第19話:心優しい貴女へ贈る~ねんねんころりよおころりよ~
Asyl perspective
唐突ではあるが月光館に住む住人は妖精と妖怪で生活リズムが昼夜逆転している。
私、ヴァルター、ルーミアちゃんの妖怪組は夜型の生活。
大妖精、チルノさん、妖精メイド達の妖精組は朝型の生活をしている。
人間だった頃(前世)の私は確か朝型の生活をしていた訳であるが、今生では仮にも
つまりは朝方から眠たくなり、夕暮れ頃に目が覚めるのである。
吸血鬼の視覚は人間よりも超強化されているので夜の暗闇でも真昼間の様な明るさで見る事ができる。
だから、人間の時の生活から昼夜逆転していても、あまり違和感なく夜型の生活を続ける事ができているのだと思う。
・・・まぁ、基本館から外に出ないのであんまり昼夜を感じない自堕落な生活をしているからかもしれないが・・・
ルーミアちゃんも主に夜間に活動するタイプの妖怪なのだが、それでも、お友達の妖精達と一緒に過ごす為に朝から起きている事が多い。
たまに24時間ずっと起きている事もあるので、寝不足にならないか心配だ・・・。
妖怪は妖精と違って睡眠時間が極端に少なくても、問題なく生活ができる様な心身の仕組みをしているらしい。
妖怪の専門家であるリヴェリーさんに聞いたので間違いない。
だから、大丈夫だとは思う・・・けど、心配な事は心配だ。
ヴァルターは私に合わせてくれているのか私が起きている時は大体起きている。
というかヴァルターが寝ているところをあまり見た事がないが、こちらも大丈夫なのだろうか・・・。
今度2人ともそれとなく添い寝に誘ってみようかな・・・
と、まぁ、そんなこんなで同居する妖精達とは真反対の夜型の生活を続けていた、ある日の真夜中の出来事。
私はいつものように夜更けに目覚め、日課である夜の散歩をしていた。
もちろん滅多な事では外に出ない私が、散歩するのは館の中ではあるが。
大体辺りが真っ暗になり、宵闇から真の暗闇になった時分の館の中。
散歩しながら、どうやってヴァルターやルーミアちゃんを添い寝に誘おうかと考えていた、そんな時。
「ひゃあぁぁぁぁ!!!」
1人の妖精メイドの悲鳴が、先程まで静かだった館内にこだました。
「!?何事ですか!?」
音速を超える速度ですぐさま悲鳴の元へ駆け付ける。
そこにはランタンを持って、涙目で腰を抜かしている1人の妖精メイドが居た。
「どうしたのですか!?怪我はありませんか!?」
すぐさま妖精メイドの状態を確認し、怪我をしていない事に安堵する。
確認した妖精メイドの下着は少しばかり湿っていたが、なぜ湿っているのかは言及しないでおく。
「ア、アズール様ぁ。お、おばけがぁ。」
妖精メイドは自身の後方を指差して、半泣きになりながら私に縋り付く。
指差しの方を見てみると、確かに2つの赤い光が揺れているのが見えた。
・・・なるほど、確かにこれでは夜目が効かない種族は暗闇の中、揺れる赤い目をおばけと勘違いしてもしょうがない。
「私はおばけじゃあないぞー。」
暗闇から現れたのは綺麗な赤い目を光らせて困った様に苦笑いしているルーミアちゃんだった。
「お姉ちゃんは今起きたのかー?おはよー。」
「おはよーですルーミアちゃん。正確には少し前に起きて館を散歩してたんですけどね。」
「いやいや、お姉ちゃんはただでさえ地下にいる事が多いんだから、もっと外に出て月の光に当たった方が良いぞー。」
月の光に当たった方が良いなどと、妖怪や吸血鬼特有の挨拶を交わす。
そんなルーミアちゃんは腰が抜けた妖精メイドに向かって、しゃがんで心配そうな顔で手を差し出す。
「大丈夫かー?・・・なんかごめんなー。今から一緒にお風呂に行くかー?」
「・・・ぐす。う、うん。こっちこそ、ごめんね。おばけなんて言っちゃって。」
「私は気にしないぞー。よしよし(なでなで)。それじゃあ一緒に行こうかー。」
そんなルーミアちゃんは腰を抜かした妖精メイドに手を貸して起こしてあげる。
妖精メイドの下着状況も把握しているようで、「またねー」と私に手をフリフリと振りながら妖精メイドと手を繋いで大浴場へと向かっていった。
・・・な、なんか今のお姉ちゃんっぽくて良くないですか!?
お姉ちゃんっぽいルーミアちゃん!?
うん!
尊死!!!
そんなこんなで妖精メイドとルーミアちゃんが、大浴場へと向かって行ってから先程の出来事をふと考えてみる。
私やヴァルター、ルーミアちゃんは夜目が効く妖怪だが、妖精メイドや大妖精、チルノさんなどの妖精は基本、人間と遜色ないくらいの夜目をしている。
つまり、夜は暗くてよく見えず、ランタン等の灯りがないと夜の館内は動けず、ランタンがあったとしても明るさが足りなければ今回のようにハプニングが起きてしまう。
ハプニング以前に暗ければ足元も危うくなるし、怪我でもしたら大変だ。
私は夜でも月の光が
妖精達に対する配慮が足りなかったのは反省しよう。
私は私にできることで、配慮が足りなかった妖精たちへのお詫びをするとしよう。
とどのつまりは・・・。
「館内を良い感じに照らすLED照明みたいな照明を開発しましょう!」
LED照明はその組成に有害な物質を含まない環境にも優しくて、人間にも優しい光を提供してくれる照明だ。
理想はそんなLED照明の様な超便利な照明の開発だ。
でも、〖LED〗はLight Emitting Diodeのそれぞれの頭文字から名付けられていて、日本語に翻訳すると〖光る半導体〗と翻訳される。
つまりLED照明の開発には半導体が必要不可欠であり、こんな古代の時代から半導体なんてある訳もないし、その作り方とかもあんまり詳しくは知らない。
だから私にはLED照明を作る事はできない・・・
・・・ふっふっふ。
しかーし!
私には魔法があるのです!
時間は掛かっちゃうかもしれませんが、半導体の代わりになるような魔法回路を構築してLED照明のような魔法の照明を開発してみせますよー♪
・・・こんな時代にそんな便利な照明を開発してしまえば間違いなくオーパーツになってしまうでしょうけど・・・
・・・こ、こほん。
・・・ま、まぁ、オーパーツだとか、ついこの間(5年くらい前)マジックチルドボックス、略して冷蔵庫を作ったばっかですし、今更気にする事ではありませんよね♪
あんまり気にせず妖精達の為にも全力で魔法開発してみましょうか!
そう開き直った私はさっそく地下図書館にある研究室に転移魔法で移動し、その日から魔法の照明の研究をはじめた。
それから大体半年後。
「・・・つ、ついに開発できましたよ。今回はかなり難しい研究でした・・・」
半導体の代わりになる魔法回路の構築や、光の素材探しに手こずったおかげでかなり時間が掛かってしまった。
今回作った魔法製品は名付けて〖モントシャイン〗。
これはドイツ語で月の光という意味を持つ、その名の通り月の灯りを用いた照明だ。
この照明があれば真夜中の館内も少し薄暗くはあるが、人間でも十分に見通す事ができるほどの光量を得られる。
〖モントシャイン〗は正確には製品ではなく、魔法そのものだ。
簡単に言えば外の月の灯りを集めて館内すべての壁面、床、天井のあちらこちらに光を付与する魔法だ。
つまりは、常時魔法の発動を維持させておく必要がある。
この魔法の欠点は魔法の維持コストが高い事と、新月の日は月明かりが少なく十分な光量を得られない事だ。
1つ目の欠点の維持コストの問題は、実は私にとってはあまり問題ではない。
有難いことに私の身体には有り余るほどに魔力がある為、24時間常に魔法を使用し続けても問題ないからだ。
問題は2つ目。
新月の日、または曇り空の日に月から受けられる光量が少なくなる事だ。
少なくなるだけで一応ほんのりとは明るくなるので、以前と比べればマシではあるが暗いことは暗い。
この辺は光量の貯蓄や、妖精達に曇りの日や新月の日は暗いので足元に注意するように注意喚起をすることにした。
・・・日光なら曇りの日でも十二分に光量を得る事ができるのだが、1度日光で魔法を試してみたところ全身大火傷してえらい目にあった。
(アホである)
なので月明かりを採用した。
それに月光館という名前に適っていると思いますし、月の灯りで館内外を照らすと辺りの月明かりを吸収する分、館は月の光が集まって闇に浮かぶ凄く幻想的で美しい光景になる。
我ながらよくやった私、と自分を褒めてあげたいくらいだ。
そんなこんなで今日は皆に〖モントシャイン〗をお披露目する日。
「ではいきますよ!〖モントシャイン〗起動。」
魔法の発動と同時に館に構築された超巨大な魔法回路に大量の魔力が流し込まれていく。
館のありとあらゆる場所に刻まれた半導体の代わりとなる魔法回路に魔力が充填され、次第に外の月明かりを吸収し、館内の壁や床、天井まで月明かりで発光し始める。
薄暗く少し不気味だった館内に優しく綺麗な月の光が充満していく。
「「「「「ほわぁーー。」」」」」
「・・・綺麗ですぅ。」
「すげーなアズール。めっちゃ綺麗だぞ!」
「わはー。あんまり強い光は好きじゃないけどこの光は好きだぞー。」
「月の光を集めて照明にするなんて、お嬢様の魔法は既存の魔法常識から
こんな感じで皆からは好評が得られた。
あとヴァルターが言うようにこの魔法は小悪魔から教えて貰った、元来の魔法である、物や生物の記憶や意志などに
この魔法は完全オリジナル。
つまり簡単に言えば、術者の妄想力だけで魔法を構築しているので、魔法の元となる素材が要らない代わりに、消費する魔力は術者から絶大な量が必要になるのだ。
それでも膨大な有り余る魔力を持つ私にとってはなんの問題もない。
なんなら秒間自然回復する魔力量の方が多いくらいなのだ。
こうして魔法で明るくなった月光館は館内の住人にすこぶる好評であり、みんなの笑顔が増えた。
夜間でも、月明かりのおかげでぼんやりと明るい館内は妖精達の活動時間を伸ばす事となり(夜更かしでヴァルターに怒られる妖精が増えたが・・・)ルーミアちゃんも妖精達と一緒にいられる時間が増えて嬉しそうにしている。
夜遅くまで楽しそうにかくれんぼや鬼ごっこ、弾幕ごっこに取り組んでいる妖精達とルーミアちゃんが、より一層楽しそうな姿を見せてくれるようになって、照明魔法を作って本当に良かったと心から思った。
私もたまに一緒に遊んだり、新しい遊びや、その遊びの道具を開発したりと楽しく過ごしていた。
・・・そうして、時の流れとは早いものでルーミアちゃんとチルノさんが月光館に住み始めてからいつの間にか20年も時が過ぎていた。
人間だった頃とはまるで時間感覚が違う。
本当に時間が過ぎるのが早い。
ヴァルターやルーミアちゃん、妖精メイドの皆や紅魔館の皆と一緒に暮らすのが楽しいから時間が早く過ぎていく様に感じるのだろう。
そんなことを考えていたある日の宵闇の夜。
目が覚めた私が自室で、髪を整えながら時間経過にしみじみとしていた時。
コンコンコン
と少し遠慮気味に小さくノックの音が鳴った。
「どうしましたか?」
扉の向こうに声を掛ける。
すると少しの間があって。
「・・・お姉ちゃん、入っても良い?」
少しだけ元気が無さそうなルーミアちゃんの声が聞こえてきた。
「?ルーミアちゃんですか?もちろん良いですよ。」
ガチャリ
「・・お姉ちゃん、おはよー。」
「おはようございます。ルーミアちゃん。どうしたのですか?何かあったのですか?」
少し俯いて元気が無さそうなルーミアちゃんの様子が気になって声を掛けてみる。
「・・・あの。・・えと、その・・。」
少しモジモジしながらルーミアちゃんはチラチラと私の顔を伺ってくる。
すると顔を赤らめさせて意を決したようにルーミアちゃんは言葉を発する。
「膝枕してほしい。」
・・・え?
「え、えぇ!良いですよ!もちろんです!」
いきなりでびっくりしたが、膝枕をさせてくれるのは、私にとってはご褒美以外の何物でもないので断る理由はない。
「・・・あ、ありがと。・・よいしょっと。」
そう言ってルーミアちゃんはベッドに座る私の膝に頭を置き横になった。
金髪のボブカットのサラサラで柔らかい髪にするりと手を通し撫でる。
「んぅ。」
ルーミアちゃんは撫でられて気持ち良さそうに目を細めている。
月光館に来てからは毎日お風呂に入っているからか、ルーミアちゃんの綺麗な髪は出会った時よりもさらに繊細で柔らかくなっている。
匂いも花の優しい香りが漂っているので、撫でているこちらが癒される。
いつまでも撫でて癒されていたいが気になる事があるので聞いてみる。
「今日はどうしたのですか?あまり元気が無さそうですけど。」
いつもマイペースに落ち着いている彼女が今日は少し元気がない。
この20年の間、彼女がこんなにも甘えてきた事なんて無かったからちょっとビックリしたけれど。
もう20年も同じ屋根の下で暮らしているのだ。
ルーミアちゃんが落ち込んでいるのも手に取るように分かる。
「・・・ちょっと怖い夢を見ちゃって。それにヴァルターの話を聞いたから」
「・・・あぁ。その事ですか。」
ルーミアちゃんが言うヴァルターの話は把握している。
何でも人間からしたら災厄の象徴とまで言われてきた、恐怖の暗闇の妖怪ジャバウォックを
〖教会〗というベタなネーミングの組織にはその組織の外敵認定として3つの認定がある。
〖不信者〗〖背教者〗〖神敵〗の3つ。
〖不信者〗とは〖教会〗に賛同しないありとあらゆる存在、つまり〖教会〗に協力しない人間も含む妖怪全てがそのカテゴリーに含まれており、〖教会〗の構成員に遭遇すると警告及び速やかな排斥の対応を取られる。
〖背教者〗とは〖教会〗に対して直接的または間接的な敵意があると見なされた全ての者に当てられるカテゴリーであり、時には武力による制圧といった物騒な対応を取られる事がある。
紅魔館はこの〖背教者〗というカテゴリーに分類されているが、1度衝突した際に何かあったらしく、その時に相互不可侵の契約を結ぶ事になった為少し特殊な立ち位置となっている。
そして、最後に〖神敵〗とは〖教会〗が名指しで敵と認定した存在であり、〖教会〗のトップの〖教皇〗とその幹部達の合議によって抹消するべき脅威として判断された場合に認定される。
〖神敵〗と認定された存在は他の存在よりも優先的に、〖教会〗が行使出来るありとあらゆる手段により、徹底的にその存在を抹消される事になる。
・・・それ、なんてバ○ターコール?とでも突っ込みたくなるが、〖教会〗に所属している構成員は末端から幹部に至るまでノーマル吸血鬼に匹敵する程の能力を持ち、その構成員がとんでもない数で一糸乱れぬ作戦行動を執り行うらしい。
何それ怖い。
普通の吸血鬼並に力を持った人間が何百人もの軍勢で対象を抹消する為に軍隊行動を行う・・・
・・・なるほど、やっぱりバス○ーコールである。
以前聞いた話によると私がヴァルターに出会う前、ヴァルターの種族、〖人狼〗や〖狼男〗が〖神敵〗認定された事があり、その際に〖人狼〗や〖狼男〗はほぼ絶滅してしまったようだ。
何故、〖人狼〗が〖神敵〗認定されてしまったかは謎ではあるが、ヴァルターが生き残っていてくれて本当に良かった。
話を戻すと、根本的な闇を本能的に恐怖する人間達に理不尽に恐れられていた、 こんなにも可愛らしい少女の妖怪を人類にとって、その安全を脅かす害となる妖怪と認定した上で、その存在を匿った私達を〖不信者〗と〖背教者〗のカテゴリーをぶっ飛ばして〖神敵〗とまで認定した訳である。
とんだ激ヤバ組織である・・・
ルーミアちゃんはジャバウォック時代でも人間を無闇に殺した事が無いようなので、ルーミアちゃんがここまで人間に嫌われるのは大分と理不尽で不愉快極まりないですが・・・。
つまりは、これから〖教会〗の妖怪退治の人間に月光館が襲われる危険があると言うことだ。
紅魔館が不可侵だから大丈夫だとタカをくくっていたが、どうやら
人間達からすると月光館は紅魔館とは違う括りらしい。
紅魔館のスカーレット伯爵はなんとかしようとしてくれているようだが〖教会〗の人間達のお偉方は随分と頭が硬いらしく説得は困難らしい。
〖教会〗のトップの教皇は穏健派であり、紅魔館の不可侵もその人の計らいだそうだが、幹部達はほぼ全員が強硬派であるらしく合議制ではあるが穏健派の教皇の意見は通らない事が多いらしい。
スカーレット伯爵は〖調停者〗としてあくまでも妖怪と人間に対して中立な立場であるため、人間とは真正面からは敵対する事はできず、この事に関してはあまり手出しが出来ないと申し訳なさそうに伝えてくれた。
というかこの話を聞いた夫人が暗い笑みで
「じゃあ今から教会の人間を滅ぼして来るわね」
と〖教会〗の人間を滅ぼしにかかるのを、〖調停者〗として止める事の方が難儀しているとかなんとか。
・・・うん。
余計な火種は作りたくないし、伯爵にはそのまま全力で夫人を止めといてもらおう。
そして、今朝方の事。
人間に化けて、人里へ買い出しに出掛けていたヴァルターが〖教会〗の妖怪退治の人間に見つかって襲われたらしい。
驚く所は〖教会〗の人間側の情報力。
ルーミアちゃんを匿った事もそうだが、どうやら月光館の住人も、情報としては筒抜けであり〖教会〗に把握されているようだ。
とにかくヴァルターは怪我をする事もなくすぐ様逃げる事が出来たらしいので安堵したが、これで人里との交易が困難となってしまった。
この際、自給自足の為の畜産とか菜園とかに挑戦してみようかな、とヴァルターと話している所を、どうやらルーミアちゃんに聞かれてしまったようだ。
心配そうに私の顔を覗きこんでくる若干涙目のルーミアちゃんの頭を優しく撫でて語りかける。
「そんな事を気にする必要なんてないですよ、ルーミアちゃん。ヴァルターも怪我はありませんでしたし、それにこの月光館は人里からかなり遠くにあるので恐らく人間達が来るには険しい環境ですし、そう簡単に来られませんよ。」
「・・・そうかなー。」
「それにルーミアちゃんはもう私達の家族なのです。月光館ファミリーです。家族を守るのはその家族の総意として当たり前の事なのですよ?」
「・・・うん。ありがと。」
「・・・それに、私は家族みんなに
「え?秘密の魔法って・・・」
そこで私は人差し指を口の前に立てる。
「秘密です。」
秘密の魔法を教えてくれない私にルーミアちゃんは不満顔だ。
ルーミアちゃんにしては珍しい顔だ。
リスみたいにぷくっと膨らませた頬は、突っつきたくなる衝動に駆られるほどに柔らかそうでとっても可愛い。
カメラがあれば収めたい。
・・・そうだ!
次はカメラを開発しよう。
無ければ作れば良いのだ、魔法で。
そうと決まればさっそく今日から開発を・・・って流石にこの状況を放って置いて魔法の研究なんかできないですよね・・・
「ルーミアちゃんは何も気にせずに月光館で幸せに暮らしてくれればそれで良いのですよ」
ルーミアちゃんの頭を優しく撫でながら諭すように話しかける。
このままだと心根から優しいルーミアちゃんは、私達に危害が加わらないように、黙って出ていってしまいそうだから。
「・・・うん。ありがと。」
それでもルーミアちゃんの憂いを帯びた雰囲気は変わらない。
・・・そうだ。
「ルーミアちゃん、今からお姉ちゃんと2度寝しちゃいましょう!」
「え!?っちょっとまっ」
バサリ
横たわるルーミアちゃんを自分ごと布団に包んで横になる。
急な出来事でびっくりしたのか、ルーミアちゃんは目を丸くして小動物みたいにキュッと縮こまって固まった。
可愛い。
ルーミアちゃんを元気付けるように布団の中で抱き締め背中を
背格好は私とルーミアちゃんは変わらない子供同士なので包容感はないかもだか、少しでも落ち着ついてくれたらいいな・・・。
「怖い夢を見たのでしょう?もう一度、今度は私と一緒に寝て、怖い夢を忘れてしまいましょう。」
「は、はひ。びっくりしたよ、もう。お姉ちゃん、いきなりは、心臓に悪いよ。」
びっくりしたらしいルーミアちゃんは、はじめ少し抵抗していたが次第に大人しくなる。
リラックスしてくれているようだ。
「そうだ。子守唄でも歌いますよ。」
「子守唄?」
「子が寝られなくなっちゃった時に親が歌う優しい歌の事ですよ。」
ルーミアちゃんは子守唄を知らないようだ。
前世の知識に残る、昔自分も寝付けなかった時に誰かに歌ってもらった子守唄。
「〜♪」
優しく、静かに、ゆっくりと歌う。
「〜♪」
歌に合わせてルーミアちゃんの背中をポンポンと優しく叩き、頭を撫でる。
「〜♪」
ここまで歌った所ですぅすぅと寝息が聞こえてきた。
その寝息は落ち着いており寝顔もスッキリと穏やかな顔をしている。
「おやすみなさいルーミアちゃん。」
ルーミアちゃんが寝た所で何やら私も眠たくなってきた。
このままルーミアちゃんを抱き枕に2度寝と
そうして私は眠気に誘われるがままに目を閉じた。
Rumia perspective
「んむぅ。ふわぁ。」
目が覚める。
欠伸をする。
意識が戻って来るにつれて現状を思い出す。
・・・確か、お姉ちゃんの部屋で膝枕をしてもらってから、、、
パチリ
目を見開く。
思い出した。
いきなりお姉ちゃんに布団の中に引きずり込まれて、それから抱き締められながら子守唄?を歌ってもらって、頭を撫でてもらっているうちに寝ちゃったんだ。
という事はこの全身に感じる暖かいのは、お姉ちゃんに抱き締められているからか。
耳を澄ますとすぅすぅと寝息が聞こえてくる。
お姉ちゃんも寝ているようだ。
・・・なんというか、すごく恥ずかしい。
膝枕をねだってしまったのも恥ずかしいが、現状抱き締められて一緒に寝ているのも恥ずかしくてむず痒い。
それと同時に嬉しい、幸せといった正の感情も沸いてくる。
・・・私がこんな幸せで良いのだろうかとも思えてくる。
・・・私を巡って色々と大変な事になっているらしい。
私を追う人間達が私を匿うお姉ちゃん達をも退治しようと
私のせいでお姉ちゃん達に迷惑を掛けている。
私のせいでお姉ちゃん達が人間達に害されてしまう。
私のせいで・・・。
・・・凄く怖い夢を見た。
この月の光に照らされて綺麗に優しく輝く館を、その住人もろとも焼かれてしまう悪夢を・・・。
私の初めてのお友達が。
私の初めてのお家が。
私の初めての・・・大切な家族が焼かれてなくなってしまう。
・・・私のせいで。
そんな夢を見た私は心がまいってしまっていたのか、お姉ちゃんに膝枕をねだるなんて、普段なら恥ずかしくて絶対に頼まない事をしてしまった。
恥ずかしかったけれども結果かなり落ち着いた。
ベッドに引きずり込まれて添い寝するなんてとんでもないオプションも付いてきたけれど・・・
私を抱き締めるお姉ちゃんを、起こさないように優しく引き剥がす。
お姉ちゃんが発する周りを和ませる雰囲気のおかげか、添い寝して落ち着いた今少しだけ踏ん切りがついた。
私はここを出ていこうと思う。
理由は簡単。
夢を夢のまま終わらせる為だ。
人間達の標的はあくまでも私。
私がここから出て行って、人間達に月光館には私はもういないと吹聴させる。
私の家族とも言える大切な人達には手を出させない。
その過程で私が本当に人間達に討伐されたとしても・・・それはしょうがない・・・覚悟しよう。
もう十分に楽しんだ。
もう十分に幸せをもらった。
もう十分に夢を見させてもらった。
もう夢から覚める時だ。
結局お姉ちゃん達に恩返し出来なかった事は悔いが残るが、こんな私にもあの世というものがあるのならあの世で詫びよう。
そう覚悟を決めて月光館のエントランスへ向かう。
今は深夜の2時くらい。
それに新月だ。
うっすらと明るい館内は、お姉ちゃんの魔法が新月で少ないはずの月明かりを頑張って集めて照らしているのだろう。
この時間は大ちゃんやチルノちゃん、妖精メイドの皆は寝ている頃合だろうか。
お別れの挨拶も無しに出ていったら怒られちゃうかな。
ははは。
・・・それでも、今もう一度会ってしまったら出ていく覚悟が鈍りそうだ。
寂しさや悲しみに歯を食いしばって耐え、勇気を振り絞ってエントランス玄関を開ける。
「出て行かせる訳ないでしょう?」
そこにはお姉ちゃんの執事、ヴァルターが私を遮るように仁王立ちしていた。
「あっ・・・」
「貴方が考えている事は分かります。皆に迷惑を掛けたくない。だから全部自分で背負い込もうとしている。・・・まったく。どこかの誰かさんに自己犠牲の精神は似てしまってますね。・・・でもね、それでは駄目なんですよ。」
赤い目を光らせた目の前の人狼はまるで私の心を知り尽くしているかのように言葉を並べる。
「ルーミアさん。貴方は周りの皆を分かっているようで全然分かっていない。」
ヴァルターの言葉は私の中にするすると入っていく。
「貴方は自分が、自分だけが害されればそれで良いと考えているでしょうが、恐らくこの館に住む皆が皆同じ様な事を考えていますよ。」
「え?」
「つまり、ルーミアさんが害されてしまうのなら、自分がその身代わりに、皆がルーミアさんの為に身体を張るという事ですよ。」
そう言ってヴァルターは私の後方へと視線を向ける。
そこに居たのは・・・。
「そうだぞ!ルーミア。1人で背負い込むのはバカのする事だぞ!姐さんも言ってた。」
ニカッと笑うチルノ。
「ルーミアちゃん。私なんか役に立たないかもしれないけど、それでも一生懸命ルーミアちゃんを助けるからね。」
おどおどと、それでも真っ直ぐに私を見つめる大ちゃん。
「「「「「ルーミアちゃん、出ていっちゃやだ!!」」」」」
半泣きで私に縋り付いてくる妖精メイド達。
皆、私の大切な家族。
「ほらね?だからルーミアさん。1人で出て行くのは皆を裏切る行為ですからね。自己犠牲の精神もほどほどにしてくださいね。・・・っていうのを私の主にも言いたいですが。」
みんな・・・ありがとう。
お礼の言葉は恥ずかしくてスッと出なかったが、
「・・・まぁ、そうですね。じゃあ、おしおきもかねて今から私と弾幕ごっこでもしましょうか!」
「え!?」
唐突に切り出された弾幕ごっこの誘いに驚く。
「ルーミアさんも色々思う事はあるでしょうし、その全てを今ここで弾幕ごっこでぶちまけてしまいましょう。」
「う、うん?あ、ありがとう?」
よく分からなかったが気を使ってくれたヴァルターに感謝を伝える。
「「「「「ルーミアちゃん頑張れー」」」」」
「ふ、ふたりとも頑張れ〜。」
「おぉー。ヴァルターが弾幕ごっこだなんて見ものだなあ。」
新月でいつもより闇が深い夜の空に2人して浮かび上がる。
そんな闇が深くて重い空とは違って今の私の心の中は軽くて明るい。
私は幸せものだ。
こんなにも温かい家族がいて。
「よーし。こうなったら本気で勝負だぞー、ヴァルター!」
「かかってきなさい。機微を悟るのは執事の仕事だと叩き込んであげますよ。」
その日の深夜、暗い空に綺麗な弾幕の花が咲いた。
【後書き】
シリアスで不幸せな展開をガードする最後の砦。( ・ㅂ・)و ̑̑
「機微を悟る程度の能力」を持つ安心安全のヴァルターガードです。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ“
はい・・・と言うわけでスローペースに日常話を進めていましたがいきなり今話だけで20年も経ってしまいました・・・。(゚o゚;
スローペースとは・・・。(´△`)
まあとにかく、今回お話の起承転結の起のところが始まりました。(*°∀°)
本当は日常回の話の後続く展開でしたが切り方がわからず一話にまとめてしまいました。(;・・)
今話ではシリアスな部分があったとは思いますが大丈夫だったでしょうか?(´Д`)
作者は多少のシリアスなら妥協できるのですが不幸せは妥協できない臆病者なのでシリアス面に完全に堕ちることはできないのです。(@_@;)
さて今話でアズールが歌っているのは、著作権は切れている為、引用しても良かったのですが、念の為、伏せさせていただきました、実際にある子守唄として存在する京都府の子守唄をイメージして書かせていただきました。
実際に小さい頃、私が聞いた子守唄とは歌詞が少し違いますが聞いてみて懐かしさを感じるねんねんころりの唄。
久しぶりに聞いてみると少しノスタルジックになりました(ó﹏ò。)
《Wikipedia参照》
ここから第3章の終幕に向けて物語がうまく進んでいけたら良いなとは思います。|ω・)و ̑̑༉
たくさんのUA、お気に入り追加ありがとうございます。
これからもがんばりますので庇護録をよろしくお願いいたします。