Asyl perspective
「この料理も、あの料理もおいしいです!おいしいですぅ!しあわせでふぅ〜。何十年かぶりのまともなご飯ですぅ。」
もぐもぐと作法を気にせずに涙目で美味しそうにご飯を食べているのは夫人の従者〖美鈴〗さん。
前世の記憶にある幻想郷の記録にも存在していた、言わば物語の登場人物の1人だ。
先程、夫人からこの名前を聞いた時はビックリすると同時に納得もした。
確かに彼女は幻想郷の記録通りなら、今から1500年後の幻想郷の紅魔館で門番を務める〖紅美鈴〗という妖怪に間違いないだろう。
「まだまだいっぱいありますからね〜。落ち着いて、喉に詰まらせないように食べて下さいね〜。」
自分の作った料理をおいしそうにガツガツ食べてもらっている小悪魔は少し嬉しそうだ。
「・・・本当にごめんねぇ。美鈴ちゃん。かなり不憫な思いをさせちゃったみたいで。」
「もぐもぐ。っむぐ。ごくん。いえいえ!確かに砂漠では捕まえたトカゲばっかり焼いて食べていてひもじかったですが、今思えば、あれも修行だったのでしょう?」
「・・・っ!そ、そうなのよ!どれもこれも美鈴ちゃんの為に課した修行だったのよ!良くここまで耐えたわねぇ!えらいわよ。」
なでなで
「むぐむぐ。むしゃむしゃ。っごくん。はい!ありがとうございます!」
「き、君は本当にそれで良いのか・・・」
「良いのよ。元々美鈴ちゃんは可愛いから攫っ・・・、なんだか修行をつけて欲しそうな目をしてたから一緒に連れてきていたんだから。」
「え!?君は今何を言いかけたの!?」
パーティーが始まって主役の夫人や伯爵達は少し離れた所でご飯を食べながら談笑している。
小声で話してる部分も、吸血鬼の地獄耳には一言一句聞こえてきていて、あちらの話もものすご~く気になる。
気になるが・・・
「それで!?友人を宇宙の帝王妖怪に殺された主人公はどうしたのですか!?」
「えっとですね、その主人公は怒りで真の力に目覚めて、スーパー主人公になったのですよ!よくもク○リンを〜ってな感じでね。姿も黒髪から金髪に変わって雰囲気も変わったのでかっこよかったですよ!」
私とリヴェリーさんは互いに魔法の話や妖怪研究の話をしつつ、今は私の前世の記憶でのレトロな漫画の知識等を披露していた。
リヴェリーさんは、はじめの落ち着いている印象からは想像もつかないくらい漫画の話に夢中になって身を乗り出して私の話を聞いている。
お互いにワインと日本酒をたらふく飲んでいて、ちょっとしたへべけれトークだ。
「真の力に目覚めたら髪色まで変わっちゃうんですね!?不思議です・・・。っそ、それで!?その後主人公はどうなっちゃうんですか!」
「怒りでパワーアップしたスーパー主人公は圧倒的なパワーで宇宙の帝王を追い詰めるのですが、追い詰められた宇宙の帝王は卑怯なことに星ごと破壊してスーパー主人公を倒そうとするのです。」
「えぇ!?星を破壊する程の力を持っているのですね!ス、スケールが凄いですね・・・。た、確かに宇宙の帝王は宇宙空間でも耐性があって生き残るかもしれませんが、スーパー主人公は宇宙空間では死んでしまうのでしょうね・・・卑怯な手ですが、その場では最善の策だったのでしょう。さ、さすが宇宙の帝王です。」
「その後主人公は星が爆破する前に宇宙の帝王を何とか倒して、命からがら宇宙船に乗って爆発する星から脱出し、次の物語に進むのです!次の物語では、実は身体を機械に入れ替えて生き延びていた宇宙の帝王が自身の父親の宇宙の大王とともに主人公の故郷の星を襲うのですが、謎の少年に剣で軽く一刀両断で倒される所から物語は始まります。ですが、これはまたの機会に。」
「えぇぇ!?す、すっごく気になります!」
いつの間にか熱弁していた、前世の有名な漫画の話が一段落し日本酒をあおる。
・・・んく、んく、んくっぷはぁ!
「このおしゃけはとってもおいしいれすぅ。さしゅがおしゃけじゅきのおにがつくったおしゃけでしゅねぇ。わたしこのおしゃけがだいしゅきになりましたよぉ。」
「それは良かったです。このお酒は東の島国に住む鬼から盗ん・・・贈られたもので、美味しく飲んでいただけて鬼も多分嬉しいと思っていますよ。」
ほほぅ。
鬼からお酒を贈られるくらいリヴェリーさんは気に入られているのですね。
こんな人外だらけのパーティーに出席するのもあって、人間にしては色々と規格外ですねぇ彼女は。
「・・・っこほん。アズール様?ちょっとお酒を飲みすぎなのでは?呂律が怪しくなってきていますよ。」
律儀に私の右斜め後ろに控えているヴァルターからジト目で注意が入る。
「ヴァルターもそんな所に立ってないで、いっしょにのみましょうよぉ。このおしゃけおいしいですよぉ」
執事だからと言ってあまりお酒を飲まないで私の傍に控えている彼女。
せっかくのパーティーなんだからヴァルターも楽しんでほしい。
「いえ。私は執事ですので。皆さんがワイワイ飲んで騒いで潰れた後に介抱するお仕事が残っていますので。」
「まぁまぁ、そういわずにぃ〜」
「・・・私のしっぽに手を伸ばさないで下さい。触ったらひっぱたきますよ!」
そう言ってしっぽに伸びた私の手を丁寧に払う真面目ちゃんなヴァルター。
うむぅ。
ヴァルターはとっても良い子です。
でも、そんな堅苦しいのを抜きにしてもっとはっちゃけても良いと思うのですよ。
そんなこんなで3人で話していると、ヴァルターの後ろにいつの間にか忍び寄っていた小さな影が音もなくヴァルターに飛びついた。
「っわわ!?」
「ヴァルターちゃんもこっちに来てお姉さんとお話しして仲良くなりましょう?」
急に抱きつかれたヴァルターがビクッと驚く。
ついでにその人物に軽いトラウマを持つ私もビクッと驚く。
驚いて固まったヴァルターに頬を赤くして少し酔っ払った様子の夫人がトロンとした目で
「アズちゃんでも構わないわよぉ〜。向こうでお姉さんと楽しい事しましょう♡」
「ひ、ひぃ」
そう言って私に飢えた獣の様な視線を向けて舌なめずりをしてくる
先程のトラウマ級の恐怖体験もあり、一瞬で酔いも醒めて身体がガタガタと震え始める。
せ、せっかくお誘い頂いた所申し訳ないが全力でお断りさせて頂こう・・・
「おっ奥様!?・・・わ、私はアズール様の執事なので、お側を離れるわけにはぁ、ひゃうぅ!?///ど、どこ触ってるんですかあ!?」
突如襲来した
「・・・あらあらぁ♡顔赤くしちゃって♡なぁにその反応?可愛らしいわねぇ♡」
「ちょっ、ちょっと、あの、あの。お、奥様?し、尻尾と耳は触って欲しくないと良いますか。」
「そんな事言われると余計に触りたくなるのよね♡」
「いや、あの、ほんとにやめてください、や、やめひゃぁ!?/や゛めえぇっ!て…ぇええ…//んへぁ!?/ちょっ//ほんろにやめ//あじゅ/あじゅーるしゃまぁ//たしゅけ//」
私の執事が夫人に
震えた声で助けを求める私の執事は、私に手を伸ばす。
そうして夫人にしっぽを弄り回されて涙目で悶えながら助けを求めてきた執事から、私はすっと目を逸らす。
「まっ、まぁこれを良い機会に夫人や美鈴ちゃんと親睦を深めてくるのです!」
「こ、このぉ//あじゅーるさまの//はくじょうものぉ///ひ、ひい…ぃ゛っあ!?////おっおくさまぁ!?///はげしっ///ひう///や、やめ、そ、そんなとこまで!?///ら、らめぇぇぇ/////」
ヴァルターは凄い嬌声をあげながら夫人に伯爵達の方へと引きずられていった。
・・・とりあえず心の中でヴァルターに土下座で謝っておく。
「まずいですね〜。奥様完全に暴走状態ですね〜。ヴァルターさんのモフリティは至高なので暴走しちゃうのもちょっと分かりますけど〜。ヴァルターさんのお顔がすっごくえっちになってきてますね〜。」
「ちょ、まって、そ、それ以上はいけない。や、やめてあげて。小悪魔!ヴァルターを助けるよ!」
「ちょっとこのまま見ていたい気もしますが〜。分かりました、伯爵様〜。」
「もぐもぐむしゃむしゃもぐもぐもぐ。」
・・・本当に大丈夫なのだろうか?
Reverie・Hearn? perspective
やはり、このアズールという吸血鬼は色々とおかしい。
偽名を使って人間と妖怪の境界を操って人間に変装し彼女、アズールに近付き実際に話してみたが、やはり彼女の正体は得体の知れないものであり、警戒心がより強まった。
特に先程の、彼女いわく彼女の故郷の創作物のお話。
そんな話はとても面白くて思わず身を乗り出してまで聞いてしまった。
一瞬警戒心が解かれるくらいに。
それに聞いたことのないはずの話なのに何故か懐かしい感覚を覚えた。
これも彼女の能力の影響なのだろう。
そして、50年前と比べてもとんでもなく濃くなった魔術の気配。
月光館に施されている魔術を見ても分かるが、この50年の間に私が知る魔術使いの中では1、2を争うほどに魔術に関しては極めて洗練されている。
それに加えて50年前から変わらない、他者の警戒心を強制的に緩和させる危険な能力。
長い年月を生き、様々な影響に対する抵抗力を持った私が、能力を以ってしても防ぎ切れない影響力。
観察していて分かったが、彼女自身は危険な思想とは無縁の平和主義者だ。
だから、今は世界にとって無害であり、調停者たちも動かないのだろう。
だが、いくら平和主義者だからといって、その持ちうる能力の影響力は世界にとって無視できないものであり、危険だ。
それに、彼女は彼女以外の全ての存在に隠している事が多々ある。
その秘密はこの世界にとってもあまりにもイレギュラーであり、そんな理由からも彼女の一挙手一投足は全て監視する必要がある。
しかし、私自身がその彼女の能力に影響されている状態であり、それによって彼女に対し無条件の信頼を寄せてしまい、結果その対応は必ず一手遅れてしまうのだ。
つまり、得体の知れない彼女に対して、まったくと言っていいほどに敵対心を持つ事ができない事が、私が彼女を最大限に危険だと判断する理由だ。
恐らく彼女がもつと思われる能力は〖
一見害がないように思える能力であっても、その実とても強力で無慈悲な能力だろう。
力ある妖怪や神達をリストアップしそれらの管理を目的としている私にとっては、強制的に警戒心を薄められるのは由々しき問題だ。
現に今も、能力を以って、私の心の隙間を閉じなければ彼女の魔性に屈してしまい彼女に警戒を向ける事が出来なくなるだろう。
彼女の謎といえば他にもある。
50年前から彼女の身辺調査をしているが、魔法の研究ばかりしている彼女の、50年前よりも以前の記録がまったくといって良い程に存在しない。
まるで、50年前のある時に急に現れたかのように・・・。
これは、妖怪としてはありえない事である。
妖怪と呼ばれる存在は、その元となる何かしらによって創作された物語を核として、そこに畏れが集まって形成されて生じる、言わば幻想が形を持ったものだ。
記録もなく生じたと思われる彼女には元となる物語が存在しない事になる。
スカーレット伯爵はその事からも彼女の事を自らと同じ調停の為に世界が生み出した真祖の吸血鬼であると考えているようだが・・・。
私にはそうは思えない。
何故かと言うと50年前、世界は依然としてバランスが保たれていたからだ。
バランスが保たれていた世界が、言わば世界の自浄作用とも言える調停者を生み出すとは到底思えない。
では、彼女の正体は何者なのか。
スカーレット伯爵の〖運命を見る程度の能力〗が通用しない事。
見ることが出来る運命が50年前を境目に曇ってきているらしい事。
そして先程の彼女の故郷の創作物の話で感じた現代との時代錯誤感。
それらを踏まえて私はこう推定している。
彼女
伯爵の言い方なら運命の特異点。
しかし、いわば世界にとっての
本来ならこの世界に生まれることは無かった、世界を改変しうるイレギュラー。
伯爵の能力に制限が付き始めたのは世界が改変されつつある証明。
伯爵の能力が彼女に通用しないのは彼女が世界にとって理解し難い存在である証明。
そんな、世界を改変しうる彼女だからこそ、私の目標を達成する上では超危険人物になりうるのだ。
名前も姿形さえも忘れてしまったけれど、親友とも呼べた私の記憶に朧気に残る
そんな彼女たちと、共に目指した人間と妖怪の共生。
忘れ去られる妖怪をあまねく受け入れる箱庭。
そんな隔絶された世界を作り管理することが私の、
だから、その目標の為にも
「zzz」
「・・・」
知り合いの鬼が作ったとんでもない度数のお酒をたらふく飲んだからか、得体の知れない彼女は気が抜けるくらい幸せそうな寝顔で寝てしまっている。
・・・こんな彼女でも私が最大級に警戒している危険な妖怪なのである。
話していて、面白い彼女とは伯爵たちと同じように友人関係になりたいが、八雲紫として彼女の前に現れるのは今はまだやめておこう。
今のところは、彼女による改変の影響は私の箱庭にはないだろうが、
・・・でも、今はまだ、リヴェリー・ハーンとしてこの面白い彼女と親交を深めてみてもいいかもしれない。
そう思った私はだらしなく寝こけている彼女に声をかける。
「こんなところで寝てると風邪を引いてしまいますよ。吸血鬼が風邪を引くかはわかりませんが。」
「んん〜。むにゃむにゃ。」
そうしてまったく起きる気配もない彼女に苦笑しつつ、可愛らしい寝顔で熟睡している彼女の頭を優しく撫でる。
・・・まぁ、今はこの可愛らしい寝顔を肴にお酒でも飲みましょう。
It was Yukari Yakumo? point of view
〖後書き〗
前回から思っていたよりも筆が進み1話完成しました。(´∇`)
少し荒削りな所が目立ちますが、後々改稿していきます。(⌒-⌒; )
物語は前半は主人公アズール視点、後半はリヴェリーさんの視点です。( ¨̮ )
物凄く分かりにくいとは思いますがご容赦を〜。_(꒪ཀ꒪」∠)_
アズールは純粋に話を聞いてくれるリヴェリーさんに好印象を抱いています。(っ'ヮ'c)
そんなリヴェリー・ハーンこと八雲紫は必要以上に彼女に対して警戒心を持っている様子。
_(-ω-`_)⌒)_
さて、夫人、パーティー編はこれにて閉幕です。
次話からはパーティーが終わってから一悶着あり、それからは少しスローライフしていければなぁと思います。
またまたたくさんのUA、お気に入り登録ありがとうございます。
評価もたくさん頂き、1人枕を抱えてゴロゴロと喜んでいます。(*´ω`*)
これからも、東方庇護録をよろしくお願いいたしますm(_ _)m
次回は仕事の関係で1週間後くらいに投稿する予定です。