KING MEETS LITTLE QUEEN 作:ジャンボス
ランカはゴジラをまじまじと見た。
ランカはこの「生物」を見た事が無い。バジュラ本星に降りた後、フロンティア政府は様々な調査を行いこの星の環境やそこに住まう動植物の事を徹底的に調べた。だが彼女が知っている限りその「生物」の事については、公表されてるデータには記載されてはおらず、もし医者に診せれば新種の生物として研究所に連れて行かれるのは必至だろう。そうなれば彼は様々な実験をされ死んだ後は解剖される事は明白だ。
人間の都合で彼の人生が奪われる事をランカは望んではいない。
彼女は自分が尊敬する歌手のシェリル・ノームが過去にバジュラの「V型ウィルス」を直接打ち込まれ、プロジェクト・フェアリーの被験者になった事を知っている。
それは凄まじく過酷でシェリルの前の何人もの被験者も耐え切れずに死に至ったと聞いた。
そしてギャラクシーはランカの歌にも興味を示し、彼女を拉致並びにバジュラを支配下に置こうとした。
彼女はその時の事を今も鮮明に憶えてる。
ランカはゴジラをそんな目にはあわせたくなかった。
そのためランカはゴジラを匿かくまう事にした。この事は決してバレてはいけない、彼女はそう決めたのだ。
もちろんこの事がバレればフロンティア船団の法律に違反している事になり、スキャンダルになりかねない。
しかし、それでも何とかなると彼女はそう信じる事にした。
何より今のゴジラを見てランカはかつて一緒に過ごしていたバジュラの幼生である「あい君」を思い出していた。
彼女が辛い時に常に彼女を慰さめていたのは、あい君だったが、今はもう他のバジュラの群れと共にこの星から去った。
「君、ひとりぼっちなの?」とランカはゴジラに話し掛けた。
ゴジラはこの少女が何を言ってるのか理解出来ないが、少なくとも敵意は無い事は理解できた。
「もし仲間とはぐれちゃったなら、私と一緒に暮らさない?」と彼女はゴジラに提案した。
彼にプライドがあるかどうかは分からないが、本来(僅かな例外を除いて)ゴジラは群れる様な事はしない。
クマやトラの様に繁殖期以外(ゴジラがどの様に繁殖するのかは分からないが)では基本的には単独で暮す。
しかし、今の状況では彼はあまりにも非力だった。自分がどこにいるのかさえも分からない。無論、それだけだったら彼は安全な場所を自力で探すだろう。
彼をここに止まらせたいと思った理由はランカの「歌」だった。
彼女の歌を聴いた時、不思議と心が落ち着いた。
何故かは分からない。
だがここに残りたいとそう思った。
そして、ゴジラは特に離れるみたいな事はせず、床に腰を下おろし居座いすわる事をランカに示した。
「フフ、分かったわ。それと名前を考えないとね」とランカはゴジラの名前を考えていた。
この「ゴジラ」という名前も彼自身の本名ではなく、人間が勝手に付けただけである。
故にゴジラには名は存在しない。
するとランカは「じゃあ、君の名前は今日から『クロちゃん』にしようか!」と彼女は笑顔でそう伝えた。
「全身が黒いから、クロちゃん!」と嬉しそうにゴジラ、(及びクロちゃん)をそう呼ぶ事にした。
「よろしくね、クロちゃん!」とゴジラを抱きかかえた。
「それで、その『クロちゃん』はどうしてるんだ?」と彼女の友人で、スカル小隊に所属しているミシェルはランカに聞いた。
それと同時に彼の相棒(かつ恋人にあたる?)クランも「あの生物をバレずに世話するのは大変なんだぞ。特にお前の兄貴には絶対に隠さなければな」とランカに進言した。
「ごめんなさい。でも、相談できる人ってミシェル君達にしかいないし....」
ランカは匿っているゴジラの事を数名の人物にしか伝えていない。
「確かに....、隊長にバレたら大変な事になりますね」とミシェルの後輩にあたるルカもクランの言い分に賛同していた。
「うん...、でも、あのままほっとくのは出来なかったし....ごめんね、みんなに余計な事を考えさせちゃって」
「そんな、ランカさんは悪くありません。助けようとしたのだから別に謝る事はありませんよ!」とランカのマネージャーを務つとめているナナセは彼女のフォローをした。
「ナナセさん、ありがとう」とランカはナナセに礼を言った。
「だから、お願い。この事は絶対お兄ちゃんとかには内緒にして!」とミシェル達に懇願こんがんした。
「まっ、『超時空シンデレラ』からのお願いとあっちゃ断る訳にはいかないな」とミシェルはランカの願いを受諾じゅだくした。
「仕方ないな。まあ、私もあの生き物にはかなり興味がある。新種の生物ならば尚更気になる」とクランも賛同した。クランはメルトランディで構成されてる「ピクシー小隊」の隊長を務め、また優秀な生物学者でもある。故にゴジラの事が気になるのも研究者としての性分だろう。
「私も協力します!」とナナセは迷わず即答した。
「じゃっ、僕も...!」とナナセに続いてルカも答えた。
「ありがとう、みんな!」
こうしてミシェル達はランカと秘密を共有する事になった。
「ところでランカちゃん....、シェリルはどうしてる?」とミシェルはランカにシェリルの容態について聞いた。
「....まだ目を覚ましていない。時々口を動かしているのは分かるんだけど....」とミシェルに伝えた。
「....そっか、今度オレ達も彼女の見舞いに行くから」
「うん、ありがとうね」とミシェル達に礼を言った。
その時の彼女は少し悲しそうに見えたが、ミシェルは敢えて言わない事にした。
「意外ですね。ミシェル先輩がすぐにOKを出したのは」
「まあな」とミシェルはルカに軽く答えた。
「今のランカちゃんの事を考えたらな....」
「そうかもな....、今アイツには私達には想像できないほどのプレッシャーが掛かっている。シェリルは未だに目を覚ましていない。それにアルトの奴も...」とクランは今のランカの状況を心配していた。
ナナセを除いてこの三人はランカとシェリル、そしてアルトの恋の行方を知っている。
アルトはシェリルを選び、ランカはそれを受け入れた。
こうして長く続いた三角関係(トライアングラー)は終わりを迎えた。
しかし、シェリルに告白した後アルトはバジュラとともにフォールドし、シェリルは昏睡状態になった。
それと三人は会った事はないがランカには一緒にいたバジュラの幼生がいた。
その幼生も他のバジュラとともにこの星から去って行った。
彼女は何事も無いかの様にいつもの笑顔で仕事をこなしていた。しかし相当な無理を強いてるのを三人を含むランカに親しい人達は分かっている。
今の彼女には少しでも支えが必要だとミシェル達は分かっていた。
(たくっ、アルトの奴....。早く帰って来い。ランカちゃんもシェリルもお前を待ってるんだからよ....)