東方庇護録(旧作)   作:まほろばのーぶる

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第20話:家族を護る作戦会議~館を繋ぐ同盟締結~


Asyl perspective

 

 

ガタガタガタガタガタガタガタ

 

 

「うわぁ!?にゃにぃごとでしゅかぁ!?」

 

【挿絵表示】

 

気持ち良く眠っていた意識が館全体の揺れで唐突に覚醒する。

 

い、一体何が!?

館全体が超揺れてるんですけど!?

 

寝起きでぽけーっとしている頭を現状把握の為に必死で働かせる。

まず、地震が起きた際には身を守る為に机の下に隠れて、余裕があれば火の始末をして、ドアや窓を開けて逃げ道を確保して・・・って違う!いや違わないけど、今は違う!

寝ぼけてる場合じゃない!

 

とりあえず机の下から這い出て地響きについて考えを巡らす。

感じるのは断続的に響く地響きとエネルギーの衝突の気配。

地響きとエネルギーの規模から察するに、かなり強力な力を持った存在が暴れているようだ・・・

 

もしかしたら教会の人間達の襲撃かも・・・

もしそうなら館の皆が危ない・・・

・・・でも、月光館周囲2、3kmに張り巡らせている警戒魔法には何も感知されていない。

 

もしかしたら、全ての警戒魔法をくぐり抜けてきた存在がいたり、探知領域外からの長距離攻撃等も考えられる。

・・・だが、その全てを想定し迎撃等の対策はしているはずである。

容易に月光館に攻撃を加えることはできないはずだ。

 

ドドドドドドド

ガタガタガタガタガタガタガタ

 

・・・では、この地響きは一体何なのだろうか。

 

 

ふと、寝る前の事を思い出す。

 

確か、私はルーミアちゃんを抱き枕に2度寝していたはずだ。

ベッドの布団を捲り中を見るも、そこにルーミアちゃんはいない。

 

どうやら先に起きているようだ。

 

「・・・じっとしていても何も分かりませんしとにかく、この地響きの原因を探りに行きましょう。」

 

ドドドドドドドドドドドドッ

 

未だに断続的に続く、地響きの原因を探る為エネルギーの気配を辿り月光館の中庭に向かう。

 

 

中庭に出て真っ先に目に入ったのは、夜空に光る美しい光弾の数々。

 

今は新月で深夜の2時くらいだからだろうか。

真っ暗な空に浮かび上がる光の弾はとても美しい。

 

その美しさに魅了されていると空から声が降ってきた。

 

「ふふふふ。さぁ、皆さん、まだまだ行きますよー!!もう一度かかってきなさーい!!」

 

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吸血鬼である私の目には、暗い夜空に浮かぶ薄茶色の髪としっぽを持った可愛らしい少女が、執事の燕尾服をはためかせながら少し頬を赤に染めて興奮気味に光弾を放っている姿が映る。

 

・・・一体こんな真夜中に何をしてるんだろうか・・・。

 

「くそ〜。ヴァルターめちゃくちゃ弾幕ごっこ強いじゃないか!」

「さすが、ヴァルター様ですね。少し悔しいけど私じゃあ手も足も出ません。」

「「「「「バタンキュー」」」」」

 

館の広い中庭をよく見てみるとそこにはいくつかの小さなクレーターが出来ちゃっており、その近くに妖精達が佇んでいた。

妖精メイドと大妖精は戦意喪失しているが、チルノさんは周囲に氷を浮かせて妖力と魔力を漲らせている様子で、まだ戦う気満々だ

 

「まだまだー。弾が当たらないなら、捕まえてやるー。」

 

そんな声が、またもや空から聞こえると同時に、闇夜からどこからともなく現れた数多の闇の鎖がテンションが異様に高い人狼の女の子目掛けて放たれる。

鎖を放ったのは1人空中で膨大な数の光弾をなんとか避けていたルーミアちゃんだ。

それと同時にルーミアちゃんの隣に移動したチルノさんからも多数の氷の礫がヴァルターに放たれる。

 

「ほほぅ。やはりルーミアさんとチルノさんは戦闘力で言えばそう簡単に不覚は取りそうにありませんね。だが、〖当たらなければどうということはない〗のですよ!!」

 

私が昔教えた前世のアニメのセリフをここぞとばかりに言い放ちつつ、テンション高い可愛い執事は放たれた闇の鎖と氷の礫をひょいひょいと軽く避けていく。

 

「「くそー。全然当たらない。」」

 

全く当たる気配の無い弾幕にルーミアちゃんとチルノさんは悔しそうにしている。

 

「もう終わりですか?では今度はこっちからいきますよ!」

 

そう言って可愛い執事は指をパチリと鳴らす。

すると、ルーミアちゃんとチルノさんの周囲にまたもや、とてつもない量の光弾が現れた。

 

その全ての光弾が不規則に2人に射出される。

 

「「うひゃぁぁ!」」

 

2人は必死で避けるも手数が多くかすり傷が増えていく。

 

さすが、弾幕魔法の一番弟子だけあって弾幕魔法に無駄がなく美しい。

 

放たれた光弾はそのまま月光館へと迫り、私が仕掛けている館を保護する結界魔法に当たり爆ぜている。

結界魔法はなんとか保ててはいるが、このままでは破壊されてしまうまで時間の問題だろう。

 

・・・というか、なるほど。

さっきからの地響きはこれか・・・。

 

「ふふふふ!〖今のはスペルカードでは無い!通常弾幕だ〗ってやつですよ!!っはははは!段々と楽しくなってきましたよ!さぁ2人ともまだまだっいひゃい!

「やりすぎです。」

 

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頬を赤くさせてはっちゃけている可愛い執事、もといヴァルターの背後に、瞬時に回り込み頭にチョップする。

もちろん全力ではチョップせず、ヴァルターが痛がりそうなくらいに完璧に手加減してある。

 

「「「「「あ!アズール様おはよー」」」」」

「なんだ。アズール今頃起きたのか。」

「おはよー。お姉ちゃん。」

 

「皆さんおはようございます!・・・そりゃあ館が揺れるくらい誰かが大暴れしてるんですからびっくりして飛び起きますよ。」

 

頭を押さえて蹲るヴァルターにジト目を向けながら皆と挨拶を交わす。

 

「お、お嬢様、お、おはようございます。」

「おはようです、ヴァルター。こんな真夜中に弾幕ごっこではっちゃけたらいけませんよ。館がグラグラ揺れてて心配したんですからね。」

 

ちなみに月光館は山奥にあるので近所迷惑にはならない・・・とは思う。

紅魔館は3km程離れているので多少騒いでも迷惑には当たらないだろう、多分。

・・・あ、でも光弾の光が山から漏れてるのを見られてたらまた人間達に変な噂を流されそうですね・・・

 

・・・まぁ、それはとにかく、ちょっぴり心配したんだからヴァルターのその頭痛はおしおきです。

めっ!ですよ。

 

「「「「「ヴァルター様楽しそうだったね!」」」」」

 

涙目で頭を押さえて蹲るヴァルターを妖精メイド達が囲んでいる。

どうやら、いつもは弾幕ごっこを窘めている側のヴァルターが弾幕ごっこに夢中になっていた事で妖精メイド達にからかわれているようだ。

 

いつもクールなヴァルターが思ったよりも弾幕ごっこに夢中になっちゃうのは昔からよくある事だ。

懐かしいものだ。

昔はよく相手してあげたっけなぁ。

ド〇クエごっこや、ガ〇ダムごっこ。

 

 

「お姉ちゃん。ごめんなさい。」

 

ヴァルターがいじられているのを微笑ましく見ていると、ルーミアちゃんが唐突に謝罪してきた。

なんでも、1人で館から出ていこうとしていたらしい。

 

その機微を察したヴァルターによって食い止められ、皆に説得されて落ち着いたようだ。

 

・・・ナイスですヴァルター。

危惧していた状況になる所でした・・・

 

「謝る必要はありませんよ。ルーミアちゃんは優しい子なので皆の為にそれくらいの事をすると予測していました。」

 

俯くルーミアちゃんの頭を優しく撫でながら優しく諭す。

 

「例えルーミアちゃんが家出したとしても必ず迎えに行きますし、絶対に連れ戻します。親が可愛い子の家出を簡単に許すわけないのですよ。」

 

実際にルーミアちゃんが月光館から出ていったとしても、瞬時に連れ戻す事が出来るのだ。

それを可能にする能力を持つ今生の吸血鬼の身体にはとても感謝している。

それでも、私の庇護下に無い場所までルーミアちゃんが逃げてしまった時に人間達に襲われていたらまずかったので未然に防ぐ事ができて本当に良かった。

 

「ありがとー。」と顔を赤くして照れているルーミアちゃん。

 

それにしても、家出するくらいルーミアちゃんは追い詰められていたのだ。

この問題は由々しき問題だ。

 

早々に解決する為にも手を打たなければ、またルーミアちゃんが追い詰められてしまう。

・・・とりあえず私が考えている対策を紅魔館のスカーレット伯爵に相談してみよう。

 

そうと決まればさっそく、紅魔館へと転移魔法で移動する為に準備を始める。

 

「ヴァルター。私は少し野暮用で紅魔館に行ってきます。月光館を任せましたよ。」

「しょ、承知しました、お嬢様。行ってらっしゃいませ。」

 

いまだに妖精メイドに付きまとわれながら、赤い顔で恥ずかしがっているヴァルターに館の事を任せ、私は1人、問題解決の為に紅魔館へと転移した。

 

 


 

 

紅魔館の図書館へと転移した私はさっそく机の上に突っ伏した小悪魔を見つけた。

 

転移した私に気付いた小悪魔は顔を上げる。

 

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「あぁ。アズール様ようこそお待ちしておりました。伯爵様なら会議室で待っていますよ〜。ご案内します〜」

「小悪魔、お久しぶりです。さすが運命が見れる伯爵ですね。私が来ることなんてお見通しでしたか。」

「どうでしょうね〜。これでも昔と比べて運命を見る精度が落ちていると思いますよ〜。何せいつアズール様が来るのか分からないというので8時間くらい会議室で待機してるもんですから。」

 

あらら。

伯爵は案外律儀なんですね。

 

「そう言えば、美鈴さんは元気ですか?」

「美鈴さんは紅魔館の門番という職に就いて頂きました〜。すっごく真面目に門番してくれてますよ〜。侵入者なんて来ないですけど〜。」

 

おぉ!

歴史が収束してきている!

私が前世で見た書物の歴史に収束した美鈴さんに少しテンションがあがる。

 

そんなお喋りをしながら、会議室まで移動し会議室の扉を開ける。

 

扉を開けるとそこには。

 

「・・・何してるんですか?ふたりとも。」

 

おしどり夫婦がヘルメットとピコピコハンマーの前で真剣に向き合っていた。

 

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「「叩いて、被って、ジャンケンぽん!!」」

 

 

ジャンケンに勝ったのは伯爵。

すぐさまピコピコハンマーを持つも夫人は目にも留まらぬ速さで、既にヘルメットを被って頭に押さえながらニヤニヤしている。

 

叩いて、被って、ジャンケンぽん。

 

私が皆に教えた前世の、大昔に流行った遊びだ。

 

ピコピコハンマーもヘルメットも昔、前世で何かの資料で見た記憶を元に私が魔法で作成した。

 

「身体能力では君には勝てないよね・・・」

「あら。私もあなたにジャンケンでは勝てないわよ。そもそも公平な勝負だとしてこのゲームを選んだのは貴方なんだから。」

 

疲れている伯爵とは裏腹に夫人は凄く楽しそうだ。

 

「おはようございます。お久しぶりですね、伯爵と夫人。」

「おぉ。アズール嬢。よく来たね。要件は分かっているよ。」

「あらぁ。アズちゃん。おはよう。夫人じゃなくて、お姉さんって呼んで欲しいのだけれど。」

 

真剣に向き合っていたおしどり夫婦がこちらに気付き笑顔で挨拶を交わす。

 

「そうだ、ちょっと聞いてよ、アズちゃん。」

「どうしましたか?」

「あの人ってば、私がしたい事をなかなかさせてくれないのよ。どうしてもというなら勝負で決めようって言って、もうかれこれ8時間くらいは決着がついてないわ。」

「ふふっ。相変わらず仲が良いですね。ちなみに夫人がしたい事って何ですか?」

「アズちゃん達に害をなす人間達を滅ぼす事」

「うぇ!?」

 

そう言えばそんな話をこの前伯爵から聞いたような・・・。

 

「・・・夫人、人間達を滅ぼすのはやめにしませんか?」

「えぇー。・・・じゃあ、アズちゃんが上目遣いで、お姉さん大好きって言ってくれたらやめにしてあげる。」

 

そう言って夫人はニヤニヤしながら舌なめずりをする。

 

・・・くっ。

なんとなくこうなる気がしてました。

・・・しょうがないですね・・・。

 

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「・・・・・、お姉さん///大好き//。」

 

「!!アズちゃぁぁぁん。お姉さんもアズちゃんの事、大好きよぉぉぉ!!!」

 

【挿絵表示】

 

「うわぁぁ!!危ないぃ!」

 

唐突にとんでもないスピードで突っ込んでくる夫人を、なんとなく予測していた私はギリギリで避ける事が出来た。

 

その動きは吸血鬼の動体視力でも、ギリギリで見えないくらい早い。

もう回避なんてほぼ勘と経験則によるものである。

さすが夫人。

この中で断トツで身体能力が高いだけある。

 

「んもぅ。アズちゃんのいじわる。」

「いやいや、この間も回避しきれずに抱き着かれて肋骨が何本も折れたんですから、そりゃ全力で避けますよ。」

 

今まで、夫人に折られた肋骨の数は10本や20本では済まない。

せめて抱き着くならその馬鹿力を制御して欲しい。

 

「ははは。回避出来てるだけでも凄いと思うけどね・・・ところで、一応要件を聞こうか、アズール嬢。」

 

おっとそうでした。

 

「伯爵、お願いがあります。」

「何かな?出来る限り、僕に出来ることなら何でも協力するよ。」

「いえ、伯爵に直接的に協力してもらうのは調停者の立場としてはNGだと思うのですよ。」

「ふむ、確かに僕1人が単独で人間達との問題に首を突っ込むのは調停者の存在意義としてはあまり良くは無いね」

 

調停者とは、世界のバランスを保つ為に存在する者の為、どちらか一方の勢力に対して直接的に関わるのはNGだ。

 

つまりは、間接的に助けてもらえば良い。

 

「なので、名前だけでも貸して欲しいと思いまして。」

「・・・?どういう意味だい。」

 

そこで、私は1呼吸置く。

 

「月光館と紅魔館で同盟を結びませんか?」

 

 


 

 

「・・・なるほどねぇ。考えたねアズール嬢。」

 

私が考えたのは館同士の同盟関係。

こうする事で伯爵本人が直接関わらず、所属する組織が手を組んだと捉えることができる。

 

それを人々の間で吹聴する。

こうする事で、月光館への攻撃に対する抑止力が働き、館の安全が図れるだろうと考えた。

 

伯爵的にも実際に直接手を下している訳でもないしギリギリセーフらしい。

 

「元々紅魔館の離れだった月光館に住まわせてもらっている私としては、随分と図々しいお願いとは思いますが。お願いします。」

 

頭を下げる。

 

アズちゃんが・・・頭を下げている?

「ア、アズール嬢。頭をあげてくれないかな。妻の僕を見る目に殺意が篭もり始めたから・・・」

 

そう言われて頭を上げた私に伯爵は続ける。

 

「そもそも、月光館はアズール嬢。もう貴女のものなのだから、堂々と月光館の主を名乗っても大丈夫だ。それに僕がアズール嬢に館を譲ったのは先行投資と言ったはずだよ。アズール嬢は色々と僕達に良くしてくれるからね。後悔なんてしていないよ。」

 

そう言って、伯爵は先程まで叩いて被ってジャンケンぽんしていた道具に視線を向ける。

 

私が月光館でヒキニートしている事の罪滅ぼしに紅魔館には開発に成功した前世の娯楽品を定期的に贈るようにしている。

 

このピコピコハンマーもヘルメットもそういった代物だ。

今までは夫人とゆったりした時間を過ごせていなかった伯爵が、今では娯楽を通して夫人と和気あいあいとしている。

そんな姿は私も見ていて微笑ましかったので一石二鳥だ。

 

「じゃあ契約しよう。〖紅魔館の主として契約する。我ら紅魔館は月光館と同盟を結び、月光館に対して戦闘以外の援助をする事を誓おう。〗」

「えと、〖月光館の主として契約します。月光館は紅魔館と同盟を結び、紅魔館に対してどのような援助でも必ず実行すると誓います。〗」

「は〜い。その契約。悪魔である私が見定め、確認しました〜。〖月光館、紅魔館の同盟、協力関係の契約成立〗とします〜。さしずめ館間同盟、といった所でしょうか〜。」

 

伯爵と私が宣誓した契約を、悪魔である小悪魔が成立させる。

悪魔に認められて初めて契約は成立する事となり、成立した契約は対外的に吹聴しても良くなるのだ。

 

逆に言えば悪魔が間で仲介しない契約は成立したとは言えず、世界に認められる事はないのだそうだ。

ここの所が前世とは違うファンタジー的な要素で少しテンションが上がった。

 

「しかし、紅魔館と月光館だけの同盟では人間達に対する牽制としてはまだ弱いね。」

「え、でも私引きこもりなので伯爵以外に知り合いなんていませんよ?」

「ふむ。・・・じゃあ、挨拶もかねて夢幻館に行こう。アズール嬢。」

「夢幻館・・・ですか?」

 

夢幻館、私の前世の幻想郷の知識にも無い館だ。

 

「夢幻館に住むのは()()()3人しか居ないけどその個人個人が人間達にとっては厄災並に力を持っている存在だから、同盟を結ぶ事による人間達に対する影響度は高いと思うよ。」

 

・・・大体3人ってところが気になるが、伯爵からのありがたい提案を断る理由はない。

 

「分かりました伯爵。よろしくお願いします!」

 

そう言って、私は伯爵とともに夢幻館に向かう事になった。

 

 

 

 


phantom perspective

 

 

暗闇の妖怪の首はまだ取れぬのか。

ええい!いつまで待てば良いのだ。

そんな事よりも我々の邪魔ばかりする神に仇なす忌々しい紅魔館を焼く許可を頂きたい。

我らの目的を忘れたか!我らの目的はただ1つ・・・暗闇の妖怪を亡きものにして馬鹿な民衆から信仰心を得る事。あの館の離れにある月光館はその暗闇の妖怪を匿っており、更には着々と馬鹿な民衆からの畏れを集めつつある。我々の計画の邪魔でしかないのだ。今こそあの忌々しい館を焼くべきなのだ。

そもそも、妖怪など百害あって一利なしの怪物でしかないのだ。我々の害でしかないものは全て滅するべきだ。

 

「「「「「「「「そうだ」」」」」」」」

 

そんな風に物騒な事を熱く討論しているのは私の子供達。

こんなにも気性が荒く、暴力的ではあるがこれでも愛すべき私の子供達なのだ。

 

「「「「「「「「「「教皇様!!!」」」」」」」」」」

 

そんな息子達は、私に先程まで討論していた内容の許可・認可を得る為に声をかけてくる。

 

「皆、落ち着け。そもそも月光館はどうかは分からないが、紅魔館には吸血鬼の調停者がいる。おいそれと手を出すべきではないだろう。・・・そもそも、その暗闇の妖怪を無理に討伐せずとも信仰心を集める方法はあるはずだ。だから皆でそれを模索して・・・」

 

そんな私の言葉を遮って、子供達は声を上げる。

 

教皇様は温すぎるのです!このままでは我ら〖教会〗の権威は地に落ち、昔の様に妖怪達に人間達が虐げられてしまうのは目に見えています!だからこそ、太古より人々から畏れを集めている暗闇の妖怪を討伐し、溜め込んでいる畏れを信仰心へと変換し我々が手に入れる必要があるのです!!

 

穏健派として、皆を諭すために発した言葉を子供達の中でもリーダー格の男が遮り他の子供達を扇動する。

 

そうだ!

その通りだ!

教皇は甘い!甘すぎるのだ!

 

教皇とは私の役職の名前らしい。

いつの間にか大きくなっていた組織の頂点にいつの間にか添えられていた。

私への非難の声が大きくなっていく。

 

・・・私はお前達のためにも、手を出さないように伝えているつもりなのだが・・・。

 

教会に所属する私の子供達は人々から信仰心を受け、力を得ている。

 

最近は妖怪達からの畏れも貯まり、教会の人間は人間離れした力を獲得してしまった。

 

持て余す力は人をおかしくしてしまう。

 

人々から信仰を得ることに躍起になった哀れな子供達は狂ってしまった。

 

もう相手が滅びるか、自分達が滅びるまでこの子達は止まらないだろう。

 

自分に対する非難の声が止むまでの間、後悔や責任に痛む頭や胸にそっと手を当て耐えることにした。

 

 


 

 

我らが母よ。お疲れのご様子で。これをお飲みになってください。疲労に良く効く薬でございます

 

ひとしきり非難の雨が止んだところで、強硬派の子供の1人が私に()を持ってきてくれた。

 

「・・・・・・ありがとう。頂くよ。」

 

そう言って、受け取った飲み物を一気に飲み干し、皆に伝える。

 

「私は、少し体調が悪い。自室に戻るから席を外すよ。また何か決まれば私の所へ来てくれ」

 

 


 

 

バタリ。

 

自室の扉を閉めて、その扉にもたれてズルズルと座り込んでため息をつく。

 

「・・・はぁ。・・・ハハッ。今日はトリカブトを煎じて作られた薬だったよ・・・。昔を思い出すなぁ・・・」

 

そう力なく呟く相手は私が信仰する女神様を象った木像。

私が大昔に作ったものだ。

我ながら、あの方を綺麗に再現出来ていると思っている。

 

「・・・はぁ。あの子達はもう止まらないだろうねぇ。・・・スカーレット伯爵には手を焼かせてしまうねぇ。」

 

そう呟きながら、私はふと横にある鏡を見てみる。

そこには、ひどくやつれて随分と老け込んだ自分の姿が映っている。

 

・・・段々と胸が苦しくなってきた。

トリカブトの毒が回ってきたのだろうか。

息が荒くなる。

 

そんな時、誰も居ないはずの部屋が、明るく優しい火の光で照らされた。

 

顔を上げると、そこにはとても懐かしい顔が見えた。

 

「・・・おやおや・・・久しぶりだねぇ。・・・はぁ、はぁ。・・・こんな姿で再会だなんて・・・はぁ・・・くっ・・・くくく・・・恥ずかしい、ねぇ。」

「・・・なんで、毒だと分かっているのに飲んじゃうのさ・・・。自分が養子として引き取った子供だからって気を許しすぎなんだよ。」

「・・・はぁ、はぁ。・・・大丈夫だよ。私は普通の人間じゃあないんだから・・・簡単には、はぁ、はぁ・・・死なないのさ。」

「嘘だね。アタイには分かるのさ。あんたは死にかけている。人も妖も神も、どんな存在だろうと生きる気力が無ければ死ぬんだよ?」

「・・・はは。・・・確かにそうだねぇ。・・私は人間だからねぇ。・・・随分と長生きしすぎてしまったようだよ。・・・もうそろそろ、地獄で皆にお世話になるかもしれないねぇ。」

「・・・こき使ってやるからな。覚悟しときなよ。」

 

そんな古くからの友人の言葉に久方振りに自分の顔に笑顔が浮かぶ。

 

「・・・じゃあね。アタイはあの方に命じられて様子を見に来ただけだからね。」

 

そう言って、部屋から出ていこうとする昔と変わらず幼い姿で松明を持った金髪の少女。

 

「・・・そんな顔しないでくれよ〖クラウンピース〗。()()()()()死んだとしても、また地獄で会えるだろ。」

 

【挿絵表示】

 

悲しそうな顔をする友人のクラウンピースに声をかける。

 

「・・・別にあんたが死のうが地獄でまた会えるし、アタイは別にどうも思わないさ。けれど、生きる気力が無くなるくらい憔悴してるアンタを見てアタイは哀れんでいるだけだよ。」

「・・・ははは。優しいとこあるじゃないか困ったちゃんめ。・・そうだなぁ。人間として死ぬ前にもう一度あの方に会いたかったよ。」

 

思い出すのは1000年前、彼女と初めて出会った日。

その日から私は、妖怪達から人々を守る魔術師、聖人(セイント)になったのだ。

 

色々とあって、今ではあの方の真似をして養子を取ったりしていたけど、あの方のように上手くはいかないね。

 

「・・・こんな憔悴した姿の自分の子供同然のアンタには〖ご主人〗様は会いたくないだろうぜ・・・。」

「ははははは。・・・違いないねぇ。・・・ねぇ、クラウンピース。あの方は何か言っていたかい?」

「・・・『無理しないで』って心配していたぜ。」

 

そう言って最後に、またなと挨拶をし地獄の妖精は姿を消す。

 

「・・・ふふ。『無理しないで』・・・か。・・・くくく。私はとんだ親不孝もんだな。」

 

そう弱々しく吐いた弱音は誰の耳にも届かずに、人知れず闇へと溶けていくのであった。

 

 


It was Saint? point of view

 




〖後書き〗
今回は引きこもりのアズちゃんが家族のためなら積極的に外に出ていき活動的になる感じを書いてみました。(≧∇≦)/
少し日本語がおかしいところもありそうなので見つかり次第随時改稿していきます。(-o-)/
少し敵サイドのお話も取り入れてみました。
(;´Д`)
元々設定だけはしていたのですが、文に書くとは思わず勢いで書いてしまいました。ヽ(´o`;
原作キャラ、オリキャラともに登場しましたが、本作のオリキャラはアズールとヴァルター、スカーレット夫妻以外は登場回数は少なくなる予定です。(´ε`;)・・・多分。

これから先書くのが少し苦手な戦闘描写が多くなるため見苦しくなるかもしれませんが、応援して頂けると幸いです。(>人<;)

たくさんのUA、お気に入り登録ありがとうございます!
作者のモチベーションが上がりまくりです。
本当に助かります!
今後、1週間に1話ペースに戻るかもしれませんが、今後ともよろしくお願い致します!
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