が一変した。
不健康そうな研究一筋といった女性が、新進気鋭のキャリアウーマンのように人当たりが良くなったのである。
「……そちらが素ですか?」
「ええ、これでも悪い男に引っ掛かりやすくて。
なるべく地味で目立たない女のふりをしてます」
「なるほど」
「それで、魔王様の側近がなにを聞きにいらしたのですか?」
「はい、教授はあの宇宙船スターゲイザー号の元乗員だったと伺ってます」
何かの雑誌で、彼女がそう紹介されているのを見た覚えがある。
「はい、そうです」
「内紛があったと聞きました、当時の状況をお聞きしても良いですか?」
シノノメ教授は、俺の質問に目を伏せた。
「……今となっては遠い思い出だと思っていますが、もう八年前にもなります。
宇宙の果てが、我々の想像よりもずっと小さいことはご存じですよね」
「ええ、この世界は、女神メアリース様の箱庭だった、と」
「はい。我々は、宇宙の果てである、壁を観測しました。
それを観測した時にはもう、激突は避けられない状況だったのです」
「なるほど」
それは、悲惨な状況だ。
「当時、四代目の船長の息子が、まあ死者を悪くは言いたくないですが、愚鈍な人物でした。
彼が混乱のどさくさに紛れて人々を扇動し、好き勝手始めたのです」
これは俺も、昔見たドキュメンタリー番組で見聞きした内容と同じだ。
「その混乱を治め、台頭したのがシキ様であると」
「はい。シキ様が指揮を執り、内紛を鎮めてくださったのです。
それどころか、地球に戻ってからは私財をなげうって教団の再建に尽力してくださったそうで。
私も当時の船員として、一碑文教団の信者として誇らしく思ってます」
「教授は、シキ様とお会いしたことは?
それ以前の彼と会ったことはありますか?」
「いえ、私は当時無名のワープ技師だったので」
「そうですか。わかりました」
うーむ、どうやら嘘は言ってなさそうだ。
彼女の年齢で、八年前にただの技術職員だったというのは本当だろう。
「聞きたいことはそれだけですか?」
「はい、お手数おかけしました」
「いえいえ、こちらこそお茶も出せず」
「お気になさらず」
俺は今度こそ、教授に挨拶をして彼女の研究室から去ったのだが。
「おっと、悪ぃ」
廊下の曲がり角で、長身の男とぶつかりかけた。
いかにも成金みたいな派手なスーツに、ゴテゴテの宝石の指輪やピアスを付けた、歩く金塊みたいな絵に描いたようなチャラ男だった。
「気をつけて、レイジさん」
「ああ、しかし今の男……」
「レイジさん?」
今の成金チャラ男、見間違いじゃなければシノノメ教授の研究室に入っていったような。
見間違いか?
「どうしたんですか、レイジさん」
「いや、何でもない」
俺はもう一度、教授の研究室を見やる。
そのドアのプレートにはこう書いてあった。
『召喚・転移学教授
リネア・シノノメの研究室』と。
俺たちは用も済んだし、大学から立ち去ったのだった。
「男の臭いがしたぞ、なにやってたんだリネア。なぁ?」
「あッ、あッ、違うんです、ゼロ様!!」
「二人の時はそんな無粋な名前は呼ぶなって言ったろ。
俺様のことはファイ様と呼べ、そう言ったよな?」
「ダメです♡ ここは大学なんです♡ 私にも、表の顔が♡」
「俺たちに違和感を抱かなくなる結界を張った。だから安心して喘げよ、お仕置きだ」
「そんな♡」
人知れず、学び舎の中で女の嬌声が響き始めた。
そもそも、私のドッキリに気づいてくれる人いるんですかね(震え声
せっかくハーメルンで書いてるので、ここでしか出来ない事をやりたい作者なのでした。
でも普通あんなこと言われたら入れたくなくなるのが人情だと思ってました。
てっきりリェーサセッタが一番となるかと。その前提で展開を考えていたので、良い意味で予想外でした。
せっかくなので、隠しコマンド入れないと仲間にならないような隠しキャラを投入しようと思います。
置き伏線も準備万端なので、思い切って行きましょう!!
ではまた次回!!
あと何回か幕間というサイドストーリーが進みます。一応掲示板が本編なので。
どの女神がお好み? 人気投票兼ルート分岐アンケート
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文明の女神メアリース
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邪悪の女神リェーサセッタ
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神賽と天秤の女神アンズちゃん