東方庇護録(旧作)   作:まほろばのーぶる

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第36話:夢路で迷子、囚われ少女~狂った夢と彼女の記憶~


Asyl? perspective



 

 

『と、言う訳でして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()では、某ウイルスによって外出自粛や、観光業へのダメージを受け、様々な文化が衰退してしまいました。しかし、先人達は粉骨砕身の覚悟で、ウイルスによる文化衰退から、ウイルスが根絶したその時まで、その当時の文化を守り抜いたのです。そのおかげで、遥か未来の今現在でも、様々な文化が忘れられずに残っています。その中でも、最近では、レトロとされるその当時流行したアニメやVRゲームなどの、バーチャルな文化が再ブームとなってきていますね。』

 

教壇に立ち、生徒達に向かって教鞭をとる。

 

今日の講義は〖レトロツーリズムの文化論~ノスタルジー研究に着目して~〗という議題だ。

 

私が、教授になってから、初めての講義だから、ちょっと緊張している。

ちゃんと皆興味を持って聞いてくれるかな?

 

私の講義を選択してくれた学生さんは男性3名、女性2名の計5名程。

他の講義からしたら、ものすっごく人数が少ない。

それでも、聞きにきてくれるだけで凄く嬉しい。

 

・・・嬉しいんだけれども・・・。

 

『質問でーす!』

『それから・・、え!?、あ、はい!どうぞ!』

『先生って可愛いですね!何歳ですか?』

うぇ!?な、なん!?

 

講義中、私をじろじろと見てきて気になっていた、少しお調子者っぽい、チャラチャラした雰囲気の男の子3人組が質問してきた。

チャラチャラした雰囲気の男の子はちょっと苦手なので、少し怖い。

・・・でもまさか可愛いだなんて言われるなんて思ってもみなかったし大分とキョドってしまった。

と、とにかく注意しないと・・・

 

『・・・こ、こほん。・・・そ、その・・・こ、講義とは関係ない話ですし・・控えて頂けると・・・』

『えぇー。気になって、講義どころじゃありませーん。』

『えぇ!?・・・うぅ。』

『でー?何歳なんですかー?』

『一応20台です・・・。』

 

『えぇ!?俺らより歳上なんすね!先生って背格好がめちゃくちゃ子供っぽいっすね笑。全然20台に見えませんって笑。』

『ギャハハハハ。確かにそれな。もしかしたら小学生って言っても通じるよな笑。』

『おい、お前ら、やめとけって、先生を怖がらすなよ笑。怯えた先生も可愛いけどさ笑。』

 

うぅ。

背格好が子供みたいなのは一応コンプレックスなのに、ズカズカと言いたい放題言ってくれますね・・・。

 

そんな事を言われてしまった私は、ショックを受けたまま教壇の横に何故か置いてあった姿見を見る。

 

そこには身長は140cmにも満たない幼女体型の身体で、黒い髪は腰まで伸びた長髪の子供がいた。

その女の子は教壇に立つ為に台に乗って、さらに届かない教壇に台の上からプルプルとつま先立ちで立っていた。

 

 

 

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・・・・・・・・・・・・・・

「知らない天井です・・・。」

 

寝起きでおぼつかない思考を目覚めさせながら、周囲をくるりと見回してみる。

寝起きでぼやけた視界に映るのは、可愛らしいぬいぐるみや、お花が沢山飾られている窓の無い部屋。

・・・この部屋に来るまでの記憶が無い・・・。

 

ポフポフと、寝ていたベッドを軽く押してみると、吸い込まれるくらい、柔らかい感触が手のひらから伝わってきた。

わぉ、すっごいですね、これ・・・

 

・・・どうやら、私は見知らぬ部屋の大層豪華なベッドの上で寝ていたらしい。

 

「というか、すごく懐かしい夢でしたねぇ。」

 

さっき見た夢は、私が、大学で教授をさせてもらえる事になってから初めての講義の時の記憶だ。

懐かしいなあ・・・・。

 

・・・

 

・・・

 

・・・・・・・・!!!

 

え!?

記憶が・・・

ゆ、夢の内容を覚えている!?

 

え!!?

今は夢、じゃないですよね・・・

ほっぺをぎゅっと握ってみても多少ヒリヒリするし、今は夢じゃなさそうだ。

 

今まで見た夢の内容は、いつも忘れてしまっていてもどかしかったのだが、今回初めて、夢を覚えたまま目覚めることができた。

・・・なんだか、いきなりの事でびっくりしてしまった。

 

・・・というか、前世の私って幼女体型だったのか・・・。

まあ今も同じくらい小さいですし、今世でもそんなに変わっていなかったのですね・・・。

 

・・・それはともかく、前世の自分の姿と年齢、職業まで思い出せた!

思い出せた・・・のだが、出生や名前などの細かいところは、何故か思い出すことができない・・・。

まあ、自分の姿や職業まで思い出せたのですし、気ままに暮らしていれば、思い出すでしょう。

 

そう考えつつ、現状把握に意識を戻す事にする。

 

・・・確か、私は夢幻館に訪れて、急に地面に開いた穴に落っこちて・・・。

 

直近の記憶を思い出してゆく・・・。

 

落っこちた先が、夢月さんの夢幻世界で、そこには何か怖い雰囲気の夢月さんがいて・・・あ。

 

直近の記憶を思い出した私は、ハイライトが消えた目をした夢月さんの事を思い出し、この状況をなんとなく理解した。

・・・うぅ。

これって、絶対夢月さんに捕まってしまっていますよね。

 

こうなる前に聞いた夢月さんの言葉的に、『貴方を監禁して、護るね♪』みたいな事言われましたし・・・。

誰から護るかはあんまり聞き取れなかったけど、その対象はいっぱいいた気がする。

・・・うぇ!?

私ってそんなに敵がいるのですか!?

なんで!?

 

あれこれ考えていると、途端に怖くなってきた。

今私がいる場所はおそらく夢月さんの家。

窓が無いから、外の様子も見ることができない。

 

・・・なんか怖い雰囲気ですし、夢月さんには悪いですが、一旦お暇させていただきましょうか・・・。

そう思って、ベッドから立ち上がる。

 

「おっとっと。」

 

寝起きだからか、よろめいて近くにあったベッドの柱につかまる。

 

「あれ?何か、身体に力が入りにくい?」

 

すぐに自分の身体の異変に気付いた。

 

妖力、魔力など、私が持っているはずの力がまったく感じられない。

まるで、妖怪としての力をすべて吸い取られて、封じられてしまったかのように身体に力が入らない。

 

試しに置いてある、少し大きな花瓶を持ち上げてみようと力を入れてみる。

 

「んぎぎぎぎ。・・・持ち上がりません・・・。」

 

普段なら軽く持ち上げられるはずなのに、花瓶を持ち上げる事が出来なかった。

 

これは、まさか・・・。

 

10kgくらいの花瓶を持ち上げることができない。

つまりは、かなり私の力が弱体化されている。

本当に妖怪としての力は封じられているようだ。

しかも、恐らく人間の小さい女の子並に身体能力が減弱している。

 

どうやら、私の力は何かしらの方法で封じられているようだ。

 

「これは、困りましたね・・・。」

 

そんな風に、途方に暮れていると・・・。

 

ガチャリ

 

音を立てて、部屋に1つしか無い扉がゆっくりと開かれた。

 

「あ!お姉さん。おはよう。」

「お、おはようございます夢月さん・・・。」

 

開いた扉の先からひょっこりと、()眼を覗かせた、にこやかな様子の夢月さんが顔を出して部屋に入ってきた。

 

「お姉さん。ご飯ここに置いておくね。また、何か欲しい物とか、して欲しい事とかあったら次に私が来た時に伝えてね。」

 

夢月さんは大きな鍋を机の上に置いてそう話す。

・・・なにやら、ムカデの様な足やトカゲの尻尾がたくさん生えて、紫色の煙をあげている鍋。

・・・そんな鍋をご飯と言う夢月さん。

 

・・・マジですか・・・。

もしかして、そんなメイドみたいな格好して、そんな料理を作っちゃうのですか!?

・・・い、いやいやそんな事よりも。

 

「あ、あの!夢月さん?」

「ん?なあに?お姉さん。」

「ここはどこですか?どうして私はここにいるのですか?」

 

とりあえず、私をここに閉じ込めているであろう夢月さんにその理由を問いかけてみる。

 

「ここは、夢幻世界にある私と幻月お姉ちゃんのお家だよ。幻月お姉ちゃんは今は来客の対応中で留守だけど、お姉さんを飼って・・・匿っても良い?って聞いたら良いよって言ってくれたから、今みたいに私達のお家でお姉さんを、匿ってるの。」

 

何かものすごく不穏なワードが夢月さんから聞こえてきたのですが!?

 

「それに、お姉さんは、もうあっちの世界に戻るべきじゃないんだよ?ここにいて、私達と幸せに暮らすの!私がお姉さんを甘やかして、皆から守ってあげるからね」

 

ひっ!

ほら、また、出てきました。

このハイライトがなくなった目をした夢月さん。

ものすっごく怖いんですけど。

 

「それじゃあ、私は幻月お姉ちゃんが心配だから、一度あっちの世界に戻るけど、絶対にこの家から出ちゃだめだよ?分かった?」

「えっ、あ、あの・・・。」

「分かった?」

「うぇ!?そ、その・・・。」

分かった?

「わ、分かりました!わかりましたから、その怖い目で、首輪を持ってじわじわと距離を詰めないでください!」

 

なんだろう。

今の夢月さん、すっごく怖いんですけど!?

というかその首輪どこから出てきたのですか!?

というか、この状況、前世を含めて、私が今まで経験してきた中で1,2を争うほどに怖いシチュエーションなんですけど!?

 

「あはは♪それじゃあ、行ってくるね。」

 

そう言って天使のような笑みを浮かべた可愛らしい悪魔は部屋を出ていった。

 

 


 

 

ど、どうしましょうか。

 

一通り部屋の中を見て回ったが、本当に窓も無いし、出口はさっき夢月さんが出ていった扉1つしかない。

 

勝手に家から出るな、と言われたけれど、私には帰るべき家、月光館があるんです。

 

それに、最近30年の眠りから目覚めたばかりなのに、また今度は行方不明になんてなってしまったら、ヴァルター達に合わせる顔がありません・・・。

 

どうにかして、ここから脱出しなければ・・・。

 

 

とりあえず、夢月さんが出ていった扉のドアノブに手をかけてみる。

 

ガチャリ

 

あれ・・・?

 

普通に開いた・・・。

 

もしかして、鍵を閉められて監禁されているかとも思ったが、そこまで、夢月さんも私を閉じ込める気は無いようだ。

 

力が封じられている今、私は人間の少女並の身体能力しか無い。

力技で扉を開けることなんてできませんし、鍵がかけられていたらピッキングするしかありませんでしたね・・・。

 

とにかく、部屋を出て、出口を探す。

夢月さんのお家は、可愛らしい女の子が住んでいるかのような暖かそうな家だった。

リビングやキッチン、お風呂なんかもあって、意外と広いお家に住んでいるようだ。

 

先程のオオムカデやトカゲのゲテモノの残骸が散乱しているキッチンに着いて、軽く引きながら、あんまりそれらを見ないようにしながらキッチンの奥に向かう。

 

キッチンを抜けると、長い廊下の先に、玄関と思しき少し大きな扉が見えた。

 

やった。

出口だ。

ここを出られれば・・・。

 

そう思い、小走りで玄関に向かい扉のドアノブに手をかける。

 

「あ、あれ?あ、開かない・・・」

 

いくら玄関のドアノブを回しても一向に開く気配がない。

 

そうやって、開かない玄関に悪戦苦闘していると。

 

 

ゴトンッ

 

 

背後でなにやら重たいものが落ちる音が聞こえた。

心臓が早鐘を打ち始める。

 

息を飲み、恐る恐る振りかえる。

玄関の前にある薄暗い廊下の先で首輪を手から落とした夢月さんが、20mくらい先でニコニコとこちらを見ていた。

 

お姉さん?どうしてここにいるの?そっちは出口だよ?お部屋に戻ろ?

 

落とした首輪を拾った彼女はゆっくりと歩いて近づいてくる。

 

やばいやばいやばいやばい。

 

吸血鬼の超速思考は弱体化した今でも、問題なく使用できるようで、脳内緊急会議を開く。

 

議題は【どう見ても詰んでいるこの状況を打破するにはどんな奇跡が起きれば良いのか?】だ。

 

いやいやいや。

奇跡以外ではどうにもならないのですか!?

 

幸い、ピッキングのスキルは前世で極めているようで、玄関の鍵穴から考えるとピッキングで開く事ができると瞬時に理解できた。

 

だが、肝心のピッキングの道具がない。

しまった、さっきのキッチンやリビングからピッキング用の代替品を探しておくべきだった。

 

そうして、超速思考の中で頭を抱えていると。

 

お姉さん?どうして?出ていこうとするの?ねえ?

どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?

 

壊れた機械のように、言葉を繰り返しながら、夢月さんが早歩きで近づいてきた。

 

「ぴっ!!?」

 

ガチャガチャガチャガチャガチャ

 

もう、超パニックである。

 

なにこれ、超怖い!

超怖いんだけど!?

 

首輪を持った女の子が、袋小路に追い詰められた私に、早歩きで近づいてくるのだ。

 

めっちゃくちゃ怖い。

もうパニックで、必死で玄関の扉を無我夢中でガチャガチャする。

しかし、無情にも玄関は開いてくれない。

 

突然だが、私は元人間だ。

だから、吸血鬼となって長年生きてきたが、人間の時の癖というのは、今でも残っている。

 

その癖の1つ。

怖い出来事や、恐ろしい出来事が背後に迫った切羽詰まった状況でも、後ろを振り返って、恐怖の対象を確認してしまう事。

 

その癖に従って、後ろを振り向いた私。

 

すると、目と鼻の先、というか鼻と鼻がくっつきそうなくらい近くに夢月さんは居て、ハイライトが消えた超怖い目で超至近距離から私を見つめていた。

 

 

捕まえた。

 

 

あまりの恐怖からか、追い詰められた小動物の様にビクビクと震えて動けなくなった私の首にカチャリとゆっくりと首輪がはめられる。

 

今度は、もう逃さないからね?

 

そんな言葉を私の耳を甘噛みしながら、囁く夢月さん。

 

すると、初めに夢月さんに攫われた時と同じ様に、抗いようのない眠気が襲ってきた。

 

視界は暗転し、ジャラジャラとした鎖の音を聞きながら私は再度眠りについた。

 

 



 

 

小さな頃から不気味がられ、ひとりぼっちで生きてきた女の子。

 

すがるものがいない苦しみを誰よりも理解する事ができた。

 

幸せと不幸せの境界なんて理解できなくても良い。

 

幸せだけで生きていければ良いのだから。

 

 



 

 

・・・・・・・・・・・・・・

・・・ここは・・・夢?

 

ハイライトが消えた目をした夢月さんに首輪をはめられるという悪夢の中で眠った私はどうやら明晰夢を見ているようだ。

先程の懐かしい夢の追体験の続きが始まったらしい・・・

 

 


 

 

・・・姿見に映る教壇に立つ為に、台に乗った女の子が、さらに届かない教壇に台の上からプルプルとつま先立ちで立っているのを見て少し悲しくなった。

 

・・・うぅ。

なんで、ちっとも身体が育たないんだろ・・・。

牛乳も毎日飲んでるし、バストアップマッサージも欠かしてないのに。

 

身長は中学生、下手したら小学生に間違われるくらい小さいし、胸もぺったんこだ・・・。

栄養が偏ってるのがいけないのかな?

 

・・・それはともかく、講義が中断されて、迷惑行為に相当しちゃったら大変だ。

この大学は講義中の迷惑行為に対して、過剰なほどに制裁を加えてから、単位を落としてくるシステム【迷惑検知制裁システム】が導入されているから、この子達のためにもちゃんと注意しないと・・・。

 

はしゃいで、騒ぐ男の子たちに勇気を振り絞って注意する。

 

『あ、あの。講義時間中の迷惑行為をしちゃうと、大学側のシステムが起動して追い出されちゃいますよ!』

『あー笑。あのシステムなら、同席してる学生の過半数の投票で発動するシステムっすから大丈夫っすよ!』

『そーそー。俺ら3人いるから、後は、あの隅っこにいる女の子2人組しかいないし、過半数の投票なんかできないって笑。』

『ギャハハハハ。そーゆーことー笑。』

 

いやいや、確かにそういうシステムだけど、こういう事がないように対策がされているんですけどね。

 

『・・・て言うことは、講義中やりたい放題って事じゃね?』

『おま、それに気付くとは、天才か!?』

『・・・先生ってちっちゃくて、めっちゃ可愛いですよね。』

 

チャラチャラしてる男の子3人組が顔を見合わせて、何やら話している。

 

ふぇ!?・・・か、可愛いなんて、言っても、迷惑行為は許しませんからね・・・・・・あ、あれ?・・・あの。皆さん立ち上がってどうされたのですか?講義中ですよ。席に座って・・・。』

 

立ち上がって、私に近付いてくるチャラチャラしてる男の子3人組。

 

『俺達が、先生の代わりに授業してあげるっすよ。講義名は〖合法ロリとのお楽しみ会〗ってか?ギャハハハハ。』

『え?合法ロリ?お楽しみ会?・・・どういう意味ですか?』

『マジか。見た目だけじゃなくて、中身もお子様ってか、滾ってきたぁ!』

『ヤバい。先生めっちゃ可愛い。触ってみたい。』

『お前、ロリコンかよ笑。まぁ、俺もロリコンだけど笑。』

 

そう言っている彼等は、ワキワキと手を揺らしながら、教壇に立つ私を取り囲む。

 

『み、皆さん!席に着いてください!』

『おい、見ろよ!何か違和感あると思ったら教壇に台を置いて、背伸びして立ってるぜ!めっちゃ可愛いんだが!』

『うわ、マジだ!可愛い!』

『おい、怖がってるだろ!・・・まぁ、プルプル震えて怖がってる先生も超可愛いけどさ。』

 

私を囲む彼らは、更に興奮したように、はしゃいでいる。

彼等は背が高いので、囲まれた小さい私は萎縮してしまって、縮こまってしまう。

 

そうして更に1歩距離を詰めてくる3人組。

 

『あ、あの!ちょ、ちょっと貴方達!っもが!?』

 

いきなり、私の口に柔らかい、黒々とした長い棒の様なものが突っ込まれた。

 

『もがもがもがもが!!』

『ほ〜ら、たーんとお食べ。』

『あ、おい!ずるいぞ!俺も先生に食べさせてやりたい!』

『慌ててる先生も可愛い!』

 

『もがっ!っけほけほ。ち、ちょっと貴方達はいきなり何を、!むぐぅ。』

『ほら、先生、今度はこっちを食べてみて!』

 

長い棒の様なものが口から引き抜かれたかと思ったら、今度はベトベトしたものを口に突っ込まれた。

 

『あ、おい!そんなに急に食べさせたら、喉に詰まらせちゃったら大変だろ!』

『むぐむぐ、ぷはぁ。ち、ちょっと、ま、むぅ!?ごくごくごく。』

『ほら、先生!飲んで!喉に詰まらせないようにね!』

 

今度は、粘性の高い液体が口の中に流し込まれる。

否応なしにごくごくと飲み込んでしまう。

 

『ふ、ふぅ、ふぅ、けほけほ。ん、ふぅ。・・・はぁ、はぁ。』

 

いきなり色々な事をされたので、ビックリして息が激しくなる。

 

『ふぅ、ふぅ。!いや、も、いらな、やめ、っもがぁ!?』

『ほらほら!美味しかったでしょ?もっとお食べ?』

 

そうして、先程の黒々とした長い棒の様なものが再度口に突っ込まれる。

そうして、先程の件がループする。

 

 

少しの間、そんな感じにやりたい放題されていると、先程から静かに2人でこそこそ話していた女の子2人組のうち、ブラウン髪の子が口を開いた。

 

『・・・あのさ。一応聞くんだけれど、君たち何してんの?』

 

こんな、状況に対して間違っていない質問である。

そんな、呆れた目をしながら見てくるブラウン髪の女の子の質問に男の子達が答える。

 

『『『ん?尊いロリっ子を甘やかしてるだけだけど?』』』

『ごく、ごく、ぷはぁ、甘い、甘すぎますぅ。うぇぇ・・・ジャリジャリしますぅ・・・口の中が砂糖だらけになっちゃったんですがぁ・・・』

 

『どう、美味しかった?俺のふ菓子。実家から大量に送られてきたから、まだまだ沢山あるから、いっぱいお食べ?』

 

初めに黒々とした長い棒の様なものを突っ込んできた男の子が大量のふ菓子を持ちながら言う。

 

『いや、あの。確かに甘くて美味しいふ菓子でしたけど、いきなり口に突っ込まれるのは、ちょっと・・・』

 

『俺のずんだ餅は?どうだった?美味しかった?甘かったっしょ?俺の実家が和菓子屋で、いつでも食べれるから、もっと食べたかったら言ってね?』

 

ふ菓子の後に、ベトベトしたものを口に突っ込んできた男の子が包装紙に入ったずんだ餅を見せながら言う。

 

『は、はぁ。ふ菓子の後に、口に突っ込まれずに、ゆっくり頂けたら、もう少し味わって食べれたのですが・・・。』

 

『じゃあ、最後の俺の〖みっくちゅじゅーちゅ〗は?美味しかった?大学のレトロエリアにあった古い自販機に売ってたから買ってみたんだけど、欲しいならもっと買ってあげるよ?』

 

最後に、粘性の高い液体を口の中に注ぎ込んできた男の子が、珍しいレトロなペットボトルを見せてくる。

 

『いや、甘いもの食べた後にさらに甘いものを飲まされて、脳がおかしくなるところでした。まあ、レトロなペットボトルジュースは興味はありますけど・・・というか、皆さん何で急に私を甘やかすのですか?ちょっと怖かったんですけど・・・。』

 

そんな私の質問に男の子3人組は声を揃えて答える。

 

『『『何を隠そう、俺達3人は〖幼子甘やかしたい倶楽部〗に所属している紳士だからな!ロリっ子を甘やかして、愛でることこそ至高。』』』

『は、はぁ。』

 

3人揃っておかしな決めポーズをしておかしな事を言っている男の子達。

 

・・・といいますか、私はロリっ子じゃありません!

れっきとした大人な女性です!

子供っぽいのは見た目だけなんですから!

 

そんな感じにわちゃわちゃとしていると、2人組の女の子達のブラウン髪の子がタッチパネルをタッチしながら声を掛ける。

 

『倶楽部活動は良いけれど、時間切れだよ。迷惑行為を通報するシステムは確かに過半数の投票が必要だけど、10分ごとに加算投票できるから、やりたい放題はできないってシステムなのよ?知ってた?』

 

教室に警備ドローンが入ってきた。

 

『メイワクコウイ、ヲ、ケンチ、シマシタ。ソッコク、キョウシツ、カラ、デテイッテクダサイ。』

 

『『『うわ、やべ。』』』

 

3人は慌てて大量のふ菓子やずんだ餅、みっくちゅじゅーちゅをカバンに詰め込み始める。

 

なにせ、警備ドローンは旧型のロボットであり、現状の把握や精密な動作が不可能で手荒く教室から追い出す事もあるからだ。

少しバタバタと動いただけでも、制圧モードに変わって襲いかかってくるからタチが悪い。

 

・・・このままじゃあ、下手したらこの子達が怪我してしまいますね。

 

そう思った私は小さい頃から、持っていた特殊な能力を行使する。

 

『1度落ち着きましょう?ゆっくりで構いませんからね?』

 

そう言って3人の頭をそれぞれ撫でる。

 

すると、3人ともに慌てていたのが嘘のように落ち着いた。

というか・・・。

 

『『『・・・ロリっ子ママ・・萌え・・尊い・・・zzz』』』

『あわわわ!や、やりすぎてしまいました。皆さん、起きてー!起きないと、叩き出されちゃいますよぉ!』

 

・・・未だにこの能力は加減が難しい。

でも、このままでは下手したらこの子達が怪我をしてしまうかもしれない。

何度声を掛けて揺すってみても、起きる気配が無い3人。

 

『メイワクコウイシャ、ノ、キョウシツナイデノ、ザンリュウ、ヲ、カクニン。キョウセイタイシュツモード、二、キリカワリ、マス。』

 

警備ドローンが警棒を取り出し近付いてくる。

 

うぅ。

仕方ないです。

 

『すみません、ロボットさん。』

 

ロボットに向けて、手を構える。

 

『ガガガ。デンゲンシステム、へノ、カンショウ、ヲ、カクニン。シャットダウン、サレマ・・・。』

 

ガシャンと崩れ落ちる警備ドローン。

 

『え、何・・・今の・・・。』

『メリー・・・、あれって、もしかして・・・。』

『あ・・・。』

 

あ!

あぁぁぁ!!!

しまった!

男の子3人組を助ける事に夢中で、女の子2人組もいた事を忘れていた。

み、見られた・・・。

ひ、人前で能力を使っちゃった・・・。

 

『あ、あの、こ、これは、そ、その・・・。』

 

何か言い訳を考えていた時、教室の自動扉が開き、眼鏡をかけた厳格そうな女性が入ってきた。

 

『・・・これは、一体どういう事ですか?』

 

崩れ落ちた警備ドローンと、男の子3人組を見て、鋭い目付きで私を見据えてくる。

 

『うぇ!?・・・あ、あの。』

『とりあえず、私の研究室で話を聞きましょう。講義中だとは思いますが、中断して着いてきて下さい。』

『うぅ・・・。はい。』

 

そうして、記念すべき私の初講義は波乱万丈のままに中断された。

 

 


 

 

『うぅ。減俸をくらってしまいましたぁ・・・。』

 

10分くらい事情聴取をされた私は、眼鏡の教授からお説教を受けて、教室に戻ってきた。

なんとか、ごまかせたけれど、警備ドローンは修理費を払うことになってしまった。

 

うぅ。

今月は節約生活確定ですぅ。

 

それに、講義も、うまくいきませんでした。

あの3人組の男の子達は多分、この講義は出禁になってしまうでしょうし、残った女の子達は、私の能力を見られちゃいましたし・・・

不気味がられて避けられますよね・・・きっと。

 

そうして、誰も残っていないであろう教室に、荷物を取りに戻った私は、教室の自動扉を開いた。

 

『あ、ようやく帰ってきた。待っていましたよ!先生!』

『ちょっと、蓮子!落ち着きなさいよ!気持ちはわかるけども。』

『うぇ!?あわわわわ!』

 

教室に入った私に、すごい勢いで近づいてきたのは先程のブラウン髪の女の子。

 

『先生!・・・講義時間はもうおしまいですよね?これから、ちょっと私達とお話しませんか?』

 

そう興奮したように話しながら、逃さないようにガシッと私の手を捕まえてきたブラウン髪の女の子。

 

『うぇあ!?・・・あう・・・。あ、あの。・・・その。』

 

『蓮子、まずは自己紹介しなきゃ、先生が、目を回してるわよ』

 

苦笑しながら、ふわふわのきれいな金髪の女の子がブラウン髪の女の子の肩に手を置く。

 

『おっと、そうだった!失礼しました先生!私の名前は宇佐見蓮子。超統一物理学が専攻分野で、秘封倶楽部っていう倶楽部活動しています!よろしくお願いします!』

『先生!先程は大変でしたね!お疲れ様です。私の名前はマエリベリー・ハーン。蓮子にはメリーと呼ばれています。相対性精神学を専攻していて、蓮子と一緒で秘封倶楽部で活動しています。よろしければ、先程の異能の件で先生にお話をお聞きしたいのですが、お時間ありますでしょうか?』

 

そういって挨拶をしてくれる女の子2人組。

蓮子さんという、ブラウン髪の女の子は白いシャツに可愛らしい黒いスカートを着ている可愛らしい女の子だ。

もう1人の女の子はマエリベリー・ハーンさん。

肩までかかるきれいなふわふわの金髪が眩しい女の子だ。

 

・・・っというか、異能!?

って事は気付かれ・・・!

 

『え?・・・あ、あの。な、なん・・・』

『よし!決まりですね!それじゃあ行きましょう先生!』

『あぅ、ち、ちょっと待ってぇ、引っ張らないでぇ。』

 

そうして、色々困惑状態の私は、彼女達に引っ張られながら、必死でとてとてとついていった。

 

 


 

 

今回の明晰夢はここで終わりのようで、ゆっくりと視界が暗転していく。

今回、思い出せた記憶で、気になったのは、マエリベリー・ハーンという金髪の可愛らしい女の子。

その女の子の姿形は、アズールとして、生まれ変わった世界で出会った、リヴェリー・ハーンという、人間の女の子に瓜二つであった事。

 

まさかとは思いますが、ね・・・

 

それに、宇佐見蓮子さん、マエリベリー・ハーンさん。

 

前世では、この2人とかなりの時間一緒にいた気がする・・・。

 

残念ながら、そのあたりの記憶はまだ戻らないけれど、たしかに大切な思い出があったはずだ・・・。

 

そんな記憶を持ち帰って、私は夢の世界から、夢月さんの悪夢の世界へと戻っていった。

 



 

 

ただ、傍観することしかできなかった哀れな女の子。

 

無力で無価値な自分に諦観を持った彼女は誰よりも力に飢えていた。

 

幻想と現実の境界なんて理解できなくてもいい。

 

一際きらめく右から二番目の星をめざして、彼女はまっすぐ進み続ける。

 

 



 

「・・・知ってる天井です。」

 

・・・さっきも見た天井だ。

 

というか、やっぱり、夢の中の記憶は持ち帰れるようだ。

宇佐見蓮子さん、マエリベリー・ハーンさん。

うん、彼女達と大学の講義で出会った所までしっかりと覚えてる。

 

まぁ、夢の内容は後回しです!

今は夢月さんに監禁されてる現状をなんとかしないと・・・

とにかく、もう1度玄関までこっそりと・・・。

 

夢から目覚めた私は、まず、周囲の状況を把握するために、身体を起こそうとする。

 

ジャリジャリ

 

「ジャリジャリ?」

 

何かが擦れる金属音が聞こえて、何かと思って見てみる。

すると、私の身体は首輪で繋がれており、ベッド周囲、5mほどで鎖に繋がれていた。

 

「・・・マジですか・・・。」

 

そうして、超高難易度の夢月さん家からの脱出ゲームが始まった。

 

 

 




〖後書き〗
どうも、執筆に行き詰まった時、近所の公園のベンチでスマホで執筆していると、鳩の糞が左の膝のところに落ちてきて、何故かパニックになって走って家まで5分くらいで逃げ帰ったまほろばです(ガチ)

それはそうと、34話です!
今話は、夢幻世界での一幕でした!
唐突に言いますが、今話はかなり難産でした。
読んでいておかしな所など、多々あるとは思いますが、すみません。
気が着き次第修正、改稿していきます・・・。
さて、今話のコンセプトは、アズールちゃんの前世のチラ見せと、夢月さんのホラー展開です。
前世の記憶では、アズールちゃんの前世の姿、宇佐見蓮子さん、マエリベリー・ハーンさんの登場等、色々な情報が解禁されました。

アズールちゃんの前世の姿↓

【挿絵表示】


前世アズールちゃんに興味津々の宇佐見蓮子さん↓

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苦笑して、微笑むマエリベリー・ハーンさん↓

【挿絵表示】



先に言っておくと、この小説はR15なので、ガチエッチな展開にはなりませんからね?

そして、今話が難産となった最大の要因が夢月さんのホラー展開が上手く書けず、頭を抱えていた事。

結果、次話に持ち越しとなりました。(本当に申し訳ない:某鬼畜博士風)
よって次話は、夢月さん家からの脱出ゲーム回となります。
果たして、人間の少女程度の力にまで弱体化しちゃったアズールちゃんは夢月さん家から無事脱出できるのでしょうか!?
・・・次話も、今までにないくらい難産になりそうです・・・。


さて、恒例ですが、今話での作業用BGMを勝手ながら紹介させていただきます。
まずは、東方原曲から
東方Project第9.5弾『東方文花帖 ~ Shoot the Bullet.』のLEVEL8~10の撮影曲4より
『レトロスペクティブ京都』

そして、DOVA-SYNDROME様より
キュス様が手掛けるフリーBGMから
『欠けた人形の踊り』を作業用BGMに使用させていただきました。

これらの神曲を今話の作業用BGMに使用した理由や、感想など、活動報告にあげさせていただきますので、宜しければ御覧になってください。

・・・次回は難産になる事間違いなしなので、更新が少し遅れるかもしれません。
ですが、1週間ちょっと以内には更新できるように、頑張ります!

庇護録はまだまだマイペースに続いていきますので、これからもよろしくお願いいたします!!


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