Count Scarlet's perspective
「・・・と言う訳なのよ。」
「・・・なるほど・・ね。」
もう1人の夢月さんの話を聞いて、夢幻世界で起こった出来事の大体は理解できた。
チラリと、眠っているアズール嬢の右腕を見る。
否、
そこには右腕は無く、代わりに魔術的な刻印が施された包帯が巻かれていた。
見た感じ、アズール嬢のオリジナル魔法である〖服飾魔法〗によって創り出された包帯であり、〖状態保存〗の魔法も含まれているのは、僕でも分かったが、それ以外にも様々な魔法がこの包帯には施されているようだ。
恐らく、アズール嬢は今回のような四肢欠損による問題に対しても十分に対応できるように、あらかじめ自身の身体に魔術的な仕掛けを施していたらしい。
色々な想定をしているアズール嬢の用意周到さに驚くと同時に、怪我をする事を前提としたアズール嬢の対策には、いささか歪みを感じざるをえない・・・
30年前の時もそうだった。
彼女は他者を救う為になら、自分を簡単に犠牲にしてしまう。
まるで、自分の事はどうなってしまっても良いかのように、自己を犠牲にし、他者を救う事ばかり考えている。
お節介焼きだとは、以前から思ってはいたが、ここまでくると、これはもう一種の狂気だ。
「む、夢月ちゃん。そ、そんな大変な目に・・・。・・・気付かなくてごめんねぇ。ぐすん、ダメなお姉ちゃんでごめんなさい。」
「わ、私も、自分が創った世界をちゃんと護ってあげられなかった・・・。ダメなマスターだよね・・・ごめんね。・・・ぐすん。」
「げ、幻月姉さん。マスター!・・・は、恥ずかしいから、人前で抱きつかないでよ・・・。それに、泣かないで?・・・仕方ないよ。私も途中から行動すらも操られてて、助けを求められなかったんだから。・・・それに、今まで私は守られてばっかりだった。・・・だから、私も2人に守られるだけじゃなくて、あの銀髪のお姉さんみたいに2人を守れるように強くなりたい・・・」
「私も、今まで幻月お姉ちゃんに守られてばっかりだもん、お姉さんのように、幻月お姉ちゃんを守れるくらい強くなるよ!」
「ぐすん・・・夢月ちゃん、いつの間にか、こんなに立派になって・・・うわぁぁん。2人とも、しゅきぃ。これからは絶対に悲しい思いなんてさせないんだからぁ。」
「だ、だから抱き着かないでってばあ!」
もう1人の夢月さんの説明が一段落終わった所で、もう1人の夢月さんに幻月が抱き着いて号泣し始めた。
夢月さんが作り出した夢幻世界そのものに自我があって、1人の妖怪として実在していた事は驚きだったが、イチャイチャと引っ付いている幻月と満更でもなさそうなもう1人の夢月さんを見ると仲の良さそうな姉妹にしか見えないし、幻月にはもう1人妹がいた、て事で受け入れとこう。
それよりも・・・
「・・・レーヴァ。どう思う?」
「・・・私も貴方と同意見よ。」
・・・さすが、レーヴァ。
僕が考えている事もお見通しみたいだ。
何も言わずに僕が言おうとした事を理解している彼女は続けて言う。
「アズちゃんはどうにも自己犠牲がすぎるわ。他者の為に自分を
そこでレーヴァは幻月と、2人の夢月さんをチラリと見る。
視線に気付いた3人はビクリと震えて、バツが悪そうに目を逸らした。
「どういう訳か、アズちゃんの場合は、厄介事の方から寄ってくる巻き込まれ体質だからねぇ・・・」
「だね。アズール嬢は本当に難儀な運命を背負うね、本当に。」
今まで、色々な人妖の運命をみてきたけど、ここまで数奇な運命を辿っている妖怪はアズール嬢が初めてだ。
どういう訳かアズール嬢の事は僕達の目を持ってしても、あんまり見る事ができないし、本当に不思議な妖怪だ。
「レーヴァは奴が顕現しようとしている事にいつ気が付いたの?」
話を変えて、今日顕現してしまいそうになった厄災についてレーヴァに聞いてみる。
「3日前ね。少し前から嫌な予感はしていたんだけれど、確信に変わったのはティアちゃんからの手紙を読んでからだわ。」
・・・へカーティアさんは、この事を事前に察知していたのか?
それにしては、地獄勢の動きが少ない・・・
一体何を考えている?
「なるほど。・・・じゃあ、世界の改変に気付いたのはいつだい?」
「それはついさっきね。」
やはり、レーヴァも世界の改変には気付いているみたいだ。
30年前も、今回も気付いたのは僕達調停者と1部の妖怪だけみたいだけど。
「・・・ふむ。・・・規模は小さいけれど、今回も30年前と同じだね。・・・やっぱり、アズール嬢には世界への干渉、改変を可能にできる能力が備わっているみたいだ。」
もしかしたらアズール嬢も、僕達の様に、世界のバランス調整の為に世界から権能を授かって生み出された存在なのかもしれない。
何のために生み出されたのかは、まったく検討もつかないが・・・
とりあえず、今回の現実改変は夢幻館周囲に
30年前のように、世界規模で改変が起きてしまうと何が起こるか分からないからね。
後始末も凄い大変だったし・・・。
「う〜ん。まぁ、アズール嬢も寝ちゃってるし、今はごちゃごちゃ考えてても仕方ないね。とりあえず帰ろうか?幻月と夢月さん達も、しばらくは紅魔館に住みなよ。不安定になった夢幻世界を安定化させるには時間がかかるからね。」
「え?良いの?」
「良いよ。ただ、何処かの脳筋みたいに毎日暴れなければ、いつでも歓迎するさ。」
ここ最近のうちの居候の大妖怪の暴虐っぷりを思い出して、思わず苦笑いになる。
「ひゃ!!ちょ、誰!?僕の翼を触っているのは!?」
「わぁ!この翼ってさわり心地が良いんだね!貴方もペット候補だわ!それと、お泊まりだね!楽しみだわ!」
いつの間にか僕の背後で、僕の羽根を触っていたこいし嬢が嬉しそうに笑っている。
不穏な言葉が聞こえてきたし、何故かこいし嬢もうちに来る事になってるけど・・・まぁ、いっか。
すぐに、迎えも来るだろうし。
「それじゃあ、行こうか!」
そう言って、皆で紅魔館へ向かおうとした、その時。
「っ!レーヴァ!アズール嬢を守れ!!!」
「っ!!」
ガキンッ
アズール嬢の隣にいたレーヴァが間一髪、アズール嬢を狙った死神の鎌を炎剣で防ぐ。
レーヴァと何度か打ち合った後、その赤い髪の死神は突如として消えた。
「ちぃ、すみません映姫様。しくじっちまいました。」
突如消えた、死神の鎌を防がれた赤い死神は、またもや、音もなく、
その丘上へ上がった死神の隣には、顔を見るのも久しぶりな少女が粛々と佇んでいた。
「・・・いえ、大丈夫です、小町。あの方達が傍にいる限り、いくら小町と私が居ようとも、あのお方の魂には手が届かないでしょうから。」
「え?・・・いや、まぁ、それはそうかもしれませんが・・・良いんですかい?絶好のチャンスだと思うのですがねぇ。」
「確かに、あのお方の意識が無い内に事を済ませるのが好機ですが、調停者を相手にするのはいささかリスクが高すぎます。・・・それに、私達の襲撃はどうやら何者かによって想定されていたようですし。」
そう言って、少女は手に持った
「・・・
小町と呼ばれた死神の隣で悠然と僕達を見ていた四季さんは、もう話す事は無いとばかりに、くるりと後ろを振り返り、中空に開いた地獄の門に向かってふわりと歩き始めた。
「えっ!?映姫様?本当に帰っちゃうんですかい?本当に、今、あのお方を冥界へお連れしなくてもよろしいのですか?」
「いいえ、小町。お連れしない、のではなく、お連れできないのです。貴方の持つ鎌をよくご覧なさい。」
「鎌?っげげ!?」
赤い髪の死神の持つ鎌はレーヴァの炎剣と打ち合った所がドロドロに溶けて使い物にならなくなっていた。
「分かりましたか?今の状況で貴方と私だけでは、あのお方を連れ戻すには役不足です。へカーティア様が居て下されば、戦況はひっくり返るとは思いますが、あのお方はどういう訳か、休暇中なのに忙しいらしく、今回は手を出さないとの事なので。・・・って、あれ、こ、小町?な、何で泣いてるの!?」
「う、うぅ。あたいの、鎌がぁ・・・。ただでさえ少ない給料で頑張って買ったのにぃ・・・。上司の無茶を頑張って聞いたり、最近は休み返上で頑張って働いて、ようやく買えたお気に入りの鎌だったのにぃ・・・」
「うぅ・・・。わ、分かったわよ!小町の鎌は私が経費とは個別に買ってあげるから!だから、人前でみっともなく泣かないの!」
「え!本当ですか?やったぁ!じゃあ、ついでに今回行きたくなかったのに、上司に無理やりこんなところまで付き合わされた慰労もかねて、ご飯食べに行きましょう!もちろん、映姫様の奢りで!」
「・・・良いですけど、小町、後でお説教だからね?」
「うぇぇぇ!?」
そんなほのぼのしたやり取りをしている四季さん達に、問いかけてみる。
「帰る前に聞いておくよ、四季さん。どうして、あなた達は
30年前の異変から、今までに、アズール嬢に対する死神の襲撃は
襲撃に来た死神は毎回、僕かレーヴァ、紫が追い払っていたけれど、今回の様に力の強い死神と、地獄のお偉い役職である、〖ヤマザナドゥ〗本人が現れたのは初めてだったので、この際理由を聞いてみる事にした。
「・・・どうして、ですか・・・。それは、そのお方を護る為・・・ですかね・・・。まぁ、詳しくは貴方に助言した妖怪の賢者が知ってると思いますよ。そちらに聞いてみては?」
「護る為?でも、君達はアズール嬢の魂を狙っているじゃないか。矛盾してるよね?それと、紫とは、当分の間は会えなくなっちゃったから四季さんから直接聞きたいんだけど・・・」
「・・・あの隙間妖怪はもう準備を始めているのですね。・・・そのお方の件については、貴方達には関係の無い事です。貴方達は引き続き、世界のバランス調整の役割を果たしなさい。」
「え、いや、それは、そうなんだけど・・・」
「・・・それと、貴方達が傍にいるならば、当分は大丈夫でしょうから、我々は1度手を引く事にします。・・・では、私達は失礼しますね。」
「え!?ちょ、ちょっと、話はまだ・・・」
そう言い残して四季さんはさっさと死神を連れて地獄へと帰ってしまった。
ぐぬぬ。
もうちょっと情報を得られるかと思ったのに・・・。
「・・・レーヴァ、映姫さんか赤い髪の死神を見て何か見えたかい?」
「う〜ん。赤い髪の死神の子は帰ったら何を映姫ちゃんに奢らせようか、純粋にうきうきしてただけだったけど、やっぱり映姫ちゃんの方は特殊な存在なだけあって見通し辛かったわ。地獄の〖ヤマザナドゥ〗ってのは、どうも別次元の存在だから、その考えの深くまでは見通せないのよね・・・。でも、2人ともアズちゃんに対する慈しみ、敬愛の念は強く持っていたようだわ。それと、やっぱり、地獄の人達は
「・・・月人・・ね。・・・う〜ん。四季さんの答え合わせで、アズール嬢の謎が解明される所か更に深まっちゃったなぁ。まぁ、1つ、別の謎は解けたから、良しとするか。」
「そうね・・・でも、そうなってくるとゆかちゃんが心配だわ。私達の助け無しで、本当に大丈夫かしら?」
「う〜ん。まぁ、紫が助けを求めてきたらいつでも助けには行きたいけれど、本人が大丈夫って言ってたからねぇ。」
そう言って、レーヴァと2人で話していると、幻月が首を傾げて問いかけてきた。
「ちょっと待って、まったく分からないんだけど・・・貴方達はさっきのやり取りで何が分かったの?それに、紫?どうして、そこで紫が出てくるの?」
そんな問いかけに、どう答えたら良いのか困ってしまう。
僕達は、ある程度世界を覗く目を持っているから理解している事であって、改めて、その事を説明するとしたら、とても難しい。
いつの日かアズール嬢が言っていたように、『考えるのではなく、感じるのです!』と言いたい所である。
「・・・う〜ん。話すと長くなるから、一言で言うとね、いつかは分からないけど、紫が月に戦争を仕掛けるって事だよ。」
「えぇぇ!?ど、どういう事!?」
幻月達が驚くのも分かる。
昔から、地上の妖怪と月の月人の間には、暗黙の了解として、相互不可侵の約束があったから、相互に隔絶されていた訳だし、今更、月に対して戦争を仕掛けようとするのは、ありえないってところだろう。
そもそも月にいる月人は元々、神代の時代に地上に住んでいた高位の神々で、そんな神々が移り住んでいる月は妖怪にとっては
「「私達も、月に行って暴れたいのに!何で誘われてないの!?」」
「えぇ・・・」
・・・違った。
暴れたいだけだ、この悪魔達。
もう1人の夢月さんだけは、そんな暴れたがりの姉妹悪魔を見てドン引きしているが・・・
とにかく、紫が月に戦争を仕掛けるのは確定だろう。
レーヴァも勘づいているし、間違いない。
紫が月に戦争を仕掛けるきっかけとなった
・・・紫の事だから、私怨で月に戦争を仕掛けたりだとか、月の都の乗っ取りだとかは考えてないだろうし、何の為に戦争を仕掛けるのだろうか・・・
・・・まぁ、今すぐに戦争を仕掛けるわけでは無いし、紫も助けはいらなさそうだから、黙って見ていよう。
もう1人の夢月さんが、暴れたがりの姉妹悪魔達に「しばらくは、ゆっくりしてようよ?ね?幻月姉さん、マスター。」と説得しているのを見て、この子とは仲良く出来そうだと、ニコリと微笑む。
そうだよね!
何事もなく、お家で平和に暮らしてればそれで良いと思うんだ、僕。
「・・・貴方は引きこもり過ぎちゃだめよ?少しはお外に出ましょうね!外は楽しい事いっぱいよ?」
旅好きのレーヴァが僕の方を見て言ってくる。
「・・・紅魔館にずっといる方が楽しいよ・・・」
そんな引きこもりな僕の返答に肩をすくませるレーヴァ。
とにかく、あわよくば、地獄の方達の考えをもっと知りたかったのだけれど、四季さんもそんな甘くないよね・・・。
「・・・まだ分からない事が多すぎるけど、とにかく今は紅魔館に帰って、アズール嬢を休ませてあげよっか。」
そう言って、僕達はアズール嬢を連れて、ひとまず紅魔館へと向かった。
【後書き】
どうも、「東方ロストワード」と「ダンマクカグラ」のガチャ結果が激渋すぎて、仕事のボーナスの運用をガチで考え直して、リベンジするか悩んでいるまほろばです。
どちらのゲームもストーリーとかが凝ってて、すっごく楽しいですし、1年前くらいから超ハマっている訳ですが、課金金額がバカになってなくて、金銭感覚がバカになっています・・・。でも、推しキャラが次々にガチャで登場する所為なのです。生放送などで事前に推しキャラが実装されると聞いた時のワクワク感と恐怖感が同時に湧いてくる感覚はわかる人にはわかると思うのです・・・
それはそうと、44話です!
今話は、起承転結の『結』・・・からの『転』のお話。(←なんでやねん)
そして、ついに作者の推しキャラの四季映姫様を登場させていただきました。
四季映姫様は地獄でも、お偉い役職〖ヤマザナドゥ〗の1人です。
〖ヤマザナドゥ〗とは、「ヤマ」は閻魔、夜摩天の原語で、「ザナドゥ」はモンゴル帝国の夏都だった上都のことだと言われています。
マルコ・ポーロが『東方見聞録』の中で西洋に伝え、のちに楽園の名前と考えられるようになったといった経緯もあり、「桃源郷」と訳されることもあるそうです。(ピクシブ百科事典より引用)
その部下の小野塚小町さんとともに、どうやらアズールを狙っていたようですが、事前に察知していた調停者たちに阻止されてしまったようです。
そして、部下である小町さんからの信頼の厚い映姫様は、地獄に帰った後、一緒にたらふくお酒を飲んだり、ご飯を食べたりしたようです。
映姫様も良い気分転換となった様子で、楽しそうにしていたとか、なんとか。
その後、小町さんには説教のオプションも付いたようですが・・・
羨ましい・・・
お酒が入った映姫様の説教の始まり方は
「そう、あなたは少し強欲がすぎる。大体、小町は~~~」
ですかね。
映姫様は推しキャラなので妄想が止まりません!!
皆様は推しキャラいますか?
ぜひ皆様の推しキャラを教えてください!
それは、そうと恒例ですが、今話での作業用BGMを勝手ながら紹介させていただきます。
まずは、東方原曲から
「東方花映塚」最終ステージボス及び自機、四季映姫・ヤマザナドゥのテーマ曲。
『六十年目の東方裁判』
そして、大人気マルチクリエイター、「ピノキオピー」様が作成された楽曲。
『ぼくらはみんな意味不明』
を作業用BGMに使用させていただきました。
これらの神曲のプレイリストや、今話の作業用BGMに使用した理由や、感想など、活動報告にあげさせていただきますので、宜しければ御覧になってください。
今後も庇護録はまだまだマイペースに続いていきますので、これからもよろしくお願いいたします!!