Gengetsu perspective
「うぐ〜。全然見つからない・・・」
今の時刻は、光なんて月か星の明かりしか見当たらなくなる、闇が深い真夜中の時刻。
妹に頼まれて、【万病に効く薬草】を探しに、こっそりと夢幻世界を出て世界中を飛び回っていた私は肝心の薬草をなかなか見つける事ができず、
「・・・早い所見つけて帰らないと、幽香に見つかったら大変だし、夢月も心配してるかも・・・。」
・・・とは言っても、もう
丸2日も夢幻世界を留守にしてしまっているし、夢月を不安がらせているかもしれない。
「・・・でも、久しぶりの妹からのお願いだもん。絶対に叶えてあげるんだから!」
そう言って気合いを入れた訳なのだが、〖万病に効く薬草〗だなんて、まったく手掛かりも無いし、聞いた事もない。
・・・これは困ったなぁ。
「やっほ〜!幻月ちゃん。元気だったかしら?困っているみたいね?」
「っ!?」
突然の背後からの声にびっくりして即座に距離を取る。
「あらあら、ごめんなさいねぇ。ちょっと大人しくしててね。私は貴方にお話があるだけなのよ。〖カゴメカゴメ〗」
「なっ!?」
速さには自信があった私だが、その誰かは高速で距離を取った私を捉えて、薄緑に輝く光の
「ちょっと手荒だけど、ごめんなさいねぇ。貴方にと〜っても関係あるお話があるからねぇ。」
私を捕らえた誰かは、
その右手には、この世の物とは思えない程の熱を放つ、
まるでさっきまで誰かを燃やし尽くしていたかのような勢いで燃え盛る、その炎剣を見て冷や汗が止まらなくなる。
「・・・降参ですよ・・・レーヴァ。何もしないし逃げないので、そのおっかない剣をしまって欲しいのですが・・・」
「あら!ごめんね!つい出しっぱなしにしちゃってたわぁ!」
そう言ってレーヴァは世界を燃やし尽くす勢いで燃え盛っている炎剣を、無造作に宙空に投げ捨てた。
そんな私の
それと同時に、私を捕らえていた光の檻も解除される。
流石に吸血鬼に速度で勝てないのは知っているので、逃げるなんて無駄な事はしない。
炎剣をしまって、いつも通りにニコニコと機嫌良さげなレーヴァは、私に1本の薬草を見せてきた。
「幻月ちゃんの探し物はこれかしら?」
「・・・やはり、貴方には何もかもお見通し、という訳ですか。一応聞きますが、その薬草は〖万病に効く薬草〗ですか?」
「そうよー。〖万病に効く薬草〗。アズールちゃんの為に見つけていたのだけれど、必要なくなっちゃったし、ちょうど良いから幻月ちゃんにあげるわ。」
そう言って、私に薬草を素直に手渡してくるレーヴァ。
・・・この吸血鬼は一体いつから、どこまで見通していたのか。
「・・・何が目的ですか?」
・・・私は仮にも悪魔だ。
上手い話には裏がある、施しには見返りを要求されるのが、悪魔にとっての常識だ。
恐らく、レーヴァはアズールちゃんの解放を求めてくるだろう。
そうなったら、相手がレーヴァだからといって関係ない。
夢月の友達作りの為にも、全力で夢幻世界へ逃げなければ・・・
「大丈夫よ。その薬草の見返りなんて要らないわ。ただ、そうねぇ・・・貴方にはこれから起きる出来事に
「これから起きる出来事?責任?」
「そうよ。
「・・・私の大切なものを、護る事が、できなかった?・・・い、一体、あ、貴方は何を言って・・・っ!?」
レーヴァが唐突に左手で指を鳴らしたかと思うと、周囲の景色が一瞬で変わり、いつの間にか私達は夢幻館の上空に居た。
レーヴァが転移魔法を使ったのだろうが、今の私にはそんな事を考えている余裕なんてなかった。
「・・・え・・あ・・・何・・・これ・・・?」
2日前とはまるで違う、夢幻館と夢幻世界との間にある境界の惨状を見て、驚愕の言葉が震える口から出てくる。
「私達、調停者も奴の顕現に早々に気付かなかったのは、大いに責任を感じているわ。・・・私達なら、この厄災を鎮めるのは簡単よ。依り代を破壊するだけだから・・・。でも、貴方にお願いするのは、私達なりの貴方への情けなの。・・・これから綴られる物語の帰結は貴方にとっては、残酷なお話になるかもしれないわね・・・」
そう言うレーヴァの方に、私はゆっくりと震える身体で振り返る。
「貴方にやって貰う事はたった1つ。」
恐怖で身体が張り裂けそうだ。
ありとあらゆるものを見通す吸血鬼は、私にとってはあまりにも残酷な頼み事を、その口から言葉にした。
「貴方の
Asyl perspective
ガチャり
真夜中、ベッド隣のテーブルで日記を書いていた私ですが、唐突に部屋の扉が開き、夢月さんが入ってきたので、大慌てで日記を隠す。
「む、む、む、夢月さん!?ど、どうしたんですか!?こんな真夜中に・・・。」
「・・・・・・」
夢月さんは
俯いているから、夢月さんの顔色は伺えない。
・・・ちょっといつもと雰囲気が違うような・・・。
「あっ!」
そこで私は、私の首に首輪が付いていない事に気が付いた。
しまった!
首輪が付いていないから、脱出を
「・・・・・・」
「あ、あの・・その、こ、これは・・・そう!首輪が急に壊れちゃいまして!あ、あぁービックリシタナーモー。」
「・・・・・・」
自分で言っていて、ありえないくらいに苦し紛れの私の言い訳に、軽く泣きそうになりながら、夢月さんの反応を伺う。
夢月さんは私の言葉に、聞く耳を持たずに近付いてきた。
私の目と鼻の先まで近づいてきた夢月さんの顔色を恐る恐る伺う。
「・・・・・・に、逃げて・・・」
夢月さんが、小さな声で何かを言った後、私の目と鼻の先で、急に胸を押さえて苦しみだした。
「ど、どうしたのですか!?夢月さん!?」
苦しみだした夢月さんにオロオロした私は、夢月さんに寄り添って身体を支えた。
すると、夢月さんは、明らかに脱力したように、ぶらりと腕を垂れ下げた後、
「がっ!?」
急に、夢月さんが私の首に手をかけ締め上げてきた。
「な・・・んで・・・む・・げつさん・・・ぐう!?」
「・・・・・・」
首を絞めあげられ、息ができず、バタバタともがく。
必死でもがくも、力を封じられた、非力な今の私では悪魔の夢月さんの力からは抜け出す事ができない。
苦しさで、
その顔は悲しみに染まり、
「・・・うぐぅ」
首を締め上げる力がだんだんと強くなってきて、意識が
『ガチャ、ガガ、すみません。すみません。』
「・・・・・・!」
ベッドの下に隠していた私の身代わり人形が急に出てきて、夢月さんに体当たりした。
その衝撃で夢月さんはよろめき、私の首から手を離した。
「けほ、けほ、けほ」
足りなくなった酸素を求めるように、咳き込み、必死に酸素を身体に取り入れる。
朧気になっていた意識が、ゆっくりと戻ってくる。
た、助かりました・・・。
空間倉庫の出し入れの魔力節約の為に、ベッドの下に人形を隠していて正解でした。
まさか、自分の作った人形に命を助けられるとは思いませんでしたが・・・。
というか、やっぱりこの人形は明らかに意思を持って動いている気がするのですが、私はそんな機能を付けた覚えがありません・・・。
ま、まぁどっちにしろ助かりました!
ありがとうございます、人形さん!
「・・・・・・」
『ガガ!ありがとうございます!ガガゴ!ありがとうございます!ありガガガガ!!』
心の中で人形さんにお礼を言っていると、その人形さんが、夢月さんに蹴り飛ばされてこっちに飛んできた。
「に、人形さ〜ん!!」
・・・確かに、私が設定した言語は『よろしくお願いします』『すみません』『ありがとうございます』だけではありますが、夢月さんに蹴られながら『ありがとうございます』を私の姿で連呼している姿はなんというか、ものすっごく恥ずかしい・・・
『ガガガガ、よ、よろしくお願いします。ガガガ』
「あ、はい。ありがとうございました人形さん。」
なんだか、人形さんがさっさと空間倉庫にしまってくれって言っている気がしたので、そそくさと空間倉庫に人形さんをしまう。
そうして、人形さんのおかげで、落ち着いた私は、夢月さんに話しかける。
「む、夢月さん!いきなり、どうしたのですか!?」
「・・・・・・」
夢月さんは俯いていた顔を上げて、もう1度私を見てきた。
その顔は、先程の悲しみに染まった顔とは一変して違い、邪悪な笑みを浮かべていた。
「ハハッ!・・・ハハハハハッ!!・・・
「っ!?」
突如、笑いだした彼女から溢れてきた邪悪な力に、思わず後ずさる。
この力は妖力とも、魔力とも、霊力とも違う、
「・・・あ、貴方は・・・夢月さんではありませんね!?・・・貴方は何者ですか!?」
今更ながら、相対する彼女は夢月さんでは無いと判断し、その正体を問い
「!・・・ハハハハハッ!我が名を忘れたか、我が宿敵よ。それとも、我を騙すつもりか?騙されるものか!その無知の演技も、滑稽だぞ?姿形が変わりはすれども、我が望みを
宿敵?私の姿形が変わった?望みを悉く討ち滅ぼした?
この方は一体、何を言って・・・
「我が名は〖アンユ〗。世の悪を司り、この世を統べる創世神の1柱である!」
そう言って、アンユさんは邪悪な力を
「悪魔の身体を手に入れて、貴様の首に手が届いている今、
「ち、ちょっと勝手に盛り上がらないでください!私、置いてけぼりです!宿敵?創世神?何の話ですか!?ちょっと何言っているのか分からないのですが!?・・・でも、大体の状況は把握しました。アンユさんが、夢月さんの身体を操っているのですね!」
「ふむ、貴様、
「やっぱりそうなんですね!夢月さんに身体を返しなさい!」
そう言って、近くにあった枕を投げるもポフッと受け止められる。
・・・くっ。
力が封じられていなかったらゲンコツのひとつは食らわしてやりたい所です。
「ハハハハハッ!貴様の様な存在が、非力となっている姿を見るのは滑稽だな!力が封じられて、なお立ち向かうその無謀さは賞賛してやろう。だが、そんな無謀にも我に立ち向かう貴様に、今まで何度も敗れてきたのは我だからな、今回は慎重に詰ませてもらうぞ!」
邪悪な力がうねり、その余波で私の身体が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「がはっ!!」
・・・ぐう、普段なら妖力でカバーするはずのダメージがもろに魂に響く・・・。
これは、キツい・・・。
「ハハハハハッ!貴様を痛め付けるのは、快感であるな!」
そういって夢月さんを操っているアンユさんは、壁に叩きつけられた私に瞬時に近付き、私の首に再度手をかけ、締め上げてくる。
「ぐあぁ!!」
「ハハハハハッ!貴様を
そうして、首にかけられた手の力が強められる。
今にも、首の骨が砕かれそうになった、そんな時。
一面に
「!?なんだ!これは!?」
「かはっ!けほっけほっ。」
突如私の周囲に赤と青の美しい薔薇の花が咲き乱れ、アンユさんは私から離れ、大きく距離をとった。
「さっきから見てたけど。」
そう言って私の隣にふわりと現れた、美しい緑色の髪に、黒地に黄色のリボンが結ばれた帽子を被り、黄色と緑色の可愛らしい服に、青の触手のようなものを纏った可愛らしい少女。
手に持った閉じられた青い大きな目玉をアンユさんに向けて、ニコニコ笑顔で話しかける。
「地獄の皆って事は、お姉ちゃんにもこんな酷い事するつもりなんだよね?」
ニコニコ笑顔の少女は、笑顔であるが、怒っているようにも感じられる不思議な顔で、アンユさんと対峙する。
「だったら、許せないなぁ。」
そう言って、少女はアンユさんに手を向けると、どこからともなく茨が現れ、檻となってアンユさんを捕らえた。
「くっ。貴様は何者だ?いつからここに居た?」
「私?私は古明地こいし!お姉ちゃんの妹!いつからここに居たかなんて知らなーい。ぼーっとしてたら、ここにいたんだもん。」
「・・・訳分からん小娘だ・・・まぁ良い。有象無象がいくら現れたとしても同じ事。まとめて葬ってくれる。」
そう言ってアンユさんは茨の檻を触れるだけで破壊し、さらに邪悪な力を迸らせる。
「ありゃりゃー、壊れちゃったよ。」
「ふん、雑多な小妖怪に我を止める事はできんよ。」
そうして、1歩ずつ近付いてくるアンユさん。
「〖
そんな時、私達2人を優しい光が取り囲んだ。
「わぁ、綺麗な光だぁー」
「・・・呑気な緑髪の貴方は誰か分かんないけど、間一髪間に合ったよ。ありがとう緑髪の人!・・・お姉さん!ごめんね!怖い思いさせて!」
そう言って、金眼を輝かせた夢月さんが私達の傍に降り立った。
・・・ん?
・・・あれ?
「む、夢月さんが2人います!?」
「お姉さん、とりあえず落ち着いて?秘密にしてたんだけど、あっちの私は夢幻世界そのものの私。私が夢幻世界を創った時に生まれた、私の分身だよ。」
む、夢月さんの分身?
い、いや分身にしては自我が自律し過ぎている気がする・・・
あれじゃまるでもう1人の夢月さんだ。
「私が創った夢幻世界を管理する上で、私の自我1つじゃ世界を維持するが難しかったし、幻月お姉ちゃんは修復は得意だけど創造は難しかったから、私の力の大半を使って最初で最後に生み出した夢幻世界の生命体。それが、あの子なんだ、ややこしいかもだけど。」
な、なるほど。
魔法で生命を生み出すのは倫理観的に今まで私は敬遠してきていましたが、言わば夢月さんは夢幻世界の創造主。
生命の創造なんて神のみわざとでも言う大業をこなすのには所持する力の半分を失う覚悟が無いといけなかったのですね・・・
とはいえ、ここまで聞いていると夢月さんは魔法使いとしてはかなり優秀ですね!
後学のためにも、是非1度魔法談義したい所です・・・って今はそんな事考えてる暇なんてありませんよね。
色々と吸血鬼の超速思考で2人の夢月さんについて考察していると、夢月さんがおもむろに手を振り夢幻世界に穴を開けた。
「そっちの子が時間稼ぎしてくれたおかげで、ようやく夢幻世界に出口を作れたよ。この世界の権限は主にあっちの私が持ってたから、苦労しちゃった。・・・さぁ、ここから外に出られるから早く!外なら調停者や幻月お姉ちゃんが守ってくれるから・・・」
そう言って夢月さんはアンユさんに操られているもう1人の夢月さんに向き直る。
アンユさんは変わらず邪悪な笑みを浮かべているが、その
「マ、マスター、お、ねがい・・・」
「・・・待ってて。・・・今、私が
そう言う夢月さんの
あっちの夢月さんを殺す。
つまり、夢幻世界自体をアンユさんとともに滅ぼすつもりなのだろう。
そんな時、ここ最近ずっと一緒にいて見てきた、不器用だけど優しくて仲睦まじい姉妹のことを思い出した。
《!?・・・あ、ありがと。この世界を褒められたのなんて幻月お姉ちゃん以外では貴方が初めてよ・・・。》
夢幻世界を褒められて、心底嬉しそうに頬を染めていた夢月さん。
《この子はただ暇で遊んでほしかっただけみたいだから、貴方を夢幻世界に引きずり込んだのは悪気はなかったと思うの。それにこの子は貴方を気に入ったみたいだから、また今度顔を見せに来てあげてほしいの。》
夢月さんへの底なしの愛情が込められていた幻月さんのお願い。
《 助けて、幻月姉さん! 》
日記の記述の中で助けを求めていたであろう、もう1人の夢月さん。
目の前には追い求めていた夢幻世界からの出口。
後方には不幸せへと進む物語の帰結。
「逃がす訳がなかろう?」
「あぐぐぐぅ。」
今にも邪悪な力で夢月さんの結界を破壊しようとするアンユさん。
夢月さんは必死で結界を守り、今にも閉じようとする出口を維持している。
そんな状況に私はふふ、と笑って、迷わずに出口を背にして、後ろに振り返り、内に眠る霊力と、私の持つ【程度の能力】を確認して思う。
また、ヴァルター達には心配かけちゃうかもしれないですね・・・。
夢月さんの隣に並び立ち、アンユさんに向き直った私を見て、夢月さんは目を見開いて驚いた。
そんな私の後方で、追い求めていたはずの、外の世界への出口が閉じた。
【後書き】
どうも、最近夏バテで食事が喉を通らなくなってしまったまほろばです。
今年は、ありえないくらい暑くなるのが早い気がするのですが・・・
熱中症対策をする前に、猛暑がきちゃったので、身体がびっくりしています。
皆さんも熱中症や夏バテには十分に注意してくださいね!
調べてみたら、夏バテにはみかんやキウイフルーツを食べればいいらしいですよ!
私はさっそく、みかんやキウイフルーツの
来月ボーナスの支払いを控えている私に怖いものなんてないです!!
・・・昨今の情勢からボーナスが支払われるか怪しいですがね・・・
えっ?
ゼリーにする必要はないだろう、ですって?
・・・だってゼリーのほうが甘くて美味しいんだもの・・・
それに、果物はすっごく高くって・・・(ボーナス云々はどうした)
それはそうと、42話です!
今話は、起承転結の『転』のお話。
この物語のフィクサーである『アンユ』さんが登場しました。
元ネタは某善悪二元論の宗教における絶対悪の象徴とされる創世神です。
東方原作とは多分関係のないオリキャラです。
次回、アズールちゃんはどのように、この不幸せへと続く物語を幸せへと導くのか・・・
乞うご期待です!
・・・生意気なこと言いましたすみません。
それは、そうと恒例ですが、今話での作業用BGMを勝手ながら紹介させていただきます。
今回は、『志方あきこ』様が歌っておられる楽曲から2曲選曲させていただきました。
「隠れ鬼」
「朱隠し」
を作業用BGMに使用させていただきました。
これらの神曲のプレイリストや、今話の作業用BGMに使用した理由や、感想など、活動報告にあげさせていただきますので、宜しければ御覧になってください。
追記:30000UA突破してました!!!
さっき気付いて超びっくりしました!
皆様、いつもありがとうございます!!!!
今後も庇護録はまだまだマイペースに続いていきますので、これからもよろしくお願いいたします!!