東方庇護録(旧作)   作:まほろばのーぶる

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※魔法についての独自の解釈があります。


第7話:紅い悪魔は魔法がお好き?~悪魔の所業と魔法の話~

狼さん!出て来なさ〜い!この館にいるのは分かっています〜!観念して、私の前に出て来なさ〜い!

 

私がヴァルターに魔法の事で詰め寄っていると、館の外からまるで拡声器を使ったかのような、女の子の声がおっきく響き渡った。

 

あれ?この時代に拡声器なんて物があるのだろうか?

あるとしてもメガホンくらいだろうと思っていたが、どうにも拡声器の如く館内、外に音が響いている。

 

不思議に思った私は、ヴァルターに聞いてみようと声を掛けるも、当の本人は冷や汗を流しながらオロオロしている。

 

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・・・恐らく外にいる女の子の目当てはヴァルターだろう。

狼さんとか言っていましたし・・・。

 

「・・・ヴァルター?大丈夫ですか?凄いオロオロしてますが。」

ふぁ!?だっ大丈夫です!私は外にいる悪魔に観念する事なんてありませんし、あの子が私の魔法の師匠だとしても、ここで居留守を使っても許してくれる子だと思いますので居留守しましょう?ね?アズールお嬢様は私に味方してくれますよね?助けて下さい。もふもふされるのは今はもう勘弁してほしいのです。

 

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「おぉ・・・。お、落ち着いてくださいヴァルター。どう、どう。」

 

すっごい早口でまくし立ててきた。

ヴァルター、とても焦ってるようである。

焦るヴァルターもすごく可愛いが、ドタバタするとローブの中の見えちゃいけないものが見えそうですよ?

 

それと、外にいる女の子はヴァルターの魔法の師匠である悪魔さんのようだ。

ヴァルターは観念する事なんか無いと言っていますが、先程、悪魔さんの何か大事な物を壊しちゃったとかなんとか、スカーレット伯爵との話の中で聞いた気がします。

 

人の物を壊したのなら、それは謝罪が必要であり、場合によっては弁償も必要となるでしょう。

とにかく、1度ヴァルターを落ち着かせて謝罪をさせる必要がありますね・・・

 

「ヴァルター。とりあえず、謝罪しましょう?ほらっ、一緒に謝ってあげますから。」

「・・・お嬢様。恐らく、謝ってすむ問題ではないです。きっとあの悪魔は恐ろしい要求をしてきます。まず間違いなく。」

「え、えと、何にそんなに怯えているかは分かりませんが、1度話をしてみましょう?ね?」

 

とりあえず、オロオロしているヴァルターの手を取って優しく諭してみる。

するとヴァルターは落ち着いたのか逆立っていた耳がぺたんと下りて大人しくなった。

 

「お嬢様・・・。うぅ・・・分かりました。・・・話だけでも聞いてみまっ」

突撃〜!

 

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バタンとおっきな音と共に何やら小さな赤い影が館内に入ってきた。

見ると、髪は少し明るく薄い紅色の綺麗なロングヘア、服は黒を基調とした白黒のブレザーにスカート、歳の頃は13.4歳。

今のヴァルターと同じくらいの少女がまるで何かを探すようにキョロキョロと周りを見ながら館に入ってきた。

その少女の頭の左右には小さなコウモリのような翼、背中には同じくコウモリのような翼が生えている。

 

恐らくこの子が先程の話にあった悪魔さんだろう。

見た目は悪魔さんと言うよりも悪魔ちゃんだろうか。

 

「あ~!どうも〜。アズール様ですね〜。話は伯爵から聞いてますよ〜。私は名も無き紅い悪魔です〜。以後お見知りおきを〜。」

「どうも、よろしくです。悪魔ちゃん。」

「あ、悪魔ちゃん!?さ、さっそく小さくなってしまった影響が出ましたねぇ・・・まぁ良いです。それよりも〜。」

 

私達2人に目を向けた後、周りに目を向けニヤリと笑みを浮かべて何かを探している様子の悪魔ちゃん。

 

「狼さ〜ん。隠れても無駄ですよ〜。この館の中の情報を私は手に取るように分かるのですよ〜。観念して出て来なさ〜い。」

 

あれ?狼さん、もといヴァルターなら目の前にいるのですが・・・。

 

・・・あぁ!

今のヴァルターは女の子の姿だから気付かないのかな?

う~ん・・・それでも確かにもふもふしっぽはローブに隠れて分からないかもしれないが、もふもふな狼耳は目立つはず。

なんでだろう?

そう思ってふと、ヴァルターを見てみると必死で狼耳を押さえて隠しながら私の影に隠れていた。

超可愛い。

 

「あの。悪魔ちゃん。ヴァルター、狼さんなら多分こちらにいる女の子の事ですよ。」

 

そう言って私は後ろに隠れるヴァルターをひょいと持ち上げて前に持ってくる。

 

ああぁ!なっ!?お嬢様ぁ!

 

私がバラしちゃったのにびっくりしたのか、ヴァルターが押さえていた手が外れて耳がぴょこっと跳ねた。

超可愛い。

 

「あれ〜?・・・確かによく見るともふもふなお耳が見えますね〜。見つけましたよ〜狼さん。随分と可愛らしい女の子になりましたね〜。でも、もふもふは健在なようですね〜うぇへへ。」

 

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悪魔ちゃんはヴァルターを見るともふもふな狼耳に目を向けにへらと微笑んでいる。

 

「さて〜。狼さん、ヴァルターさん?私の物を壊した、お詫びを頂きましょうか〜。」

 

ニコニコ笑顔で悪魔ちゃんがヴァルターににじりよってくる。

 

「あ、悪魔様、あの、本当に申し訳ありません。貴方が今考えているお詫び以外のお詫びならなんでもします。だから、それだけは勘弁して頂きたいです。」

「おやおや〜?今日は変に丁寧な言い回しですね〜。いつもみたいに崩した言葉で話してくれても良いんですよ〜?」

「いえ、大悪魔様!恐れ多くも私が舐めた口聞いてました。だから許し・・・な!?何考えてんですか!?それだけは、それだけは許して下さい!お願いします。心から、切実に、本当にそれだけは勘弁して下さい!」

「問答無用です〜。」

「話を聞いて下さい。止まって下さい。止まって。止まれって。耳はやめろぉぉぉ。はにゃぁ//。ひょっひょっとほんろにやめへぇ//

 

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なんだろう、この状況・・・。

第三者から見れば会話が噛み合わず、悪魔ちゃんがヴァルターに飛びついた様に見えるが、ヴァルターには〖機微を悟る程度の能力〗があるらしいし、悪魔ちゃんもそれを知っている様で、1種のテレパシー的な感じでコミュニケーションを取っているらしい。

 

ふぁぁ//んっ//いぃやぁ//

「ほらほら〜。ここですかぁ〜。ここが気持ち良いのですかぁ〜」

んひゃあぁ!?♡ご、ごめんなひゃい//ごめんらさいぃ//ゆるひてぇ//ゆるひてくらさいぃ//

 

おっと、これ以上はいけない。

 

「まあまあ、悪魔ちゃん。今はそれくらいにしてあげてください。」

 

ヴァルターの顔が今まで知らなかった気持ち良さからか、不安そうに涙目で真っ赤になり、間違いなくコンプライアンスに引っかかる表情になってきたし、悪魔ちゃんは悪魔ちゃんで息を荒らげながらヴァルターをモフり倒し、暴走気味なのでとりあえず止めておく。

 

「・・・はっ!私とした事が、余りのモフリティの高さや、ヴァルターさんの反応に興奮してしまい、暴走してしまいました~。」

 

ふむ、確かにヴァルターの耳やしっぽはモフリティが高い。2回も撫で回した私が言うんだから間違いない。

 

悪魔ちゃんはこれで満足し、ヴァルターを許した様だ。

というか、最初から物を壊された事はあまり気にしていなさそうである。

ただ、ヴァルターをモフりたかっただけだったようだ。

超分かる。

 

倒れてビクンビクンと痙攣しているヴァルターを尻目にとりあえず、魔法についてさっそく悪魔ちゃんに尋ねてみる事にする。

 

「あ、そうだ。悪魔ちゃん。ヴァルターに魔法を教えていた悪魔というのは悪魔ちゃんの事ですか?」

「アズール様。確かに縮んでしまった今の私は悪魔ではなく、言うなれば小さな悪魔みたいなものなので、悪魔ちゃんでも良いんですけども〜、ちょっと恥ずかしいです〜。あと、ヴァルターさんに魔法を教えたのは私で間違いないですよ〜。」

 

なるほど、小さな悪魔。

そういえば、彼女も幻想郷についての書物に記載があったはずだ。

確か名前は・・・

 

「では、貴方の名前は小さな悪魔、〖小悪魔〗ですね。」

 

前世の記憶から軽く彼女のことを小悪魔と呼んだわけであるが、そんな言葉に小さな悪魔は驚いたように目を見開いた。

どうしたんだろう?ん?あれぇ?

 

「ん!?んぁ!?むむむぅ!?なんか力がぬけるぅ。」

 

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「・・・アズール様は色々と規格外なご様子ですね〜。では、分かりました。私も悪魔ではなく、〖小悪魔〗を名乗るようにしますが、〖これは名付けではなく単に自分で名乗っているだけ〗ということにしておきますね〜。」

 

小悪魔さんがさっと指を振った途端に抜けた力が戻ってきた。

何だったんでしょうか?なんかこんな感覚、ついさっき経験したような、してないような。

 

とりあえず、力が抜けてへなへなと座り込んでしまい、先程小悪魔さんがなにやら話していたが内容は聞き取れなかった。

な、何だったんだろう・・・

・・・いや、まぁ、そんなことよりも!!

 

「小悪魔さん。私にも魔法を教えて下さい。」

 

小悪魔さんとの出会いで、いよいよもってここが幻想郷が存在する世界だと分かってきた。

だが、とりあえず、その事について考えるのは後回しだ。

今は魔法だ。魔法。小悪魔さん、ハリーアップ。

 

「おぉ〜!凄い勢いですね〜。顔が近いですよ〜。分かりました。アズール様、とりあえず落ち着きましょう?」

 

小悪魔さんはワタワタと慌てつつも間延びした話し方で私の両肩に手を添える。

いつの間にか小悪魔さんの顔のすぐ側まで詰め寄っていた。

 

「あっ。これは失礼しました。」

「ふふふ。アズール様は魔法がお好きなんですね〜。私も魔法は大好きなのでとっても好感が持てますよ〜。言わば同志ってやつですね〜。」

 

はっ!確かにそうだ。

魔法を愛するもの同士、お互いの趣味が合う、同志。

なんか良いですね、それ!

 

「私も小悪魔さんも魔法を愛するもの同士、とっても好感が持てます。これからも仲良くして欲しいです!」

「小悪魔で良いですよ〜。こちらこそよろしくお願いします〜。」

「では小悪魔、さっそく魔法を教えて欲しいです。魔法とはどのような感覚で、どのような法則で、どのような過程で発動するのですか?」

「アズール様。とっても早口で、はやる気持ちを抑えきれてないようですが〜、もう時間も夜明けです〜。それに、なにやらお疲れのご様子〜。この月光館には大浴場もありますし、それに入って魔法の触りを伝えながら今日はもうお休みになられてはいかがですか〜?」

 

ハッ!確かにそうだ。

何故だか、分からないけど、どうやら私は少し疲れてるようだ。

それに、今の私は吸血鬼だ。

夜明けと共に眠り、夜更けに起きるのが普通なのだろう。

 

それに魔法もそうだが、大浴場もとても楽しみだ。

小悪魔とは魔法の話で気が合いそうだし、仲良くなりたい。

よしっ!ヴァルターと3人でお風呂での裸の付き合いといこう!

 

でっではぁ、私はぁ館の見回りでも、しときますね。

 

息も絶え絶えのヴァルターが、這う這うの体で私と小悪魔さんから距離を取る。

 

「もちろん、ヴァルターも一緒に入りますよ!」

「ヴァルターさん。この館は魔法で守られてるので見回りなんて必要ないです~。大丈夫ですよ〜。」

 

しかし、ヴァルター逃げられない。

ガシッと両肩に2人の手が置かれたヴァルターの顔は何故か引き攣っている。

ヴァルターは一緒にお風呂に入るのが恥ずかしいのだろうか?

それとも、お風呂が嫌いとか?

 

「・・・いえ、お風呂は初めてなので楽しみではありますよ。ただ、御二方と一緒に入るのは先程の事もあり、少々危険を感じて、怖いだけです。」

 

うん、確かに。

ヴァルター正直である。

確かにここにいる2人はヴァルターの事を気持ちよくさせてしまった2人だ。

裸で一緒にお風呂に入るのは怖いのだろう。

・・・字面だけ見るといかがわしい事があったみたいだが、実際はもふもふなお耳としっぽをもふもふしただけである。

 

「大丈夫ですよ〜ヴァルターさん。私にそんな気はないです〜。ただ、更に仲良くなりたいだけですよ〜。」

「そうですよ。ヴァルター。仲良くなるためにも一緒にお風呂に入りましょうよぉ。」

 

そう言う私達2人に渋々といった様子のヴァルターはジト目で私達を見てくる。

 

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「絶対に変な事はしないで下さいね。お願いしますね。絶対ですからね?」

 

・・・日本人的な解釈をすると変な事して下さいっていう振りだろうか。

そんなに言うのなら、変な事をするのもやぶさかでは・・・。

いやっ、嘘嘘、ヴァルターごめん。

機微を悟って私の心の言葉が聞こえたのか、さらにジト目になって見てくるヴァルター。

 

 

ジト目可愛い。

 

 


 

 

「本当に不思議ですね。ここのお風呂は全て魔法で管理されてるんですよね?」

 

元日本人だったからか、お風呂に浸かるとなんだか落ち着く。

魔法に興奮し過ぎず、素朴な疑問を持てるまで落ち着いてきた。

それでも魔法で色々と動いているらしいお風呂を見て、あちらこちらに目を向けては小悪魔にいろんな事を質問する。

 

今私達は3人で広い湯船に浸かりリラックスしている。

ヴァルターも私と小悪魔の間で大人しく肩まで浸かっている。

 

「そうですね〜。ここの大理石は魔法を使えますからね〜。魔法と言っても一概に意志のある生物だけのものではないのですよ〜。」

「え?どういう事ですか?」

 

魔法のイメージは生物が直接的に発動させる、言わば、前世の記憶で言うと、大昔のシネマにあった、ハリ〇ポッターみたいな感じの魔法をイメージしていた。

それか、エンチャントと呼ばれる、道具に魔法の効果を付与するイメージ。

生きていないもの。

無機物が魔法を使えるとは、童話などの1部例外を除いて聞いたことも無い。

 

「魔法とは単に生物だけの特権ではないのですよ〜。およそ、意志の感じられない、その辺に落ちている石ころも厳密には魔法が使えます〜。」

 

ふむふむ、とっても興味深い。

前世では魔法の存在を追求していたからか、様々な先入観があるが、1度全て忘れてみてもいいかもしれない。

 

「魔法とは、まぁ説明すると凄〜く難しいですが、記憶や意志の力を現世に表すことで生じる現象の事を総じて言うのですよ〜。」

 

ふむ、つまり、先程の話の大理石や石ころにも魔法が使えるというのは、それらが持つ記憶の力を表出する事で、魔法と呼ばれる現象が生じると言う事だろうか?

 

「ここの大理石達は、元々上等なテルマエで使われていたもので〜、とっても大事にされていたようなので、当時の記憶が色濃く残って状態を保存出来ているのですよ〜。」

まぁ、その記憶を元に再現したのは私ですけどね〜。

と小悪魔は付け加える。

 

なるほど、無機物の持つ記憶を、生物は引き出し、その意志の力を持って現世に表出させているようだ。

 

・・・自分で簡単に要約しているが、その実、凄く難解であり、とてつもない思考能力を持つ吸血鬼の私でも何を言っているのか詳しくはちんぷんかんぷんだ。

 

「最近では正しい魔法の使い方をしている人間はいないようで〜。悪魔としてはちょっと悲しいですけどね〜。教本通りにするだけではダメなのです〜。イメージや記憶、もっといえば気持ちが大事なのですよ〜。」

 

聞けば悪魔の存在意義は適度に人間を脅かし、人間に自衛の為の魔法を研究させる事で魔法を普及させる事らしい。

最近では魔の法が人間の作った信仰等の法に負けつつあるので、悪魔としては少し悲しく、悔しいらしい。

小悪魔は他の悪魔程は気にしていないようであるが・・・。

 

それにしても小悪魔の話はすっごく興味深い。

とても魔法に精通している様子で、話を聞いているだけで吸血鬼である私の思考能力のおかげか、様々な推察や、考察などがあふれてくる。

そのどれもが、前世の記憶では常識的ではなく、妄想と馬鹿にされそうではあるが、私にとってはとても有意義な知識だ。

 

それに、魔法のコツを知る事が出来た。

 

常識に囚われてはいけない〗のだ。

 

「その点アズール様は魔法ととっても相性が良さそうですね〜。」

「え?どうしてですか?」

「魔法に対する気持ちはもちろんですが、内在する魔力量が底知れないですから〜。」

 

魔力。

世界のありとあらゆるものが持つとされる力。

記憶や自らの気持ちを表出する為の燃料のようなもの。

その魔力をどうやら私はたくさん持っているようだ。

 

さすが魔法使いの先輩。

一目見ただけで内包する魔力も分かるらしい。

 

どうやら、地獄に本体がある小悪魔は内在する魔力量が少ない為、その莫大な知識に見合った魔法を扱えないようだ。

それに紅魔館にある、書庫の魔導書も読むには一定数の魔力を要する為、半分も読めていないようだ。

 

司書が本を読めなくて大丈夫かとも思ったが、スカーレット伯爵からしたら、書庫は飾りみたいなものらしい。

小悪魔も現世では魔導書は読めなくても、気ままに司書として魔導書の管理だけはしているようだ。

 

・・・もったいない。

後で絶対に全部読もう。

 

そんなこんなで、小悪魔と魔法の話をしていると、間にいるヴァルターはちんぷんかんぷんと言った様子でブクブクと鼻の下まで湯に浸かっている。

 

「そういえば〜、軽く流してましたが、ヴァルターさんはどうして女の子の姿になっているんですか〜?」

「・・・そういえばなんでだろう?何故か私がヴァルターと名付けた途端に変化しましたね。」

 

その話を聞き小悪魔はふむ、と顎に手を当てる。

そして、恐らくですがと前置きをして

 

「名付けとは言わば魔法の1種です〜。自らの気持ちを名前に付与する。もしかしたらアズール様の気持ち、もしくは記憶がヴァルターさんの人狼の姿を女の子のイメージにしたのかも知れませんね〜。」

 

・・・なるほどと納得する。

現世での吸血鬼の思考能力が高すぎて理解するまでが早い。

恐らく、前世の記憶、半ば幻想の存在であると考えていた、人狼、ヴァルターを、幻想郷の物語に登場するキャラクター達と、同一視していたのかもしれない。

 

だって幻想郷に関する書物の記載によれば、その幻想郷には可愛らしい女の子や、美しい女性ばかりが登場していたのだ。

そのイメージが名付けという魔法によってヴァルターの変身に繋がったのだろう。

 

「まぁ、なんにせよ〜。こんな可愛らしい女の子になったんですから〜。良い事ですよ〜。」

 

そう言って小悪魔はすいーっとヴァルターに近付きしっとりと濡れてペタンとなったお耳にしれっと手を伸ばす。

 

「小悪魔さん。それ以上近付いたら噛みつきますよ。」

「あらら〜。振られちゃいました〜。」

 

がるるぅと威嚇するヴァルター。

超可愛い。

 

恐らく小悪魔は先程ヴァルターのもふもふを堪能して満足したのであろう。

それ以上は無理矢理に耳やしっぽに触ろうとせず、機嫌良さげにお風呂を堪能していた。

ヴァルターはヴァルターでお風呂が気に入ったのか、目を細めてリラックス顔だ。

私もリラックスしてると何だか眠たくなってきた。

 

サーカディアンリズム、体内時計も吸血鬼仕様になっているようで、夜明けに近づくにつれて眠気が増してきた。

 

「おやおや〜?お二人共お風呂で寝ちゃうと大変ですよ〜。今日はもう朝早いですし、一旦ベッドで横になってはどうですか〜?」

「・・・はい。小悪魔の言う通りです。魔法談議はまた今度にするとして、今日はもう寝ましょう。」

「・・・zzz

 

半分くらい寝かけているヴァルターに、「ほら、ヴァルター寝るならベッドですよ。」と優しく起こす。

 

その後、決めておいたヴァルターの部屋のベッドにヴァルターを寝かし付け、自分も自分の部屋のベッドに向かう。

 

「今日はありがとうございます、小悪魔。魔法について少しでも知る事が出来て楽しかったです。」

「いえいえ〜。私は大体紅魔館の書庫で暇してるので、いつでも魔法について聞いてくださいね〜。魔導書もたくさんあるので、いくらでも借りていって下さいね〜。」

 

小悪魔は悪魔なのに、とても親切だ。

恐らく伯爵にも素性が全く知れない私の事を怪しむ素振りもなく、いつの間にか仲間の一員として考えてくれているようだ。

 

おやすみなさい、また明日と、小悪魔に告げ、紅魔館に戻る小悪魔を見送り、私も自分の部屋のベッドに横になる。

思ったよりもふかふかのベッドは私を眠りに誘う。

 

しかし、私には考える必要がある事が沢山ある。

落ち着いた今、散らかしてほったらかしになっていた匙を拾うとしよう。

 

 


 

 

まず、私は誰なのか?

 

これについては、正直お手上げ状態だ。

なにせ、前世の記憶は自分の事だけは、なぜかまったく思い出す事が出来ないからだ。

 

日本に居た事。

魔法を求めていた事。

幻想郷が大好きだった事。

 

自分の事で思い出す事が出来たのはこれくらいだ。

だから、この事は、おいおい思い出していくとしよう。

 

次にここは何処なのか?

 

私の前世の記憶からすると大昔。

西暦500年程のヨーロッパだと思われる。

 

随分と昔でびっくりしたが、更にびっくりした事になんとこの世界は()()()()()()()、大好きだった幻想郷が存在する世界のようで。

スカーレット伯爵や小悪魔、紅魔館、程度の能力。

ここまで、あの書物にある世界に合致すると言う事はつまり、ここは幻想郷の物語、それが記録されていた最初の出来事、紅霧異変の始まるおよそ1500年前。

幻想郷に登場するスカーレット姉妹生誕の地であると思われる。

 

確か、姉妹の姉のレミリア・スカーレットは齢500年と記録されていたため、スカーレット姉妹が登場するのは今からおよそ1000年後の事だろう。

 

果てしなくスケールは大きいが、吸血鬼は長命種。

1000年なんてあっという間だろう。

・・・多分。

 

とにかく、当面の目標は図々しいかもしれないが、このままスカーレット伯爵にお世話になりながら、魔法を研究しスローライフを送る。

ついでに、記憶を取り戻せたら良いな。

・・・といった感じで過ごしてみよう。

 

 

「んぅ?」

 

もう眠気が限界に近付いた時、ふと枕元に誰かいる気配がする。

小悪魔が帰ってきたのかな?と眠い目を開け、気配の先に視線を送る。

 

そこには予想に反して、にこにこ笑みを浮かべた金髪の大変美しいお姉さんがいた。

 

服装はフリルのついた薄紫のドレス。

頭には赤いリボンが付いた、ドアノブカバーのような帽子をかぶっており、手にはこれまた綺麗な扇子を持っている。

表情は手にした扇子に隠れてよく分からなかったが、目はにこにこと柔らかい印象を抱く。

 

【挿絵表示】

 

その女性は暗い空間から上半身だけを出しているようだ。

その亀裂が入った空間の中では多数の目がこちらを向いている、不気味な空間だった。

 

眠気が限界ではあるが、吸血鬼の思考能力は意識を閉ざすまでの一瞬で、目の前の女性について解析を始める。

 

亀裂の入った不気味な空間。

確か、書物では〖スキマ〗と呼ばれていたか。

『良くあの子に似てると、からかう材料にされてましたね』

突然、目の前に現れた凄く綺麗な女性は前世の幻想郷の知識にもある。

スキマ妖怪の〖八雲紫〗であると、答えが導き出される。

 

詳しい姿形は、その書物には記録されていなかった為、断定は出来ないが空間にスキマを作りそれを扱う妖怪と記載されていたため、すぐに連想できたのだと思う。

 

それにしても何故いきなり?

どうしてこの時代のヨーロッパに?

確かに私が記憶する幻想郷の物語に登場する彼女は、その書物内でもBBA(ババア)と散々揶揄される程に、年月を生きていたはずだ。

今の時代に存在しても不思議ではない。

 

何のために私の所にやってきたのか?

こちらの疑問はどうしても理由を考察できない。

 

それに、なんだろう。

初めて姿を見たはずなのに、どことなく、私はこの姿を知っている気がする。

それでも、私はその記憶が、まるでモヤがかかったかのように思い出せない。

『忘却は大罪』

すごくもどかしい・・・。

 

疑問は尽きないが、いい加減眠気も限界だ。

 

『私は傍観者。あの子達の幸せを見守る者。』

××××××さん」

××さんにはもう出会えましたか?』

意識と瞼を閉ざすまで、突然出てきたスキマ妖怪に対して私が発した言葉は何だったのか。

無意識だったのか、何か言ってはいけない、ばれてはいけないような事を言ってしまったかのような。

そんな気分を残して誘われるがままに私は意識を閉ざした。

 

そのようにして、気持ち良さげに眠る銀髪吸血鬼とにこにこ笑顔のままピシリと固まったスキマ妖怪は出会った。

 

 

The beginning of the story of reunion

 

 




〖後書き〗
ということで詰め込みすぎました第7話。
本当は2話構成にしたかったのですが上手く切れずにだらだら書いてしまいました。ლ(。-﹏-。 ლ)
原作キャラも着々と増えてまいりました。
相変わらず駄文で伝わりづらく申し訳ありませんが、気が向いた時に改稿していく予定です。(˘ω˘ ≡ ˘ω˘)
ただ、仕事が忙しくなるので夜遅く寝ぼけながら書いちゃう時もあり、ろくに確認もせず投稿してしまうので、変な所があればすみませんヘ(°◇、°)ノ

沢山のお気に入り登録ありがとうございます。
これからも駄文ではありますが、改稿しつつ東方庇護録の世界を書いていけたらと思います。
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