Silver-haired girl perspective
そよ風がそよそよと吹いている平原。
キラキラと光る星空を見上げれば、お星様に負けじとまん丸なお月様がその存在感の大きさをぷかぷかと表現している。
そんな素敵な月夜の優しい光に照らされて、平原に浮かび上がるのは2つの奇妙な影。
片方はちょこんと正座で座りながら、少しはしゃぎながら興味深そうにずいずいともう片方の影に近付いていく小さな少女・・・もとい、私。
もう片方は私に近付かれる度にビクッと震えながら、頭を地面に擦り付けて
「ところで!狼男さん!聞きたい事があります!」
「ひぃ!?ひゃ、ひゃい。ご、ごめんなさい!!」
先程から何度目かになる問答を繰り返している訳であるが、どういう訳か狼男さんは私を恐れているかのようにガタガタと震えながら跪いている。
「急に謝られても・・・先程からどうしてそんなに怯えているのですか?」
「ひぃ!!あ、謝るだけじゃ許されませんよね!?ごめんなさいぃ!!!」
と、こういう感じで問答の度に凄く分かりやすく怯えられるのだ。
・・・そ、そんなに怯えなくても。
私は見た目はちっちゃな女の子なんですよ?
どっちかと言えば私の10倍近く大きな体格をしている熊のように大きな狼男さんの方が怖いと思います。
人間なんか森の中じゃカースト下位ですし、それに加えて今の私は小さな女の子な訳ですし・・・
ほら?どこにも怖がる要素なんかありませんよ〜。
怖くないですよ〜?
「・・・わ、私は吸血鬼である貴方様の事を矮小な人間の少女であるとは思っていません・・・」
「あ、あれ?今、私口に出ちゃってましたか?」
あんまりにも怯えている狼男さんを疑問に思っていると、その疑問が口に出ていたのか狼男さんがガタガタ震えながら口を開いた。
・・・というか、さっきは血走った目で近付いてきてたのに今更何でそんなに怯え始めちゃったんだろ。
「さ、先程は身体が勝手に・・・そ、そうです!貴方様のような強き者に出会えた運命に感謝して、嬉しさのあまり思わず身体が動いてしまったのですよ!わ、わはははは!」
「あれれ?また口に出ちゃってましたか?・・・というかそれは嘘ですよね!先程、思い切り『おまえうまそうだな』って言って目を血走らせながら襲いかかってきましたもんね?」
「うぅ・・・。すみませんでした。殺すなら痛くないように殺して下さい。」
「・・・。」
・・・笑ったり、泣いたり、
とりあえずおかしくなった狼男さんは少し間ほっといて、あちこちにぶん投げて散らかってしまった匙を拾って、もう1度現状を把握する事にしよう。
まず、自分のことからだ。
間違いなく、ただ者ではない・・・
・・・いや、こう言うと何だか酷くナルシストっぽいけど、そうじゃなくって。
今の私を客観的に見るとただ者じゃないって事で・・・
普通の人間だとしたらマッハ3の衝撃に耐えるどころか、生身でマッハ3に到達する事すらできない。
この体がミンチになってないところを見ると、
・・・戦闘機に負けない頑丈さを持つ女の子って・・・
ちょっと自分でも何言ってるのか分からない。
あと、走力の他にも確認して分かった事がある。
軽く握力の確認の為に手近な木のえだを握ってみたのだが・・・結果、爆発した。
・・・いや、何言ってるか分からないと思うが、文字通り握った小枝が爆発した。
よく見てみると、握られた小枝は丸焦げになって辺りに散らばっていた・・・。
聞きかじった物理学的な考察をしてみれば、小枝と共に握られた空気が圧縮された事により空気分子の運動エネルギーが大きくなり、空気分子の動きが速くなる事によって圧縮熱が生まれ、空気の温度が上昇し発火。
そのまま握った小枝ごと圧縮熱で炭化してしまったと考えられる、とか言ってみたりするが自分で言っていて意味が分からない。
そんな事が小さな女の子の手のひらの中で起こす事ができるなら空想科学○本もびっくりである。
つまり、私の手のひらは粉砕機どころか学校の理科室や、どこかの研究施設にあるような圧気発火器のような機能が備わっているようである。
握力で空気を圧縮して発火させるとか訳分かんないが・・・
とにかく、それからは何だか物理の実験をしているようで面白くなってしまって、握りしめた拳でそこらの木を殴りつけてみる事にした。
すると、細枝が折れるようにポキッと大木が折れて、ズシンと地響きと共に大木が横たわった。
その後、横たわった大木がまるで『何してくれとんねん!』と恨めしそうに見てる気がしたので申し訳なくなって折れた大木をひょいっと拾ってその辺の地面に差し木しておいた。
と、ここまでやってから自分の手をよく見てみても少し土で汚れてしまったが、間違いなく少女の
どうにも大木をポキッと折っちゃったり、ひょいっと折れた大木を植え替えるようなエネルギーを出せる様な手には見えない。
ぷにぷにと自分の手のひらを突っついてみてもふわふわな触感が帰ってくるだけでゴツゴツした感じもない。
そうして自分の力を確認した後は、震えながら逃げようとしていた、狼男さんを情報収集の為に捕まえ・・・もとい迎えに行き、
もちろん、衝撃波で狼男さんに怪我でもさせたら大変なので、先程のマッハ3とかいう速度でなくゆっくりと移動した。
なお、担いだ時に気付いたが狼男さんはまるでお花のような良い匂いであったことをここに記しておく。
そして冒頭に戻り、狼男さんはバイブレーションの
・・・なるほど。
思い返してみれば、そりゃ大木をポキポキ折っていた少女に担がれて攫われた訳であるし、狼男さんからしたら何されるか分からないし、恐怖体験真っ只中って感じだろう。
・・・とにかく、敵意が無い事を伝える為にも、狼男さんとお話を続けなければ。
「そ、そういえば、先程はどうして私の事を吸血鬼と呼んだのですか?」
「そ、それは狼男である私が捕捉出来ないほどの速度で移動できる妖怪はこの辺りでは吸血鬼様しか考えられませんので・・・」
「ふ、ふむふむ。なるほど!」
狼男さんが言ってる事はあんまりよく分からないが、とりあえず相槌を打っておく。
「それでは、狼男さん・・・あ、そういえば、貴方のお名前はなんというのですか?」
「・・・弱小な妖怪は基本名前を持っていないのです。吸血鬼様なら皆が名前や、家名を持ち、家名にちなんだ、 加護を受けています。我々〖狼男〗のような〖無名の妖怪〗は吸血鬼様の支配下にあり、加護を頂きながら、生き長らえているのです。ですから私の事はそのまま狼男とお呼びください。」
そう話す狼男さんは、少々
狼男さんが無名だなんて・・・オカルト好きな私じゃなくても知ってるようなメジャーな妖怪だと思うのですが・・・
「ふむ、では貴方も吸血鬼の加護を受けているのですか?」
「・・・いえ、私は加護を取り上げられてしまいまして、妖怪の存在の源である他者からの
そう言って狼男さんは苦笑する。
「え!?ど、どうして?なんで加護を取り上げられちゃったんですか?」
「・・・なんというか、私は結構、不器用でして・・・狼男は満月の夜に人狼という妖怪に変化するのですが・・・」
平原に座っている今、ふと空を見上げると、まんまるなお月様がこちらを見て微笑んでいる。
狼男さんの話によると狼男は満月の日を多く経験していく事で満月から力を授かり種族としての進化をしていく存在なのだそうだ。
「では狼男さんも、その人狼とかいう種族に進化していく過程にあるのですか?」
「・・・私は人狼になり損ねた落ちこぼれの狼男です。」
そう話し始めた狼男さんの顔は先程と変わらず狼の顔のままであるが、何だか悲しそうに、寂しそうに見える。
「狼男は満月から力を授かると獣の姿から徐々に人間の姿へと変化していくのです。そうしてそのまま人間社会の模倣をしてコミュニティを形成していきます。周囲の同族達が月から力を授かる事で人狼へと進化していく中、私だけはどういう訳か月から力を授かる事ができずに、そのままコミュニティを追い出されてしまいました。」
狼男さんは、今はなんというか茶色い狼をそのまま二足歩行にさせたみたいな格好をしている。
この姿はこれでとってもかっこいいと思うが、狼男さん的には人狼になれない自分がかなり悔しいようで爪がくい込んで血が滲む程に拳を握りしめている。
「その後、吸血鬼の館の番犬として雇って頂けたのですが、この状態のまま、満月の夜になると、物が上手く持てないやら、力加減が難しいやらで、たくさん館の主様にご迷惑を掛けてしまいまして。つい先程、館を追い出されて
「・・・そうだったんですね。」
なるほど。
それで、私から畏れやらエネルギーを得て、生き延びる為に襲ってきたのか。
確かにあの目の血走り方は怖かった。
「まあでも、最期に貴方のような、美しい吸血鬼に殺されるのなら、妖怪本能に尽きるというやつです。今更抵抗致しませんので、どうか安楽な死をお与え下さい。」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・え?
そんな物騒な事はしませんが?
ていうか助ける気マンマンなのですが?
吸血鬼なら加護を与えられるのなら他称吸血鬼の私なら狼男さんに加護を与えれば狼男さんが消えてしまう事は無いはずだ。
どうやって加護を与えるのかは分からないが、狼男さんに聞けば分かるだろうか・・・
「な・・・なんで・・・」
狼男さんは声に出していない、私の
・・・少し話していて思ったが、狼男さんは私が考えている事がある程度分かるのだろうか?
時々心の声に反応してくるから、びっくりする。
しばらくすると、狼の顔でニコリと笑った。
「・・・もし、貴方様の加護を授けて頂けるのであれば、私は貴方様に生涯の忠誠を誓います。」
狼男さんはそう言って跪いて、頭を垂れた。
「わ、分かりました。とりあえず、跪くのをやめてください。前の主人はどうであれ、私は無闇にかしずかれるのはあんまり好きじゃないです。」
「かしこまりました。」
「狼男さん…は呼び辛いですね。では、貴方に名前を付けてあげます。」
そう言って、軽く提案する。
「なっ!?お、おやめ下さい!妖怪への名付けは本来危険な行為です。妖怪への名付けとは名付けた妖怪に魂の力を分け与え、
「では、貴方は今日から〖ヴァルター〗です。これは、ドイツ語で、
「へぁ!?」
狼男さんの丁寧な話し方を見てパッと浮かんだ名前を狼男さんに名付ける。
狼男さんもとい、ヴァルターは素っ頓狂な声をあげて、かなり驚いている様子だ。
・・・家族とか、いきなりひとりぼっちで森の中にいた寂しさからか、恥ずかしい事を言ってしまった。
出会って間もないのに、いきなり距離感が近すぎただろうか。
まぁ、これから仲良くなっていきたいと思った私の感情は本物だ。
というか・・・ぷぷぷ。
ヴァルターの狼の顔で驚く姿がコミカルで少し笑ってしまう。
「んあ!? ﹍ ﹍んっ ﹍ ﹍あ、くぬぬぬぅ」
くすくすと笑っていると突然私の中から、何かが抜けて、流れ出ていくのを感じ、全身の脱力感からへなへなと座り込んでしまった。
しばらくすると何かが流れ出ていく感覚は収まってきたが、かなりの脱力感と全身の節々に痛みを感じる。
な、なるほど、これが名付けにともなう力の譲渡みたいなものか・・・
確かにこれは本能的にも嫌な感覚だ・・・
全身の骨の髄から何かが引っこ抜かれるような強烈な痛みと脱力感。
人間感覚で言うと例えば、
でも、どうやらこの身体には痛みに対する耐性があるようで泣き叫んだり、狂ったりすることなく耐えられそうだ。
名前を付けるだけなのに結構えげつない代償だ。
これは確かに、ヴァルターの言うように名付けを嫌がる妖怪も多そうだ。
「こ、これは!?」
脱力して気怠い身体でヴァルターはどうなったかなと、様子を見てみる。
すると、先程までそこにいた大きな狼男さんの姿はなく、代わりに歳は14歳前後で柔らかそうな茶髪はセミロング、身長は今の私よりも少し高い140cmくらいの可愛らしい女の子が全裸でぽつんと
・・・ん?
・・・女の子?
「うえぇ!?狼男さんじゃなくて狼女さん?いや、狼少女さん!?というかすっぽんぽんじゃあないかぁぁぁ!服を着なさい!」
「お、落ち着いて下さい。私の種族は狼男です・・・たぶん。あと、服は持ち合わせがありません。」
あまりにも衝撃的な出来事に先程までの倦怠感なんか忘れ、慌てて私が
「バ、バカ、おバカさん。と、とりあえずこのローブでも着ときなさいって丈が足りない!!」
ヴァルターより私の方が一回り小さいからか長さが微妙に足りない。
このままでは見えちゃいけないものが見えそうなくらいきわどい格好だ。
せめてローブがもう少し伸びれば・・・。
そう思った途端、ローブが伸びた。
それもちょうど良い感じに。
・・・このローブも謎が多いですね。
また、今度しっかりと見てみましょう。
とにかく、これでひとまず安心だ。
「お嬢様!」
「お嬢様!?」
急にヴァルターにお嬢様と呼ばれ、びっくりしてひっくり返りそうになる。
ひっくり返りそうになった私をヴァルターが支えてくれる。
「お、お嬢様!?だ、大丈夫ですか!?」
「ヴァ、ヴァルター。・・・そ、その・・呼ばれ慣れてないので、お嬢様はやめて頂けると…」
お嬢様とか呼ばれると、なんか、小っ恥ずかしい。
私ならロリっ子に上目遣いでお願いされれば何でも言う事を聞いちゃうのだが、か細い声だったからか肝心の本人にはそんなお願いが聞こえていないようで・・・。
「お嬢様!私〖ヴァルター〗は、
「う、うぅ。魔性のロリっ子の上目遣いが効かないだなんて・・・お、お嬢様は恥ずかしいですよ・・・。あと、さっきと合わせて2回もよろしくされました。よろしくです。」
「お嬢様!さっそくですが、聞きたい事があります。」
「な、なんでしょうか?」
「お嬢様のお名前は、何と
「あ」
な、名前かぁ・・・
どうしようかな・・・
前世の名前は忘れちゃってるし・・・。
前世の名前・・・
・・・あ、そうだ!
「アズール」
「?」
「ヴァルター、私の名前はアズールです!これからはアズールと呼んでください。」
「かしこまりました。アズールお嬢様。」
アズールとは、前世(前の記憶の事をこう呼ぶ事にした)でオンラインゲームをしていた際に、アバターに付けていた名前だ。
結構気に入ってる名前だし、不満はない。
そのオンラインゲームでは確か誰かにこの名前を付けて貰ったはずだ。
その子達にはよくお節介焼きにも程があるって呆れられてたっけ・・・
・・・う〜ん。
それ以上はあんまり思い出せない・・・
まぁ、とにかくこれからはアズールとして、この人生、いや、妖怪生を楽しんでみよう。
・・・それはともかく。
「ところで、ヴァルター。聞きたいのですが貴方はなぜ、女の子の姿になったのですか?」
「私にも良く分かりません。1つ言えるとしたら、お嬢様に名前を頂きお力を頂けた事で、私は種族としての狼男から人狼へと進化したようです。」
「な、なるほど。分からん事だらけですが、とりあえず、進化おめでとうございます。」
とりあえず進化とはめでたい事だと思うのでお祝いしておく。
勝手に男だと解釈してしまい、執事という意味の名前をつけてしまった。
今から改名するのも、なんだか変だしヴァルターのままで大丈夫かな?
その後も好きな食べ物やら嫌いな食べ物やら色々とヴァルターに質問攻めにされたが、お嬢様呼びを改める事はできなかった。
1度魔性のロリっ子ぶって『お嬢様じゃなくてアズールって呼んで欲しいな♡』とか無理して語尾に♡が付きそうなくらい媚びた感じでお願いしてみたが、ヴァルターは〖では!アズールお嬢様!〗とか満面の笑みで呼んで来たりしたので諦めた。
というか二度と媚びた声なんか出さない・・・
恥ずかし過ぎて顔から火が出そう・・・
とにかく諦めてお嬢様呼びを受け入れたところで、かなりの時間話していたからか、辺りが少ししらみ始めた。
どうやら夜明けが近いようだ。
吸血鬼と言う事は、今まで食べたパンの枚数を気にしている某石仮面の吸血鬼さんのように、日光に当たれば消滅してしまうかもしれない。
ちなみに私は和食派なので20枚程しかパンは食べた事が無いはず・・・
・・・とにかく日光で溶けちゃうかもしれないのはちょっと怖い。
「ヴァルター。とにかく、まずは拠点となる場所を探しましょう。」
「拠点・・・ですか?」
「はい、拠点です。これから生活していく中で、さすがに、野宿ばかりは日光もありますし、雨ざらしは精神的にも辛いです。なので、雨風を
「分かりました。……1つ質問させていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。なんですか?ヴァルター。」
「おふろとはなんでしょう?」
「へ?」
まさか、風呂に入らないタイプの人間、いや妖怪?
いやしかし、さっき運ぶ際にお花のようないい匂いがしたんですよねぇ。
「お風呂はお湯に浸かり、身体を洗い清めて、疲れを
今更だが、ヴァルターの常識が現代の常識とズレている気がしたので今がいつでここがどこなのか聞いてみる事にした。
もしかしたら人間と妖怪で常識が違うかもだが・・・
「申し訳ありません、お嬢様、私も今が何年なのか、場所も詳しくは知らないのです。恐らく西暦でいうと400~500年のくらいかと。最近聞いた話だと、ローマ、ガリアと呼ばれる場所だと聞いた事があります。」
めっちゃくちゃ昔じゃないか!!
え?ほんとに?
た、タイムスリップってやつですか?
確かに空気の澄んでる感じといい、混じり気がない感じといい、ひょっとすると、昔にタイムスリップしてるかと思っていましたが、思ったよりも昔でびっくりしました・・・
あと、ここはヨーロッパか …。
まぁ、狼男や、吸血鬼と言ったらヨーロッパのイメージだし、イメージ通りかな。
400~500年台のヨーロッパか…ふむ。
確かその時代には・・・
「それなら人間が作ったテルマエがあるじゃないですか、
「お嬢様、我々は妖怪です。人間とは畏れを頂きながら生きていく、関係がございます。あまり、人間に近付きすぎるのは良くないかと。」
「む、むぅ、ヴァルターが言うなら仕方ありませんね。」
「それに、身体を洗い清めるのであれば魔法があります。」
「ま..ほう?ま、魔法!!?く、詳しく!詳しく教えて下さい!ヴァルタアァァー」
「お、お嬢様!?お、落ち着いて、落ち着いて下さい、お嬢様ぁぁぁああぁ///」
魔法という言葉にテンションが一瞬で振り切れてMaxになった私は、ヴァルターの首元に飛びつき、話の続きを促す。
ついでとばかりに、触りたくてウズウズしていたヴァルターの耳をもふもふする。
耳の裏、付け根、真ん中当たりをギュッと押さえる。
ありとあらゆる、方法でもふもふする。
ふわふわだぁ。
これぇ、癒されるぅ・・・
「ひゃあぁ!?...///やめ...///ん、んいぃ!?」
赤面しながら、頭や耳を撫でられる、中学生くらいの少女の姿のヴァルター。
一見すると姉妹みたいな女の子同士がじゃれてる様にみえるはずである。
アウトかセーフでいうとセウトなので何も問題はない。
ヴァルターのもふもふの耳やしっぽを
ヴァルターにとって私が、妖怪としての死からの救いであったのと同じように、私にとっても、ヴァルターは孤独で寂しい気持ちからの救いだったのかもしれない。
初対面こそ、すっぽんぽんで喰われそうになるという最悪の出会いであったが、
これからも、ずっと何を差し置いても、守っていきたいと心から願う。
なんて言ったって、今世の私は吸血鬼。
そんじょそこらの脅威からは、家族を守ることだってできる。
だからといって、吸血鬼という立場に甘んじては居られない。
また、あの時みたいに油断してはいけないのだ。
・・・・・・・・・・・・ん?
………あの時ってなんだ?
また、思い出せない記憶がふと浮かんでは消えていく。
まるで、前世に大切な記憶を置き忘れてしまったかのように、思い出せずに手のひらからポロポロとこぼれ落ちていく。
「まあ、いいか。」
「はぁ...///はぁ...///どうなさいましたかぁ...///お嬢様ぁ?」
少し思案に
私はそんなヴァルターににっこりと
「んーん。なんでもないですよ。」
空に浮かぶまんまるなお月様が、まるでその微笑みを隠すように
先程まで綺麗な夜空であったが、しらみ始めた今は雨を降らせず、ひたすらに雨を
〖後書き〗
東方庇護録
庇護対象1人目:ヴァルター
種族:狼男→人狼?
本作の常識人枠。
アズールが出会った初めての幻想の存在。
性格はお茶目な所はあるが基本はマジメ。
アズールの事をアズール様、お嬢様と呼び慕っている。
詳しいキャラ紹介はまた後ほど。
アズールはヴァルターの事を庇護対象として、妹みたいに思っています。
見た目的にはヴァルターが姉みたいですが・・・。
これから先、東方庇護録の題名の如く庇護対象が増えていく………予定です。