Fallen werewolf perspective.
「ここは……どこだ?」
気付けば私はどこともしらない、深い森の中にいた……全裸で。
伯爵様鬼畜すぎる。
せめて服も一緒に転移させて欲しい。
とりあえず、辺りを警戒する為に種族固有のスキル〖嗅覚探知〗によって索敵をする。
……ふむ、ここら一帯には妖怪も人間もいないようだ。
ふと、自身にいつも感じていた〖スカーレットの加護〗が消失している事に気が付いた。
「また、1人になってしまったんだな……」
加護が消失した事でかなり寂しさを感じると同時に、自分の妖怪としての存在値が減少していくのを感じていた。
今までは、スカーレット家に仕え、一員として周辺の人間からの畏れのおこぼれを頂いていたが加護が消えた今、その供給も途絶えている。
自分自身で畏れを集めなければ、やがて私の存在値は限りなく0に近くなり、幻想として世界に溶け込んでしまう。
つまり、妖怪としての死が迫っている。
そんなにすぐには死ぬことはないだろうが、元々私は弱小妖怪の落ちこぼれだ。
持って一日、早ければ数時間もすれば死んでしまうだろう。
……これはかなりマズイ状況である。
なんとかしなければ。
「うん?なんだ、急に気配が」
その時、30mくらい先に突如として何かが現れた。
いや、初めからいたのか?
・・・まぁ良い。
とりあえず様子を見に行こう。
静かに、自分の存在を相手に知られないように、ゆっくりと草木をかき分けて先程の気配に近付いていく。
大体20m程近付くと、その正体が明らかになる。
そいつは、気配を消しているはずの私に気付き目を向けてくる。
それは見目麗しい、銀髪の少女であった。
歳は10台前半程度、小柄で腰まで伸びた銀髪は風に靡いてキラキラと光っているようだ。
服装は、どこかのお嬢様のような薄緑のドレスに青いロングスカート、そこに何故か藍色のマントを羽織っている。
目は悲しそうな目でこちらを伺っており、瞳の色は薄い紫?いや、少し紅い色をしている。
少女の心情が能力によって読み取られる。
その少女の心情には、不安、焦燥感、悲しみが感じられた。
少女の視線が、私の目から下に移動し、胸、腹、そしてそのすぐ下で止まり、慌てたようにすぐ様顔に視線を戻してきた。
というか、この少女・・・人間?
見た目は人間であり、匂いもうまそうな匂いがする。
「おまえうまそうだな」
思わず思っていた事を口に出してしまう。
まあ、とりあえずこの少女を脅して畏れを頂こう。
という事で、軽く走って少女に接近する。
「うひゃあ!?」
走る私を見て、少女は可愛らしい声で素っ頓狂に叫ぶ。
やはり妖怪として、誰かが驚く姿を見るのが楽しく感じる。
楽しくなってきた所で少女に飛びかかろうとした瞬間、少女が消えた。
「へ?」
辺りを見渡すが、少女は見つからない。
ふと前を見ると不自然に森が切り開かれ、奥の方に平原が見える。
すぐさま
すると、大体3km程度先に先程の少女が佇んでいた。
突然の事態に唖然となり、開いた口が塞がらなくなる。
少女は振り返り私を見ている。
もう一度、少女の瞳を見て悟る。
紅い瞳は吸血鬼の証。
そして遠見魔法を使っているからか僅かに見る事ができる、吸血鬼特有の悪魔の翼。
他の吸血鬼と違う点としては、少し紫がかった瞳。
そして不可視の翼。
それを抜きにしても圧倒的な身体能力。
決まりである。
彼女は正真正銘吸血鬼、それもかなりの上位者だ。
翼を隠す事のできる吸血鬼など、聞いたことも無い。
それに曲がりなりにも、吸血鬼に次いで足が早いと言われる狼男の飛びかかりに反応し、とんでもない速度で距離をとった。
魔力を使った
魔法を使わずに、これらの事を簡単に為す彼女は非常に位の高い吸血鬼であろう。
私が取るべき行動はただ1つ。
振り返った彼女は小さく手を振り、微笑みかけてきた。
……見惚れている場合ではない。
すぐさま跪き、頭を垂れる。
「申し訳ありませんでしたぁぁあ。吸血鬼さまぁぁ!?」
誠心誠意、謝罪する事。
それが、
遠見魔法で、木を軽くへし折って笑う彼女を見た時は、あの木のようにへし折られる未来が見えた気がして生きた心地がしなかった。
その後捕まり平原に連れていかれた際に、彼女に対して能力を使ってみたが、裏表もなくただ
つまり、何をされるのか裏が読めず分からない為、恐怖のままにガタガタ震えていた。
そんな私に彼女は話しかける。
「さて、それでは、狼男さん……そういえば、貴方、名前はなんというのですか?」
え?
弱小な妖怪である狼男に対して名前の有無を聞いてくる不思議な吸血鬼。
弱小妖怪には基本名前がない事を伝えると共に、加護についても触れてみる。
やはり、詳しくは知らないようだ。
色々と話した後、
「今更抵抗致しませんので、どうか安楽な死をお与え下さい。」
と覚悟を決めて言ってみると
どこまでも、甘く、優しい彼女の心情は能力で見てるだけあって、凄く伝わってくる。
「貴方様の加護を頂けるのであれば、私は貴方に忠誠を誓いましょう」
スカーレット伯爵への忠誠はまだ消えていない。
それでも、彼女の庇護を受けるのであれば、彼女にも忠誠を誓う義理がある。
跪いて頭を垂れると、彼女はワタワタして跪くのを止めさせようとしてくる。
とことん、吸血鬼らしくないお方だ。
「狼男さん……は呼び辛いですね。では、貴方に名前を付けてあげます」
と彼女は急にとんでもない事を言い出した。
妖怪に名前を付けると言う事は、自らの存在値を名付けとともに、分け与えるという、妖怪にとっては生死に関わるとても危険な行為なのである。
その事を必死に説明するも、
「では、貴方は今日から〖ヴァルター〗です。これは、ドイツ語で、執事という意味を持つ言葉を参考に名付けてみました。まあ、私は執事というよりは、家族みたいに思っています。執事は気が向いたら、してみてください」
「へぁ!?」
気がついたら名付けをして頂いていた。
訳が分からない。
ついでにどいつごという言葉も分からない。
ともかく、私に〖ヴァルター〗という名の名前が与えられた。
突然の事に困惑する私の体に変化が起きた。
毛むくじゃらだった体は人の子のようにきめ細やかな肌が見え、手や足も人間のように変化した。
今まで二足歩行の狼から変化しなかった、妖怪としての格が初めて上がったのだ。
それも恐らくとてつもなく一気に。
耳としっぽさえ隠せば人間として、見れる位に人間に近い姿を手に入れていたのだ。
なぜか、同族とは違い人間の女性。
それも、少女と
「うえぇ!?狼男さんじゃなくて狼女さん?いや、狼少女さん!?というかすっぽんぽんじゃあないかぁぁぁ!服を着なさい!」
好奇心と驚きを心情に映した彼女は、私が全裸である事に気付きローブを掛けてくれた。
彼女の身長は小さくなった私の身長より低いので掛けてくれたローブは少々小さいが能力を使わずとも、彼女の心情に慈愛や優しさを感じると共に心が温かくなった。
悩む彼女にローブが答えたのか、ローブが伸びた。
不思議なローブもあるものだ。
まあ、それはともかく。
「お嬢様!」
ここまでしてくれた彼女には最大級の忠誠を誓う事にする。
「お嬢様!私〖ヴァルター〗は、生涯、貴方に尽くす事を誓います」
もちろん、スカーレット伯爵に対する忠誠も未だに健在だ。
節操も無いが、恩人である
あっ。
そういえば。
「お嬢様!さっそくですが、聞きたい事があります」
「なっなんでしょうか?」
「お嬢様のお名前は、何と仰られるのですか?」
「あ」
名前を聞いていなかった事を思い出し尋ねる。
彼女は
「アズール」
「?」
「ヴァルター、私の名前はアズールです!これからはアズールと呼んでください」
「かしこまりました。アズールお嬢様」
アズール、アズール……。
・・・良し覚えました。
その後はアズールお嬢様の案で拠点を探す事となった。
体を清める場所を求めるアズールお嬢様。
テルマエの案が出るも、お嬢様をあんなところに連れては行けない。
人間に化けて入ったとしても、下卑た人間共から汚い目で見られるはずだ。
そのような事は絶対にあってはならない。
とりあえず適当な理由を考えて反対しておいた。
そもそも魔法があるので、体を洗うのは魔法で事足りると伝えると、
「ま..ほう?ま、魔法!?く、詳しく!詳しく教えて下さい!ヴァルタアァァー」
人間なら軽くぺしゃんこになるくらいの力で首元に抱きつかれた。
魔法の事になると、軽く暴走するという事は覚えておこう。
「お嬢様、落ち着いて、落ち着いて下さい、お嬢様ぁぁぁああぁ///」
紅い悪魔に何度も撫でられて、慣れたと思ったのだが、身体が変化したからか、撫でられると、なんというか怖くなるくらい気持ち良くなってしまう。
それもお嬢様は的確に私の気持ちいい場所を撫でる為、体に力が入らず、満足に抵抗できない。
見た目は
そうして、気持ちよさでどうにかなりそうな中、お嬢様の先程の言葉を思い出す。
──私は貴方の事は執事というよりは、家族みたいに思っています。
……フフッ。
自然と顔は
心が温かくなる。
なんとはなしに掛けられたであろう言葉を心の中で
目の前の、落ち着いているようで落ち着かない、幼い姿の吸血鬼は無意識に言葉を発しているのだろう。
しかし、私にとって、その言葉は心に温かみをもたらす。
今までの妖怪生では経験出来なかった、幸福を感じる。
アズールお嬢様の傍にいると、何だか心が穏やかになり狼男として迫害されてきた辛い過去も、忘れられる気がした。
そうして、私には巡る運命の中で初めて大切な家族が出来た。
It was Walter point of view
〖後書き〗
意味深なスカーレット伯爵、紅い髪の書庫の司書悪魔。
原作キャラのあの方達に縁があるキャラです。
なんなら、1人は原作登場キャラでもあります。
キャラ紹介⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎
スカーレット伯爵
種族:吸血鬼(真祖)
能力:運命を見る程度の能力
確定している未来の運命を垣間見る事で、ある程度未来予知のような事が出来る。すごい能力であるが、欠点として、垣間見た未来の運命は変える事が出来ず、その運命に抗うことができない。
性格:本質は好奇心旺盛で、自身が気に入ったものにはとことん甘いが、敵対すれば、吸血鬼本来の性質である、攻撃的な本性が見え隠れする。能力の関係上、未来をある程度見ており、たまに、周りからすれば、意味不明な行動を起こす事があり、周りを困惑させている。
……実は、ヴァルターを追放したのも、ある未来を垣間見たから。
ヴァルター
種族:狼男→人狼?
能力:機微を悟る程度の能力
何時まで経っても人狼へと進化できない狼男。
同族から迫害されていたところをスカーレット伯爵に拾われて紅魔館の番犬となる。
紅い髪の悪魔には魔法を教わり感謝しているが、もしゃもしゃと撫でられまくるのでちょっぴりウンザリしている。
紅魔館での生活は気に入っていたが、ある日急に追放される。
追放された先で主人公アズールと出会い、ヴァルターという名前を授かる。
名付けとともに身体が人間の少女のように変化する。
今まで迫害され続けた自分を家族とまで言ってくれたアズールに忠誠を誓う。←今ここ
性格はお茶目な所はあるが基本マジメ。ちょっと天然も入ってる。
最近の悩みは人間の姿になってから耳や尻尾を撫でられると変な気持ちになってしまう事。
次は第5話魔法の話と紅魔館での話です。
仕事がとことん忙しくなり、あまり、時間が取れないため少し先の投稿になりそうです。
先に前話の改稿もするかもです。
では、またよろしくお願いします。( ; ᯅ ; `)