第1話:微睡み少女は森の中~走って、逃げて、驚いた~
My perspective
風が吹いている。
不気味な程に人の気配がない森の中、風が木の葉を揺らす音だけが聞こえてくる。
そうして木の葉を揺らすに次いで、強くも弱くもない不思議と心地よい風が私を包み込む。
まるで、泣いてる子を慰めてくれているかのような優しい風が、ふわりふわりと私の頬を撫でる。
そんな優しい風に少しばかりのくすぐったさを感じ、ゾクゾクとした感覚に思わず目を細め身をよじる。
目を細めたついでに混乱した思考を落ち着かせる為にも、深呼吸してそのままゆっくりと目を閉じてみる。
さわさわさわさわ
視覚による情報を遮断した事により、周囲の木の葉が擦れる音が更にはっきりと聞こえてくる。
木の葉のさざめき、虫の声、風の音。
それらが四方八方ありとあらゆる所から奏でられている。
そんな、まるで大自然のオーケストラのような雄大な自然の音に包まれた私は、その音楽を優雅に堪能・・・できるはずがなく、ただひたすらに胸中にあるのは・・・。
困惑
まるで不思議と恐ろしく感じる夢の中で夢から覚める為に四苦八苦するかのような・・・そんな気持ち悪い感覚。
そのまま目を閉じて現実逃避でもしていれば夢から覚めるみたいに現状に対する答えが得られるかなぁ・・・とか酷く他人事のような考えが頭をよぎる。
それでも、このまま目を閉じていても意味不明な今の現状を理解する事は恐らく出来ない。
夢の中のような現状ならばなおさら受け身のままでは状況に進展なんて無いだろうから。
とにかく、まずは諦観の思考にかぶりをふって現状把握の為に頭を働かせてみる事にする。
『夢から目覚める方法は2つ。』
『1つは、夢と現、幻想と現実の世界を区別した上で、自らを現実の世界の住人であると強く思い込む事で夢の世界を壊し、現実の世界で目覚める方法。』
『もう1つは、夢と現、幻想と現実の世界を区別した上で、自らを現実の世界の住人ではないと強く思い込む事で現実の世界を捨てて、幻想の世界で目覚める方法。』
『2つの選択肢は表裏一体。その時の気分、環境によってはどちらにも転がり得る選択・・・それでも、ここで選択を誤ってはいけない。』
『きっと選択した世界から抜け出す事ができなくなるから。』
・・・誰が言っていたのか、上手く思い出せないけれど確かに聞いた事がある不思議でちょっぴり怖い話。
そんな話を思い出した私は夢から
まず、ぼやけた視界いっぱいに映ってきたのは月の光もあまり通さない程に密集した木々達で構成された暗い森。
今となっては珍しい人の手なんてまったく付けられていないようなありのままの自然の姿。
どうやら私はそんな大自然の中央にぽつんと立っているようだ。
視界の先でぼやけている木々が、風に吹かれてサワサワと小気味良い音を奏でながら揺れている。
闇夜に揺れている木々の枝が、まるで私においでおいでと手招きしているように見えて少しばかり・・・というかかなり怖い。
そうしてある程度周囲の状況を見回して、更に混乱し始めた頭でとりあえずお約束のセリフを口に出してみる事にした。
「・・・ここは、どこ?」
私の日常からすると果てしなく非日常である大自然の森の中。
そんな景色を何度も何度も見渡してみるが、やっぱり見覚えもなければ、
あんまり運動神経が良くない私がどうやってこんな深い森の中まで来れたのか。
・・・それに、自分自身で思うのもどうかと思うが、何だか記憶が酷く曖昧で自分の事すら上手く思い出す事ができない・・・。
まるでふわふわと浮かぶ気まぐれな雲のように記憶が集まってはすぐに霧散していくような、そんな不思議な感覚だ・・・。
朧気で曖昧な記憶に混乱し、呆然としたままに風に揺れる木々の様子をポケ〜っと眺める。
そんな時ふと、視界の端にきめ細やかな綺麗な銀髪がチラチラと映っている事に気が付いた。
視界の端にキラキラと映る綺麗な銀髪をサラサラと手繰り寄せて近くで見てみる。
柔らかく優しい白銀の髪色と
・・・まるでこの世の物とは思えないほどに美しく幻想的な髪色と手触りだ。
「・・・な、何ですか・・・これ。」
思わず感嘆の息と共に感動の言葉が口から漏れる。
ひゅるるるる
自分の髪の毛を手繰り寄せて固まったまま動かなくなってしまった私に少々痺れを切らしたのか、少しばかり強い風がまるで『しっかりしなさい!』と言わんばかりに手繰り寄せていた銀髪を手から攫った。
風に吹かれてサラサラと美しく
「・・・すごく・・・綺麗です・・・」
再び靡き始めたこの世の物とは思えない程に美しく幻想的な
そうしてそのまま、まるで遥か遠い世界にある
そうして自分の髪の毛を遠い目で眺めたまま、またまた物語におけるお約束のセリフを口に出してみた。
「・・・私は、だれ?」
そんな物語のお約束の疑問に簡単に答えが返ってくるはずもなく、ただ風の音だけが私の疑問に相槌をつく。
突然ではあるが、読書が好きな私は沢山の物語を読んだ事がある。
そんな沢山読んできた物語の中には突然の記憶喪失から始まる物語も沢山あった。
そんな記憶の無い主人公が綴る物語においては、主人公の記憶が無い事自体が重要な伏線だったりする事が多い。
例えば主人公の正体が実は全ての元凶で黒幕でした、とか主人公の正体が実は地球外生命体で地球を侵略しに来たインベーダーでした、とかそんな重要な伏線である事が多い。
そんな物語のお約束展開に基づくと私の今の状態からして私にも驚きの正体が隠されていそうでワクワクする。
・・・ワクワクするのだが、朧気に覚えている記憶には普通の人間として人生を歩んでいた記憶が朧気ではあるがはっきりとある。
残念ながら物語のお約束的には外れて平凡な出身である可能性が高い。
・・・というかそこは中途半端に記憶なんて残さないで期待させて欲しかった所である。
つまり、私は平凡な人間であって、そんな平凡な人間の私を突然深い森の中に無防備に登場させた黒幕は実はとんでもなく鬼畜な奴なんじゃないかと思う。
・・・。
・・・・・・いや、そんな事考えてる場合じゃなくって・・・
そんなこんなで更に混乱し始めた思考と呼吸を落ち着かせる為に、とりあえず思い切り息を吸って深呼吸を
周囲に吹いている風はとても
まるで、大気汚染なんて言葉が世界に生まれていないとまで思えるくらいに、感じる空気はとても清らかで・・・。
「っぷはあぁぁぁぁっけほ、けほ」
最大限に息を吸い込んだ為か、苦しくなって胸いっぱいに吸い込んでいた空気を一気に吐き出す。
勢い余って軽く咳き込んじゃったせいで涙目になる。
・・・まぁ、すでに、自分を取り巻くこの状況に涙目ではあるが・・・
それはともかく・・・空気が異常においしい。
マイナスイオンだとか、神秘的パワーだとか言う前に、根本的な世界を包む空気自体が綺麗で清々しい感じがする。
空気がおいしいとはまさにこの事だと言わんばかりに空気はとんでもなく清く、空を見上げれば星々がまるで手を伸ばせば捕まえる事が出来そうな程近く、透き通って見える。
何もかも分からないまま、飲み込んだ空気をおいしいなぁとかお星様が綺麗だなぁとか感じられる程には私の思考は落ち着いてくれたようだ。
現状を少しまとめると、自分の事やら、今いるこの森の事やら、何もかもが何故か私の記憶に存在しない。
そもそも自分が誰なのか、人間として生活していた朧気な記憶はあるが、定かでは無いし自分の名前すら全然思い出せない。
それでも綺麗な銀髪や自分から発せられる可愛らしい声にすっごく違和感がある。
つまり、自分についての記憶が無いくせに、まるで物語のキャラクターに自分の意識だけが乗り移ったかのように感じるのだ。
というか背丈から予想は着いていたが、声の感じもちっちゃな女の子の声だし、今の私は大分と幼い姿になっているようだ
・・・我ながら声がめちゃくちゃ可愛らしい。
まるでこんな声で頼み事なんかされた時には喜んで願いを叶えてあげたくなっちゃうような魔性の声だ。
そんな声が自分から発せられている事にめちゃくちゃ違和感を覚えるが・・・
「い、いや、私はロリっ子をこよなく愛する淑女だったはずで、自分がロリっ子になっちゃうだなんてそんな・・・あれぇ、あんまり違和感がない?・・・もしかして私はロリを愛する淑女であると同時に潜在的にはロリそのものだったのでは?」
いまだに混乱しているのか、訳の分からない独り言を早口でつむぎ始めた自分のお口にチャックする気力もなく、諦めてなすがまま自分の無意識に喋らせておく。
とにかく、周りが
傍から見たら自分の事をロリコンだとアピールする目立ちたがり屋で変態のロリっ子だ。
周りに誰か居てこんな独り言聞かれちゃったらドン引きされて蔑んだ目で見られてる所だった・・・
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・ん?
・・・人っ子一人いない森の中?
ギャアギャアギャアギャア
「わひゃあぁぁ!?」
突然、闇深い森に何か動物の鳴き声のような恐ろしい甲高い鳴き声がこだました。
その鳴き声はまるで、御伽噺に出てくる怪物の鳴き声のようで・・・。
「・・・ひ、ひぅ。」
・・・こ、怖すぎて本当に泣きそうになってきた。
「・・・ほ、ほんとに、ここ、どこぉ?」
今にも泣き出しそうな情けない声が自分の口から出てくる。
しかし、誰も答え合わせをしてくれない。
一人ぼっちになった私の傍には誰もいない。
ギャアギャアギャアギャア
「ひぃ!!」
怪物みたいな甲高い鳴き声が近くなってきている気がする・・・
ぷるぷると震える両脚を必死に両手で抑えるも、なかなか震えはおさまってくれそうにない。
そうして私はしばらくの間、小さく丸くしゃがみこんで、無知であるが故の恐怖に、なすがままに震える事しかできなかった。
A few moments later・・・
「・・・ふぅ、ふぅ。よし、これで大丈夫です!」
しばらく小さく丸まってガタガタ震える事しかできなかった訳であるが、記憶の中に朧気に残っていたおまじないの記憶のおかげで緊張感が大分とほぐれてきた。
「それにしても、どうして手の平に『人』って字を書いて飲むと緊張感がほぐれるんでしょうかね?不思議です・・・」
記憶にあった緊張を解すおまじない。
そんなおまじないを実践してみると、なんだか本当に緊張がほぐれてきた。
一説にはこのおまじないは有名な条件反射の実験〖パブロフの犬〗と同じ事が起こっているという説がある。
つまりわんちゃんにメトロノームの音と共に餌を与え続けた結果、メトロノームの音を聞いたわんちゃんが唾液を出すようになったのと同じく、手のひらに人という字を書くという行動が緊張状態と関連付けられ、この条件反射を逆手にとった効果がおまじないとして定着していったという説だ。
はたまた医学的にも手のひらに人という字を書くと手のひらの中心、正確に言えば手のひらを握った時の中指と薬指が当たるほぼ中心にある
まぁあんまり詳しくは分からないけどおまじないって凄いなぁ(小並感)
・・・まぁ、それはともかく!
おまじないのおかげで落ち着いてきた所で、とりあえず状況を整理してみよう。
まず現状の把握。
今、私は森の中にいる。
それも、周りに人の気配もない
人の手がまったくと言って良いほどに付けられていないと感じられる、まるで前人未踏の不思議の森って感じの場所。
その森の、少し開けたところに私はポツンと1人佇んでいる。
なんでこんな所に立っていたのか、どうやってこんな所まで来たのか。
全然、これっぽっちも身に覚えがない。
・・・それに、身に覚えがないと言えば自分の事。
・・・私は一体何者なのか。
まず、自分の名前・・・思い出せない。
経歴・・・思い出せない。
元の姿の
びっくりするくらいに、自分の事について何も思い出せない・・・
思い出せないのだが・・・
住んでいた国・・・日本。
好きなもの・・・お酒、お寿司、魔法、オカルト、それに
幻想郷とは綺麗で、幻想的な世界の事だ。
幻想郷では可愛らしい女の子達が様々な物語を
その物語の記録が綴られている
特にその物語に登場する女の子達の中でも、私は小さくて可愛らしい女の子達が大好きで、実際に出会う事が出来るのなら、撫で回して抱き締めちゃったりしたいくらい
・・・なんでこんな変態チックな事ばかり覚えているのか果てしなく理解不能ではあるが、これも自分だと諦めて受け入れる事にする。
とにかく、そんな理由からか、私はそんな幻想的な世界を追い求める程にかなり入れ込んでいた。
・・・と言うように、何故か自分のこと以外の知識は全て鮮明に覚えている。
自分についての事だけが、まるで濃い霧に覆われているかのように上手く思い出せない。
・・・とはいえ思い出す事が出来た記憶から、ちっちゃくて可愛らしいキャラが大好きで撫で回したい、という変態チックな思考が出て来た事で先程無意識に自分の口から出てきた言葉の信憑性が限りなく最大限に高まった。
・・・う、うーむ。
き、記憶が無いだけに自分の事が怖くなってきた。
自分の事ながら変態ロリコン気質なのは大丈夫な事なのだろうか?
断片的に残ってる記憶からして多分、
ただ、私はロリコンではなくロリっ子をこよなく愛する淑女であると無意識の私が混乱している私を
私の過去の記憶からして、実際に無理矢理小さい子達に触った事はないはずであるし、何故かノータッチロリータ精神の記憶がある。
小さくて可愛らしい子が泣いて困っていたら積極的に飴ちゃんを渡したり、『はぁ、はぁ、お、お嬢さん・・・迷子なら、お、お姉さんが一緒にお母さん達を探してあげるから、こ、こっちへおいでぇ?』とか言って手を引いたりしたくらいしかないはずだ。
だ、だから私は多分、面倒見の良いお姉さん?そんな感じだったはずだ!!!
そんなこんなで心の声で早口でまくし立てながら訳の分からない弁明をしていた、そんな時。
ガサガサッ
必死の言い訳を頭の中で次々と展開していた私を、現実に引き戻したのは、草木をガサガサとかき分ける音だった。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・あ。
今更ながら自分が置かれている状況を思い出した。
何故だか分からないが、私が今いる場所は、深い森の中。
記憶が無くなっているとはいえ、手付かずの森の中では人間なんて生き物は余裕で食物連鎖のカーストを垂直落下してしまう事ぐらいは分かる・・・
つまり、クマさんとか野犬さんとかが現れたら、私みたいな弱小な生き物は余裕でその子達の晩御飯になっちゃうという事・・・。
・・・。
・・・・・・。
後方から聞こえた物音に恐る恐る振り返る。
すると、そこには全裸で狼のマスクを被った人っぽい人(?)が居た。
・・・。
・・・・・・。
・・・とりあえずクマでは無かったことにホッと胸を撫で下ろす。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
ふぁ!?
・・・いやいやいやいや!?
普通に怖すぎるんですが!!??
なんならクマよりも断然怖いのが現れちゃったんですがぁ!!!???
・・・はぁ、はぁ、はぁ。
・・・お、落ち着け私。
頭の中で現状にツッコミをいれても問題解決は出来ないですよ・・・
・・・そ、そうだ。
素数を数えると落ち着くとなんとなくですが聞いた事があります。
素数を数えて落ち着いて状況把握をしてみましょう。
2、3、5、7、11・・・・・・
・・・
・・・・・・1109、1117、1123。
・・・よし落ち着いてきました。
落ち着いた所で状況把握開始!
まずお相手さん!(全裸で狼のマスクを被ってるので変態狼マスクさんとでも呼称しちゃいましょう)
よく見ると結構リアル志向のマスクを被ってて凄い!
どうやってそんなにリアルなマスクを作ったんだろうか?
まるで毛先1本1本までに生命が宿ってるみたいで・・・
・・・?
・・・なんかこんなのほほ〜んとした事考えてる場合じゃないような・・・
・・・
・・・・・・
はっ!
しまった!
落ち着きすぎた!
大事なのはとんでもなくリアルなマスクでも無ければハロウィンの仮装かどうかなんて事じゃない!
というかハロウィン云々は今はどうでもいい事だ。
大事なのは、何故深い森の中で、そして何故全裸なのかというところ。
いや、まぁ全裸でコスプレしていなくても山奥で知らない人に出会ったらそれはそれで最恐の恐怖体験ではあるが、全裸、コスプレのオプションが付いてきたら、それはもう天元突破の恐怖体験な訳だ。
加えて今の私は幼女と言っていいほどちっちゃな女の子になってしまっている訳で、これはもう泣くなという方が無理な話なのである。
そうしてしばらくの間、恐怖で涙がいっぱいになった目で変態狼マスクさんのマスクを見上げていると・・・
変態狼マスクさんの大きくてギョロりとした目と目が合った。
私の全身にくまなく
「おまえうまそうだな」
マスク越しの声にしては、くぐもらずにやけにはっきりと聞こえた喜色を混じらせた妙に甲高い声。
ヤバそうな事を言われている割には、私の思考はデフォルメされたティラノサウルスが出てくる絵本を思い浮かべるやらで、さらに困惑が強まる。
そのため、言われた事の内容を理解するのにワンテンポ遅れる。
言われた内容を整理すると・・・
おまえってのはわたしの事。
うまそうというのは、私を食事的な意味で食べる気なのか。
そ、それとも、エ、エッチな意味で食べちゃう気なのか。
確かに今の私は全裸で山の中にいるような変態さんが箸を伸ばしてきそうな美少女だ。
薄い銀色の髪は腰まで伸びているし。
声もひたすら、可愛らしい声だったし・・・
鏡も、水面もなく、自分の姿を確認しようにもできないが、もし幻想郷の物語に登場するのであれば、抱きしめて
そんな少女が、こんな夜中に狼のマスクをかぶって全裸でいる変態に捕まったら、凄いことをされる気がする。
あまり詳しくは知らないけれども、とんでもなくハレンチな何かを・・・。
・・・それか文字通り捕食的な意味で食べられちゃうのか・・・
・・・いや、何をされるのかは考えたくもないが、どちらにせよ恐ろしくなってきた。
そんなこんなで、現状に訳が分からなくなってきたところで思考を止め、現実を見る。
変態狼マスクさんに声を掛けられてからこの間、
今更ながら自分の思考速度にびっくりする。
まるで時間を止めて、考え事をしてるようにも感じられる程に、思考が加速しているようだ。
ふと変態狼マスクさんを見ると、目を血走らせながら、こちらに向かって走ってきている最中だった。
「うひゃあ!?」
自分でも気が抜ける変な声をあげる。
なにせ、文字通りの変態狼マスクさんが、10m程しか離れていない場所から、全力で走って凄い速さでこっちに向かってくるのだ。
もうめちゃくちゃに怖い。
粗相しちゃいそうなくらいめっちゃくちゃに怖い。
・・・とにかく今は時間が止まるかのごとく思考を続ける。
今は小さい女の子になっているようだし、走って逃げられるだろうか・・・。
そもそも逃げるって言ったって一体どこに!?
警察に助けを求めようにも交番は無いし、110番しようにも連絡手段がない・・・
とてつもない思考速度で、周りの時間がスーパースローに思えるくらいゆっくりに感じる。
まあ、とにかく変態狼マスクさんが目を血走らせて、向かって来ていて気を失いそうな程に怖いので、行動を起こそう。
そう考えた所で、私は手の平に『人』の字を書いて飲み込んでから、変態狼マスクさんとは反対方向に
今の私の服装はなんでこんな服を着ているのか記憶にないが、深い青色のロングスカートで、薄い緑色と白色のドレスの上に黒に近い
けれど、変態狼マスクさんに追われている私は無我夢中にひたすら走った。
走って大体3秒程経った時、
森を抜けた様だ。
・・・。
・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・ん?
3秒で森を抜けた?
・・・とはいえ思考が加速している中では3秒も15分くらいに感じられる。
・・・っじゃなくて!
森を・・・抜けた?
上空を見上げると、先程まで鬱蒼と生い茂る木々に
こんな状況でも、お月様もなんだかいつもより綺麗だなぁーと思う、私は案外図太い性格をしているようだ。
とにかく、疑問を言葉にして口に出してみる。
「走って3秒くらいで抜けられそうな森でしたっけ?」
後ろを振り返ってみると、果てしなく遠く・・・多分3kmくらい遠くの方で先程の変態狼マスクさんが
私と、変態狼マスクさんとの間には、幅1.5mくらいに草木や岩が抉られて、真っ直ぐに獣道が作られている・・・。
「わ、私は今、この距離を3秒で走ってきたのですか?」
とりあえず、
・・・ど、どうしよう。
疑問が尽きない。
服を見るが、服には傷はおろか汚れ1つない。
約3kmを3秒で。
つまり、秒速1km。
加速とかを無視して時速に
大体マッハ3である。
まるで戦闘機だ。
そんな速度で地上を疾走すれば、辺りに衝撃波が吹き
それよりも、マッハ3に耐えうるこの身体や服もおかしいですが・・・。
そもそも、マッハ3で走る事ができる女の子な時点でおかしい気もするのですが・・・。
次々出て来る疑問に、後で考えようと、とりあえず
あと、マッハ3に驚きすぎて、スルーしちゃったが、目がおよそ、人間には不可能なくらい遠くまで見えるようになっている気がする。
約3km離れた口を大きく開いた変態狼マスクさんの牙の本数まで数えられるくらいだ。
・・・あっ、虫歯発見。
・・・ま、まあ、とにかく、変態狼マスクさんからは逃げ切れた・・・でいいのかな?
というよりも変態狼マスクさんって言ってるけど、今更ながらあれは明らかにマスクじゃないし、よく見たら全身毛むくじゃらだ。
もしかして、いわゆる狼男さんというやつだろうか?
もう一度、狼男さんの方を伺うと、またまた、目があった。
果てしなく距離が空いているが……。
とりあえずなんとはなしに、狼男さんに笑顔で手を振ってみる。
すると狼男さんは、ビクッと震え、膝をつき・・・
「申し訳ありませんでしたぁぁあ。吸血鬼さまぁぁ!?」
なぜか分からないが、ものすご〜く謝られた。
そして、果てしな〜く遠くの声なのに、私の耳には、一言一句はっきりと聞こえていた。
「吸血鬼?」
また、疑問が増えた。
匙を速球で投げたくなるくらい、現状を把握する事は困難を極め、しんどくなってきた。
こうして、この狼男さんに出会った事で、私のこの世界における物語の幕が上がった。
???? perspective
「例えば少女が1匹の白うさぎを追いかけた事で、不思議の国へと迷い込んでしまったように・・・」
ペラリペラリと本のページをめくる音が静かな部屋に響く。
「些細な日常の突飛な非日常が物語の幕開けには相応しいと思うのですよ。」
天窓すら無いはずの孤独な部屋には優しい月明かりが充満している。
そんな孤独な部屋で少女は何かを懐かしむように手にした本のページをゆっくりとめくっていく。
そうしてゆっくり本のページをめくっていた少女が、本に書かれていたある一文を見てクスリと笑って、まるで本の内容を訂正するかのように言葉を紡ぐ。
「夢から覚める方法は
「1つ目の方法は、夢と現、幻想と現実は別物なのだと思い込み、夢から目覚め現実を謳歌する方法。」
「2つ目の方法は、その夢の世界は夢ではなく、実際に別の世界にいるのだ、と強く意識する事で幻想を現実であると意識した上で、幻想の中で目覚め幻想を謳歌する方法。」
そこまで言って少女は
そうして取り出した栞を本の開いていたページに挟んでそのままパタリと本を閉じた。
そして言葉を続ける。
「3つ目の方法は・・・」
〖後書き〗
前々から書きたかった幸薄少女のほのぼの物語を書き始めてみました!
初めての執筆で色々とおかしなところもあるかと思いますが生暖かい声で応援して頂けると幸いでございます!
誤字脱字報告大歓迎です!
何分、私はおっちょこちょいなもので、誤時脱字が随分と多いかと思われます・・・
確認し次第即反映していきます(`・ω・´)ゝ
誤字脱字報告して頂けた方、ありがとうございます。
ものすっごく助かってます(´;ω;`)