東方庇護録(旧作)   作:まほろばのーぶる

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第40話:夢の創造、幻の修繕~対峙する悪魔と大妖怪~

Sister Complex Devil perspective

 

私はただ、お姉ちゃんが幸せでいてくれるだけで良いと思っていた────

 

だから、姉さんがずっと幸せでいられる様な世界を創った────

 

私達姉妹はその世界の中で、2人きりの幸せな時間を過ごしていた────

 

そんな生活を長年続けていたある日、ふと考えた────

 

私達は本当に今のままで幸せなのだろうか────

 

ふとした時に、感じる孤独感────

 

それはそうだ、この幸せな世界には私達姉妹しかいないのだから────

 

()()()2人きり、孤独で寂しい夢幻の世界────

 

お姉ちゃんも孤独に感じているのだろうか────

 

私は、そんな姉さんの為に、孤独な世界を拡げる為にも、外の世界へと目を向けてみた────

 

でも、外の世界は私達の幸せな夢幻の世界とは違い、不幸せが蔓延(はびこ)る嫌な世界だった────

 

絶え間なく続く生命の争い────

 

飽きもせずに飛び交う悪意────

 

何も残らない虚しい競争────

 

下卑(げび)た笑みを浮かべる悪意ある者達────

 

淘汰(とうた)される心優しき者達────

 

他にもたくさん────

 

お姉ちゃんは平気でそんな外の世界と交流を持ち始めたりしていたけれど────

 

私には考えられなかった────

 

外の世界(現実)に目を向ければ、そんな不幸せな物語ばかり────

 

そんな世界に救いなんて、あるはずが無いって思っていた────

そうだ。救いなんてないのだ。

そんな救いの無い外の世界を嫌いながらも、ぼんやりと眺めていたある日────

 

優しくない外の世界には似合わない、和やかで優しい不思議な雰囲気を持つ、白銀の吸血鬼を見つけた────

 

そんな不思議な雰囲気に魅せられて、思わず、初めて自分から、この夢幻世界に引き摺りこんでしまった────

 

今までに、この夢幻世界には何人かの妖怪達が足を踏み入れて来たけれど、あまり積極的には交流してこなかった────

 

そんな私が、自分からこの世界に誰かを引き摺りこんだのは、初めての事だったから、吸血鬼のお姉さんを引っ張って来る時にはドキドキした────

 

そうして引き摺りこまれて困惑していた、その白銀の吸血鬼のお姉さんは私達を見て困惑しながらも、こう言った────

 

 

《夢みたいに美しい場所ですね》

 

 

正直言うと、その言葉を貰ったその時の私は凄く嬉しかったし、恥ずかしかった────

 

お姉ちゃん以外に初めて私が創った世界を褒めてもらえた────

 

真正面から綺麗だなんて言われたから、凄く恥ずかしかったけれど────

 

その後は、褒めてもらえた事もあって、少しはしゃいでしまった────

 

彼女との交流は、途中で化け物に止められたけれど、お姉ちゃんとも、久しぶりに遊べて、すっごく楽しかった────

 

外の世界も捨てたものじゃないかな、って思えるくらいには、吸血鬼のお姉さんとのごっこ遊びは楽しかった────

 

不思議な事に、白銀の吸血鬼のお姉さんと交流を持った途端に、私が抱えていた悪感情が綺麗さっぱり消えていた────

 

これなら、外の世界も受け入れられるかな────

外の世界に希望なんて見えなかったのだろう?

そう思った────

さぁ、もう一度、《悪意ある理想郷》を覗いてみようではないか。

・・・そう思っていた────

善は淘汰され、悪が蔓延る美しい世界

その吸血鬼のお姉さんが、悲しみを背負い込みすぎて封印された、と聞くまでは────

お前は悪魔だろう?

・・・やっぱり外の世界は残酷だ────

さぁ、手を伸ばせ!

持ちうる知識から、吸血鬼のお姉さんが今までに成した事、成そうとした事を全てを把握した私は思った────

悪は優しく、お前を受け入れるだろう

あんな心優しいお姉さんが、そんなに酷い状況に陥る世界なんて、滅んでしまった方が良いのではないか、と────

さぁ、今こそ、世界を悪意で満たそうじゃないか。

そうして、何もかもが嫌になった私はそっと、現実から目を背けるように、目を閉ざした────

 

 

 

・・・・ふふ・・・・ふはははは。・・・滑稽だな。

 

 


 

 

30 years ago・・・

 

 

Gengetsu perspective

 

 

アズールちゃんが封印された日。

突如、私の愛しい世界が揺らいだ。

 

突然の揺らぐ世界に驚愕しながら、愛しい世界に目を向ける。

目を向けた先にあった自宅の壁が歪み、光の粒子となって瞬き、消滅した。

まるで、この世界から存在そのものが無くなってしまうかのように、私の周りの物が全て光の粒子となり、消えていっている。

 

急いで、家の外に出て外の様子を確認する。

そして、私がいる家だけでなく、世界そのものが歪み、光の粒子となって消え始めている事に気付いた。

 

四方八方にあった幽玄な美しい空はひび割れ、絶え間なく自壊し、光となって消滅していっている。

 

そんな空に浮かんでいた美しい紫色の月は、今にも消えてしまいそうな程に薄くなり、影が差してきている。

 

私はそんな夢幻の月を見て、この事態の原因を理解した。

 

しかし、それは、私にとって、私自身が死んで、消えてなくなってしまう以上に恐ろしい出来事だ。

 

最悪な事態になってしまう前に、私は急いで、淡くなった可哀想な夢幻の月へと向かった。

 

 


 

 

私が夢幻の月の元へと辿り着いた頃には、もう夢幻世界の殆どの空は自壊し、光となって消滅していた。

 

そして、膨大な魔力が吹き荒れる月の傍で、魔力嵐に揉まれた私は揺らぐ視界の中、必死で手を伸ばし叫んだ。

 

「夢月ちゃん!!ダメ!戻ってきて!!!」

 

夢幻の月にいる夢月ちゃんから放出されるとてつもなく濃い魔力が、質量を持って吹き荒れ、魔力嵐となって私を彼女へと近付けさせない。

 

「夢月ちゃん!!!お願い!!!それを止めて!!」

 

必死で叫んでも、月の中で膝を抱えて蹲った夢月ちゃんは一向に反応を示してくれない。

 

「くっ!」

 

持ちうる私の全魔力を纏って、魔力嵐が吹き荒ぶ月の中に迷いなく突っ込んで夢月ちゃんに近寄る。

魔力の力が風の刃となって私の全身を切り刻んでゆく。

邪魔をするな!

「ぐっ!!あぐっ!!」

 

魔力の刃が、私の左腕と右脚を吹き飛ばした。

それでも絶対にめげない。

 

大切な、可愛い可愛い妹の為だから。

 

貴方は絶対に失わない!!!

悪魔が何故、我の邪魔をする?

魔力嵐をなんとか突き抜け、夢幻の月へと入る事ができた私は、ふらふらと夢月ちゃんの傍に降り立ち、残った右腕で彼女を抱き締めて声を掛ける。

 

「夢月ちゃん。大丈夫。・・・大丈夫だよ。・・・落ち着いて?お姉ちゃんが傍にいるからね。」

「・・・・幻月・・・姉・・・さん?」

・・・口惜しや・・。もう少しであったものを・・・

私の声に初めて夢月ちゃんが反応し、世界の自壊による揺らぎが少し収まる。

そうして顔を上げた彼女だったが、再度、悲しそうに顔を伏せた。

 

「・・・ごめんね。姉さん。・・・私、あんな世界、どうでも良くなっちゃった。どこもかしこも、穢らわしい悪意に満ち溢れた世界。心優しい銀髪の吸血鬼のお姉さんがあんなに酷い事になるなんて・・・あんな不幸せな現実にもう触れたくないの・・・。だから、もう私は夢幻に戻っても良いかなって。」

「・・・私達ってやっぱり姉妹ね・・・。夢月ちゃんの気持ちはよく分かるわ・・・。私もアズールちゃんみたいな優しい人が犠牲になる世界なんて嫌い。・・・でもね、どうして、私が穢らわしい外の世界に我慢して触れていられたか分かる?」

「・・・分かんない。」

「それはね、()()()が私と一緒に居てくれたからなのよ?」

「っ!!」

 

俯いていた夢月ちゃんが顔を上げて私の方を見る。

夢月ちゃんの綺麗な()()()()からは、ダイヤモンドのように煌めく涙がポロポロと落ちている。

【挿絵表示】

 

「夢月ちゃん。・・・()()()が私の傍に居てくれるから、私はあんな残酷な世界を受け入れる事ができるの。・・・今までも、そして、これからも。」

 

夢月ちゃんが流す、綺麗で大粒の涙を拭ってあげながら、ニコリと微笑む。

【挿絵表示】

 

「姉さん・・・あぅ。」

「だから、私の為にも消えて居なくなろうなんて、思わないで?」

 

夢月ちゃんの顎に優しく手を添えて、私と目を合わせさせる。

私に見つめられた夢月ちゃんは、顔を赤くさせて、恥ずかしそうにギュッと目を瞑った。

 

「・・・アズールちゃんは必ず目覚める。目覚めてからアズールちゃんが幸せに過ごせたら、そうしたら外の世界でも幸福な物語が綴れると思わない?」

 

夢月ちゃんの耳元で囁きながら頭を撫でる。

 

はわぁ・・・はふぅ・・・

 

夢月ちゃんは頭を撫でられて、気持ち良さそうに目を細めている。

 

「だから、アズールちゃんが目覚めるまで一緒に待ちましょう?」

 

夢月ちゃんの耳を甘噛みしながら、強力な封印魔法を使用する。

 

「あぅ。・・・姉・・さん。」

 

力が抜けて崩れ落ちた夢月ちゃんを抱える。

 

そして、抱えた夢月ちゃんが、光となって夢幻の月の中に散っていった。

 

そうして、世界に力が戻り始め、夢幻の月も綺麗に光り輝きだした。

 

 


 

 

霧散した夢幻世界の力を集め、世界の修繕が一段落した所で、安心したからか身体から力が抜け、へなり、とへたり込んだ。

へたり込んでから、疑問を口に出してみる。

 

「・・・明らかに、夢月ちゃんの発作の間隔が早くなってきている・・・。」

 

以前からも、今回のように夢月ちゃんの感情の暴走で夢幻世界が滅亡1歩手前まで進行する事はあった。

でも、1000年に1度、あるかないかだったのに、今回の発作は500年振りで、とても早い。

 

まず間違いなく、今回の発作の1番の原因はアズールちゃんの事だろう。

 

・・・夢月ちゃんのお友達を外界で探して、感情の安定化を図っていたが、やはり夢月ちゃんを外界に触れさせるのはリスクが高すぎたのだろうか・・・

 

・・・いや、それでも、姉として、夢月ちゃんにはもっと沢山の経験をして、もっと幸せを感じて欲しい。

その為にも、まずは何としてもアズールちゃんに夢月ちゃんのお友達になってもらわないと・・・。

 

「・・・私はお姉ちゃんだもん・・・もっとしっかりしないとね・・・」

 

そう言って気合いを入れて、切断された右脚を再生させていなかった事に気付き、まずは右脚から再生させて立ち上がる。

 

「幻月お姉ちゃん!?」

 

立ち上がって、ふらつく頭と思考で、これから先の事を考えていると、後ろから声が聞こえてきた。

 

「どうして、そんな大怪我してるの!?」

 

振り返ると泣きそうな顔で夢月が震えてこっちを見ていた。

【挿絵表示】

 

「・・・もしかして・・・」

 

そう言って夢月は、空を見上げて夢幻の月を見据える。

 

「大丈夫よ。夢月。」

 

そんな夢月の視線を隠すように、震える夢月を再生した左腕と共に両腕で抱き締める。

 

「お、お姉ちゃん!いきなり抱き着かないでよ!は、恥ずかしいってば...///」

 

いきなり抱き着かれた夢月は顔を真っ赤にさせてワタワタ慌て出す。

【挿絵表示】

 

可愛い。

 

「幽香にデコピンされた所はもう大丈夫?痛くない?」

 

抱き締めた夢月の頭を撫でながら、聞いてみる。

 

「・・・はぅぅ。・・・あの化け物にデコピンされた所はまだちょっと痛いけれど、幻月お姉ちゃんが撫でてくれたら痛みなんか、どっか飛んでっちゃうよ。」

 

撫でられる夢月は気持ち良さそうに目を細めて、もっと撫でて欲しそうに頭を私の手に擦り付けてくる。

 

「はへぁぁ・・・っは!って違う!恥ずかしいからやめてってば!」

 

そう言って顔真っ赤でぷんぷん怒り出す夢月。

可愛い。

 

ごめんね、と伝えて離れてからガバっと両腕を拡げて、ニコッと笑顔で傷が無い事を夢月に見せる。

【挿絵表示】

 

「ほら、お姉ちゃんはな〜んにも悪い所はないし、怪我もしてないよ〜。」

「・・・お姉ちゃん。」

「ほらほら、夢月。そんな顔しないの。あ、そうだ!アズールちゃんが起きた時の為に、私と一緒にお料理の練習しましょ?」

「え!?お姉さんって目覚めるの!?」

 

話題を変えようとアズールちゃんの話をしてみたら、予想通り夢月は嬉しそうな反応を示した。

 

・・・この夢月の反応からして、決まりだ。

やっぱり何としてもアズールちゃんは夢月ちゃんのお友達として、私が管理する必要がある・・・。

 

「・・・えぇ。アズールちゃんは目覚めるわ・・・多分30年くらい先の話になるだろうけどね。」

 

アズールちゃんが封印される期間の想定を()()()()()()()()()()を見据えながら、3()0()()と予測して言う。

 

「やった!30年ならもうすぐだね!!・・・こうしちゃいられないわ!お姉ちゃん、私お祝いのお料理の試作を作ってくるから、味見よろしくね♪」

「えぇ、楽しみにしておくわね♪」

「えへへ。それじゃあ、お家で待ってるね。」

 

そう言って、私とハイタッチした夢月は夢幻世界の家へと帰って行った。

 

 


 

 

夢月が夢幻世界にある私達の自宅に帰った後、残された私はふと考えて、魔法で手紙を作り、魔法の封筒と共に宙空に放り投げた。

 

「伯爵宛にお願いしますね?」

 

誰もいないはずの宙空に言葉を掛ける。

 

「私は郵便屋じゃあないのだけれどね。」

 

宙空が突如としてひび割れ、ひび割れた隙間の中から華奢な手が現れて、封筒を受け取った。

 

「それで、無断侵入と盗み聞きしていた事は不問にしてあげるわ。覗き見が好きな隙間妖怪さん?」

「覗き見が好きだなんて、失礼ね。・・・でも、まぁこの封筒は届けておくわ。」

 

・・・スキマで夢幻世界にまで侵入しているのに覗きじゃないって、それは詭弁(きべん)ね・・・。

 

そんな風に思いながら、スキマから現れた隙間妖怪の顔を覗いてみる。

・・・あれ?

 

「・・・紫?大丈夫?顔色が物凄く悪いけど・・・」

「・・・正直大丈夫じゃないわ。貴方と舌戦なんて繰り広げられないくらいにね・・・。」

 

いつもなら、なにかしら言いくるめてくる紫が何も言えなくなっているのは、本当に本調子じゃないからだろう。

そんな紫に少し驚きながら、思い当たることを言ってみる。

 

「・・・あぁ、アズールちゃんの事ね・・・。あの封印の術式に3()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を取り入れていた理由にも繋がりそうですね。」

「・・・やっぱり近くで見ていた貴女にはバレてますよね・・・。一応言っておくと、この魔術に気付いたのは貴方が2番目ですわ。」

「ありゃ。1番じゃなかったか。まあ、1番は誰かは想像つきますけどね。」

「・・・なんでも見通す目を持ったあの吸血鬼に隠し事ができないのは、いつも思うけれど難儀(なんぎ)だわ・・・」

 

紫はそう言って肩をすくめる。

 

確かにあの吸血鬼の能力は理不尽にも程がある。

まだ、使い手の吸血鬼が人格者?である事が救いだね。

 

「・・・長話はやめておきましょう。・・・貴方の怖い方の妹が起きてきて敵意を向けてきたら怖いですから・・・。」

「あはははは。夢月ちゃんは(しばら)くは寝てるだろうから大丈夫だけどね。それに、案外紫は夢月ちゃんに好かれてそうだし、大丈夫だと思うけれどね。それと、どんな妹でも、私にとっては可愛い可愛い妹ですよ。まぁ紫も今日はいっぱいいっぱいだろうから、あんまり突っ込まないでおきますね。」

「心遣い感謝致しますわ。・・・では、手紙はしっかり伯爵に届けておきますね。」

「ありがとね。」

 

そう言って、神出鬼没の隙間妖怪は帰って行った。

 

やっぱりアズールちゃんは外界にとってもイレギュラーな存在なんだね・・・。

色々な大妖怪から目を付けられて可哀想だけれども、私も貴方を逃がさないよ・・・。

 

そう思いながら私は、夢月が創る奇抜な鍋を楽しみに、夢幻世界の自宅へと帰って行った・・・

 

 

 


 

 

 

「アズールちゃんはどこ?」

 

目を瞑って、30年前にあった出来事を思い返していると、唐突に脈絡もなく、私に問いが投げかけられた。

 

目を開いて、ゆっくりと前を向くと、そこには全身にとんでもなく膨大な妖力を(まと)った待ち人が居た。

【挿絵表示】

 

「・・・待っていましたよ、幽香。ここに来たという事は、手紙を読んだのでしょう?・・・手紙を読んだなら、アズールちゃんがどこにいるのかなんて、予想できるよね?」

「・・・貴方は私に喧嘩を売っているのかしら?」

 

そう言って幽香は持っていた日傘を目にも止まらぬ速さで振り下ろす。

すると、夢幻世界を守る為に私が張っていた結界がいとも容易く両断された。

夢幻館と共に・・・。

 

・・・あれを直す、エリーちゃんとくるみちゃんに少し同情する。

 

「随分と手荒いじゃない・・・。安心して?アズールちゃんにはまだ危害は加えていないから。」

 

今頃、夢月と夢幻世界の自宅でお話をしている頃だろう。

 

「そういう問題じゃないわ。彼女を独占するなんて許さない。彼女は私のものなのだから。」

「言うわね。彼女は夢月()に必要なお友達なんだから、私も絶対に譲らないわ」

 

全身に悪魔として全力の魔力を纏う。

対する幽香は禍々しい程に膨大な妖力を纏ってゆっくりと近付いて来る。

 

 


 

 

一方は悪魔の中でも最上級の魔力を持つ最強の大悪魔。

【挿絵表示】

 

もう一方は妖怪の中でも最上級の妖力を持つ最強の大妖怪。

【挿絵表示】

 

 

両者の妖力と魔力はぶつかり合い、様々な法則が捻じ曲がる、特殊な力場を発生させる。

 

そんな2人の悪魔と妖怪を戦々恐々(せんせんきょうきょう)と隠れてコソコソと見ている伯爵は、今だけは憎むべき創造主に祈りを捧げた。

【挿絵表示】

 

どうか、後片付けが面倒臭い事になりませんように、と。

 

 


 

 

まず、初めに動いたのは膨大な妖力を纏った拳を握りしめ、獣のような凶悪な笑みを浮かべた幽香。

瞬時に私に近付いて、引力すらも感じる程に力が込められた掌底(しょうてい)を放ってきた。

 

「〖氷塊(アブソリュートアイス)〗〖火群(アブソリュートフレイム)〗」

 

私は、そんな掌底を(かわ)して零度以上に熱を奪う氷塊と、マグマの様に圧倒的に熱を与える火群(ほむら)を同時に幽香へと放つ。

 

幽香はそんな炎と氷をものともせず、それらを両手で掴み、受け止めた。

 

・・・あれを掴むだなんて、本当にありえないくらいに脳筋で理不尽な身体能力を持った妖怪だわ・・・。

・・・でも。

 

私は瞬時に距離を取り、耳を塞いで、魔法のトリガーを引く。

 

「〖融合(フュージョン)〗」

「っつ!!」

 

私が魔法のトリガーを引く直前、幽香が瞬時にそれに気付き退避する。

しかし、脱出が間に合わず、幽香は閃光と共に生じた大爆発に巻き込まれた。

 

あらゆるものを凍らせる氷塊と、あらゆるものを溶かす火群(ほむら)を魔法で1つにまとめて衝突させる。

すると、原理は詳しくは分からないけれど大爆発が起こる。

これくらいは魔法を極めている悪魔にとっては常識だ。

とんでもなく魔力を消費するが、私が持つ攻撃手段ではかなり攻撃力が高い魔法だ。

 

爆発と共に生じた莫大な水蒸気が、大気中に流れ、太陽を隠し、(ひょう)と共に土砂降りの雨が降り始め、激しい雷鳴も鳴り始めた。

突然降り始めた土砂降りの雨に、どこかで可哀想な吸血鬼の調停者が悲鳴を上げるのを耳にしながら、幽香の様子を確認する。

 

気候すらも変化させる程のエネルギーをぶつけたのだ。

()()()()()ダメージがあって欲しいのだけれど・・・。

 

「やってくれたわね・・・」

【挿絵表示】

 

とんでもない温度になっているであろう水蒸気の中から、着ているチェック柄の服をボロボロにした幽香が現れた。

手に持つ日傘もボロボロだが、幽香自身は無傷の様に見える。

 

・・・本当に冗談きつい。

一応私が持つ最上級の攻撃力を持つ魔法なのに、ダメージが服と傘にだけだなんて、理不尽通り越して摩訶不思議だよ・・・。

 

「今度は、こっちの番ね!」

 

そんな幽香は楽しそうな笑みを浮かべて、再度突っ込んできた。

 

幽香とは、今まで何度か戦った事はあったが、やっぱり速度は私に遠く及ばない。

このまま、攻撃を避け続けて、魔法で攻撃を仕掛けていければ、勝てる、はず!

 

幽香からの、とてつもない破壊の力を感じる日傘での攻撃や掌底を難無く避け続ける。

そうして、再度魔法を放とうと魔力を練り上げ始めた、その瞬間。

 

「!!!」

 

自分の周囲5mに展開していた警戒魔法が後方からの攻撃に反応した。

 

「っあぐ!!!」

 

後方を見ると前方にいるはずの、幽香が後方から掌底を繰り出してきていた。

後方からの攻撃だったため、反応が鈍り、攻撃が腹部に(かす)ってしまった。

 

「・・・ぐっ!!!」

 

魂まで響くダメージに顔を(しか)める。

 

・・・掠っただけのダメージに思えない。

一体どれだけの攻撃力があの掌底に込められているのだろうか・・・。

 

思ったよりダメージを受けた私は大きく幽香から距離を置く。

 

「・・・いつも思うけれど、1人だけで十分に理不尽な存在なのに、分身とか・・・本当笑えてくるよね・・・」

「「あら、私にこの力を使わせる貴方も、大概に凄い存在だと思うけれどね」」

 

距離を置いて、視界に入ってきたのは、2人に分身した幽香。

 

・・・そう言えば、初め幽香に負けて封じられた時はこれにやられたっけな・・・。

 

2回目だし、今度はかすり傷で済んだのは上々だ。

・・・ダメージはかすり傷のダメージではないが・・・。

 

「「さて、まだまだ行くわよ!!」」

 

2人の幽香が同時に日傘を私に向けて構える。

 

2方向から、空間を揺るがすとてつもない破壊の力を感じる。

・・・回避はできるかもだけど、このままじゃ、後ろにある夢幻世界の境界ごと破壊されかねないわね・・・。

 

そう思った私は、ずっと準備していた貰い物の力を用いた魔法を展開する。

 

「「【ダブルスパーク】」」

 

2方向から、破壊の光が私に迫る。

そこで、私は封印から引き出したアズールちゃんの魔法を借り受ける。

 

「〖魔循スヴァリン〗発動。」

 

破壊の光を、淡い青色の盾が受け止める。

恐らくアズールちゃんから借り受けたこの盾は光の様な純粋な1方向だけの力に対して強いはずだ。

防ぎきれる・・・と思いたい所だけれど・・・。

 

バキバキバキバキ

 

「・・・まぁ、そう簡単にはいかないわよねぇ・・・」

 

スヴァリンの盾がひび割れてゆく。

さすがに、貰い物の力では幽香の攻撃は防ぎきれそうにない・・・。

 

そうして、身を固めてダメージを覚悟した、その時。

 

「〖創造(クリエイト)〗〖(ムーン)〗」

 

聞き慣れた詠唱とともに、青い影が私を庇う様に私の前に立った。

 

幽香が放った破壊の光の前に、圧倒的な質量を持つ巨大な月が突如現れ、破壊の光と共に打ち消されて消滅した。

 

「・・・出て来たわね・・・」

 

そんな言葉と共に、破壊の光を放って力が消失した分身を解除した幽香が警戒を最大限まで引き上げるのが見える。

 

「大丈夫?幻月お姉ちゃん。」

「・・・大丈夫だわ。助けてくれてありがとうね、夢月。」

 

私に手を差し伸べて助けてくれたのは、最愛の頼もしい妹。

 

夢月と手を繋いで立ち上がり、再度幽香に向かい合う。

 

「・・・姉のピンチに駆け付ける妹。・・・美しい姉妹愛は素晴らしい事だわ。でも、アズールちゃんの事は譲れない。姉妹共々胸を貸してあげるからかかって来なさい!」

 

そう言って、禍々しく膨大な妖力を立ち上らせる幽香。

 

そんな幽香に、手を繋いだ夢月と顔を見合わせて、一緒に、楽しそうに三日月の様に弧を描いた笑みを浮かべて、口を開いた。

【挿絵表示】

 

「「甘く見ないでね。私達、二人で一人前なんだからね。」」

 

 

 




【後書き】
どうも、最近モンスターハンターライズ:サンブレイクの体験版が予想以上に面白すぎて購入をガチで検討しているまほろばです。
私のモンハン歴は【2nd】から、【2ndG】、【3rd】、【XX】、【World】までプレイ済みですが、どれも神ゲーで、特に【2ndG】は学生時代の私の時間を大量消費して遊んだ思い出深いモンスターハンターです。
【World】のときにも感じましたが、ライズ:サンブレイクのグラフィックが綺麗すぎて感動しました。
【2ndG】ばっかり遊んでいた私には、何故かモンハン感は感じませんでしたが、とっても楽しいゲームシステムで、すっごく遊びたいって感じました!

それはそうと、38話です!
今話は主人公が監禁されて、脱出を目指して難儀していた、一方の裏方でのお話でした!

最強の大悪魔と最強の大妖怪が衝突して、グニールこと、いつも不憫なスカーレット伯爵のストレスはマッハです笑

今話では夢月さんと幻月さんの内なる思いの表現や、この物語での夢幻姉妹の謎を深める事ができていたら幸いです。

夢幻姉妹のキャラクター設定は原作での情報が少なく、この物語での表現はほとんどオリジナル設定ですが、参考にした楽曲があります。
後述する作業用BGMでも紹介しますが

幻月さんは
作詞作曲を『millstones』様が手掛けている、ボーカロイド楽曲
【カガリビト】

夢月さんは
作詞:『小峰公子』様、作曲:『吉良知彦』様が手掛けている、Zabadak様が歌われている楽曲
【僕のビー玉】

に影響されてキャラ作りさせて頂いています。

どちらも、私にとっては昔から大好きな、聞くと懐かしさから涙が出てくるような楽曲です。
特にZabadak様は私が大好きなアーティストの一人です。


これらの神曲を今話の作業用BGMのプレイリストや、使用した理由、感想など、活動報告にあげさせていただきますので、宜しければ御覧になってください。

今話は、本当は2話構成にする予定でしたが、書いているとつなげてしまいました(汗)
なので、ダラダラした文章が目立つかもです・・・。
本当に申し訳ない(メタルマン某鬼畜博士風)

庇護録はまだまだマイペースに続いていきますので、これからもよろしくお願いいたします!!
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