東方庇護録(旧作)   作:まほろばのーぶる

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第35話:迷い込むのはワンダーワールド~楽しい時間は夢の中?~


Yuka perspective

 

 

「幽香さん!今日こそは負けないのです!チルノ達の修行のついでに勝負なのです!」

 

日傘を差す私にピッタリと張り付いて、日光から自分の身を守るくるみ。

そんな彼女が、にまにまと笑みを浮かべながら私に抱き着き、私を見上げて機嫌良さげに話しかけてくる。

 

「ち、ちょっと、くるみちゃん!そういう事言うのやめよ?ほんとに!また、私まで巻き込まれちゃうから・・・・・・あの、幽香様?勝負はくるみちゃんだけですからね!私は関係ないですからね!!私は勝負は絶対に嫌ですからね!!!」

「あらあら、エリーは正直ね。気に入ったわ、くるみとエリー2人まとめて相手してあげる。特にエリーはみっちりと(しご)いてあげるわ♪」

「やったのです♪」

「ぎゃあああ!!」

 

横で、何故か羨ましそうにくるみを見ていたエリーが腑抜(ふぬ)けた事を言っている。

少し喝をいれてあげましょうか。

 

そんなこんなで、私達はいつものようにわいわい騒ぎながら、空を飛んで月光館に向かっていた。

 

夜の(とばり)が下りた闇夜の下で向かっていた以前とは違い、今は私達の上空には日が昇って、美しい太陽が世界に、暖かで眩しい朝の帳を下ろしている。

 

最近は月光館の住人は朝に起きて、夜に寝る、妖怪からしたら昼夜逆転の生活をしているらしい。

 

理由は、最近吸血鬼ハンターと呼ばれる吸血鬼退治特化の組織が聖教会から分立し、定期的に月光館に襲撃に来るようになったからだそうだ。

 

吸血鬼ハンター自体は取るに足らない弱者であるようで、妖精メイド相手にも手も足も出ない程度の力しかないらしい。

だが、万が一、あの子の眠る地下にまで侵入されてしまうと何が起こるか分からない。

 

そういった理由で、吸血鬼ハンターが襲撃してくる日中には全員が起きるようになったらしい。

 

よって、私達もそれに合わせて、日中に月光館に向かうようになった。

 

 

ここ最近、あの子の見舞いの為に、くるみとエリーを連れて月光館に出掛ける事が多くなった。

 

1週間に1度は出掛けるぐらいだ。

 

夢幻館の番人と門番である、くるみとエリーは、初め夢幻館を留守にするのを嫌がっていた。

 

仕方なく私1人で月光館に行こうと考えていたが、珍しく夢月と幻月が留守番を買って出てくれた。

 

意外と悪魔姉妹と仲が良いくるみとエリーは(いぶか)しげではあるものの、しぶしぶ夢幻館を悪魔姉妹に任せてお出掛けするようになった。

 

今では慣れたのか夢幻館の留守を気にする様子もないし、本人達にとっても良い気分転換になっているようだ。

 

むしろ、私とよく、出掛けるようになってからは、見せてくれる笑顔が増えたし、私に素直に甘えてくれるようにもなった。

 

だから私も、たまにはこの子達とゆっくりするのも悪くないなと思うようになった。

 

もちろん、月光館に向かう1番の理由はあの子、アズールちゃんの見舞い、兼封印の監視であるが・・・。

 

 

あの時、紫は封印の解除には、25年程度の時間を要すると言っていた。

 

紫と私が喧嘩したあの日から、今年でもう25年だ。

 

その喧嘩の爆心地とでも言える夢幻館と月光館の間に位置する地域は、今では一面荒野で様々な妖怪が跋扈(ばっこ)する魔境になっている。

 

伯爵がせっせと修復しているようだが、あまり進捗(しんちょく)は良くないらしい。

 

・・・まぁ、そんな事は伯爵に任せておけば良い。

 

大事なのは、今年で、彼女が眠りについてから30年が経つという事だ。

 

つまり、今年中に彼女の封印が解かれなければ紫は私との約束を反故(ほご)にした、という事になる。

 

・・・勝手に約束を反故にされたのでは、私は紫を許す事はできない。

 

「?幽香さん。どうしたのですか?上の空で。」

うぅ。どうせ、私をどうやっていじめてやろうか考えているんじゃないんですか・・・。

「・・・あら。ごめんなさいね。少し考え事をしていたわ。それと、エリー。こそこそ喋っても聞こえているわよ。貴方は私の事を性悪妖怪みたいに思っているのね。・・・後でおしおきよ。」

「ぎゃああ!!!いらないことを言ってしまいましたぁ!!本当に幽香様は地獄耳ですぅ。」

「・・・3つ。」

「な、何ですかそのカウントは!?ち、ちょっと幽香様、何のカウントかは分かりませんが指折り数えないで下さいぃ。その満面の笑顔も何か怖いですぅ!!ご、ごめんなさい幽香様ぁ!!」

 

さて、おしおきは何にしましょうか。

 

 


 

 

エリーのおしおきは何にしようかな、と考えながら飛行していると、いつの間にか月光館に到着したようだ。

山の頂上に建つ風情ある館の門前に3人で降り立つ。

 

・・・うーん。

やっぱり、館の配色をチェック柄にした方がもっと綺麗になると思うのだけれど・・・。

 

「あれ?月明かりが点いてるのです。」

 

いっその事、勝手に月光館の配色をチェック柄にしてしまおうかしらと考えながら、いつものように、ヴァルターが招き入れてくれるのを待っていると、くるみが、ふと首を傾げて口を開いた。

 

確かに、日中で明るいからか見えにくいが、よく見ると月明かりが消えた薄暗い館が今日は淡く、優しい月明かりに灯されている。

 

!!!

これは・・・まさか・・・!!

 

いつもならヴァルターが門まで迎えに来てくれて招いてくれるまで待つのだが、いてもたってもいられなくなった私は、勝手に門を開け館へと入っていく。

 

月光館ホールへと通じるエントランスの大きい扉を開く。

 

ガチャり

 

扉を開けると、綺麗で温かい淡い月明かりに包まれた月光館の皆が元気そうに、ニコニコとホールにある大きなソファーの周りに集まって談笑していた。

 

「「「「「あ!お花のおねーさん!おはよぉー」」」」」

「お姉さん。おはようございます。」

「わはー♪おはよーだぞー。」

「来たわね!今日こそ、決着をつけてあげるわ!!」

 

「あら、皆おはよう。何だか今日は機嫌が良さそうね。勝手に上がってしまってごめんなさい。ヴァルターは留守かしら?」

「アズール様のお友達のお姉さんなら大丈夫です!いつでもいらっしゃって下さい。それと、ヴァルター様なら、ほら、ここにいます。」

 

大妖精が少し体を動かしソファーの方に手を向ける。

 

そこには、ヴァルターが気持ち良さそうに眠っていた。

 

「あらあら、ヴァルターが無警戒に眠るだなんて、珍しいわねぇ。」

 

この人狼の執事はしっかりしているようで、案外ドジなのは30年の付き合いにもなるし知っているが、人前で眠るだなんて隙を見せるのは珍しい。

 

それに、その寝顔はスッキリしていて、まるで、憑き物が落ちたかのように安心した顔をしている。

最近までどこか影を落とした顔をしていたヴァルターとはまるで別人のようだ。

 

「「「「「寝てるヴァルター様って可愛いよねー!久しぶりに寝顔が見れて嬉しいな♪」」」」」

 

妖精達はヴァルターの頬っぺをつんつんとつつきながらニヒヒと機嫌良さげに笑っている。

 

つつく妖精メイドの小さな指を、寝ているヴァルターがパクリと咥えて甘噛みする。

指を甘噛みされた妖精メイドはキャーキャー言いながら顔を真っ赤にして大興奮している。

 

「・・・あらあら、やっぱり貴方達は仲が良くて見ていて微笑ましいわねぇ。まるで本当の家族みたいね。妖怪としては異端だろうけれど、そういうの、私は好きよ。」

 

そう言って、楽しげにチルノとルーミアと話すくるみや、人の家のソファーで遠慮無く大の字になってだらしなく寝転んでいる不躾(ぶしつけ)なエリーを微笑ましく見る。

 

・・・エリーのおしおきカウントはこれで4つね。

 

「そうですね。私達森の妖精もアズール様に出会うまでは、お互いどうせ大怪我しても1回休みで復活するからと無茶ばかりしていましたが、アズール様に保護されてからは、お互いがお互いを大切に思いやるようになりました。今では、皆家族も同然です。」

 

ちょっと恥ずかしそうにしながらも、幸せそうに言う大妖精。

 

そんな言葉を聞いて二ヘラと嬉しそうに笑う妖精メイド達。

 

そんな皆を微笑ましく見ながら、月明かりの事を聞いてみる。

 

「そういえば、今日はどうして月光館が月明かりに溢れているのかしら?」

「あ、そうです!それなんですが、お姉さん!ついに、アズール様が復活しました!!」

 

!!!

 

「今、アズールちゃんが復活したと言ったかしら!?本当に彼女が目覚めたの!?」

「はい!昨日の早朝突然、館の明かりがついたかと思えば、アズール様が起きて来ました!本当に良かったです!」

「一体彼女はどこにいるのかしら?」

「え?って、ち、ちょっと待ってぇ。お、お姉さん落ち着いてぇ。」

 

彼女が起きたと聞いて、思わず興奮して大妖精に詰め寄ってしまう。

 

「お姉ちゃんなら、夫人と一緒に紅魔館に向かったぞー。」

 

急にずいずいと詰め寄った私に目を回した大妖精に変わって、ルーミアが教えてくれる。

 

「そうなのね。ごめんなさいね大妖精。それと、ありがとうルーミア。急なのだけれど、今日の修行はまた今度にさせて頂戴。私は紅魔館に行かなくてはならなくなったわ。」

「分かったのだー。残念だけど、私も修行つけてもらっている身だし、文句はないぞー。」

 

いつもよりも、機嫌も元気もすこぶる良いルーミアを見ていると、アズールちゃんが復活したのはどうやら本当の事らしい。

 

「エリーとくるみはここで、ルーミアとチルノ達と遊んでいなさい。私は紅魔館に向かうわ。」

やった♪これで、おしおき回避ですね!分かりました!幽香様!」

「着いて行きたい・・・と言いたい所ですが日光もありますし、邪魔になってしまいそうです・・・。分かったのです。幽香さん、行ってらっしゃいなのです!」

 

そう言って、エリーは少しホッとした様子で、くるみはしぶしぶといった様子で送り出してくれる。

 

「・・・エリー。これで5つ目ね。おしおきは忘れないわよ。」

うえぇ!?5つ!?って、いつの間にそんなにカウントが進んだのですか!?何のカウントか未だに分かりませんし、すっごく怖いのですが!?」

 

安心顔から絶望顔へとコロコロ表情を変えた面白いエリーと、くるみ達に見送られて、私は紅魔館へと向かって飛び立った。

 

 


Asyl perspective

 

 

「・・・私が眠っていた30年の間に、一体全体何が起こったのですかね・・・。」

 

幽香さん達に挨拶をするべく、夢幻館に向かって飛行していた私は、眼下に広がる光景を見て、思わず呆然としていた。

 

不自然に大きく抉れた山々。

あちこちに出来た大きなクレーター。

そして、枯れた草木しか残っていない荒野。

 

・・・以前まで、ここは緑あふれる山々が広がっていたはずなのですが・・・

 

その荒野には、ギャァ、ギャァとうるさく飛び回る大きな怪鳥がいたり、

見るだけでおぞましいとんでもなく大きい大ムカデがいたり、

はたまたその大ムカデを丸呑みにした大蛇がいたり、

はたまたその大蛇を咥えた恐竜くらい大きなトカゲ(というかもう恐竜)がいたり、

はたまたその大トカゲを咥えて連れ去った巨大な獅子(しし)がいたりと、とんでもなくファンタジーな魔境となっていた。

 

 

・・・いや、30年でそうはならへんどっしゃろ。

 

 

・・・思わず、脳内思考が変な話し方になってしまうくらい混乱してしまった。

 

いや、ほんとに、どうしてこうなった・・・。

 

ふと、もう1度、その魔境を見てみると大きな猿の怪物達が上空に浮かぶ私を見ていた。

下から私を見上げてくるその猿達は、何だかいやらしい目で私を見ている気がする・・・。

そんな猿達はまるでこっちに来いとばかりに私に手招きしてきた。

 

もちろん嫌な予感がするし、ぜーったいに近付かないが・・・。

 

ちょっと怖くなってきたので、更に上空に上がる。

 

なんか前世で読んだ妖怪・怪物大図鑑で見た事あるような魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)している。

 

私は今上空にいるから遠近法で小さく見えているのでしょうけど、あの獅子に至っては体長が30mはありそうです。

ファンタジーな存在は大好きですが、実際見るとすっごく怖いです・・・

それにファンタジーはもうお腹いっぱいいっぱいなんです。

ありがとうございます!

 

・・・もう何がなにやら分からなくなるくらい思考がパニックになり、意味不明な事まで考え始めてしまった私は当初の目的を思い出す。

 

『君は、すぐに夢幻館に向かって幽香に挨拶をするべきだよ。』

 

伯爵にそう言われて思い出した。

幽香さんとの約束では1月に1度夢幻館に遊びに来る事になっていた。

30年程その約束を反故にしているのである。

すぐにでも幽香さんに会って謝る必要がある。

 

『・・・十分に気を付けて行って来るんだよ・・・。幸運を祈るよ、アズール嬢・・・』

 

そう言って可哀想なものを見るような目で私を見てきた伯爵は気になるが、早く幽香さんに会って謝らないと、せっかく快く受けてくれた館間同盟か無かった事になってしまったら大変だ。

 

・・・こんな摩訶不思議(まかふしぎ)動物園を見物してる場合じゃない。

早く幽香さん達に挨拶に行かないと。

 

・・・とりあえず、近付かないようにこの魔境は迂回(うかい)して夢幻館を目指しましょうか・・・。

 

近づいたらパクっといかれそうですし・・・。

 

 


 

 

魔境から逃げる様にマッハ3の速度で夢幻館に向かった私は、魔境を迂回したにも関わらず、3秒程で夢幻館周囲の湖に到着した。

 

魔境と夢幻館周囲の湖の境目には結界が張ってあるようで、魔境にいた摩訶不思議怪物達はどうやら夢幻館には近付けなくなっているようだ。

 

とりあえず湖に着いた私はゆっくり、くるくると湖を飛び回る事にした。

 

お目当ては湖の番人である吸血少女のくるみさんを探す事である。

 

以前のように今回もアポ無しの訪問であるし、番人のくるみさんに話をしてから館に向かおうと思っていたのだが、いくら飛び回っても肝心のくるみさんがいない。

 

マッハ3の速度で湖中の隅々までを飛び回ってみても、結局全然見当たらなかった。

 

仕方なく湖を素通りして、門番のエリーさんならいるだろうと思い、夢幻館の綺麗な青色のタイルが敷いてある門前まで来た訳であるが、エリーさんもいなかった。

 

「皆でお出かけでもしているのでしょうか?・・・まぁ、留守なら留守で仕方ないですね。後で出直しますか・・・・・・あれ?」

 

門前で途方に暮れていると、ある違和感に気付いた。

以前夢幻館に来た時とは明らかに違うと感じる違和感。

その正体を探る為に夢幻館が位置する湖に浮かぶ島を歩いて散策しながら少し考えてみる。

 

 

・・・あ!

 

ふと気付いた以前の夢幻館との違い。

 

以前来た時には感じた夢幻館周囲の結界。

注連縄が巻かれた岩を基点として作られた夢幻館を囲う結界が忽然と消失してしまっている。

 

・・・はて?

私がいない30年の間に結界は無くなっちゃったのかな?

 

・・・いや、無くなったというよりかは魔境と夢幻館を隔てる結界として新しく作りかえられている感じだ。

パッと見はその結界に隠れて注連縄の結界が無くなった事なんて誰も気付かないだろう。

でも、以前訪れた際に個人的に凄く気になってた結界だっただけにすぐに変化に気が付く事ができた。

 

・・・でも、何で前の結界を無くしてしまったのだろう。

あの結界は解くのにはかなりの魔法の知識と労力がいると思っていたのですが、一体誰が・・・

 

そんな事を思案しながら館の周囲を散策していると・・・

 

突如、足元に大きな穴が出現した。

 

 

「うぇあ!!?にゃ!?にゃにぃいぃぃぃ!?」

 

ガクンと、まるで高い所から急に落ちた時の、ヒヤッとする感覚とともに、私は重力に従って真っ逆さまにその穴に落ちた。

 

・・・そんなのさっさと飛行してしまえば良い、と誰もが思うでしょうが、私事ですが、私は突然の出来事には滅法(めっぽう)弱いのです。

 

だから前世でも、五感を全て仮想空間(かそうくうかん)上に投影して、実際に体感できるタイプの最新ホラーゲームや、その派生で発生したサイバースペース上にオープンした実際に触れてくるタイプの電脳空間(でんのうくうかん)お化け屋敷は超苦手だった。

 

というか、私は最新の感覚没入型仮想現実へのダイブや、電脳空間を用いた仮想幻想の投影は好きでは無かったし、そんなホラーゲームも1回しかした事は無かったですが・・・。

 

べ、別に怖くなってやらなくなった訳じゃないですからね!

私は、現実に確かに存在する幻想を追い求めていたわけですし、仮想現実で表現される(まが)い物に興味無かっただけで、仮想現実のホラーはぜんっぜん怖くなかったですから!!

 

と、そんな言い訳を吸血鬼の超速思考で無駄に長々と考えていたからか落ち着いた私が空を飛べる事に気付いて、落下を止める事ができたのは、落ち始めて数十秒が経ってからのことだった。

 

「・・・び、びっくりしました・・・。いきなり地面に吸い込まれるのは怖いですよぉ。本当に。・・・というか、ここは・・・。」

 

落ちた穴の先は、さっきまで日中だったのにも関わらず、地面も見えないくらい高い夜空の上だった。

・・・はたまた、果てしなく(そび)える夜空の下だろうか?

 

とにかく、上下左右周囲全てが夜空であり、キラキラと360°どこを見回しても煌めいている星達が美しい幻想的な空間。

そんな空間に私は浮かんでいた。

そして、星と共に浮かぶ一際目立つ美しい紫色の月。

 

この場所は、すごーく見覚えがある。

あまり良い思い出ではなかったが・・・

 

 

ずっと、ずーっと。ずぅーーっと待ってたよ。お姉さん。

 

 

突如、背後から、ぞくぞくと背筋をなぞられるようなちょっと怖い声音で、可愛らしい女の子の声が届く。

 

 

全然会いに来てくれないから、わたしの事嫌いになっちゃったかと思ったよ。

 

 

振り向いた先にいたのは、綺麗な金髪で、前掛けが2枚重なっている特殊な青いメイド服を来た可愛らしい女の子。

その女の子はニコニコと嬉しそうに笑っている。

 

 

でも、こうしてわたしに会いに来てくれたって事は、つまりそういう事だよね?お姉さん?

 

 

ニコニコしながら近付いてくる女の子。

 

そ、そういう事って、ど、どういう事なんだろう。

想像もつきませんが!?

というか、雰囲気がちょっと怖いのですが!?

 

「え、あの、どういう・・・ひぅっ!!?

 

そんな疑問の言葉も、ニコニコ笑顔から、見開かれた彼女の()眼を見て、息と一緒に飲み込んだ。

 

目と鼻の先まで近付いてきた彼女は目の前で、上目遣いになって言葉を発する。

 

 

もう、絶対に放さないからね。何があろうとわたしがお姉さんを守ってあげる。

あの胡散臭い隙間妖怪からも、

 

夢幻の壁を破壊する化け物妖怪からも、

 

世界の目である原初の調停者妖怪夫婦からも、

 

彼岸の死神や閻魔からも、

 

地獄の魔法使いからも、

 

その親の地獄の女神からも、

 

忌々しい月の賢者達からも、

 

そして、月の女神からも・・・。

 

わたしがみんな、みーんなから守ってあげる。

 

そう言う、金髪メイド少女、夢月さんはハイライトを失った怖い目で、とびきり可愛らしい笑顔で私に抱き着いてくる。

 

突然の出来事に滅法弱い私は、訳が分からずビクビクと小さく固まったまま、夢月さんに抱き締められた。

 

 

だから、わたしがお姉さんを独り占めしちゃうけれど、それは皆許してくれるよね?

 

 

耳元で、耳を甘噛みされながら(ささや)かれた可愛らしい声はくすぐったくて、身を(よじ)りたくなった。

 

だけれども、そんな私の意識はどんどんと微睡(まどろ)みに沈んでいく。

 

あれ、なんだか、急に・・・ねむく・・・・・。

 

 

おやすみ。お姉さん。()めない幸福な夢の世界にようこそ。

 

 

急に眠る意識で、私が最後に聞いたのは、優しげで、それでいて底冷えするかのような、少し恐ろしくも感じる悪魔の囁きだった。

 




【後書き】
どうも、仕事前に東方三月精の飾ってあるディスプレイを見て、しばらくにまにまとしてから出勤しているまほろばです。
最近ではもや造様の『あたいとげんそーきょー』を読んで癒やされています。
もや造様の作品はどれもこれも、癒やされる素晴らしい作品です。
作者はとっても大好きです。

それは、そうと33話です!
今話は、夢月さんのヤンデレ回でした。

アズールが会いに来てくれて嬉しい夢月さん↓

【挿絵表示】


が、すぐさまヤンデレ化する夢月さん↓

【挿絵表示】


訳が分からず恐怖するアズールちゃん↓

【挿絵表示】





そして少し、主人公アズールの前世の情報が出てきました。
以前からもあちこちに匂わせはありましたが、アズールの前世は、私達が今存在している現代の日本ではなく、近未来の日本です。
電脳空間のお化け屋敷や、仮想空間にダイブする云々は、現在のバーチャルな技術が進化した先の想像のお話です。
イメージとしてはアニメ『電脳コイル』など参考にしました。
懐かしい・・・。

ちなみに、アズールの前世である、その近未来の日本では、神亀の遷都と呼ばれる遷都で東京から京都に首都が移っています。

東方Projectの音楽CDシリーズを購入してブックレットのストーリーを読んでいる方は知っているとは思いますが、某オカルトサークルが存在しているタイムラインです。

また、詳しいアズールの出生の秘密は後々ストーリーの中で登場しますのでお楽しみに!


さて、恒例ですが、今話での作業用BGMを勝手ながら紹介させていただきます。
まずは、東方原曲から
東方Project第11弾『東方地霊殿 ~ Subterranean Animism.』の5面道中曲。
『廃獄ララバイ』

そして、DOVA-SYNDROME様より
MATSU様が手掛けるフリーBGMから
『森のいざない』を作業用BGMに使用させていただきました。

これらの神曲を今話の作業用BGMに使用した理由や、感想など、活動報告にあげさせていただきますので、宜しければ御覧になってください。

少し体調不良が続き更新が遅れる様になってきました。(建前)
他の方の東方二次創作読むのやめられないですぅ!!!(本音)

本当に申し訳ない(メタルマン鬼畜博士風)

ですが、今後は1週間ちょっと以内には更新できるように、執筆していきます。

庇護録はまだまだマイペースに続いていきますので、これからもよろしくお願いいたします!!
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