KING MEETS LITTLE QUEEN 作:ジャンボス
今日は第8話を投稿します!ランカのライブの様子を上手く表現できていたらいいなと思います。またゴジラの感情や考え方も前回と少し違っていきます。これはゴジラが「ゴジラ本来の役目」を思い出しつつも、迷っている様子を表現しているつもりです(汗)そのため最初の頃と矛盾を感じてしまうかもしれませんが、何卒ご了承のほどよろしくお願い致します。
パチッ・・・。
ゴジラはゆっくり目を覚ました。
目の前に広がるのは、暗闇・・・、に包まれたランカの部屋だ。
深夜2時。まだ人は寝ている時間だ。
だが目が覚めてしまったゴジラはゆっくり体を起こした。
そして、自分の横に寝ている少女を見た。
少女は別の世界では(知らないとはいえ)、「怪獣王」と呼ばれている生物が近くにいるにも関わらず静かに眠りに付いていた。
ゴジラは相変わらずランカの事が分からなかった。
何故こうもこの人間は自分を恐れないのか。
ゴジラはそんな疑問をまだ抱いていた。
そして、ゴジラがランカの顔をじっと見つめている時、ランカの目から水が滴り落ちてきた。
水は目から眉間辺りを流れ落ち、彼女の枕に落ちた。
水が落ちた場所は僅かに濡れていた。
ゴジラはそれが何なのか分からなかった。
すると、ランカの口から声が漏れた。
「アルトくん・・・。シェリルさん・・・」
それは小さく、歌っている時と比べたら、とても弱々しい声だった。
しかし、この声が何かを呼ぶような声だというのはゴジラには何となくだが分かった。
次にゴジラは目から出た水に興味を持った。
それは「涙」というものだが、ゴジラには当然それが何なのかは知らない。
ゴジラは顔をランカに近づかせ、涙の匂いを嗅いだが、特に匂いはしなかった。
そして今度は眉間辺りに流れてきた涙を指で掬い、今度はそれを舐めてみた。
しょっぱい。まるで海水のような味がした。
なぜこのような水を目から流すのだ?
ゴジラはますます、ランカを、いや、『人間』の事が分からなくなった
翌日・・・・。
7時頃に目が覚めたランカは目から出る涙を拭った。
(私、また二人の夢を・・・・)と自分が見た夢を思い出し、少し悲しい気持ちになった。
ランカは夢の中でアルトとシェリルが彼女に向かって優しく微笑み、そして彼女の方に手を差し伸べるのを何度も見た。
ランカはそれが嬉しくて二人の方へ駆け出すも、そこでいつも目を覚ますのを繰り返していた。
(何であの夢ばっかり見ちゃうのだろう・・・、本当じゃないのは分かっている筈なのに・・・)
少し落ち込んだ後、彼女は周りを見る。
(あれ? クロちゃんは?)と周りを見渡し、ゴジラがいない事が分かった。
すると、扉が開いていたのを見つけた。そこでランカはゴジラが部屋の外へ行ったのが分かった。
(どっ、どうしよう!? 部屋を出ちゃった!)と急いでゴジラの跡を追った。もしここで兄のオズマに会ったら、叱られるどころではない。
幸いオズマはまだ帰ってきてないが、突然帰ってくる可能性もある。
急いでリビングの方へ向かうと、ゴジラは部屋の窓から外の景色を眺めていた。
ランカはそれを見てゴジラが寂しそうに(実際はそうではないが)見えた。
「もしかして、外に出たい?」とランカはゴジラに聞いた。
ゴジラはランカの方を振り返る。言葉は理解できないが、長くいると顔の表情などから意図を読み取る事は出来るようになった。
「ゴメンね。今日はお仕事があるから、外に連れていけないの。だから、今日は我慢してね?」
ランカはゴジラにそう言い聞かせた。
ゴジラ自身は言っている事は全く理解できないが、表情を見ると、自分は外に出ることは叶わないというのは察した。
しかしゴジラは外に出たいが、寂しいのではなく、一刻も早くここから出るためだ。
いつまでもここにいる訳にはいかない。
しかし、どうやってここを出る?
ここを出てその後はどこへ向かうのだ?
ここから海は見える。まずは、そこへ逃げるか?
ならばやはりここを出るべきだが、出方が分からない。
ゴジラはランカのカバンに入れられて外へ出たため、自分で出る方法を知らない。
何より、今の自分の体に起きた異変。これを何とかしたい。
今後もランカに抱えられて移動するのは、彼にとっても不便であり、窮屈なバッグの中に入れられるのは、かなりのストレスになる。
その時、ランカの携帯が突如鳴り出した。
「あ、お兄ちゃんからだ!」とランカは携帯に出た。
「もしもし、お兄ちゃん? 久しぶり! どうしたの?」
ランカはオズマに聞くと、突然「えっ!? 今日帰ってくるの!?」とランカは突然の事に驚いた。
「えっ? う、ううん。何でもないよ。ただあたし、ライブがあるから今日遅くなるけど。夕飯はどうするの? どこかで食べるの?」としばらく話しをしていた。
「うん、それじゃあね!」と言うと、笑顔で電話を切った。しかし、
「ど、どーしよう! 今日お兄ちゃん帰ってきちゃうんだ!」と焦りだすランカ。
(クロちゃんを家に置いていけないよ…。)
ランカは何とかゴジラとオズマが遭遇するのを避ける事は出来ないか思案した。
そして、結局は・・・・。
-ライブ会場・控室内-
(ごめんなさい、ナナセさん!)
ランカは心の中で謝罪した。結局彼女はゴジラを連れていくことにした。
ゴジラはまたもバッグの中に押し込まれる事に嫌気が指していた。
しかし、外に出るチャンスでもあったため、渋々バッグの中に入った。
「ごめんね、今日はちょっと家の中にいるのは不味いから、窮屈だけど我慢してね」
ランカは今回の事はナナセには伝えていない。いくらランカの願いを聞いてくれるナナセでもまたゴジラを外に連れ出すことには反対するだろう。しかし、オズマに見つかれば即アウトだ。
しかし、ランカの思いとは裏腹にゴジラは「如何にここから出るか」を考えていた。
この日は船団内での慰問ライブがあり、バジュラとの戦闘にて亡くなった兵士、一般人への弔い、同時に戦争で傷ついた人々を癒し、そして明日への希望を持たせるための大事なイベントである。そのためこの慰問ライブはチケット代をとらず、ネットでの無料配信も行った。
寄附金は全て復興へ使われ、ランカ自身これまでのライブのチケットの売上の半分以上をフロンティア船団の復興に充てた。また他にも、彼女が別の船団でも訪問ライブをやれば、船団同士の軋轢あつれきや衝突も少なくなり、更に外交がスムーズになって両船団の利益にもなる。
バジュラ、そしてギャラクシーとの戦争は多くの命を奪った。やっと得た新天地だがスタートは大変な時間と労力を伴った。今では着実に復興が進み、人々は一歩ずつだが前へ進んでいた。
ランカ・リーの存在はその復興の原動力の一つとして、だが、極めて重要な役割であることは確かである。
彼女とシェリルが命を懸けて歌ったことによりバジュラとの戦争を終わらせ、船団の人々を守り、バジュラとの和平、共存を可能にした。
ゴジラはそんなランカをバッグの中から見ていた。ライブに向けてランカはメークをしている最中で、彼女の周りには多くのスタッフが行き交っていた。
ゴジラは今までこれほど間近に人間の様子を見たことはなかった。
(あの人間達はあいつに何をしているんだ?)
ゴジラは徐々にだが人間の行動に興味を持つようになった。意味は理解できないがそれでも、見ていると少しずつ行動パターンが分かるようになってきた。
ゴジラから見ればランカはここの主的存在で、周りの人間達はランカに奉仕していると捉えていた。そのため彼女はここの上位個体であるとゴジラは認識した。
そしてそこにナナセが来た。
「もうすぐですね、ランカさん! 大勢の人があなたを待っていますよ!」
ナナセは興奮気味にランカに話した。
「う~ん、でも緊張するな。船団中の人が私の歌を聴きにくると考えると・・・」とランカは少し不安そうな声で話した。今までもライブはこなしてきてはいるが、それでもライブが始まる度に強烈な緊張感が襲ってくる。ある意味それは常に初心を忘れてはいないという心情でもある。
-ライブ会場・ステージ上-
ライブ開幕まで1分を切った。
いよいよライブが始まる時、彼女は幕の後ろにいた。この幕が上がれば、全てが始まる。冷や汗が流れ、呼吸も荒くなってきた。
この時の彼女の頭の中は、
(鼓動が激しくなっていく・・・・。
緊張で体が動かなくなる・・・・。
プレッシャーで押しつぶされそうになる・・・・。
余裕を持たなきゃ。
失敗したらどうしよう・・・・。
落ち着かないと・・・・。
怖い。
怖い。
怖い。)
そしてスタッフの一人から、「本番始まりまーす!」と声が上がった。
この時、彼女は瞬時に頭を切り替えた。同時に閉じていた目をカッと開き、その目は強い決意を秘めていた。それは昔の様な引っ込み思案だった頃の彼女ではない。一人のプロがステージに立っていた。
(さあ、怖がるのは終わり! 私はプロ!やれる事を全部やり切る!
後悔だけはしたくない!)
そして、大きく深呼吸した後、幕が上がった。
照明が彼女を照らし、ホログラムで彼女の衣装が華麗なドレスへ変わった。
そして、彼女のお決まりの一言が開始の合図だった。
「みんな、抱きしめてっ! 銀河の果てまで!」
-控室内-
ライブが開始された同時刻、ランカの控室にいるゴジラはモニター越しに彼女を見た。
当初ゴジラはランカが出た後、バッグから出て脱出をしようとした。
しかし、モニター越しからの突然の歓声がゴジラの足を止めた。
そこで見たのはゴジラから見ればあまりにも異様な光景だった。
多くの人間がランカに向けて声を上げ、手には光る棒を掲げながら前後左右に振った。その歓声は会場全体が震えるほどだった。
だがそれより驚いたのは、それに掻き消される事のないランカの歌だった。マイクにステージに設置された巨大スピーカーによって歌は掻き消される事はないが、しかしそれとは別に彼女の歌が多くの人の耳に、何より心に響いていた。
何故あそこの人間どもはアイツの歌に声を上げている?
威嚇?
共鳴?
ゴジラから見れば理解不能であり、だが同時にランカの歌がゴジラに届いていたのも確かだった。
基本ゴジラの感情には「怒り」しかない。敵対する者は容赦しないし、そうでないものには関心を持たなかった。故にゴジラは人に関心を持たず、しかし人間達はゴジラを畏怖し、その圧倒的な力を崇拝した。
しかしランカの周りの人間達は違った。数日前にランカと共に入院しているシェリルの見舞いに行った時、その時もランカの周りには人が大勢集まった。その時と同じで、畏怖でも崇拝でもなく、ましてや憎しみではなく、
尊敬、憧れ、感動、それらが彼女に向けられた視線だった。
事実、ライブ会場の観客は全員が彼女と同じ表情で、皆が笑顔だった。
だが一番分からなかったのは、何故自分が彼女の歌をこんなに真剣に聴いているのか。
今まで関心を持たなかった人間の、ましてや自身より遥かに非力な少女に、ゴジラはある種の(自分とは別の)「力」を彼女から感じた。
時に華麗、
時に愛らしく、
時に穏やか、
時に儚く、
全ての歌がまるで違っていた。一定性はなく多様で、それでいて彼女の歌の全てが観客達を沸かせた。
彼女の体からは滝の様な汗が流れ、今にも息が切れそうにも見えた。だが、彼女は止まらなかった。そして、最後にランカが歌ったのはゴジラに聴かせていた、あの「アイモ」だった。
この歌はゴジラにとって最も心に残った歌であり、彼を癒した歌でもあった。
すると、この歌を聴いた者の中には涙を流す者もいた。
このライブに来た人達の中にはバジュラとの戦争の中で、親兄弟、友達、恋人、そして子供を失くした人達も多かった。
生きている事に絶望し、未来を悲観した時、ランカのアイモは彼らの光になった。その歌は人々の心の傷を癒し、勇気づけ、そして希望をもたらした伝説の歌。
いつしかゴジラは歌を聴くのに集中して、控室から抜け出すのをやめていた。
-観客席-
(これが、彼女の歌か・・・)
芹沢とグレアム、そして同じく転移したグループはランカのライブを客席から観賞していた。
芹沢とグレアムはルカ達からランカのライブを紹介された事が切掛けで来ている訳だが、正直に言えば当初はランカに対して半信半疑だった。
「歌で異種生物との戦争を終わらせた」というのは実感が湧かなかった。「歌で戦争が終わる」なんて、芹沢達の世界ではそんなのはただの「絵空事」でしかなく、究極の理想論として多くの人が鼻で笑うであろう。
しかし、この世界では歌によって戦争などの争いが終わったという事が確かに立証されている。
始まりは1999年時に小笠原諸島より南に位置する南アタリア島に落下したゼントラーディ人の巨大宇宙船・マクロスが落下した事から始まる。
10年後の2009年、突如勝手に動き出したマクロスの主砲がゼントラーディ軍を攻撃してしまった事が切掛けで、ゼントラーディとの「第一次星間大戦だいいちじせいかんたいせん」が始まり、人類史上初の異星人との戦いが切って落とされた。しかし当時16歳の駆け出しのアイドル「リン・ミンメイ」が歌でゼントラーディに「文化」を伝え、闘う事以外の生き方を見つけたゼントラーディ人は戦争をやめた。やがて両種族はともに生きる事を決め、それは今も続いている。
そして、2045年にはプロトカルチャーによって作られた、プロトデビルンが移民船団「マクロス7」を襲撃。多くの犠牲者が出るも、その時に活躍したのがファイアー・ボンバーのボーカリスト、「熱気バサラ」である。バサラの歌によりプロトデビルンは戦意を喪失、そして様々な困難を乗り越えた後バサラとプロトデビルンは和解し、その後プロトデビルンは人類を襲う事はなくなった。
この様にこの世界では歌で戦争が解決するという事が実際に起きている。これらの資料を読んだ芹沢は「歌の力」に興味を持った。そして、この日オズマ少佐の妹であるランカ・リーの慰問ライブを観賞しに来た。
芹沢は驚いていたと同時に、彼女の歌に飲み込まれていた。言葉が出ないほど綺麗な歌だった。特に最後に歌ったアイモに関しては頭から離れられないほどに。
グレアムはというと、時に涙を流していた。
彼女はあまり歌を聴く方ではない。彼女の仕事上、音楽を聴くという余裕もなく、いつしかエンタメ情報には疎くなっていた。しかし、この日初めてランカの歌を聴き心が震えた。
他のメンバーも同じで皆がランカの歌に耳を傾け、彼女の歌に酔いしれていた。
「如何です? ランカさんの歌は?」とルカに感想を求められると、
「な、何というか、一言では表現できない。ただ彼女の歌はすごいというのは分かった。ここで彼女の歌を聴けたのは幸運だ」と感想を述べた。
芹沢は一瞬だが頭の中でこう考えていた。
(もし彼女の歌がゴジラを含むTitans(タイタン)に通用すれば・・・・)と僅かに考えた。彼女の歌がバジュラとの意思疎通を可能にするならば、タイタンにも通じるのではと考えたが、すぐに否定した。
(いや、何を言っているのだ、私は。16歳の少女に頼るとは・・・・)と自嘲気味に自分を諭した。
ここに来たのは飽くまで興味があったからであり、断じて彼女に助けを請こう目的ではないと芹沢は自分に言い聞かせた。
しかし・・・
もし、本当に彼女の歌がタイタンに通用すれば・・・、彼らとは闘わずに済むかもしれない。そんな淡い期待が僅かにあった。
-バジュラ本星より、7光年離れた宇宙空間-
遥か彼方の宇宙・・・・
隕石の中に眠る「それ」は微弱だが、確かに感じ取っていた。
命の声、「歌」が確かに聞こえた。
「それ」にとっては僥倖だった。
自身が住み着く事ができる星が近くにある。
そして「餌」もある。
そこへ向かわなければ・・・・。
隕石の中に眠るものは意思を持ってこの先の惑星、「バジュラ本星」へ向かっていった。