ポンコツ勇者 VS クソガキ魔王 VS ダークライダー   作:やーなん

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幕間「ある勇者の原点」

 

 

 

 世界名、アースエッダ。

 その構造は滝のように縦長で、上から下へ行くほど大地が広がっている。

 

 そんな世界の最下層、その片隅の森の奥に、隠れるように小さな村が存在していた。

 その村の名前は、存在していない。

 そんな村に、クラリスは産まれた。

 

 そして、そこに暮らす人々は特徴的だった。

 

「お師匠様、今日もお稽古をお願いします!!」

「ああ、よく来たね。クラリス」

 

 幼きクラリスが師事していたのは、一番近い国の元騎士団長。

 彼は毎日のように、彼女に剣術の稽古を付けていた。

 

「こりゃッ、クラリス!! 

 魔法の修業から逃げるでない!!」

「お勉強はいやだぁ!!」

 

 剣術の稽古が終われば、大陸一の賢者と称された老人に首根っこを掴まれ、連れられて行く。

 その姿を、村人たちは微笑ましく見ていた。

 

 かつて、この世界に一つの予言が齎された。

 

 ──運命の子が勇者となり、災厄の王を打ち破るだろう、と。

 

 その運命の子こそが、クラリスであった。

 この村は、彼女を密かに育て上げる隠れ里だったのだ。

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「ああクレアか」

 

 賢者にこってりと魔法の理論を叩きこまれたクラリスは、妹の声に顔を上げる。

 その少女はクラリスそっくりの顔をしていた。

 彼女たちは双子だったのだ。

 

 当初、大人たちは双子の誕生に困惑を隠しきれなかった。

 クラリスと、妹のクレア。どちらが運命の子なのかと。

 

 だが、妹のクレアは魔法の素質に秀でていたが病弱であり、姉のクラリスは著しい武芸の才能を示した。

 大人たちは、クラリスを勇者として育てることにした。

 

「まったく、クラリスときたら。

 クレア、お前が姉を支えるんじゃぞ」

「はい、おじい様!!」

「ちぇ、クレアばっかり」

 

 クラリスは叡智に優れた妹を羨んでいた。

 だが、彼女は確信していた。いずれ二人で、来たる予言の災厄の王を倒すのだと。

 

 そう、思っていたのだ。

 

 

 ある日のことだった。

 

「こりゃ!! クラリス!!」

「ひえぇ!?」

 

 巻き割をしていたクラリスは、魔法の師匠の声に飛び上がった。

 

「あはは!! お姉ちゃん、私よ私!!」

 

 彼女が振り向くと、いかめしい老人の姿がドロンと消え、最愛の妹の姿になった。

 

「どう? 最近覚えた変身魔法よ、びっくりした?」

「なんだ、クレアだったのか、びっくりしたー」

 

 妹のイタズラに、クラリスはにこやかに笑った。

 この村の平穏はこうして、予言の日まで続くと思われていた。

 

 

 ────カンカンカンッ!! 

 

「敵だ、敵襲だ!! 

 あ、あれは、あれはまさしく、予言通り災厄の王が来たんだ!!」

 

 村人たちが、鐘を鳴らして叫んでいた。

 

「馬鹿な、早すぎる!! 

 まだクラリスが災厄の王と戦うには幼すぎる!!」

 

 完全武装した元騎士団長が、呻くように言った。

 

「お前たち!!」

 

 二人の元に、彼女たちの母親が鬼気迫る様子でやってきた。

 

「お前たちだけでも逃げなさい!! 

 今のあなた達では、あの災厄の王──魔王には勝てない!!」

「お母さん……」

「あなた達の立派な姿、見られなくてごめんなさい」

 

 母親は二人を抱きしめると、武器を手に村の入り口へ向かった。

 その直後だった、のどかな村に巨大な砂嵐が発生したのは。

 

「今から逃げても、間に合わない!!」

「ど、どうしようクレア!?」

 

 頭脳労働は、いつも妹の担当だった。

 イタズラするときも、稽古をさぼる時も、ワガママを言う時も。

 

「大丈夫だから、私の言う事きいてお姉ちゃん。

 まず、地下倉庫に武器を取りに行こう」

「う、うん!!」

 

 二人は、そうして村の地下倉庫へ走った。

 何の変哲もない村を偽装する為、地下倉庫は完全に武器庫として使用されて隠されていた。

 

「お姉ちゃん、先に行って。

 私、ちょっと走って疲れちゃった」

「わかった、クレアの分まで武器を取ってくるね!!」

 

 クラリスはその言葉に頷き、先に武器庫へと彼女は足を踏み入れた。

 

「よし、これとこれで、オッケー!! 

 クレアー!! これで私達も戦えるよ!!」

 

 しかし、武器庫の扉は閉ざされていた。

 扉の僅かな覗き穴から、俯いたクレアの姿が見えるだけだった。

 

「クレア、クレア!?」

「ごめんね、お姉ちゃん」

 

 クレアは、呪文を唱えた。

 その姿形が、より姉へとそっくりとなった。

 

「お姉ちゃんが勇者となって、世界を救って」

「クレア、ウソでしょ、冗談止めてよ!!」

 

 そして、クラリスは全てを見ていた。

 

 

「私こそが、運命に予言された勇者クラリス!! 

 おのれ、魔王め!! 村の人たちをよくも無残に殺してくれたな!!」

「ぷッ」

 

 憎しみを滾らせるクレアを、砂嵐の中心に存在する災厄の王は嘲笑った。

 見た目だけなら、その姿は二人と大して変わらない。

 魔王、そう称される存在なのに、人間そっくりだった。

 竜のような、頭部の一対のツノを除いて。

 

「お前、それで誰に成りすましてるつもりなの? 

 まあいいや。聞きたいことは一つだけ。

 ──お前は姉か、妹か?」

「この世から消え去れッ、魔王!!」

「だからさぁ」

 

 勇猛に魔王に挑んだクレアは、木っ端のようにあしらわれた。

 そして、魔王の矮躯がクレアの頭を踏みにじる。

 

「聞いてんじゃん、姉か妹かって。

 双子なんだろ、あんたら。こっちは遊びじゃないんだ。

 質問に答えるなら、あんたらどちらかは見逃してやってもいい」

「わ、私が、姉だ!! 

 姉のクラリスだッ!! 妹に手を出させはしないッ!!」

「そうかぁ、じゃあお前はハズレかな」

「────え?」

 

 

「我が主上が、唯一恐れる魂の持ち主は必ず双子の弟か妹として産まれる。

 それを殺すのが我ら魔王一族の赴任先の一番最初の仕事。

 よかったな、お前は見逃してやるよ」

 

 クレアの頭にのしかかった、万力のような足がどけられる。

 

 そして、魔王とクラリスの眼が合った。

 ゆっくりと、魔王は笑みを浮かべた。

 

 そして、彼女の死の一歩目を、クレアがその足に抱き着いて阻止した。

 

「ご、ごめんなさいッ、うそつきました!! 

 私が、私が妹ですッ、だから、だから、お姉ちゃんだけは」

「……最初からそう言えよ。これで面倒ごとが一つ片付く」

 

 魔王は軽くクレアを足で振り払うと、その右手を踏みにじってその体を蹴り上げた。

 

 ぶちり、と虫の手足を引きちぎるように簡単に、クレアの右手が胴体から離れてしまった。

 

「クレア!! クレアぁ!!」

 

 どんなにクラリスが扉を叩こうが、頑丈な扉はびくともしない。

 

「お……お願いします、ねえちゃん、おねえちゃんだけは」

「言ったじゃん、お前の姉なんてどうでもいいハズレなんだって」

 

 もはや出血が酷く、まともな意識も残っていない少女は、うわ言のように姉の無事を願った。

 

「それじゃ、はい。仕事完了」

 

 果物が踏みつぶすされるように、真っ赤な血の花が魔王の足元に咲いた。

 

「それにしても、この展開ってまるでこの前に兄貴と遊んだ古典のゲームの序盤みたいじゃん♪ 

 きゃはは!! 帰ったら兄貴に自慢しちゃお!!」

 

 砂嵐が消える。災厄の王が、去った。

 

 村の生き残りは、クラリス一人だった。

 

「魔王ッ、魔王!! 魔王おおぉおおおお!!」

 

 その日、彼女は胸に、魂に刻み込んだ。

 あの憎むべき、怨敵の姿を。

 

 その相手を討つべく、彼女は旅を始めた。

 だが、魔王と二度目の戦いは彼女を待ってはくれなかった。

 

 その約一か月後、この世界アースエッダは砂漠に満ちた不毛の世界と化した。

 

 クラリスの旅は、熱砂の砂漠にて終わると思われた。

 

 

 

 

「こ、ここは?」

 

 気が付くと、クラリスはベッドに寝かされていた。

 周囲を見渡すと、見たことも無い材質の壁や天井に覆われていた。

 そして、彼女のベッドの脇には、未知の機材が置かれていた。

 

「気づいたかい?」

 

 声の方に、クラリスが顔を向けると、そこには気だるげな白衣の女が立っていた。

 

「……あなたは?」

「私の名前は、さて、なんだったかな」

 

 白衣の女はおどけるように肩を竦めた。

 

「ここでは、博士で通っている。それで納得してくれたまえ」

「じゃあ、ここはどこですか?」

「君にはなじみが無いだろうが、次元航行船だよ。

 より正確に言うなら、レジスタンス第170支部と言ったところか」

 

 博士は順番に説明した。

 ここに居るのは、魔王一族に滅ぼされた世界の生き残り、だと。

 

「滅ぼされた? じゃあ、私の故郷は!?」

「現実は、早めに直面した方が良いだろう」

 

 博士が虚空で指をスライドさせると、モニターが空中に投影された。

 

「これが、君の故郷だよ」

「そんなッ!?」

 

 クラリスは、自分の世界の姿など、見たことは無かった。

 だが、自然豊かで美しい世界の筈だった。

 

 モニターに、そこにあったのは、砂場だった。

 元の姿が想像できないほど、枯れ果てた砂地のみが残されていた。

 

「なんで、どうして、魔王はこんなことを!!」

「私が以前尋ねたところ、仕事だそうだ」

「仕事、これが?」

「魔王は、所詮神々の遣いに過ぎない。

 我らの真の敵は、我らが造物主たる女神メアリース。

 そして、魔王を産み出す邪悪の女神リェーサセッタ」

 

 博士は、胡乱な視線でクラリスを見やる。

 

「君が我々と共に戦うのなら、そのすべを与えよう。

 もし、そうでないなら、安全な世界へ送り届けよう。

 君はどちらを選ぶかね?」

 

 クラリスの答えは、決まっていた。

 

 

 

 ~~~

 ~~~~

 ~~~~~

 

 

 クラリスは志を共にする仲間たちと共に、訓練に励んだ。

 

 レジスタンスなどと言っても、やることは訓練ばかりだった。

 むやみやたらに民間人を襲ったり、感情のままに女神の管理下の世界を攻撃するとかは、博士が許可しなかった。

 

「我らは魔王とは違う。

 あの家畜どもを殺したところで、何の意味もない。

 女神どもに痛打を与えることも出来ない。

 我らの第一目標は、魔王一族の排除だ。そのために君たちを育てているんだ」

「それでも、連中の供給源を断つことに意味はあるはず!!」

「くどい。君たちは元の世界で勇者と称えられる素質があったはずだ。

 それにふさわしい誇りと尊厳を持ちなさい。

 それを失った時、君たちは大義を失うのだから」

 

 抗弁する仲間に、博士は冷徹に諭した。

 クラリスに彼女の言うことは全て理解できなかったが、それは尊く大切なものだと思ったのだ。

 

 

 ある時、珍しく博士は酒を飲んでいた。

 

 レジスタンスのメンバーは、基本的に死人扱いだ。

 死人に神の恩寵を受けられるはずも無い。

 だから水も食料も貴重品。お酒なんて、本当に珍しい。

 

「博士、博士はどうしてレジスタンスになったんです?」

「……復讐だ。復讐以外に無いよ。我々レジスタンスにはね」

 

 自分の事を全く話さない博士の思い出話を、クラリスは黙って聞いていた。

 

「私の故郷は、偉大なる魔王様の元で類稀なる繁栄を与った。

 その文明レベルは何と95だ。君らには想像できないだろうが、メアリース様がこれ以上の発展は見込めないと太鼓判を押すほどだ」

 

 クラリスにとって初めての事だった。

 あの憎むべき女神を、様を付けて彼女が呼んでいるのは。

 

「我らは巣立ちの時を迎え、新たなる地で人々に叡智を与えるはずだった。

 だが、その前に我らに無限大の恩寵を与えて下さった大いなる御二柱の“聖地”へと巡礼するはずだった。

 だが、それは、それだけはならぬ、と!! 

 ……我が故郷は、一瞬のうちにメアリース様の手によって滅ぼされた。

 たまたまよその世界に出かけていた、私のような者たちを除いて」

 

 博士は泣いていた。彼女は泣き上戸らしかった。

 

「我らが敬愛する魔王様も、あれほど優しく偉大だった、我らを導いてくださった大いなる御方さえも!! 

 自らの母神の手によって粛清された!! 

 あれが、あれが親のすることなのかッ、許せない、赦せない!! 

 私が、私達がッ、魔王様の仇を討つのだ!! あの我々を舐め腐った女神に、目に物を見せてやるのだ!!」

 

 クラリスはぐずぐずに泣いている博士をずっと慰めていた。

 信じていたからこそ、神として尊敬していたからこそ、裏切られた時の悲しみが彼女を支配していたのだ。

 彼女が自分の事を話さなかったのも、士気に関わるからだった。

 

「だが、もうすぐ我らの船も、目的地へと辿り着く」

 

 博士の瞳は、虚空の先を見つめていた。

 

 

 

 ~~~

 ~~~~

 ~~~~~

 

 

「あれが、見えるだろうか。

 あれこそが、我らの文明が観測した巨大な障壁だ。

 あの奥には、神々も恐れる窮極の叡智が眠っているとされる」

 

 次元航行船は、目的地にたどり着いた。

 彼女らが怨敵と定める、二柱の女神が産まれた“聖地”に。

 

 その奥には、見上げても大きさが把握できない巨大すぎる“門”があった。

 

「これから、私はあの巨大な障壁の向こうへと向かう。

 伝承では、あの先に行った者は誰ひとりとして帰ってこなかったと言う。

 だから諸君は、もしもの場合に備えて定時連絡が無ければ、転移装置で各々の目的の世界へ行きなさい」

 

 博士の目的は、あの“門”の奥へ行って神々に対抗する叡智を持ち帰ることだった。

 そして、それを元にして今度こそ神々に戦いを挑むつもりだった。

 だが、それは叶わぬと他ならぬ彼女は何となく察していた。

 だからこれは別れなのだ。

 

「皆には、我が文明が生み出した最高峰の武装を与えている。

 それがあれば、完全な生命たる魔王とて殺しえるだろう。

 我々の叡智が、神々の最高傑作にどこまで対抗しうるか見ておきたかったが……」

 

 博士は、そちらに目配せした。

 それに気づいた、彼女が育てた勇者たちも臨戦態勢に入った。

 

「残念だが、ここより先は我が母の命にて行かせるわけにはいかない」

 

 何もない、“聖地”の地平。

 そこに悠然と佇むのは、一人の魔王。

 

「まさか、あなた様が出てくるとは。

 偉大なる“マスターロード”ッ!!」

 

 その名に、誰しもが緊張が走った。

 魔王一族序列一位、偉大なる“マスターロード”。レジスタンスの最大目標の一人だった。

 

「そういう君の顔は覚えがある。

 我が弟の四天王として、良く支えてくれたはずだったね」

 

 それは皆にとって、予想外の言葉だった。

 

「もう、昔の話だ。

 あなたにとって、我が主が昔の事のように!!」

「あの子の事は、本当に残念だった。

 だが、あの向こうに行ったところで、君の欲するものなど何もない。

 我が主上や我が母に対する失望が、繰り返されるだけだ」

 

 怒れる博士に対し、魔王の頂点は痛まし気に彼女を見ていた。

 

「慈愛深い魔王、などと呼ばれているが、ここは本来の悪役に徹しようか。

 ──憐れな子よ、お前も我が弟の元へその魂を送ってやろう」

「お前たちッ、早く転移しろ!!」

 

 博士が、背後の仲間たちにそう声を掛けた。

 

「遣る瀬無いものだ。

 お前が見逃されていたのも、全ては主上の意思。

 お前がやってきたことも、全て主上の望み通りに過ぎない」

「私の意思は、私のモノだ!! 

 神が勝手に、私の尊厳を語るなッ!!」

 

 その博士の怒声を皮切りに、爆音が鳴り始めた。

 クラリスたちは船に戻り、武器を手に転送装置へと乗り込んだ。

 

「各々の世界の常識については、現地の支援組織に教わって。

 多分、今生の別れだと思うけど、みんな元気で!!」

 

 装置を動かしたクラリスの仲間が、涙ながらにそう言った。

 彼女らはこれから、各々転移先で魔王へ挑む。

 勝っても負けても、生きて帰ることは出来ない。

 

 こうして、クラリスはまた家と家族を失った。

 

 

 

 §§§

 

 

「ここが、あの魔王のいる世界……」

 

 眼を開けると、クラリスにとってはまさしく別世界だった。

 乱立する高層ビルの数々。

 夜の街に、所狭しと並べられたネオンの看板。

 人々は雑多に、そして彼女の想像できない人数がひしめいていた。

 

「……はやく、支援組織に合流しないと」

 

 偽装用のIDが内臓された腕輪を確認し、クラリスは高層ビルの上を飛んでまわった。

 

 だが、すぐに上空に真っ赤な警戒アラートを示す映像が投影された。

 

『警報、警報、重大なレギュレーション違反を検知しました。

 大規模破壊兵器の可能性を考慮し、市民の皆さんはシェルターへ避難してください』

「もう見つかったの!?」

 

 予想外の早さだった。

 こういう事態に、クラリスはあわあわし出した。

 

「ど、どうしよう……。

 あ、そうだ、どうせ出てくるのは魔王の手下なんだから、全員倒せばそのうち魔王が出てくるか!!」

 

 そして彼女はアホだった。

 

「ん? あれって!?」

 

 住人は慣れたもんだと避難はすでに完了していた。

 その眼下を、なぜか見覚えのある人影が疾走していた。

 

 この時、彼女からバイクで逃げる男は目に入らなかった。

 

「あれは、あいつはッ、あの時の魔王!!」

 

 かさぶたのように塞がったクラリスの傷から、憎悪が吹き上げた。

 

 魔王が停止した瞬間を狙って、その頭蓋に一撃を喰らわせた

 

「うん? いま何かした?」

「んぎゃあぁぁ!?」

 

 その衝撃で、周囲の物体は吹っ飛ばされた。

 

「魔王!! 魔王ローティ!! 

 ここで会ったが十年目!! あの時の屈辱と、借りを返す日をどれだけ夢見たことか!!」

「うーん? どっかで会ったっけ? 

 多分弱すぎて覚えてないかな♪」

「ほざけッ、今日が貴様の最期だ!!」

 

 そして、クラリスは魔王とぶつかった。

 その結果は痛み分けだったが、戦闘後に彼女は気づいた。

 

「あ、あれ、腕輪どこ……?」

 

 偽装IDの腕輪が、さっきの魔王との戦闘でぶっ壊れてどこかに行っていたことに。

 あれが無くては、支援組織と連絡も取ることもできない。

 

「これから、どうしよう……」

 

 全くの知らない世界に放り出された彼女は、星の見えない夜空を見上げて途方にくれるのだった。

 

 

 

 




最初の小説パートは、主人公にしようかと思いましたが、ここは勇者のバックボーンを書いた方が良いのでは、と思ったのでこちらにしました。
彼女の情報は不足気味ですからね。これが彼女のオリジンです。
言うまでも無く、冒頭のアレは国民的某RPG四作目のオープニングのオマージュです。私が最初にやったシリーズの作品なので思い入れのある作品です。

次回辺りは今度こそ運び屋視点になると思います。
それではまた次回。

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