東方庇護録(旧作)   作:まほろばのーぶる

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第17話:笑う暁月、微睡む少女~うつらうつらと夢心地~


Asyl perspective

 

 

さて、泣いていた女の子、ルーミアちゃんの闇を晴らすことが出来て満足していた私ですが、重要な事を忘れていました。

 

「へぁ!?んひゃぁ!?」

 

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急に全身が脱力し、思考が乱れる。

まるで、私の身体から大事なものが根こそぎ引っこ抜かれるかのような感覚に、魂が驚愕の悲鳴をあげ、背筋が冷たくなる。

 

このえもいえない嫌な感覚は、今まで何度か経験した事がある・・・

・・・し、しまった。

久しぶりの名付けだから油断してたし、忘れてた!

 

そんな焦る私をさておいて、名付けとともに大量の妖怪としての存在値、妖力が消費されていく。

その莫大な妖力の消費に伴って生じる全身の脱力とともに、太陽から身を守る為に私を覆っていたローブの服飾魔法が維持出来ず解除される。

 

「うぁっ眩しっ、てあづぅぅぁぁ!?

 

今の今まで吸血鬼にとっては死活問題の日光を遮ってくれていたローブが消失し、もろに日光を浴びる。

 

今日に限って雲ひとつない空には太陽が浮かんでおり、世界に朝を伝えている。

あら、今日は良いお天気ですね、ってそうじゃなくって、これは大ピンチなのでは!?

 

今、私は上空大体50mくらいに浮いている。

つまり、太陽から身を隠せる手段が何も無いのだ。

・・・これって、まさか詰みなのでは?

 

何とか打開策を吸血鬼の超速思考で模索してみるも、現実はさらに非情でした。

 

「っえ?って、ひゃあぁぁあ!?落ちるぅぅぅ!!」

 

吸血鬼になってからは久しく感じていなかった、高い所から落ちた時のガクッとした浮遊感と共に飛行の為の魔法が維持できなくなる。

そして、私は日光により煙をあげながら地上へと墜落していった。

 

墜落しながらも、吸血鬼の強靭な精神力は冷静に現状を分析し始める。

 

距離にしておよそ50mの位置からの落下。

空気抵抗等を考えず、自由落下として計算すると、地面に衝突するまでの時間はおよそ3秒程度。

 

その3秒の間に妖力、魔力の回復が完遂する可能性は限りなくゼロに近く、再度飛行、及び日光の防御は不可能。

つまり、私の身体は地面に激突する事は免れる事はできないですね・・・

ま、まぁ、この吸血鬼の身体は頑丈ですから、地面に激突してもだ、大丈夫でしょう。

・・・ぐぬぬ。

痛そうですが、我慢ですよ、私。

 

・・・というふうに、コンマ1秒にも満たない思考時間で吸血鬼の耐久力なら落下の衝撃にも耐えられると結論付け、なすがまま墜落する事にした私でしたが、ふと墜落する場所を見てそんな結論もぶっ飛びました。

 

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墜落予想地点に見えたのは、朝日に照らされ美しく光る川。

 

それも、小川だとかせせらぎだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてないです。

その川は、もっと深くて、激流の、吸血鬼にとっては恐ろしいものでした。

 

「いやあぁぁぁぁ!?流水はだめぇぇぇ!!」

 

吸血鬼の本能に従って、正しくパニックになり始める。

吸血鬼は流水も苦手なのである。

 

「どうしたの?」

 

そんなパニック状態で墜落していく私を誰かがふわりと抱えてくれた。

それと同時に薄い黒い膜が周囲に張られ日光を遮ってくれる。

 

「大丈夫ー?お姉ちゃん。いきなり奇声をあげながら落ちていったからビックリしたよー。」

 

顔を上げると金髪美少女がいた。

ニッコリと笑う、まるで天使の様に可愛い美少女は私を心配してギュッと抱きかかえてくれた。

 

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「ルーミアちゃんん!!助かりましたァァァ!!」

「ちょちょちょ、ちょっと、抱きつかないでよー。いきなりは心の準備がー。」

 

安心した勢いのまま半泣きでルーミアちゃんを抱きしめる。

 

今のは本当に危なかった、大怪我するところだった。

吸血鬼の私があんな激流の川に落ちたら、日光に焼かれてやけどするどころではなくなってしまう。

 

「ルーミアちゃんは私の命の恩人ですぅぅぅ!!」

「わかった、わかったから落ち着いて抱きつくのをやめてよー。くんくんと匂いも嗅がないでー。」

 

抱きついたルーミアちゃんは頬を赤らませて恥ずかしがっている様子だ。

 

多分、誰かにこんなにベタベタとされたことがなかったんだろう。

 

反応がすごく初々しく、見た目も可憐で可愛らしいルーミアちゃんが照れている姿はなんというかものすごく萌える。

あぁもう、ずっと抱きしめてあげたい。

 

あと、抱きついたルーミアちゃんはすごくいい匂いがしたとここに記しておきます。

 

「ア、アズール様!」

「なんだー?一体どうなったんだ?」

 

ルーミアちゃんを抱きしめて匂いを嗅いでいると、大妖精とチルノさんが近づいてきた。

2人とも怪我もなく元気そうである。

 

ルーミアちゃんは私に抱きしめられて困ったような顔で苦笑いをしている。

 

「え?あなたが闇の中にいた妖怪ですか?」

「なんだ、お前たち仲が良さそうだな。」

 

大妖精は闇の中にいた妖怪が、可愛らしい女の子の姿をしていることに驚き、チルノさんはそんなルーミアちゃんと私がくっついていることを微笑みながら見ていた。

 

すると、ルーミアちゃんは薄い闇の膜を解除して二人の前に姿を完全に現した。

 

って、ちょ、ちょっとまっ、に、日光がっ!あづぅぅ。

 

「改めまして、ふたりとも。私の名前はルーミア。宵闇の妖怪ルーミアだよー。さっきはいきなり誘拐やらひどいことしてごめんねー。ちょっとおかしくなっていたみたい。もし、許してくれるのなら、私とお友達になってほしいなー。」

「おぉ!まっとうにチルノさんと友達になりたいんだったら大歓迎だぞ!」

「チルノちゃんが言うなら、私もいいよ。これでみんなお友達だね!」

 

そんな聞いていて微笑ましい会話。

 

「やったぞー。念願のお友達だー。」

 

ルーミアちゃんもすっごく嬉しそうだ。

 

三人でキャッキャと仲良く()()をつないでくるくると回り始める。

 

ルーミアちゃんは今までの分を取り戻すくらい輝かしい笑顔で笑っている。

 

良かったね、ルーミアちゃん。

これからは三人で仲良くね。

 

そう思いながら、ルーミアちゃんから手を離された私は再度、煙をあげながら、激流の川に墜落していった。

 

「あああああぁぁぁぁ!!」

「ア、アズール様ぁぁ!」

「お、お姉ちゃーん!」

「な、なんだ?あいつ、面白いやつだな!」

 

あっ。

ダメだこれ。

私、死んじゃうかも・・・。

 

落下して、激流流れる川の音がすぐ近くまで聞こえてきて、ギュッと目をつぶって、()()()()()()死を覚悟していた、そんな時、落ちていく私を、再度ふわりと誰かが抱えてくれた。

 

恐る恐る目を開けてみると、柔らかそうな茶色のサラサラした髪とふわふわなお耳が見えた。

その誰かは器用に日傘を私に日光が当たらないように差してくれている。

 

「まったく、お嬢様は毎度のように無茶をしますね!」

 

困ったようで、それでいて優しい声音。

そしてなにより、嗅いでいて落ち着くこの匂いは!

 

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「た、助かりましたぁぁ!!ヴァルターだいしゅきですぅぅ!!」

 

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「まったく・・・一体何があったらこんな状況になるんですかね・・・」

 

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ザァザァと、激しく流れる川の音がうるさい中、呆れたような声でヴァルターは私をジト目で見る。

 

「色々ありました!でも、もう問題ないです!(`・ω・´)キリッ」

 

そう言ってヴァルターにギューッと抱き着く

 

「いやいや、問題大ありでしょう・・・(`・ω・´)キリッじゃありませんよ。あ、あと、引っ付きすぎです…///」

 

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照れてるヴァルター可愛いです!

さいこーです!

結婚して下さい!

 

「ま、まぁ、お嬢様が無事で良かったですよ。」

 

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照れ隠しするヴァルター可愛い。

 

というか、昨日のパーティーでは、夫人に襲われたヴァルターを不可抗力とはいえ見捨ててしまった私を助けてくれるなんて、ヴァルターはとっても優しくて、いい子だなぁ。

 

「・・・そうでした。さっきはよくも見て見ぬ振りをしてくれましたね。このまま川に落としてやりましょうかね。」

 

ぎゃー。

ご、ごめんなさいぃぃ!!

だ、だって、夫人怖かったんだもの!

助けようにも怖くて体が動かなかったんですよぉ!!

 

依然として全身に力が入らず、飛行ができない私は弱々しくではあるが落ちないようにと、ヴァルターの燕尾服の裾をギュッと掴みすがりつく。

 

「・・・はぁ。・・・冗談ですよ、お嬢様。服にシワが出来るので手を放して下さい。」

 

嘘だ、絶対7割位は本気で私を川に落とそうとしていたに違いない。

呆れたようなジト目でため息を吐いてるその顔は『少し痛い目にあわせる必要がありますねぇ』とか考えてそうな顔だ。

絶対にこの服から手を放しませんからね!

 

「馬鹿な事考えずに服を握りしめるのをやめてください。さもないと本当に川にぶん投げて落としますからね。」

 

はい!放します!!!

 

「・・・まったく。とにかく皆さん一度月光館に戻りましょう。そちらの青髪と金髪の妖怪も一緒に月光館に来てもらいますよ。」

 

そう言って私をお姫様抱っこの形に優しく抱き直すヴァルター。

なんだかんだ言って私を安心させようとしっかり抱き直してくれるヴァルターの優しさに思わず「惚れてまうやろぉ!」と叫びたくなる。

 

「だから私は妖精だってのに!」

「わかったー!」

 

それぞれ返事をするチルノさんとルーミアちゃん。

チルノさんは妖怪と一括りに呼ばれるのを嫌そうにしながら、ルーミアちゃんは私に手を振ってニコニコしながら、2人ともに大妖精と手を繋いで和気あいあいと月光館に向かうヴァルターに着いていく。

 

ヴァルターに抱かれながらそんな光景を見て私の顔には、にへらにへらと笑みが零れる。

むふぅ。

こ、これはてえてえですよ!

微笑ましくてほっぺたが落ちちゃいそうですぅ!!

 

そうして和やかな空気のまま一同は月光館へと向かった。

 

 


Koakuma perspective

 

 

「ふむ、なんとか丸く収まったようだね。」

「だから、アズちゃんなら大丈夫よ。貴方はやっぱり心配性ねぇ。」

 

月光館に帰る5人を遥か上空からこっそりと観察していたのはスカーレット夫妻。

イチャイチャと手を繋いでお互いに日傘を差しながら目下の和やかな雰囲気のアズール様方を見守っている。

 

「そんな事を言って君もソワソワしていたじゃないか。飛び出しちゃうんじゃないかと、僕は気が気でなかったよ。」

「だって、アズちゃんの事は完全には見通せないじゃない?こんな事、初めてだからとっても気になるし心配なのよ。」

「まぁ、それはそうだね。・・・でも、今回の運命の分岐点はアズール嬢にそんなに危険が無さそうだったからまだ良い方だよ。闇の獣にアズール嬢が吹っ飛ばされた時は少しだけ肝が冷えたけどね。」

「まったくよ。アズちゃんの柔肌に傷なんか付いたりしたら許さないんだからね。」

「ははは。アズール嬢も吸血鬼だし、そこまで脆い身体ではないと思うんだけどね。」

 

ふむ、やはりこの夫婦のこの緩く会話している感じは完全におしどりラブラブ夫婦ですね〜。

引っ付いてイチャイチャしてる2人を傍から見てるとさっさとキスしちゃえ!とかさっさと押し倒しちゃえ!とか思っちゃうくらいもどかしくなってくるんですよね〜。

数えるのが馬鹿らしくなるくらいの昔からずっとこうなのでずっと見てきている私からするともどかしくってたまりませんよ〜。

お互い奥手なので困ったちゃんですよまったく〜。

 

イチャイチャしてる夫婦を隠れて観察しながら日頃の激務を癒していると、突然完璧に隠蔽された膨大な妖力の塊が夫婦の傍に出現した。

そうして目の前の空間が裂けて中から現れた旧友の隙間妖怪がひょっこりとスキマから顔を覗かせると、それまで引っ付いてイチャイチャしていた夫婦はハッとしてお互いに少し距離を置いた。

・・・いやいや、あなた方の激甘イチャイチャは周知されていますのでそんなに羞恥する必要なんかありませんよ〜。

 

おっと!

今のは周知と羞恥を掛けた素晴らしいギャグです!

後でアズール様に聞いてもらってギャグ帳に記録しておきましょう!

ふふふ

アズール様に教えて頂けたこのギャグというものは面白くて良いですね〜。

自分で言っていて自分で笑っちゃいますよ〜

くくくく。

 

「どうやら万事解決したようね。」

「あらぁ、ゆかちゃん。帰ったんじゃなかったの?」

「強大な力を持つ暗闇の妖怪ジャバウォックが近付いて来てたから、姿を隠して監視してたのよ。」

「・・・よく言うよ。僕のワイン片手に観戦してただけの癖に。」

「・・・あら、なんのことかしら?とりあえず、ワインはご馳走様と言っておくわ伯爵。」

「ゆかちゃんずるい。私もスキマの中からお酒飲みながら近くで観戦したかったわぁ。」

「あらあら、あんなに飲んでたのにまだ飲む気かしら。」

「ゆかちゃんには言われたくないわぁ。」

 

おやおや。

隠れてイチャイチャ夫婦を観察する予定でしたが、今では何だか友人同士私だけ仲間はずれにされてるみたいでちょっと寂しいですね〜。

もう充分夫婦のイチャイチャを堪能できましたし、しれっとお話に参加しちゃいましょうかね。

 

そう思うや否や指をパチリと鳴らして転移魔法を発動し、3人の傍に転移してしれっと今戻ってきたかのように振る舞う。

 

「伯爵様〜。ただいまです〜。あらま皆さんお揃いで〜。アズール様方は無事だったみたいですね〜。良かったです〜。」

「・・・君もずっと隠れて僕らを見てたくせに良く言うよ。」

 

伯爵様がジト目で私を見てため息を吐く。

ありゃりゃやっぱり気付かれてましたか〜。

 

「隠れてコソコソ僕らを観察して、一体何の悪巧みをしていたんだい?」

「いえいえ〜、伯爵様への悪巧みだなんて私は隠れてしませんよ〜。」

「なんども言うけど君って一応僕の従者って設定だからね!?少しは僕を敬う姿勢を見せる努力をしてよぉ・・・じゃあなんで隠れて僕らを見ていたのさ・・・。」

 

ちょっとむすっとした顔の伯爵。

ふふふ、伯爵は本当に虐めたくなる顔をしますね〜。

私の悪魔としての本能的な嗜虐心をくすぐりまくりですよ〜。

 

「夫婦でそんなにイチャイチャしてるならさっさと子作りすれば良いのになぁって思いながらイチャイチャを鑑賞してました〜。」

「な、なぁ!?」

「〜〜!!??」

 

とりあえず思っている事をはっきり伝えてみると伯爵は顔を真っ赤にして分かりやすく取り乱し、夫人の方は取り乱しはしないがぷるぷると震えながら顔は真っ赤になっている。

はぁ・・・

2人とも純情で奥手ですし、子供を見られるのはまだまだ先になりそうですね〜。

友人としては2人の子供が楽しみなんですがね〜。

 

とにかく、夫婦が真っ赤な顔で固まって、紫さんはニコニコと愉快そうにしていて話が進みそうに無いので私からある提案をしてみる。

 

「それはそうと皆さん二次会の準備はできていますよ〜。」

 

先程のパーティはあくまで従者としての参加だったのであんまり話せなくて

寂しかったのだ。

せっかくだったら旧友同士で飲み直したいのである。

 

「伯爵〜?・・・〖起きて下さい〜〗」

 

軽い気付けの魔法を使って惚けている伯爵達を起こす。

 

「はっ!あ、あぁ。そ、そうだね!流石小悪魔だね。ど、どうだい紫、久しぶりに4人で飲まないか?」

「め、名案ね!小悪魔ちゃん!ゆかちゃん!久しぶりに飲み明かしましょ?」

「ふふふ。あらあら伯爵は今日はいつになく誘ってくれるわね。愛する奥さんが帰って来てご機嫌が良いのかしら?貴女は愛されてるわねぇ。せっかくだからご相伴に預からせていただきますわ。」

「あ、あ、愛する奥さんだなんて・・・」

「だぁーー!!紫!小悪魔!パーティーではからかうの禁止だからね!」

「ふふふ。はいはい、分かったわよ。」

「りょーかいしました〜。」

 

今日は満足したのでパーティーではからかうのはやめてあげましょうかね〜。

ふふふ。

 

そうして遥か下方で問題を解決した様子のアズール様方が月光館に向かい始めると同時に私達は和気あいあいとお話しながら紅魔館へと向かう。

 

「ねぇねぇ、ゆかちゃんってしばらく見ない間にまた胸が大きくなった?」

「?いや、そんなに変わっていないと思うんだけど・・・。というか妖怪は不変の存在とか言われるくらい身体的な成長がほとんどないのが普通ですけどね・・・」

「へぇ〜。でもゆかちゃんは会う度に・・・。っ!ねぇねぇ!パーティーでは私がゆかちゃんにお酒を注いであげるわ!」

「良いけど、どさくさに紛れて胸を揉んできたらぶっ飛ばすわよ」

「ギクッ」

 

夫人と紫さんが楽しげにそんな話をしている中、伯爵が私に耳打ちして問いかけてきた。

 

「ところで小悪魔、あの氷精を()()()()()()()は見つかったのかい?」

 

あ、そういえばその事に関する調査に行っていたんでした〜。

伯爵達をからかう事に夢中で報告を失念する所でしたよ〜。

 

「もちろんですよ〜。あの氷精の住処からして、どうやら〖()()()〗が関わっているようです〜。」

「・・・やっぱりそうか。あの〖()()〗が変に手を出してくるなんて想像もつかないけど・・・。多分また・・・。」

「そうですね〜、恐らくはまたあの湖の番人くるみちゃんの独断行動でしょうね〜。」

「はぁ。・・・あの()()()()には手が焼かれっぱなしだね。今度それとなく幽香に注意するように伝えておくよ」

 

また面倒事にならなきゃいいけど、と疲れた顔で伯爵は呟く。

ふむふむ。

伯爵の悪い予感は高確率で当たるのでまた一悶着ありそうですね〜。

 

 


Asyl perspective

 

 

「さて、大妖精?まずは、館のこの惨状。どういう事か説明してくれますか?」

 

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月光館に帰った私達。

館のあちこちには妖精メイド達が頑張って割って溶かそうとしている氷が未だに根強く残っている。

 

「え、えーと・・・その。まずは、チルノちゃんが館に来た所からお話します。」

 

責めるようなジト目のヴァルターにタジタジになりながら、言葉尻を小さくした大妖精が答える。

 

 

かくかくしかじか

 

 

・・・ほぉ。

弾幕ごっこは私の前世の記憶の中にあった幻想郷に関する書物に記載されていた〖スペルカードルール〗という決闘法を参考に妖精達に教えている護身魔法の1つだ。

そんな護身魔法を上手く扱えるようになってきて、そこらの妖怪にも引けを取らないようになってきていた大妖精が手も足も出ないなんて、チルノさんはかなり実力があるようですね。

 

「・・・ふむ。なるほど。ではチルノさん、館に散在している氷を今すぐに解除し溶かす事はできますか?」

「あっ・・・あの、ちょっと待ってれば溶けると、思う・・・思います!」

 

そんなヴァルターの問いにチルノさんは緊張しながらも正直に答える。

 

ふっふっふ。

チルノさん大正解です。

 

この館では一応私が主という事になっていますが、ヒエラルキーで言うとヴァルターが頂点なので、ヴァルターには逆らわない方が良いです。

 

・・・まぁ、館に帰った途端に無茶したお仕置として天井から簀巻きにされて吊るされている私を見れば分かるとはおもいますがね・・・はははは。

・・・ヴァルター、絶対パーティーでの事を根に持ってますよね?・・・ぐすん。

 

「・・・なるほど、分かりました。では、チルノさんは館を氷漬けにした詫びとしてこの館で他の妖精達と同じように働いてもらいましょう。」

「は、はい。・・・ってえぇ!?な、なんで!?・・・いや、はい。分かり・・ました。」

 

チルノさんはちらりと私を見てぶるりと震えてヴァルターの契約に了承する。

あのお転婆そうなチルノさんに有無を言わせないのはさすがヴァルター、圧が凄い。

 

「ふむ。では次に、何故貴方達2人はあんな所にいたんですか?」

「それは・・・」

 

大妖精がルーミアちゃんの方を伺う。

 

「私が2人を攫ったからだよー。」

 

ルーミアちゃんは純粋なニコニコした笑顔でヴァルターに答える。

 

「・・・ところで並の妖怪以上の力を持っていると見受けられる貴女は一体何者ですか?」

「私は人間が暗闇を恐れる事で生まれた暗闇の妖怪、だったけど、今はそこのお姉ちゃんに名前をもらって宵闇の妖怪〖ルーミア〗を名乗ってるよー」

 

「・・・名付け・・・なるほど。・・・・・・はぁ。・・・それでさっきからお嬢様がポンコツになっているのですね。」

「うぅ。ポンコツって言わないで下さいぃ。ぶへあぁ!!」

 

突然簀巻きにされて吊るされていた私の身体が地面に激突した。

どうやら急にヴァルターに降ろされたようだ。

いや、降ろされたというか落とされたんだけども・・・。

地面に激突した私はワタワタと集まってきた妖精メイド達に縄を解いてもらいながらヴァルターの方を見る。

 

「ポンコツです。何回目ですか。初めにも言いましたが名付けとは自らの存在値を分ける危険な行為なのです。何回も私、注意しましたよね?」

 

【挿絵表示】

 

ヴァルターが赤い目を光らせながら詰め寄ってくる。

いけない、攻撃色だ。

この状態のヴァルターには言い訳してはいけない。

 

「ごっごめんなさい。」

 

即座に土下座で謝る。

怒っている相手には土下座をするのが効果的なのだ!

前世でもよく誰かに土下座をしては許されていた気がするので間違いありません!

 

「大体ですね・・・」

 

しかし、謝罪の最終進化系と言っていい土下座をもってしてもどうやら今回のヴァルターは許してはくれなかったらしく、それからの説教は凄く長くて2時間くらい土下座しながら謝り続ける事になった。

 

 


 

 

「・・・ふぅ・・・分かりましたか?お嬢様?」

「はい。ごめんなさい。自己中でごめんなさい。引きこもりでごめんなさい。ヒキニートでごめんなさい。」

 

【挿絵表示】

 

うぅ。

昔の、もっと優しかったヴァルターに戻って欲しいですぅ。

これじゃあまるでお母さんですよぉ・・・

 

「では、アズール様への説教はここまでにしておいて。・・・あれ?皆さん?」

 

「くかーzzz」

「すぅ、すぅzzz」

「zzっは。寝てません。寝てませんよぉzzz。」

「「「「「zzz」」」」」

 

振り返るとチルノさんと大妖精、ルーミアちゃんは仲良く3人でソファーで寝ていた。

妖精メイド達も3人の寝ているソファーに集まってきて寝ている。

 

皆が寝転んでも、まだ空きスペースがあるソファーはやっぱり大きいですね!

この幸せで眼福な光景を見れて、創った私としては大満足です。

 

私もいつもは寝てる時間だから、少し眠たいですねぇ。

 

「・・・はぁ。今日は私も疲れました。私も少し眠りましょうかね。」

 

珍しくヴァルターも寝るようだ。

・・・あ、そうだ!

 

「ヴァルター。こっちにどうぞ。」

 

そう言って私はソファーに座って自分の膝の上をポンポンと叩く。

 

ヴァルターは辺りをキョロキョロと見回して妖精達が寝ているのを確認して、恥ずかしげに私の膝を枕にソファーで丸くなる。

 

【挿絵表示】

 

「はふぅぅ。」

 

・・・はわぁ!?

素直に甘えにきたヴァルター可愛すぎませんか!?

可愛すぎますが!?

 

まるで撫でて(かわいい)と言わんばかりに(かわいい)ヴァルターが私のお腹に頭を擦り付けてくる(かわいい)可愛い。

リラックスして息を吐いて目を細めるヴァルター(かわいい)の頭を耳を避けて優しく撫でる。

耳も撫でまわしたいけれど怒られるのが目に見えているのでやめておく。

 

「今日はいつになく素直に来ましたねぇ。」

「今日は色々大変だったんです。夫人に気持ちいいとこばかり触られて、おかしくなると思ったんですから。今日ばかりはアズール様に甘えても許されると思うのですよ。」

 

【挿絵表示】

 

・・・すっごくいかがわしい事を言っているようであるが夫人に耳や尻尾をモフられただけなのである。

・・・・・・・多分。

 

「私はいつでも甘えて来てもウェルカムなんですけどね。」

「公私の区別をハッキリするのが執事としての在り方・・・っふぁ・・・わふぅ。」

 

舌足らずの声(か゛わ゛い゛い゛)で返答したヴァルターは返答の途中で大きなあくびをする。

いつもシャキッとしてるヴァルターにしてはかなり珍しいが今日は本当に疲れている様子だ。

いつもより素直な甘えん坊のヴァルターの頭を優しくウリウリと撫でる。

 

ヴァルターは頭を撫でてる時は、何故か顔をそっぽに向けちゃうのでどんな顔してるかは分からないが、しっぽが機嫌よくフリフリと振られているので私の撫で方は及第点のようだ。

・・・それでも時折ビクッと大きく震える時もあるけれど本当に大丈夫なのだろうか・・・

 

しばらくヴァルターを撫でていると次第にヴァルターは脱力して自然に私にもたれ掛かるようになってきてリラックスしてきたみたいだ。

撫でている私も可愛らしいヴァルターを撫でるのは気持ちいい。

はわぁ、本当に癒されるぅ。

 

・・・あ、そうだ。

気持ちよさで寝ちゃう前にちゃんと言っとかないとね。

 

「ヴァルター。私は成り行きとはいえルーミアちゃんに名付けをした事に後悔なんてしてませんよ。むしろこれで良かったとも思っています。」

 

私のことを案じて叱ってくれた優しい執事に優しく諭す。

 

「ルーミアちゃんは恐らく気が遠くなるくらい昔から、ひとりぼっち闇の中で寂しく泣いていたんですよ。私は困っている子を見ると放っておけない主義なんです。」

 

「・・・確かに・・・アズール様のお人好しは・・・今に始まった事ではありませんでしたね。・・・それでも・・・もっとご自分のことを・・・大切にして欲しいです。」

 

私の身を本当に心配してくれている様子の優しい執事。

そんな優しい言葉にズキリと胸が痛む。

 

〇〇は自己犠牲がすぎるんですよ。もっと自分を大切にしなきゃ!

 

っ!!!

 

ヴァルターの言葉を聞いて突然、知らないはずの記憶がフラッシュバックした。

 

今は無くしてしまった誰かとの記憶・・・。

・・・確か前世でもたくさんの人に同じ様な事を言われた気がする。

 

・・・。

 

・・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・。

どうしてもそれ以上の事は思い出せない。

ただ、漠然と自分が前世とそんなに変わらない考え方をしている事が分かってひどく安心を覚える。

 

とりあえず返答として「善処しますよ。」とヴァルターに言っておく。

 

そんなヴァルターは、うつらうつらと今にも寝ちゃいそうだ。

 

「寝ても良いんですよ?おやすみなさい、ヴァルター。」

「わふぅ。zzz」

 

すぅ、すぅと寝息をつきはじめたヴァルターを確認して、私も目を閉じる。

 

「あなた達は何があっても、を犠牲にしてでも、絶対に守りますからね」

 

微睡みの中、私はがそう小さく宣誓しているのを他人事の様に聞きながら眠りについた。




〖後書き〗
今話は前話と違ってゆったりまったり事後処理のエピソードを書きました。
今回登場した夢幻館は東方project第4作品目〖東方幻想郷〗の舞台である夢幻館です。
(^_^)ノ
これから先夢幻館とも関わりを持っていきますのでお楽しみに。
解釈違いがあれば申し訳ありません。m(._.)m

さて、今話で第2章ルーミアちゃんとの出会い編は終幕です。
次話から本格的にスローライフが始まります。
平和で賑やかな感じを描写出来たらいいなと思います!(≧∇≦)/

よろしくお願いしますm(__)m
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