東方庇護録(旧作)   作:まほろばのーぶる

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※若干の流血?シーンがあります
苦手な方はご注意ください


第53話:聞いて極楽見て地獄?~鬼と天狗はなかよしこよし?~

Asyl perspective

 

「さて、ひとまず夜も明けますし、ここらの地上で1度休憩しましょうか。降りられそうな場所を探してみましょう。アズールさん、少し長い空の旅でしたが気分はどうですか?調子が悪いとかはないですか?」

 

翼の生えた少女にお姫様抱っこされて誘拐されてから大体2、30分が経った。

妖力が封じられて普通の人間の少女並に身体機能か落ちている私の身体が上空の寒さに耐えかねてぶるぶると震え始めた、そんな時分。

私をお姫様抱っこで担いでいた翼の生えた少女が私の顔を覗き込んで心配そうに聞いてきた。

 

「・・・」

「おい天狗〜。お嬢ちゃんを怖がらすなよ〜。さっきから一言も喋ってないじゃん。」

「ええ!?わ、私ですか!?」

 

寒さでぶるぶると震えている私を本気で心配している様子の優しそうな翼の生えた少女に『大丈夫です』と答えたいのだが、おでこに貼られた〖御札〗の所為か答えようにも声が出せない。

 

「い、いやいや。怖さで言ったら萃香様の方が断然・・・」

「私がなんだって?」

「痛い!痛いです萃香様!!羽根を毟らないで下さい!!う、嘘嘘、冗談ですってぇ!!なんでもありません!!!」

 

翼の生えた少女が小人の様に小さくなった捻れた角が生えた少女に背中に乗られて羽根を毟られながら涙目になっている。

・・・こうして見ると仲が良さそうな友達同士が突っつきあっている様でちょっとだけ微笑ましい。

 

「私に対して堂々と嘘をつくとは良い度胸だねぇ。」

「うぇ!?あ、いや、嘘です!!嘘嘘!!っあ!!っじゃなくて嘘じゃないんです!っでもさっきの嘘は嘘じゃないんですぅ。あばばばば。」

 

言ってる事が支離滅裂でグルグル目を回し始めた翼の生えた少女に、角が生えた少女が小さな身体全体を使ってヘッドロックをかます。

楽しそうに笑ってるし、角が生えた少女は本気で落とそうとしている訳ではなく、ただじゃれ合ってるだけみたいだ。

翼の生えた少女の方は割と本気で苦しそうに涙目になっているが・・・

 

・・・というか、そんな事よりも。

 

「・・・」

「ん?どうしたんだい?お嬢ちゃん。」

 

唯一動く左手で自分のおでこを指差す。

 

「あ!・・・こりゃ、やっちまったねぇ。御札を剥がすのを忘れちゃってたよ。どうりで声が出せない訳だ。あはははは。」

 

そう言って角が生えた少女はペリペリと私のおでこに貼られていた御札を剥がしてくれる。

すると、先程まで左手以外まったく動かず、声すら出せなかった身体がようやく自由になった。

 

「・・・ふぅ。ようやく声が出せます。・・・とりあえずその黒髪の子を放してあげてください。泡吹いてますよ。」

「おや?おっとっと!天狗、ごめん。ちょっと強く締めすぎちゃった。小さい身体だったら力加減が難しくてかなわないねぇ。」

「ケホ、コホ。さ、三途の川が見えた気がしましたよ・・・」

 

ちょっと咳き込みながら涙目のジト目になっている翼の生えた少女。

そんな少女の視線にいたずらっ子のように舌をペロリと出して謝る角が生えた少女。

ため息を吐いて文句を言うのを諦めた様子の翼の生えた少女の様子からして、こういう事は日常茶飯事らしい・・・

 

っと!

そんな事よりも気になるワードが翼の生えた少女から出て来ましたね。

〖三途の川〗

確かそんな表現は前世では私が住んでいた日本でしか聞いた事ありませんし、もしかしたら、この妖怪さん達は後の日本という島国出身かもしれませんね・・・

 

「おっと。自己紹介がまだだったねぇ。私は鬼の〖伊吹萃香〗だよ。訳あってお嬢ちゃんを誘拐させてもらってる主犯の妖怪だよ。」

「堂々と誘拐している対象に主犯だと自己紹介するのはどうかと思いますが・・・。伊吹さんですね。私はアズールです。多分種族は吸血鬼です。よろしくお願いします。」

 

くつくつと笑いながら瓢箪に入ったお酒をゴクリと豪快に飲む伊吹さん。

・・・あの瓢箪。

ずっと飲み続けているのに中から無尽蔵にお酒が出ているかの様に中身が無くなりませんね。

見た目の内容量よりも中身が拡張されているのか、はたまた瓢箪内にお酒を自動生成される機構でもあるのか・・・

前世からしたら現実には存在し得ない、考えられないような幻想の代物でしょうが、私もこの幻想の世界に来てから長い年月になりますし、当たり前の様に受け入れる様になりました。

正しく〖現実に囚われない〗考え方を持てて魔法使いとしては上上ってもんです。

 

「あ、申し遅れました。私は烏天狗の〖射命丸文〗と言います。今回は萃香様が急に申し訳ありません。後で必ずお家にお帰ししますので。」

「あ、ご丁寧にどうも。射命丸さん。私はアズールです。多分吸血鬼です。よろしくお願いします。」

 

そして、ペコペコと頭を下げ合って自己紹介しあう射命丸さんと私。

前世の癖かどうかは分からないけれど、自己紹介してくれたら反射的に自己紹介を返してしまう。

なので、誘拐されてる身なのにまるで名刺交換みたいにペコペコと頭を下げ合うというよく分からない状況になっている。

誘拐犯が自己紹介するのもちょっとおかしいと思いますが・・・。

 

とにかくようやく話せる様になりましたし誘拐された理由でも聞いてみましょうか。

 

「・・・私を攫って何が目的ですか?」

 

誘拐の主犯だと自分で言っていた伊吹さんに私を誘拐した目的を問いかけてみる。

問いかけられた伊吹さんはキョトンとした顔で答える。

 

「え?・・・目的?・・・あ、あぁ、そんな大層なものじゃないけどね。ただ、あんたが気に入ったから住処にお持ち帰りするってだけさ。盛大にもてなしてやるさ!」

 

そう言って伊吹さんはお酒に酔ったかのような紅潮した顔で私の頬をするりと撫でてきて、いたずらっ子のように、にひひと笑う。

 

「ひっ!・・・わ、私の身体は好きにできても、心までは好きにできるとは思わないで下さいね!」

「それはどうかな?住処に着いたらお楽しみだねぇ!」

 

ひ、ひぃ・・・

こ、こわい。

盛大にもてなしだなんて、一体私はどうなっちゃうんでしょうか!?

 

今の誘拐された展開や、そのセリフまで前世で見た事ある少しエッチな本と同じで、凄く怖くなってきた。

そのエッチな本的に言うと、〖もてなし〗、〖お楽しみ〗というのは隠語で実際は性的に〖食べられる〗って意味だったりしたはずだ。

妖怪だし、この場合は某〖注文の多い料理店〗みたく文字通りに食べられちゃうかもだが・・・

とりあえず、〖身体中に塩をたくさんよくもみ込んでください〗なんて言われた時には尻尾巻いて逃げよう。

 

そんな最悪の想定に、怖くて身体がガタガタ震えて、涙目になってきた。

 

「ちょっと萃香様!本当に怖がらせちゃってるじゃないですか!」

「あ、あれ?普通におもてなしするから楽しみにしててねって意味で言ったのに・・・」

「そんな牙を剥いて笑ってるからですよ。」

「えぇ!?わ、私の顔ってそんなに怖い?」

「そりゃ怖いですよ!『今から食ろうてやるわぁ!!』みたいに迫力あるお顔ですから昔から他の天狗達にも密かに怖がられ・・・イタタタタ、ちょ、萃香様、ごめんなさい!今のお顔はちょっと涙目で可愛らしいです!って、あぁぁ、痛い痛いっ、す、すみません!!!言い過ぎましたぁ!!謝るので羽を毟らないで下さいぃ!!落ちちゃう!落ちちゃいますうぅ!!」

「・・・後で天狗達はシメる・・・」

 

2人でコソコソ話をしていたと思ったら、急に伊吹さんが射命丸さんの羽を涙目で毟り始めた。

2人してコソコソ内緒話していて、こ、怖い。

伊吹さんも急に羽を毟りだして挙動不審だし・・・

 

でも、とりあえず羽を毟られた射命丸さんは可哀想だったので気付かれない様に、こっそり能力で肩代わりして綺麗さっぱり治しておこう。

射命丸さんは優しそうな妖怪ですし・・・

 

でも、肩代わりした感じ大したダメージじゃなかったようで、伊吹さんも本気で射命丸さんを痛めつけようとはしていなかった様ですが・・・

 

とにかく伊吹さんに聞いてもよく分からなかったので、今度は射命丸さんに誘拐の理由を問いかけてみる。

 

「射命丸さん・・・わ、私は誘拐されて、ど、どうなっちゃうんですか?」

「あややや!ごめんなさい、怖がらせちゃいましたか?大丈夫ですよ、アズールさん!あぁ見えて萃香様は力は強いですが、鬼の中では比較的まともな方ですから。危害も加えられないと思いますし、しばらくしたらちゃんと家に帰してくれますよ!」

 

コソコソと耳打ちで射命丸さんが教えてくれる。

 

「おい!天狗!聞こえてるぞ!何が比較的まともだ!勇儀や茨木にチクっちゃうぞ!」

「マジすんません!それだけは本当に勘弁して下さい!特に茨木様に言うのだけは絶対に止めて下さい!」

 

・・・この2人、初めは射命丸さんの慇懃(いんぎん)な対応から上司と部下ってだけの関係かと思っていたが、射命丸さんは案外砕けた感じだし、伊吹さんも快く思ってるみたいで、案外仲が良い友達みたいな関係なのかもしれない。

 

「っ!!待った!天狗、一旦止まれ!」

 

そうしてしばらく伊吹さんと射命丸さんがワイワイと話していると、突然伊吹さんが飛行していた射命丸さんに静止を命じた。

 

「どうしたのですか、萃香様?」

「・・・あぁ、ちょいと分身体の方でトラブルがね・・・。」

 

分身体?

もしかして伊吹さんは分身体を月光館に置いてきてたのでしょうか?

それだと、皆が心配だ。

伊吹さんはかなりの実力者。

分身体であっても、ヴァルターでも恐らく勝ち目は無い。

 

そうして、しばらく静止していると急にくつくつと伊吹さんが楽しそうに笑い始めた。

 

「・・・お嬢ちゃん。良い友達を持ったねぇ。」

「萃香様!何かが高速でこちらに近付いて来てます!」

 

射命丸さんが前方に向けて身構えた。

 

「あぁ。私が案内したんだ。私達の場所とは真反対に飛び始めたとんでもない〖方向音痴〗だったから私の分身体の案内が無ければ絶対にここまで辿り着けなかっただろうねぇ。」

 

萃香さんの言葉でこちらに向かっている存在が誰かが容易に分かった。

 

「あら、ここまで案内してくれてありがとう。約束通り会いに来たわよ萃香ちゃん。思ったより早い再会だったわね。」

 

ふと前方に目を向けると初めに会った時と同じ大きさの伊吹さんをお姫様抱っこしたスカーレット夫人が目の前にいた。

 

「約束ってもんを守るのは早ければ早い程良いのさ。さぁ、〖本体同士〗で会うのははじめましてだね、レーヴァ。・・・でも分身体とはいえお姫様抱っこされるのはちょっと恥ずかしいからやめて欲しいんだけど。」

「お姫様抱っこしたら赤面して恥ずかしがって可愛らしいんだから思わず紅魔館にお持ち帰りたくなっちゃったわ。・・・ねぇ、お土産にこの分身の子、持ち帰っても良いかしら?」

「「な、何言ってんだあんた!だ、駄目に決まってんじゃん!」」

 

とんでもない事を言い出した夫人の言葉にお姫様抱っこされて赤面していた伊吹さんの分身体と本体の伊吹さんが声を揃えてびっくりした後、霧のように消えて1つに集まって、本体の伊吹さんが初めに見た小さな少女くらいの大きさに戻った。

 

「さて、アズちゃんはどこに・・・。」

 

お姫様抱っこしていた伊吹さんの分身体が消えて少し残念そうな夫人は私を探して、タオル1枚で射命丸さんにお姫様抱っこされている私を見つける。

 

っぶふぉ!!

 

私と目が合った夫人が急に鼻を押さえたかと思えば、かなりの量の血が夫人の鼻から吹き出してきた。

 

「な!?ふ、夫人!?どうしちゃったのですか!?ど、どうしていきなり血が!?」

 

急に血を吹き出した夫人はその血で全身を赤に染めながら、はぁはぁと息を荒らげて血走った目でこちらを見ている。

 

心配して思わず、射命丸さんの腕の中から身を乗り出して夫人の様子を確認する。

その拍子に身体に纏っていた何かがはらりと落ちた気がしたが夫人への心配の方が勝って気にもならない。

 

っな!?ぶふぁっ!!ごふ!

 

すると、またまた突然夫人が大量の血を吹き出した。

 

「夫人!!」

アズ・・・ちゃん。大・・丈夫だった?

「い、いや、それはこっちのセリフなのですが!?」

 

どうしよう・・・

何故か夫人のダメージを能力で肩代わりする事ができない。

あんなにも血がでてるのに、代わってあげられない。

 

そんな状況に私は茫然自失となって固まる。

 

ふふ・・・ふ。やるわね、萃香ちゃん。この私にここまで大ダメージを負わせたのは貴女が初めてよ・・・

 

夫人は私から血走った目を逸らして伊吹さんに肩を貸されながら話しかける。

 

「・・・いや、私何もしてないんだけど。」

まさか、こんな攻撃をしてくるなんて・・ね・・・

「いや、あんた、ただ、お嬢ちゃんの姿を見て勝手に興奮して鼻血出してるだけじゃん・・・。ほら、これで顔拭きな。鼻血で大変な事になってるよ。」

あ、ありがとう。助かるわ・・・

 

伊吹さんは濡れたタオルを夫人に手渡して肩を貸してあげている。

渡された濡れたタオルで顔を吹いた夫人はふらつく身体と血走った目で再度私の方を向いて話しかけてくる。

 

ア、アズちゃん。萃香ちゃんはそんなに悪い妖怪じゃなさそうだから大丈夫よ・・・。しばらくしたら帰してもらえるらしいから、しばらく厄介になりなさい。

「・・・え?・・・あ、いや、夫人が言うのなら大丈夫だとは思いますが・・・。っそれより!身体は大丈夫なのですか!?」

 

伊吹さんの所でしばらく厄介になるように言われたのは想定外でビックリしたけど、それより心配が勝って身を乗り出して夫人を見る。

 

ぶふぁ!?ア、アズちゃん。そ、それ以上私に至高の姿を見せないで・・・し、死んじゃう!

「うわぁっ!!れ、レーヴァさん!!死んじゃダメです!!生きて下さい!!」

 

レーヴァさんの縁起でもない言葉に涙目になって更に身を乗り出して心配する。

 

っ!ア、アズちゃん!は、初めて私の名前を・・・。も、もうダメ・・・幸せ過ぎて、死んじゃう・・・

「おっと!おい!レーヴァ!ほんとに大丈夫か!?」

 

レーヴァさんが力なく崩れ落ち、今度は逆に伊吹さんにお姫様抱っこされる。

 

「レーヴァさん!!」

「・・・大丈夫だよ。どうやら気を失ってるだけみたいだ。・・・おっと、先に言っておくけど私は何もしてないよ?この吸血鬼がこうなったのはお嬢ちゃんの姿が原因だろうからね。」

 

ニヤニヤとした酔っ払いの様に紅潮した顔で私の方をジロジロと見ていた伊吹さんの言葉にびっくりして少し固まる。

えっ。

ふ、夫人がこうなったのは、わ、私の所為?

 

「え?・・・一体どういう・・・」

「・・・アズールさんには無視できない色気がありますね。私も同性ですが今の貴方の姿を見てると変な気持ちになりますし、あの吸血鬼の方が興奮するのも分かります。」

 

射命丸さんも少し紅潮した顔でよく分からない事を言い出した。

訳が分からずキョトンとしていると、射命丸さんが夫人が持っていた外套を私に渡しながら恥ずかしそうに私の方から目を逸らして言葉を続けた。

 

「とりあえずこの吸血鬼の方が持ってきた外套を着てください。・・・タオル、剥がれて大変なお姿になっていますよ。」

 

続いた射命丸さんの言葉を吸血鬼の超速思考で正しく理解した私は、今度こそ完全に固まり、次いでブリキ人形の様にギギギと視線を自分の身体に向けた。

 

「・・・っきゃあぁぁぁ…///」

 

今更ながら全裸で大事な場所を隠さず堂々と身体を晒していた事に気が付いた私はこの世界に来て初めて女の子みたいな悲鳴をあげた。

 




【後書き】
11月4日から始まった〖東方ダンマクカグラ:ファンタジアロスト〗のクラウドファンディングが1日どころか1時間足らずで目標金額に到達して、さらには今現在は目標金額の4倍の6000万近く支援されている事に自分の事のように嬉しくて心が温かくなったまほろばです(≧▽≦)
皆の東方愛やダンカグ愛が凄くて感動しました(*´ω`*)

https://camp-fire.jp/projects/623672/preview?token=1lrvoehb

それはそうと、53話です!

今話ではこの物語での射命丸さんと伊吹さんの関係性を前面に表現したお話になっています。
今話中にもありましたがアズールには本人が自覚できていない色気や魅了の力があるので、夫人は興奮して悲惨な事になっています。
今後この事でトラブルが起こりそうですね笑

さて、今話で第6章『空の旅編』はおしまいです。
次回からは地上に降りて、また新たなトラブルにアズールが巻き込まれる・・・かもしれません。
それくらい第6章はトラブル多め、内容多めとなる予定です!

次回は少し遅れた投稿になる思いますので楽しみに待っていただけると幸いです。
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