?????? Perspective
わたしは生まれたときからふよふよと宙に浮かび意味もなく存在している。
いつからかは忘れてしまったが、わたしがわたしという自我を持ってからもわたしは意味無く宙を漂っている。
たまに目の前に現れるわたしを害するつもりの人間達を闇を操り追い払う。
そんな生活を長い間続けている。
生まれた時から闇に包まれているわたしを他者は認知できない。
人間達はそんな闇の中にいるわたしを想像でしか語らない。
曰く、闇より現れる鋭き鉤爪は四肢を引き裂き肉を喰らう
曰く、闇より現れる凶悪たる顎は頭を砕き脳髄を喰らう
曰く、闇より現れる醜悪たる姿は見た者の正気を失わせる。
曰く、闇より現れる鈴の音は聞いた者を死へと誘う
・・・今まで、面倒だからと人間を追い払う事くらいしかしていなかったのに、大した風評被害である。
闇に包まれた正体不明のわたしに人間達はかなり恐怖しているらしい。
わたしも生まれてから1度も、闇に包まれた自分自身を認知した事はない為、自分の姿は分からない。
だが、人間がそこまで恐怖するという事はさぞ恐ろしい姿をしているのだろう。
そのおかげか、生きる為に必要な人間達の畏れは持て余す程に集まっている。
全にして個たる種族のひとりぼっちのわたしには同種への畏れが集まらない。
その分、存在を維持するのに難儀していたが、人間がわたしを必要以上に怖がってくれるのは存在の維持という意味では都合が良かった。
人間達は人間を襲う正体不明の妖魔としてわたしを討伐しようと試みているらしいが、そう簡単には討伐させてはあげられない。
意味無く存在しているわたしではあるが死にたくはないのだ。
そんないつまで経っても討伐されない正体不明のわたしに人間達は更に恐怖していく。
そして、いつからか、わたしは人間達から恐怖の暗闇の妖怪〖ジャバウォック〗と呼ばれ、恐るべき存在として後世に伝えられていった。
そんなわたしには人間はもちろんだが、同じ妖怪にも知り合いと呼べる存在はいない。
理由は簡単。
怖がられているからだ。
語り継がれる程に畏れを集めるわたしは妖怪にとっても恐怖の対象となるらしい。
誰も、闇の中の私を見てくれない。
誰も、闇の中にいる私に声を掛けてくれない。
誰も、闇の中からの声に耳を傾けてくれない。
誰も・・・闇の中から伸ばされた私の手をとってくれない。
残念だとは思う。
だがそれだけだ。
意味無く宙を漂うだけのわたしに友達なんていらない。
だから・・・寂しくなんてない。
それでも・・・。
「あぁ、独りは静かだなぁ。」
闇夜に聞こえるのは鈴のような可愛らしく寂しそうな声。
その声は誰の耳にも届かない。
そんな、ひとりぼっちの妖怪は今日も1人静かに闇に包まれ、ふよふよと宙を漂っていく
It was Jabberwock? point of view
Asyl perspective
「うぅ。頭がガンガンしますぅ。」
久しぶりの日本酒にテンションが上がり、思わず飲みすぎてしまったようだ。
いつもの如く気絶するように寝てしまっていた私は頭痛により目を覚ました。
「アズール様〜。大丈夫ですか〜?」
小悪魔が水を持ってきてくれる。
「大丈夫じゃないですぅ。ありがとうございますぅ。」
ごくごくと水を1杯煽る。
「ありゃりゃ〜。でもヴァルターさんはアズール様より大丈夫じゃなさそうなので、今日は紅魔館で休ませておきますね〜。」
うぅ。
頭痛い。
・・・ヴァルター?
どうしてヴァルターが大丈夫じゃない目に・・・。
・・・そう言えば
ヴァルターお疲れ様です。
「あれぇ。小悪魔、リヴェリーさんはぁ?」
「え?・・・あ、あぁ〜、リヴェリーさんならお帰りになられましたよ〜。ちゃっかり伯爵のワインを数本くらい持って。」
・・・リヴェリーさん見た目にそぐわず酒豪だなぁ。
というか妖怪より酒に強い人間っているのでしょうか。
「そうなんですかぁ。じゃあ私は館に残してきた妖精メイド達が心配なので、1度月光館に帰りますね。今日のパーティーは楽しかったです。ヴァルターはゆっくり休ませてあげて下さい。」
「は〜い。ヴァルターさんが起きたらアズール様は月光館に帰ったと伝えておきますね〜。すぐそこですがお気を付けてお帰りください〜。」
そう言って小悪魔は奥で2人仲良く倒れている伯爵夫妻の介抱に向かった。
いつもは倒れるまでは飲まない伯爵が倒れるまで飲んでいるのは夫人が帰ってきて嬉しかったからに違いない。
ちょっと微笑ましい気持ちになりながらも私は月光館へと飛行を開始した。
「ただいま戻りましたぁ。皆さん怪我はしていませんかぁ?・・・って寒ぅ!?」
月光館に帰ってきた私は、玄関を開けて吹き出してきた凍えるような寒気に驚いた。
吸血鬼である私は、環境の変化に疎いはずなのに寒く感じるとはよっぽど寒いらしい。
それに館のあちこちが凍り付いている。
・・・。
な、なんで!?
「「「「「あっ。アズール様ぁ、お帰りなさーい」」」」」
そんな震える私を妖精メイド達が出迎えた。
皆所々かすり傷を負っている。
また、大妖精に弾幕勝負を挑んだのだろうか。
それにしてはいつもよりも傷が多い気がする。
・・・妖精達は最悪命の危機にさらされるくらい大怪我をすれば1回休みと言って1度消滅し自然から記憶を引き継いで生き返るらしい。
でも、だからと言って大怪我して良い理由にはならない。
「ただいまです。今日もまた弾幕ごっこですか。私としてはあんまり怪我して欲しくないのですが・・・」
そう言いつつ皆に自身の妖力を譲渡する。
これは言わば、私が開発した妖怪、妖精に対する回復魔法だ。
妖精や妖怪などの幻想の存在はそれぞれが持つ妖力によって怪我を治癒している。
妖精メイド達のように妖力の総量が少ない者は怪我の治癒に回す妖力は少なく、創傷治癒に時間が掛かる。
だから私の妖力を対象用に調整し、譲渡した余剰分の妖力をもって対象の治癒能力を促進するのである。
そもそも妖力というのは人間達の畏れから生じるものであり、太古より人間から恐れられている吸血鬼という存在は常に妖力が有り余っており、持て余しているのだ。
この魔法は私がもつ妖力の余剰に気付いた時から研究を続けており、まずは自分の妖力の質を理解する事から・・・・・・・・・
(中略)
・・・よって自分の妖力が多様性に優れている事を知った私は今でも妖力を使った魔法を模索しているという事です。
・・・おっといけません。
魔法の事となるとつい思考に没入してしまうのは私の悪い癖ですね。
まぁ吸血鬼の思考速度からして回復魔法を行使してからまだ10秒程しか経っていませんが。
「「「「「アズール様、ありがとうございます!」」」」」
回復を終えたらしい妖精メイド達がにぱっと笑顔を浮かべ私に抱きついてきた。
うん、貴方たちは今日も可愛いですね。
「ところで大妖精はどうしたのですか?」
そう言えば見かけない大妖精に気づき妖精メイド達に聞いてみる。
すると妖精メイド達は、ハッとなにか思い出したように・・・
「「「「「メイドリーダーはチルノちゃんと一緒に黒いのに攫われちゃった」」」」」
「へ!?」
メイド妖精達から告げられた事は二日酔いの私を叩き起こして目醒めさせるには十分過ぎるほどに衝撃的であった。
Great fairy perspective
A little while ago・・・
「わっはっはー。これであたいの勝ちね!」
「「「「「バタンキュー」」」」」
目の前で繰り広げられていた弾幕ごっこに勝敗が着いた。
勝者は青い髪の氷精さん。
・・・ちょっと驚いた。
私達は力の弱い妖精ではあるが、アズール様に弾幕魔法を教えて貰っている身である。
そこらの妖精には負けないくらい強くなったと思っていたのだが、目の前で楽しそうに小躍りしている氷精さんには傷1つなさそうだ。
対して妖精メイド達はいつもより1割増に傷付いているようだが、妖精にとってはあってないような傷だ。
もっともアズール様が見ればすぐさま妖精メイド達の傷を癒す為に自身の力を分け与えてくれるだろう。
アズール様はとっても心配性で優しいのだ。
アズール様が怪我をした妖精達を見てオロオロしている姿を想像して思わず笑みが零れる。
「次はあんたね?」
「・・・え!?私もですか!?」
妖精メイド達と氷精さんの弾幕ごっこの後片付けをしようと掃除用具を手に取った私に向かって氷精さんがビシッと指を指してきた。
妖精メイド達に勝利した氷精さんは今度は私とも弾幕ごっこをするつもりらしい。
「私は大丈夫ですよ!見てるだけで楽しかったですから。」
「問答無用!このチルノさんの目には、あんたがこの中で1番力がある事なんてお見通しなのよ!震え上がるが良い、あたいの力に!」
この氷精さん・・チルノさんと言ったか、全然話を聞いてくれない。
「チルノさん!遊びは止めにしましょう?ね?美味しい果物のバナナを出しますから」
・・・美味しい果物という言葉にちょこっと反応したが、無常にも目の前の妖精は妖力、魔力を纏い始めた。
それに比例して周囲の温度が下がっていく。
「「「「「メイドリーダーがんばれぇ。」」」」」
意外とピンピンしている妖精メイド達が離れた所で応援しているのが見える。
これは仕方ないのか。
「・・・こうなったら仕方ありません。」
普段は普通の妖精として過ごしていたからか、普通に生活をする分には余剰があった妖力もちょこっと利用して、弾幕ごっこに備える。
「「「「「勝負開始〜!!」」」」」
妖精メイド達の声で弾幕ごっこの火蓋が切られた。
両者ともにこてはじめに纏った力をぶつけ合う。
押し負けたのは私。
「ぐぅ!チルノさん!貴方本当に妖精ですか?妖精にしては有り余る力ですね!」
「ふふん!あたいは最強だからね!」
少しぐらつかされた隙を見逃さず、チルノさんは氷の礫で連撃してくる。
迫り来る氷の礫を弾幕魔法で撃ち落としながら、チルノさん目掛けて大量の大玉弾を射出する。
チルノさんは弾幕を凍らせたり、避けたりしながらもなお氷の礫を大量に放ってくる。
放たれた氷の礫は館のホールの側壁や床を凍結させていく。
凍結された箇所はどんどんと氷の壁を形成していく。
お掃除が大変そうだなぁ、と思いながらも私も負けじとナイフ型の弾をチルノさん目掛けて放つ。
勿論切っ先は丸く生成しているので、もし当たったとしても肌が切れたりだとか大怪我はしないはずだ。
・・・まぁ、当たれば痛そうだけど・・・
チルノさんは私が放ったナイフ弾をギリギリで掠めながら避けつつ、さらに氷の礫を四方八方に放っている。
チルノさんが放つ氷の礫も丸い小石くらいの大きさなので、どうやら怪我をしないように加減してくれているらしい。
しばらくの間、弾幕の応酬を続けて氷の礫をひょいひょいと避けていると、ひんやりとした冷気が肌に触れた。
はっとして辺りを見渡してみると辺りの壁や床、天井までもが分厚い氷で覆われていることに気が付いた。
っしまった!
このままじゃ私まで凍らされてしまう。
・・・どうにかこの氷に覆われた部屋から脱出しないと
そう考えて部屋から脱出しようとするも、チルノさんから放たれた虹色に光る綺麗な弾幕が脱出を許さない。
「わっはっはー。準備は整ったわ。くらぇー、あたいの必殺、〖パーフェクトフリーズ〗」
氷に阻まれ身動きが取りにくくなっていた私目掛けて虹色の大量の妖力弾が放たれた。
その妖力弾は放たれて少しすると空中で凍って制止する。
氷の壁に囲まれてただでさえ狭くなった部屋が、更に氷に阻まれ狭くなる。
まるで部屋全体が凍らされたかのようだ。
私の周囲も氷の弾幕で埋め尽くされていて身動きが取れない・・・
ふと、チルノさんの方を見てみると、ニカッと笑ったチルノさんが私目掛けて妖力弾を放とうと構えている。
この狭い中ではこれ以上の追撃は避けられない。
「どうだ!降参?」
「・・・降参です。参りました。」
少し悔しいが私ではチルノさんに勝てない。
チルノさんはなんというか戦い慣れている。
いつの間にか凍らされてた部屋といい、妖力や魔力の扱い方といい戦い慣れているような感じがする。
なんで妖精が戦い慣れているかは疑問ではあるが、そう感じさせる程に私はチルノさんのチェックメイトに見事にハマってしまった。
「わっはっはー。どうだぁ、あたいってば最強ね!」
チルノさんは構えていた妖力弾を霧散させ上機嫌に笑っている。
うぅ、すっごく疲れた・・・。
とにかく凍りついた館を元に戻さないとヴァルター様が帰ってきたら怒られてしまう。
「・・・あの、チルノさん?」
「あたいもあんたも一緒の妖精なんだからさん付けしなくても良いわよ。」
「じゃあ、チルノちゃん。この凍ってるのを直して欲しいのだけれど・・・」
「え?・・・あ。・・・えと、その、時間が経てば溶けると思うよ・・・多分。」
途端にオロオロし始めたチルノちゃん。
・・・もしかして後始末の事を考えずに遊んでいたのだろうか。
「・・・チルノちゃん?後片付け、手伝ってね?」
にっこり笑顔でチルノちゃんに迫る。
「わ、分かったってば。分かったからその怖い顔をやめてよぉ。」
うんうん。
チルノちゃんが聞き分けの良い良い子で良かった。
「そう言えばあんた名前持ちでしょ?他の子も普通じゃないくらい強かったんだけど、あんただけは、なんか普通の妖精と考えられないくらい、強かったし。名前はなんていうの?」
「一応大妖精って大層な名前を頂いてるけど・・・」
「じゃあ、大ちゃんだね。楽しかった!また今度弾幕ごっこ?しようね!」
「まだ帰っちゃダメだよ。」
逃げるチルノちゃんの手をガシッと掴む。
「わ、分かってるよー。ちょっとだけはっちゃけ過ぎちゃったのは謝るし、片付けも手伝うから。許してよぉ。」
うんうん。
分かればよろしい。
・・・そう言えば、元々チルノちゃんはこの館には妖精攫いがいると言われてそれを懲らしめるために来たとか言ってた。
誰からその話を聞いたのだろう?
アズール様の為にも聞いておかないと。
「そう言えば、チルノちゃんは・・・」
「大ちゃん!!!」
妖精攫いの事について聞こうとした私を遮って、いきなりチルノちゃんが私をお姫様抱っこして抱えてきた。
え、えええぇ!?い、いきなり!?
私をお姫様抱っこしたチルノちゃんは、今いる場所からすぐさま離れる。
離れた瞬間、真っ黒な細長い鎖のようなドロドロとしたものが、いくつも先程まで私達がいた地面から生えてきた。
「っ!?な、何・・・これ?」
その黒い鎖と表現される鎖は、一切光を通さない程に真っ暗で、感じる妖力も禍々しく不気味だ。
ガチャり、バタン
ゆっくりと玄関が開き、閉じる。
そのまま館に入ってきたのは黒い塊。
まるでそこだけが暗闇に閉ざされているかのような空間。
その空間が丸ごと館に入ってきた。
「「「「「ひっ」」」」」
その闇の塊に妖精メイド達が怯える。
するとその闇から赤い目が浮かび上がり妖精メイド達を見据えた。
そして闇が笑みをかたどる。
まるで獲物を見つけたかのごとく。
・・・や、やばい。
み、皆を助けないと。
「あっあう。」
「あんた・・・・何者?」
恐ろしさから声が上手く出せない。
先程までのほほんとしていたチルノちゃんが、今は鋭い目付きで闇を見据えながら声を掛ける。
「さぁ?・・・わたしは何者なんだろうね?わたしにもわかんないや・・・」
闇の中から鈴のような女の子の声が聞こえる。
「まぁ、そんな事は些細なこと。わたしは貴方達に興味を持ったの。一緒にきて?」
そんな言葉とともに、どこからともなく四方八方から先程の黒い鎖が現れる。
「くっ。〖アイシクルフォール〗」
そんな黒い鎖にチルノちゃんは、すぐさま氷の弾幕の壁を四方に展開し防御する。
しかし相手の手数が多い。
「ぐっ。」
チルノちゃんの足に黒い鎖が絡まる。
「大ちゃんだけでも逃げろ!」
チルノちゃんが自分が捕らわれたまま、私を逃がそうとするも、私も黒い鎖に捕まってしまう。
「くうぅ。」
「大丈夫だよ。悪いようにはしない。ただ一緒にきてほしいの。」
そんな言葉とともに、チルノちゃんと私は闇に包まれた。
「くそ、姐さんに聞いたぞ!悪い奴らは皆、そんな風に言って悪い事を企むんだ。」
「失礼なこと言わないでよ。ただ、着いてきて欲しいだけなんだから」
そんな問答を聞きながら私の意識は闇へと沈んでいった。
〖後書き〗
突然ですが私は文章を書く際に作業用BGMを聞きながら書いています。
今回のお話は幽閉サテライト様の《ヒトリシズカ》、秋山裕和様の《ホシノキセキ》を聞きながら書いていました。
今回のお話に登場した新キャラクターは幽閉サテライト様の《ヒトリシズカ》をモチーフにキャラ作りしています。
毎度ですが解釈違いなどあれば申し訳ありません。
ちなみに、〖ヒトリシズカ〗と呼ばれる花があります。
茎の先端から4つの葉が伸び、その中心部分からブラシのような可愛らしい白い花が咲いているのが特徴的な日本を含む東アジアに分布する花です。
花言葉は「静謐」「隠された美」
静謐(せいひつ)とは静かで安らかなこと。世の中が穏やかに治まることを意味します。
その花言葉のごとく見ていてとても穏やかな気持ちにしてくれる花なので良ければ画像検索して見てみてください。
さて、第2章も終盤に突入してきました。(o^∀^o)
これから先どうなるかはお楽しみに。(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑
次回投稿は仕事が異動になる関係で1週間とちょっと掛かるかもしれません。
申し訳ありません。m(__)m