Asyl perspective
「ゆ、幽香!?ど、どうしてここに!?」
緑髪の女性が登場してから、全力で逃げようしていた夢月さんがアイギスの結界の中で悲鳴のような声をあげる。
彼女は先程までの余裕はどこへやら顔面蒼白でガタガタ震えているようだ。
「・・・これまた、派手な登場の仕方ね。もう少しで当たっちゃうところだったじゃないの。」
幻月さんの方は特に怯えることなく普通に話している。
もう少しで先程の破壊の光に巻き込まれそうになったからか顔は若干引きつっているが・・・。
「しょうがないじゃない。貴方の妹が自分の世界に引きこもってばっかりだもの。それに夢幻館のお客さんを引きずり込まれちゃあねえ。」
そんな緑髪の女性、幽香さんの言葉に幻月さんは
「あぁ!そういうことだったのね!」
と納得してたように微笑む。
ふと幽香さんに注意を向けるといつの間にか夢月さんが囚われているアイギスの結界に近づき、その結界を愛でるように撫で、うっとりとした目で眺めていた。
「あら、珍しい結界術ね。・・・これ良いわねえ。」
そうして口元をつり上げて拳を握りしめたかと思うと、吸血鬼の目じゃないと見えないくらいの超速度でアイギスの結界を殴りつけた。
ガンッ
1回目。
ガンッ
2回目。
ガンッピシピシ
3回目でアイギスにヒビが入る。
バキバキバキバキバキ
そして4回目で見事にアイギスの結界が粉砕された。
こっ拳で!?
一応アイギスの力のベクトル反射の効果は内側だけでなく外側にもあり、結界に設定している魔力分の力のベクトルを跳ね返すように作っている。
夢月さんが簡単に脱出できないように、かなり魔力を込めたはずなのだが、拳4発で込めた魔力を上回る力のベクトルを発生させたようだ。
・・・なんというフィジカルおばけだ。
それに殴りつけても、同じ力で殴り返されているダメージが幽香さんの拳に来ているはずなのだが、幽香さんに堪えた様子はない。
むしろ生き生きとした笑みを浮かべている。
その生き生きとした笑みは、きれいなお姉さんが浮かべそうな柔和な笑みではなく、獰猛な笑みであったが・・・。
そんな獰猛な笑みで、一瞬ちらりと私を見つめてきた時はヒヤリとした・・・
・・・気のせいですよね・・・
そんな幽香さんは柔和な笑みを浮かべてゆっくりと夢月さんの方へ歩きはじめた。
アイギスの結界が粉々になってキラキラと魔力の残滓が降る幻想的な風景をバックにゆっくりと夢月さんに近づく幽香さん。
「ひぃ!!ご、ごめんなさい!ごめんなさい!だ、だって、暇だったんだもん!幽香だって退屈なのは嫌いっていつか言ってたよね?って、あぁ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
そんな幽香さんに、ガタガタと震え、
しかし、そんな謝罪の言葉に一切反応せず、微笑みながら幽香さんは速度を落とすことなく夢月さんに近づいていく。
夢月さんはよっぽど怖いのか、後退りできないくらい足腰がガタガタ震えている。
「ぴぃ!?」
そうして目と鼻の先まで幽香さんは夢月さんに近づき声をかける。
「ごめんなさいも出来た事ですし、デコピン1発で許してあげるわ。」
・・・え?
な、なあんだ。
すごい優しいお姉さんじゃないですか。
デコピン1発だなんて、なんという平和的なお仕置きなのだろうか。
夢月さんもなんであんなに怖がっていたんだろう・・・。
「い、嫌ァ・・・ね、ねえさん・・・たしゅけ・・・」
しかし、そんな私のほんわかした想像と違い、〖デコピン〗という言葉に夢月さんは目に見えて取り乱し始める。
え?
たかがデコピン1発にそこまで怯えるものなのですか?
「ごめんね夢月。お姉ちゃんも助けたいのは山々なんだけど・・・。先に手を出しちゃったのは夢月だからねぇ。」
幻月さんは苦笑いしながらそう言って、私の隣までふよふよと移動してくる。
「ごめんね。夢月に任せられたから、流れで戦っちゃったけど侵入者じゃなくてお客さんだったのね。」
良かった、幻月さんは話が通じる悪魔のようだ。
「あ、はい。それは大丈夫です。大した怪我もしてませんから。」
「良かったわ。まあ夢月も今から幽香にお仕置きされるから、許してあげてね。」
「は、はあ。それは全然許しますけど、お仕置きって一体・・・」
バチコンッ
そこまで話していると、とんでもない爆発音が夢月さんの世界に鳴り響いた。
まるで、花火が打ち上がって光の花が咲いた際に生じるような、身体の奥底まで届く、そんな重厚な爆発音だ。
「うきゅぅぅ・・・」
爆発音の発生源の夢月さんと幽香さんを見てみると、目を回して気を失った夢月さんを優しく抱えた幽香さんの姿が見えた。
・・・目を離した隙に、一体何があったのだろう・・・。
「やあ、アズール嬢、怪我はなかったようだね。」
不思議に思っていると、ふと後ろから声がかかった。
振り返って見てみるとそこには、疲れた表情の伯爵がいた。
「あ、伯爵。急にいなくなってすみません。ちょっと拉致されていました。」
「うん、知ってた。」
どうやら拉致された私に気づいた伯爵が助けを呼んできてくれたようだ。
「あら、久しぶりね。今は伯爵なんて呼ばれているのね。」
幻月さんが伯爵に声をかける。
「久しぶりだね。相変わらず、君の妹の暴走っぷりには困ったものだよ。それにいつも利用される君の理不尽な強さも相変わらずのようだね。」
「あら、かわいい妹のお願いをなんでもとりあえず、聞いてあげるのは姉として当然だわ。」
「・・・妹溺愛っぷりも変わらないようで何よりだよ。」
伯爵と幻月さんは昔なじみのようで和気あいあいと談笑している。
「昔話も良いかもしれないけれど、私に何か大事な用事があったんじゃあないの?」
おでこに大きなたんこぶを作った、目を回した夢月さんを抱えた幽香さんはそう言いつつ私達の方へと飛んできた。
「ほらっ、幻月。困った妹さんを介抱してあげなさい。」
そう言って幽香さんは幻月さんに、気を失った夢月さんを渡す。
ふと気になったことを聞いてみる。
「そういえば今いるこの世界は夢月さんの世界なんですよね?本人が気を失っているのに世界が保てているんですね。」
そんな言葉に幻月さんが返答する。
「この世界、夢幻世界は夢月が自身の力の半分くらいを注ぎ込んで作った力作だからね。いわばもう一人の夢月みたいなものだし、片方が気を失っても維持できているのよ。」
へえ、そうなんですね。
そんなもう一人の夢月さんとも言える世界にはヒビが入って、穴まで空いてるがスルーしておこう。
「さて。改めて。はじめまして。私は幽香。夢幻館の主をしているわ。」
幻月さんに夢月さんを渡した幽香さんが優雅に会釈をする。
「あ、すみません。私はアズールと言います。吸血鬼です。月光館の主をしています。この度はアポイントもなく訪ねてきてしまい申し訳ありません。」
カーテシーで挨拶を返す。
・・・この70年近くで私のカーテシーも様になってきた。
とにかく、今回、夢幻館にきた目的を果たさないと。
「実は、今回お願いがありまして、夢幻館にお邪魔させて頂きました。」
「お願い?」
「はい、実は・・・」
かくかくしかじか
「・・・というわけなのです。」
幽香さんに要件を説明する。
月光館が匿っているルーミアちゃんのこと。
そのルーミアちゃんを狙う教会のこと。
その教会に対する策として強力な妖怪同士の同盟を結びたいことを伝える。
「・・・へえ。【教会】、ねえ。
ん?
・・・あの子?
そんな問いに伯爵が答える。
「それがどうやら、あの子も相当参っているようで、今では全然管理ができていないみたいなんだよね。」
「まあ、あの子は優しいから、無理もないわね。・・・私が行ってバカ共をぶん殴ってやろうかしら。」
「やっぱりそう思うよね、僕の奥さんも同じこと言って暴れそうになってたよ。・・・幽香も暴れるなら全力で止めさせてもらうからね。」
「・・・まあ、貴方はそういう立場よね。もどかしいわね。そういった意味では、ある意味夢月がこの中で一番賢いかもねえ。」
「私達悪魔からすればみんな良く頑張ってると思うんだけどねえ。でも、妹が褒められてお姉ちゃん嬉しいわ。」
・・・?
伯爵たちの話にはついていけないが、教会の偉い人に皆の共通の知り合いでもいるのだろうか?
みんな、その人を憐れむような声音で話をしている。
「あぁ。アズールちゃん。ごめんなさいね。同盟の件なら良いわよ。」
「え!?ホントですか!?」
おお、なんかあっさりOKもらっちゃったよ。
「ただし条件があるわ。」
良かった。
ただでお願いを聞いてもらうのは申し訳ないと思っていたが、条件を提示してくれるようだ。
「はい!何でも言ってください。」
「たまにで良いからまた夢幻館に遊びに来てほしいのよ。」
ん?
それが条件?
「え。別に全然大丈夫ですけども。というか逆にお邪魔しても良いのならいつでも遊びに行きます!」
ずっと引きこもってばっかだったから、たまには良い経験になるだろうし。
それになんだか友達の家に遊びに行っているようでワクワクするし、私にとっても願ってもない条件である。
「良かったわあ。ちょうど暇してたのよ。貴方は面白そうだし、これで退屈せずに済むし、運動不足も解消できそうだわあ。」
運動不足も解消?
なんのことだろう。
・・・伯爵がすごい可哀想な人を見る目で、私を見てくるのが気になる。
ま、まあとにかく、同盟も解決できたし、新しいお友達も増えました!
こんなに順調だなんて、なんて幸せなことなんでしょうか。
お友達が増えたことが嬉しくて勝手にニヘラと顔が緩む。
「じゃあ、私達お友達ですね。これからよろしくお願いします。」
「っ!!え、ええ、よろしくね!」
そう言ってお互いに握手をする。
「〖月光館の主として契約します。月光館は紅魔館、夢幻館と同盟を結び、どのような援助でも必ず実行すると誓います。〗」
「便乗させてもらおうかな〖紅魔館の主として契約する。我ら紅魔館は月光館、夢幻館と同盟を結び更に、戦闘以外の援助をする事を誓おう。〗」
「本当に貴方はいっつも抜け目ないわねえ。まあいいわ。〖夢幻館の主として契約するわ。我ら夢幻館は紅魔館、月光館と同盟を結び更に、助けを求められたらいつでも援助をする事を誓うわ。〗」
「じゃあ、その契約。悪魔である私が見定め、確認するわ。〖夢幻館、紅魔館、月光館の相互不可侵、協力関係の契約成立〗を認めるわね。さしずめ【三館同盟】、といった所ね。」
私と幽香さん、そして伯爵の三人で同盟の契約を結び、幻月さんが悪魔として、契約を確認し三館の代表者の調印を認めてくれる。
これで、世界にこの契約を認めさせ、教会の侵攻に対する大きな抑止力となってくれるでしょう。
ルーミアちゃんも、これであの無邪気な笑顔が戻ってくれるかな。
契約も終わり一段落ついたところで幻月さんが声を掛けてくる。
「さて、と。今回は妹が世話をかけてごめんなさいね。」
安心したように姉の腕の中で眠る夢月さんを抱えた幻月さんは、そう言って白い天使の様な翼を広げる。
「アズールちゃん。一方的に攻撃しちゃった身でありながら、
「あ、はい。何ですか?」
「この子はただ暇で遊んでほしかっただけみたいだから、貴女を夢幻世界に引きずり込んだのは悪気はなかったと思うの。それにこの子は貴女を気に入ったみたいだから、また今度顔を見せに来てあげてほしいの。」
幻月さんは気を失った夢月さんの頭を撫でながら、慈愛に満ちた表情で微笑んでいる。
本当に仲睦まじい姉妹だ。
見ていて心が暖かくなる。
「はい。もちろんです。今回みたいな命のやり取りは御免ですが。また、今度お茶をしにきますよ。」
別に夢月さんが、ぶっとんだ子だとしてもそのぶっとんだ行動の動機は無邪気なものだ。
確かに命の危険はあったし、多少疲れたけれど、それだけで私がこの子を嫌う動機にはなり得ない。
「それなら良かったわ。」
そう言って、ニコリと笑った仲睦まじい姉妹の姉は妹を抱えて夢幻世界の奥の方へと帰っていった。
「さて、幽香、アズール嬢。同盟を締結したところで、あっちの世界に帰らないかい?いい加減調停者として世界に開いた穴を塞ぎたいんだけれど・・・」
伯爵がひび割れて穴が空いた世界間の穴を指差して言う。
「そうねえ。せっかくだから、皆でお茶でもしましょうか?くるみとエリーに用意させるわ。」
「おぉ!良いですねえ。お友達のお家でお茶!一度してみたかったのですよ。」
多分私は前世でも友達は少ない方だったのかもしれない。
友達の家でお茶するなんてすごく新鮮でワクワクする。
現実世界へ通じる穴に向かって移動しながらお話する。
「幽香はあの子達のことをもっと考えてあげたほうが良いよ。くるみ嬢なんて吸血鬼なのに苦手な日光と水がある湖の番人なんてさせて。」
「あの子達には自由に生きるように伝えているわよ。自主的に門番や番人をしてくれているわ。くるみは、まあ。お仕置きも兼ねて湖の番人なんてさせてるけど、そんなお仕置きなんてもう何百年も前の話よ。私はもう許してるんだけどねえ。板についちゃったのかしらねえ。」
「へえ。幽香さんとくるみさんとエリーさんは仲が良いんですねえ。もしよければ皆との馴れ初めとか聞いてみたいです。」
「・・・もう大分昔の話になるから忘れちゃったわ。・・・まあお茶しながら覚えてる範囲で話してあげるわ。」
「まあ、幽香と僕が知り合ったのは500年くらい前だからね。その時もくるみ嬢とエリー嬢がいたから、それより昔ってことだろうし、おぼえていないのも無理もないかな。」
おぉ。
さすが不老長寿な妖怪だけあって、話のタイムスケールが人間とは違う。
まあ、私も今生は妖怪だから少し慣れた感じはあるけれど。
「そういう伯爵は500年前の事を良く覚えていますね。」
「そりゃあ、調停者としてあの姉妹を封じ込めるのはかなり難儀したし、良く覚えているさ。」
「あら、確かそんなこともあったわね。懐かしいわ。」
「僕にとっては懐かしめるような良い記憶じゃないけどね・・・。」
そう言って伯爵は苦虫を噛み潰したような顔をする。
嫌な記憶でも思い出したのだろうか。
「もうその封印もあってないようなものだし。今だに結界が残ってるのも不思議だけどね。」
「あら、あの縄を巻いている石は館のオブジェクトとして気に入っているのよ。ちゃんと手入れは欠かさないわ。・・・くるみが」
「・・・くるみ嬢の大変さが少し分かった気がするよ。」
ふむふむ、もしかして館の周囲にある注連縄の結界は夢幻姉妹を封じる為のものだったのかな?
伯爵が関わっていそうだし、また今度昔話を聞いてみるのも楽しいかもしれない。
そんな話を楽しくしながら世界の穴を抜けて現実世界へと帰還する。
カタカタカタカタカタ
「!?」
現実世界に戻ってきた私の脳内にまるで今まで溜まっていたアラートが一気に鳴るかのごとく、木片同士がぶつかって鳴るような音がけたたましく響いた。
この音は月光館の半径2、3km以内に侵入者が侵入した際に発せられる警戒魔法の音。
もしかして、夢月さんの世界に囚われている間に月光館に侵入者が!
『思い出したかな?君がどれだけ愚かで罪深い少女なのか。』
「ゴフッ」
『君にとって、記憶の忘却とは、許されざる大罪なんだよ?』
急に胸に衝撃を受けるとともに吐血する。
・・・このダメージは・・・間違いない!
『
!!!???
凄まじい頭痛と共に、様々なものが私へと入ってきた。
吸血鬼の超速思考に、そのビジョンが映し出され、しばらく私は口から血を流しながらそのビジョンを見て固まっていた。
『
「ちょっ、アズール嬢。急に血なんか吐いてどうしたんだい!?」
私が吐血し慌てふためくスカーレット伯爵。
・・・こんなに慌てふためくスカーレット伯爵は初めて見るかもしれない。
「・・・別に大した事じゃありません。私が血を吐いたということはつまり、大した事じゃなくなって一安心といったところです。」
『そうだ。大罪人である私はいくらでも傷付いても問題ないんだった。』
そう伯爵に答えつつ、自分の不可視の翼に妖力、魔力を集めていく。
「・・・幽香さん、伯爵。私は急用ができたので一足先に月光館に戻ります。お茶会はまた今度にしましょう。」
「ちょっ、ちょっと!?」
そう言葉を残して、私は全速力で月光館へと向かう。
不可視の翼に力を込めた私は、今までの最高速度、マッハ10くらいの速度で飛行する。
さすがに光の速度にはまだまだ、届かないが、このマッハ10は今出せる私の最大の速度だ。
この速度であれば、1、2秒で月光館に到着する。
その1、2秒の間に吸血鬼の超速思考で、混乱する頭をなんとか落ち着かせようとして何度も失敗する。
なぜ
『私が館を留守にしたから』
どうして
『襲撃を想定できなかったから』
油断
『こんなにも早く襲撃が来るとは思わなかった。』
失敗
『館の防衛に不備があった。』
恐れ
『あの子達の魂は無事だろうか・・・』
心配
『ヴァルターは大丈夫だろうか・・・』
安心
『大丈夫・・・皆生きてる・・・』
怒り
『皆が大変な時に私は一体何をしていた?』
悲しみ
『やっぱり、私は誰かの保護者にはなり得ないのかな・・・』
焦り
『やっぱり、馬鹿な私は過ちを繰り返し続けるのかな・・・』
罪悪感
『私には、こんなにも美しく、優しい世界に存在する価値なんてない』
罪悪感
『無価値な私は、この世界に生きる資格なんて無い』
罪悪感
『ただ、傍観するだけの、傍観者である私に、家族を持つ資格なんてありはしない・・・』
私の頭の中では、それらの他にも様々な思考が乱立し、処理できずに脳内に散らばっていく。
『全ての記憶を思い出した』
魂に刻まれていたありとあらゆる経験が吸血鬼の超速思考によって鮮明にビジョンとして想起されていく。
『なんにも救う事が出来なかった哀れな少女の記憶を・・・』
後悔に苛まれる私を、まるで遠い場所から眺めているかのように思考が諌め、心がゆっくりと魂に落ちていく。
『ネバーランドを追い求めていた愚かな人間だった頃の私の記憶を・・・』
私の視界に映る美しい幻想の世界から色が失われていく。
『・・・今からでも遅くない』
そんな私は走馬灯のように、流れていくぼやけた景色を見て、決意を固めた。
『こんな無価値な私の魂なら、いくらでも犠牲にして構わない』
・・・大丈夫、皆、まだ生きているのだから。
口元からは赤い液体が垂れている。
どうやら内蔵を損傷しているようだ・・・。
その事が逆に私を酷く安心させる。
大丈夫、大丈夫、大丈夫。
脳内に散らばった感情を端っこに掃いて、これからの最適な行動を模索する。
散らばった感情はホコリのように、私の中に溜まっていく。
でもそんな事はどうでも良い。
皆を、護らなければ。
ミキサーでかき回されたかのような思考の中で、ただそのことだけを考えて、私は襲撃を受けている我が家へと帰路についた。
【後書き】
サブタイトルの〖Sleeping Terror〗は〖東方幻想郷〗5面ボスの時の幽香さんのテーマ曲です。
ということで、第3章:夢幻館編のお話がクライマックスに向けて動き始めました。
ちなむと、今話最後でアズールは同盟の事を完全に失念し、館が襲撃されている事を伯爵と幽香さんに伝え忘れてしまいました。
それほどまでに心の余裕がなく焦っていたのでしょう。
さて、今話も素晴らしい曲を聞かせていただきながら執筆させていただきました。
音楽を聞きながら執筆すると世界観の参考になります。
また、キャラクターのテーマ曲であればキャラ作りに大いに参考になります。
それ以外でも心の癒やしにもなり得るので音楽の力は本当にすごいと思います。
特に東方のBGMは格別に私の胸にダイレクトに響きます!
そんな癒やしを皆さんにも共有したいと思い、活動報告に作業用BGMのプレイリストとそれぞれのBGMの簡単な自分なりの解釈や説明をしています。
良ければ活動報告を覗いてみてください。
もちろん今話の作業用BGMも後ほど活動報告で挙げさせていただきます。
次回もよろしくお願いいたします。