東方庇護録(旧作)   作:まほろばのーぶる

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第16話:闇の怪物、光の少女~モナドの標、帳の行方~

Jabberwock? perspective

 

いつものように意味もなくただただ宙に漂う。

 

最近は人間達から討伐隊が送られることが少なくなり、少しだけ退屈していた。

 

今日も今日とて綺麗な月を見ながらふよふよと、目的も無く飛んでいた。

 

そんな時。

ふと、通り掛かった山の山頂に怪しい館が建っているのが見えた。

 

「この辺りには館が多いねー。」

 

この間見つけた館は館の門番、正確に言えばその周囲の湖の番人の吸血鬼に追い出されてしまったが、この館には見たところ門番らしき妖怪がいない。

 

その館の中で割と強い妖力同士がぶつかり合っているのを感じたわたしは、少しだけ興味を抱いて館に向かうことにした。

 

感じる力は人間達から異常に畏れを集めている自分には遠く及ばない。

 

でも、と向かいながら独り呟く。

 

「誰かとお話したいなー。」

 

恐らく、こんな山奥にある館は大体妖怪達の住処、それも館なんて大層な住処に住むのは力ある妖怪である可能性が高い。

 

この前の館には湖の番人に門前払いされてしまったから出来なかったけど、もしかしたら久しぶりに会話ができる存在がいるかもしれない。

 

最近は静かすぎて独り言が増えてきているのである。

 

孤独は時に妖怪をも狂わせる。

 

「とりあえず、捕獲して持って帰ってお茶でもしながらお話しよう。まぁお茶も、帰る場所もないんだけどねー。」

 

この間、門番らしき妖怪に追い返されてから、また独り言が凄く増えた。

孤独感がさらに高まった。

 

拒絶された事が割とショックだったのかな?

 

自分の事なのに、まるで他人を見ているかのように、闇に包まれた自分自身に関心が持てない。

 

闇に包まれた本心はどう思っているかも分からずに。

まぁ、いっか。

と半ば思考を放棄する。

 

闇に包まれた少女がずっと前から泣いている事になんて気付かずに

 

でもその少女が求めるがままに、足早にわたしは、山頂に佇む館へと向かった。

 

 


 

 

「館の中には妖精がたくさんいるねー。ぶつかり合っていたのは、その中でも力の強い妖精?なのかなー。緑髪の子と青髪の子ねー。とりあえず、捕獲しよーっと。」

 

館に着いた頃には、ぶつかり合っていた妖力はなりを潜め和解ムードだった。

 

とりあえず、妖精かどうかも分からない強い力を持つ青と緑の子を捕縛する為に闇を操る。

 

「大ちゃん!」

 

即座に反応した青髪の子が緑髪の子を抱えて、闇から逃れる。

 

ありゃ?

こっそり捕まえようとしたつもりなのに気付かれて避けられちゃった・・・

少し見くびってたよ。

 

あぁ、そうだ。

 

「とりあえず、挨拶しなくっちゃ失礼よねー。」

 

そう呟いたわたしは館の玄関を開けて中に入る。

 

「「「「「ひっ」」」」」

 

館に入ったわたしに突き刺さるのはいつもの如く恐怖の眼差し。

 

いつもの事だから慣れっこだけれど、やっぱりそんな目で見られるのは嫌だなぁ。

 

とりあえず、怯えた小さな妖精達に敵意が無いことを示す為に闇で象った笑顔を向けてみる。

 

・・・何故かさらに怖がられた。

・・・?

何でだろう?

 

「あんた・・・・何者?」

 

おぉ、久しぶりの問答だ。

 

わたしが誰かって?

そんなのわたしも知りたい。

 

「さぁ?・・・わたしは何者なんだろうね?わたしにもわかんないや・・・」

 

とりあえず思った事をそのまま口にする。

とにかく、他の小さな妖精達がガタガタ震えて怖がっていて可哀想だから、早いとこ2人を捕獲して連れ出そう。

 

「まぁ、そんな事は些細なこと。わたしは貴方達に興味を持ったの。一緒にきて?」

 

闇を操り、鎖を生成する。

 

「くっ。〖アイシクルフォール〗」

 

青髪の子は緑髪の子を庇いながら氷の壁で鎖を防ごうとする。

 

でも、防ぎ切れないね。

 

「ぐっ。」

 

捕まえた。

 

「大ちゃんだけでも逃げろ!」

 

青髪の子は庇っていた緑髪の子を離し逃がそうとする。

逃がさないよ。

 

「くうぅ。」

 

とりあえずは2人とも、闇で捕らえる事が出来た。

そのまま、闇に包んで連れ出そう。

 

「大丈夫だよ。悪いようにはしない。ただ一緒にきてほしいの。」

「くそ、姐さんに聞いたぞ!悪い奴らは皆そんな風に言って悪い事を企むんだ。」

 

・・・どうしよう。

 

久しぶりの問答が楽しい!

 

楽しい!!

 

楽しい!!!

 

「失礼なこと言わないでよ。ただ、着いてきて欲しいだけなんだから。」

 

わたしを恐れながらも会話ができる胆力のある青髪の子。

青髪の子程でも無いけれどわたしに立ち向かう気概をちょっぴり見せてくれた緑髪の子。

 

そんな子達を闇に包んで連れ去る中、もう離したくない、ずーっと闇に包んで話し相手になってもらおうかとも思い始める。

 

孤独は時に妖怪をも狂わせる。

 

夜の闇は東の空から次第に白み始める。

 

狂い始めた暗闇の妖怪は2人の妖精を連れてまるで日の出から逃げるように闇深い西へ西へと移動を始めた。

 

 


Great fairy perspective

 

 

「・・ちゃん。大ちゃん!大丈夫か!?」

「う、うぅ。」

 

私を呼ぶ声に意識が戻ってくる。

 

どうやら、気を失ってしまっていたようだ。

 

開けた目に映るのは辺り一面黒い壁。

・・・いや、何も見えない。

 

「大ちゃん!」

「その声は、チルノちゃん?」

「そうだぞ、最強のチルノさんだぞ!良かった大ちゃん、無事で。声が聞こえなくなったから心配したんだぞ!」

 

チルノちゃんの声は聞こえるが姿が見えない。

 

「あれ、私達どうなったんだっけ?」

「黒いのに捕まって誘拐された。」

「え、えぇ!?」

 

そう言えば、気を失う前に黒い鎖に捕まったんだった。

・・・という事は本当に誘拐されちゃったの?

 

「・・・こ、ここはどこなの?」

「真っ暗だから分かんないな。」

 

確かに見渡す限り真っ暗闇で何も見当たらない。

 

感じるのは右手に感じるチルノちゃんの温もりくらいだ。

 

・・・ん?右手?

 

「!?チッチルノちゃん!・・その、て、手を・・・。」

「ん?・・あぁ、こうしてると真っ暗でも怖くないだろ?大丈夫だぞ!なんとかなる!最強のチルノさんに任せとけ。」

 

チルノちゃんは真っ暗闇が怖くて震える私の手をぎゅっと握ってくれていた。

 

その言葉は半ばパニックになっていた私を少し安心させてくれる。

 

会って間もないけれど、チルノちゃんは凄く良い妖精だと身を持って知る事ができた。

こんな状況だけれど、怖がってる私に気付いて、励ましてくれた。

とっても優しくて・・・かっこいい。

 

・・・真っ暗でちょっとだけ良かった。

 

多分今の私の顔は恥ずかしさで真っ赤に染まってるだろうから。

 

 

「おー。目が覚めたのかー。」

 

暗闇から聞こえる鈴のような女の子の声。

気を失う前に闇から聞こえてきた声だ。

 

「あたい達を捕まえて、どうするつもりだ!」

 

すかさず、チルノちゃんが闇に向かって問いただす。

 

「あはは!あなたは本当に勇敢なんだねー!大丈夫。ただ、話し相手になって欲しいだけだよー。」

「嘘だな!話し相手になるだけなら誘拐する必要なんてないじゃないか。」

「そうなんだよねー。ちょっと気が変わったのー。貴方達を闇に包んで永遠に話し相手に、

友達〗になってもらおうかと思って。」

「ひっ」

 

こんな暗闇の中にずっといたら、おかしくなってしまう。

そんな想像をして怖がる私の右手を、チルノちゃんがさらにぎゅっと握ってくれる。

 

「そんなの御免だね!友達ならもっと真っ当な方法で作りなさいよ!」

「・・・そうだよねー。でも、もうあなた達は捕まえたんだから逃がさないわよー」

 

ジャリジャリと鎖が擦れる音がする。

 

どうやら私達2人は鎖に繋がれているようだ。

 

「こんなにわたしとお話できる妖怪は初めてなのー!絶対に、逃がさないわー。」

「妖怪じゃなくて、あたい達は妖精だ!」

「あれぇ?そうなの?・・・まぁ、どっちにしてもわたしにとっては些細なことだよ。」

「・・・話し相手ならあたい1人で十分だろ!大ちゃんは離してあげろよ!」

「ち、チルノちゃん!?」

「・・・大ちゃんってその緑髪の子ー?でも、その子もわたしにちょこっとの勇気を見せてくれたんだものー。友達候補は多い方が良いでしょー?」

 

そう言う暗闇の子の言葉に私の右手を握るチルノちゃんの手に力が篭もる。

 

「くっ。大ちゃんごめん。ちょっと痛いかもだけど我慢してね!」

「えっ?チ、チルノちゃん?」

 

ガキンッ

 

そんな言葉とともに、少しの衝撃と共に私の両足に繋がれていた闇の鎖が弾ける音が聞こえた。

 

そして、繋いでいた右手が離され、トンッ、と私を闇から何かが優しく押し出す。

 

私を押し出すものが氷の柱だと気付けたのは、私が闇から脱出出来てからすぐの事だった。

 

 


Cirno perspective

 

 

「ありゃりゃ。緑髪の子には逃げられちゃったかー。」

 

よし!大ちゃんは脱出できたようね。

 

「ふ、ふん!あんたなんかにあたいを完全に捕らえる事なんて出来ないのよ。」

「そんな姿でも、まだ強がれるんだねー。すっごく勇敢だけど。わたし、ちょこっと怒ってるんだよー。」

 

ジャリジャリ

「あぐっ!?」

 

真っ暗闇で見えないけれど、今あたいは黒い鎖にぐるぐる巻きの簀巻きにされてるみたいだ。

大ちゃんが逃げて少し怒ったのかギリギリと鎖を締め上げてくる。

 

ぐうぅ。

ざ、ざまーみろぉ。

 

「まさか鎖で雁字搦めにしていてもあなたを捕らえきれないとは思わなかったよー。緑髪の子には2本しか鎖を繋げていなかったから逃がしちゃったけど、もうあなたは絶対に離さないよー。」

 

ジャリジャリジャリジャリ

 

真っ暗闇で何も見えないけれど、気配で分かる。

 

あたいに絡みつく鎖は私を雁字搦めにして離さない。

・・・これは、どうにも抜け出せそうにない。

 

・・・年貢の納め時ってやつなのかな。

で、でも大ちゃんを逃がせた事はよくやったあたい、と自分を褒めてあげたいくらいだ。

 

全力で暴れたらさっきまでの鎖の量ならギリギリ壊せたからといって、そんな機会を捨てて大ちゃんの救出を優先した事に、後悔なんてしない。

あたいは友達を見捨てるなんて事は絶対にしない!

 

それに、チルノさんの辞書に後悔なんて言葉は無いのだ!

 

「・・・もう一度聞くわ。あんたは、何者なのよ。」

 

そう言えば答えられていない、この闇の中の少女にもう一度正体を問う。

 

「ありゃー。そう言えば名乗ってなかったね。それに、あんな適当な自己紹介じゃぁ失礼だよねー。うっかりだよ。」

 

そう言って闇の中の女の子は自己紹介を始める。

 

「わたしは正体不明の妖魔、恐怖の暗闇の妖怪、人間達からは〖ジャバウォック〗と呼ばれて怖がられてるよー」

 

軽い感じで話された自己紹介。

 

その声は寂しそうで、悲しそうな声だった。

 

そんな時。

 

「え?貴方はそんな名前じゃないでしょう?」

 

聞いただけでも何故か落ち着く、魔性の声が唐突に闇に響いた。

 

 


Asyl perspective

 

 

吸血鬼として持ちうる能力の最大速度で、大妖精のいる西の方角に高速移動を開始する。

 

妖精メイド達に聞くと、大妖精とチルノさん?が攫われたのはつい10分程前らしい。

そう遠くまでは行っていないはずだ。

 

というかチルノさんって、あのチルノさんだろうか?

 

思い出すのは前世の知識。

書物には氷の妖精、雪ん娘と呼ばれ、妖精の中でもとりわけ強い力を持つとされる妖怪に近しい存在と記載されていた。

 

あと、アホの子とも書いていた。

可哀想だと思った(小並感)

 

・・・まぁ、そんな事は置いといて今は攫われた大妖精を救う。

それだけを考える事にする。

 

そんな思考をしつつも私は大妖精の気配を辿ってマッハ3を軽く超えるスピードで移動する。

 

大体5秒程で、前方に黒い球体が見えてきた。

 

半径50mはあるだろうか?

とても大きな球体の空間だ。

 

その黒い空間を見て、吸血鬼の超速思考はその正体を前世の幻想郷についての書物に登場する〖闇を操る程度の能力〗を持つとされる()()の妖怪であると結論付ける。

 

なんだろう、今日は良く幻想郷の物語の登場人物に会うことができるなぁ。

 

そんな事を思いながら、黒い空間に追従して、どうしようかと思案していると突然そんな闇の中から氷の柱が生えてきた。

 

その氷の柱の先端に探していた大妖精を見つけた私は、超速で移動し大妖精を抱えて少し離れる。

 

「大妖精!大丈夫ですか?怪我はないですか?」

 

即座に自分の妖力を大妖精に流す。

 

・・・ふぅ、良かった。

とりあえず大きな怪我はないようだ。

 

「う、うぅ。ア、アズール様。申し訳ありません」

「良いんです!無事で良かった。」

 

抱き抱えて、黒い空間から離れようとすると、大妖精が(すが)り付いてくる。

 

「ア、アズール様!チ、チルノちゃんが、チルノちゃんがぁ。た、助けて、チルノちゃんを助けてあげてください。」

 

【挿絵表示】

 

私に縋り付く大妖精は泣いていた。

泣いている大妖精なんてすっごくレアだ。

・・・何とかしてあげたい。

 

状況からして、恐らくチルノさんは自分の脱出より大妖精の脱出を優先してくれたみたいだ。

 

「大丈夫です。大妖精、後は私に任せてください。」

 

泣き止んで落ち着いた大妖精をゆっくりと下ろし、闇を見据える。

吸血鬼の視力を持ってしても見通せない闇に対して、自分で開発した魔法を使う事にする。

 

空間把握魔法

 

空間に存在する微小な物質を自分に分かりやすいように情報化し、その空間を把握する魔法だ。

 

魔法についての詳しい説明は後回しに、魔法を自分の周囲50m程に展開し闇に飛び込んだ。

 

 

闇の中に居たのは2人の女の子。

 

不思議な事に2()()()()鎖に雁字搦(がんじがら)めにされている。

片方の女の子はなんとか抜け出そうともがいているが鎖はびくともしていない様子だ。

もう一人の女の子は何も抵抗せずに膝を抱えて(うずくま)っている。

 

そんな女の子達は話をしている様子で、吸血鬼の地獄耳に話し声が聞こえてくる。

 

「・・・もう一度聞くわ。あんたは、何者なのよ。」

 

恐らくこっちの雁字搦めにされていながらももがいている女の子がチルノさんの方だろう。

 

「ありゃー。そう言えば名乗ってなかったね。それに、あんな適当な自己紹介じゃぁ失礼だよねー。うっかりだよ。」

 

なら、鎖に雁字搦めにされながらも無抵抗で膝を抱えて蹲っているこっちの子が・・・。

 

「わたしは正体不明の妖魔、恐怖の()()の妖怪、人間達からは〖ジャバウォック〗と呼ばれて怖がられてるよー」

 

・・・あ、あれ?

・・・ジャバウォック?

 

「え?貴方はそんな名前じゃないでしょう?」

 

思わず疑問に思った事を口に出してしまう。

 

前世の幻想郷の記憶とここまで合致して、名前が違うなんて考えられない。

 

「っ!?いつの間にかわたしの闇に踏み込んでいるあなたはだーれ?」

「私はアズール。多分吸血鬼です。」

「あなたもわたしを怖がらないでいてくれるんだねー。」

「?どうしてあなたを怖がらないといけないのですか?そんなに可愛らしい女の子の姿なのに。」

 

 

「え?」

 

 

闇が揺れる。

 

「・・・違うよ?よく見てみて?わたしは化け物。皆に怖がられている醜くてこわーい怪物なんだよー。」

「いえいえ、私の目には蹲って泣いている可愛らしい女の子が見えていますよ?」

 

「・・・い、いや、ち、違う。そ、そんなはずはない。だって昔からわたしは皆に化け物、怪物と怖がられて・・・。」

 

揺れる闇が蹲っている女の子に収縮していく。

 

収縮していく闇からチルノさんが放り出される。

 

「うわぁ!?」

 

視界の端でチルノさんが鎖から解放されて脱出する様子が見える。

 

そんなチルノさんに大妖精が駆け寄るのを魔法で感知してあちらは大丈夫だと判断し、鎖で雁字搦めにされた目の前の膝を抱えて蹲った可哀想な女の子に目を向ける。

 

「あなたは暗闇の妖怪ジャバウォックなんて名前ではありません。貴方の名前は・・・」

 

「うるさい。・・・わたしの名前はジャバウォック。太古から人間や妖怪達から忌み嫌われている暗闇の妖怪。変な干渉をしないで。」

 

そんな言葉とは裏腹に空間把握魔法で把握している彼女はこちらをチラリと覗いて口を開く。

 

 

助けて

 

 

と。

 

四方八方から鎖が現れる。

そんな鎖を空間を把握している私は闇の中でもひらりひらりと避けていく。

 

「〖ラオムフェスト〗」

 

ラオムフェスト、空間を固定し固める魔法だ。

その魔法で空間を固定し闇の鎖を逆に捕らえる。

 

「!?ど、どうして」

 

さらに生成された鎖を同様に避けては空間に固定していく。

 

「おっとっと。ちょっと落ち着いてお茶を飲みながらお話でもしませんか?」

「だ、だめぇ!こ、来ないで!来ないでよ!」

 

さらに闇が闇の少女へと収縮していく。

魔法で固定されていない闇は全て女の子に集まっていく。

 

どんどんと闇は小さく、濃くなっていく。

 

「おぉー。闇が晴れるのは見ていて気分が良いですねってあづぅ!?

 

収縮していく闇から放り出された私は、いつの間にか顔を覗かせていた陽の光に当たって煙を出す。

 

「あいたたた。久しぶりの陽の光は肌に染みますねぇ。」

 

とりあえず、服飾魔法で体全身を覆うローブを創造し着ておく。

それでもまだちょっとヒリヒリして痛いけど。

 

彼女の闇はいまや、大体半径5m直径10m程の球体まで小さくなっている。

 

でも先程よりも濃くなった闇から感じる妖力は膨大だ。

 

あの子達の代わりにあなたを捕まえて永遠にわたしの傍に置いてあげる。

 

そんな言葉とともに闇から大量の鎖と闇で象った怪物が現れる。

 

その怪物はドラゴンのようで、全長は10mくらいだろうか、大きい。

その鉤爪は鋭く、口は大きく開いてギザギザの歯は何もかもを噛み砕きそうな程に迫力がある。

 

その闇のドラゴンは赤い目で私を睨みつけながらゆらゆらと揺れながら近付いてくる。

 

これは確かに人間達がこの姿を見れば怪物やら化け物と言って恐れるだろう。

 

でも、魔法で把握している私は、闇の中で膝を抱えて蹲る女の子を把握している。

 

きっとひとりぼっちで泣いているのだろう。

早く助けてあげないと。

 

 

「グルルルアァァァ」

 

 

闇のドラゴンがゆらゆらと揺れ、咆哮をあげながら襲いかかってきた。

 

それと同時に数えるのも馬鹿らしくなるくらいの鎖が私目掛けて放たれる。

 

その全てを超速で避けながら、闇のドラゴンの闇を空間固定魔法によって捕らえていく。

 

「あぐっ!!」

 

捕らえきれなかった闇のドラゴンの尾が私の腹部を捉える。

 

【挿絵表示】

 

うぐぅ。

油断しました。

闇なんですから空間固定で捕まえてもその余剰だけでも動けますよね・・・。

 

軽く5mくらい吹き飛ばされながらも思考は冷静だ。

なんせ、この吸血鬼の身体は異常に頑丈なのだ。

 

()()()()()()()()()()

 

「とりあえず全ての闇を空間固定で捕まえましょうか」

 

1度立ち止まり、大きな空間を固定するために膨大な妖力、魔力を操る。

 

その間にも闇のドラゴンや鎖は私に追撃を加えようと襲いかかってくる。

 

しかし、私の周囲に張り巡らされた結界に阻まれる。

 

「この結界魔法は簡単には破れませんよ。」

 

結界で時間を稼ぎつつ、大規模な空間固定の準備が整った。

 

「これで、おしまいです!〖ラオムフェスト〗」

 

全ての鎖とドラゴンの全身を大きな空間に固定し固める。

 

「〖圧縮〗」

 

そうして捕らえた全ての闇を手のひら大の大きさまで圧縮する。

 

 

「ふむ、さてと。」

 

依然として膝を抱えて蹲っている女の子にゆっくりと近付く。

 

「こっ来ないでよぉー。」

 

薄く、小さくなった闇の中、蹲った少女はぎゅっと縮こまる。

 

「いえいえ、こんな可愛らしい女の子に助けを求められたのですから助けない訳にはいきません。」

 

半径1mくらいまで縮んだ闇の中に手を伸ばす。

 

「もう一度言います。貴方は化け物なんかじゃありません。暗闇の妖怪ジャバウォックでもありません。」

 

空間把握魔法で把握している女の子の頭にそっと手を置く。

 

前世の記憶と相違があり、違和感があった彼女の左側頭部に先程圧縮した闇を用いて服飾魔法で赤いリボンを創造し付けてあげる。

 

【挿絵表示】

 

「貴方は〖ルーミア()〗可愛らしい()()の妖怪ルーミアですよ。」

 

その瞬間、闇が完全に晴れた。

 

陽の光に照らされてキラキラと美しく光るのは綺麗な金色のボブカットの髪。

姿は幼い美少女。

黒を基調とした白黒の服に黒いロングスカート。

その綺麗な赤い目からはポロポロと涙が零れている。

 

【挿絵表示】

 

儚げでいて、嬉しさを滲ませる可愛らしい笑顔でその幼い口が言葉を発する。

 

【挿絵表示】

 

「そーなのかー。」

 

 




【後書き】
さて原作キャラクタールーミアさんが登場しました。(≧∇≦)/
毎度のことですが解釈違いなどあれば申し訳ありません。m(__)m

今回の話では毎度のことですが作業用BGMを流しながら書きました。
今回は前回と同じく幽閉サテライト様の《ヒトリシズカ》、秋山裕和様の《ホシノキセキ》と追加でYonder Voice様の《雪幻ティルナノーグ》、幽閉サテライト様の《孤独月》をBGMに書きました。
どれも素晴らしい曲で聞いていて幸せな気持ちになれる曲でした。(♥ω♥*)

さて今回の話では荒削りではありますが、起承転結の承転結の部分を盛り込ませてしまいました。(^^;)
わかりにくければ申し訳ありません。(>人<;)

ここで少し物語の補足?、ちょっとした解説をしたいと思います。
ルーミアさんの呼び名ですが、ジャバウォックというのは皆さん誰もが知る不思議の国のアリスからジャバウォックの詩に登場する怪物をモチーフにさせていただきました。
その原作ではジャバウォックはヴォーパルソードと呼ばれる剣で首を落とされますが、本作品ではそんな酷いことは絶対にできない(作者はグロくて不幸せな展開は無理なので・・・)ので本作品では採用しませんでした。
そしてそんなジャバウォックを闇、ルーミアを光と喩えて今話を書いてみました。
ルーミアとはラテン語でルーメンを語源とされる説もあります。
ルーメンとは光を指し、光の単位としても使用されています。
《pixiv百科事典より抜粋》
また、夕焼けから月が出るまでの薄暗い時、逢魔が時を夕闇、もしくは宵闇と呼びます。
真っ暗闇から、少し暗さが薄くなっていく事も意識して、暗闇の妖怪ジャバウォック→宵闇の妖怪ルーミアという意味でも少し明るくなったイメージを描写出来ていたら良いなとは、思います!

また登場する魔法は基本ドイツ語となっています。
ラオムフェスト→空間固定みたいな感じです。
作者のドイツ語力は初級も初級なので間違っていたら恥ずかしいですが、なんかカッコ良ければそれで良いかな〜って思っています。(^^;)

今回の話でちょこっとだけ登場した湖のほとりに建つ館は紅魔館ではありません。その麓の湖と館にはそれぞれ2人の門番がいて、なかなかに強固な守りのある館です。
この館ももちろん原作?から引用しています。
これから先登場していくので楽しみにしていただければ幸いです。

次回は少し先の1週間とちょっと後になると思いますがよろしくおねがいします。

たくさんのUA、お気に入り、評価をありがとうございます。
誤字脱字や文章の稚拙さなど目立つ部分も多いかと思いますが、応援していただけてとっても嬉しいです。
今後も東方庇護録はまだまだ続いていきますので楽しみに待っていただけたら幸いです。
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