????? perspective
辺り一面砂ばかり。
日が落ちた砂漠は不気味な程に静かで、雲ひとつない夜空には、幻想的で綺麗な満月が浮かんでいる。
そんな辺り一面静寂の砂原の中、砂の下に埋まった岩の床が突如としてゴゴゴと地響きが鳴ると共に崩れ落ち、ブワッと砂煙が上がった。
そうして崩れた床の中からひょっこりと顔を覗かせたのは、赤い髪をした小さな少女。
その少女はひとしきり外の様子を伺った後、再び洞窟の奥へとそそくさと戻っていった。
少女の見た目は人間の少女と変わらない姿で質素ではあるが、薄緑色の貫頭衣を身にまとっており、歳は14.5歳に見える。
足場が悪そうな洞窟の中をひょいひょいと軽快に進む赤髪の少女は、その最奥に置かれている巨岩の前に立ちその巨岩に手をかけた。
「よいしょっと。」
軽い掛け声と共に、およそ人間には持ち上げる事が不可能であろう巨岩を、赤髪の少女は軽々と持ち上げ横に動かす。
そうして洞窟の中にあった巨岩で蓋をされていた更に奥、日の光が完全に届かない場所への道が開かれた。
その洞窟の奥では岩の上でだらしなく、眠りこけている金髪の少女がいた。
赤髪の少女はその眠りこけている金髪の少女の肩をポンポンと優しく叩き声を掛ける。
「お師匠様〜。もう夜更けです!起きて下さい。起きる時間ですよ!」
「・・・んむぅ。あともう12時間・・・。」
その金髪の少女は人間でいうと歳は12.3歳くらいの少女で幼いながらも、人間離れした美しく可愛らしい容姿をしていた。
1つ人間の容姿と大きく違う点は綺麗な赤一色の宝石がぶら下がった、枝の様な奇妙で美しい翼を持つこと。
そんな少女は綺麗な金髪のロングヘアをサラサラと無造作に垂れさせてだらしなく眠っていた。
何度揺すっても起きる気配のない金髪の少女に赤髪の少女は1つため息をついて、慣れた様子で金髪の少女をひょいっと担ぐ。
そうしてひょいひょいと軽い足取りで洞窟の外へと出た赤髪の少女は担いだ金髪の少女に声を掛け続ける。
「また、夜が明けますって!早くこの砂漠を抜けてしまいましょう?それに、ほら!今日は綺麗な満月ですよ。絶好の旅日和です!」
「・・んぅ。美鈴ちゃんはずいぶんと元気ねぇ。私は凄〜く眠たいわぁ。いつもの様に担いでもらえるかしら〜。」
「なんで、吸血鬼のお師匠様が夜更けに眠たくなるんですか!もうっ!・・・とにかく、もう5年は砂漠から出られていません。もう砂漠での野宿はこりごりなんですよぉ。早く脱出しましょう!《解除》」
金髪の少女を担いだ、〖美鈴〗と呼ばれた赤髪の少女は先程まで居た洞窟に向けて指をパチリと鳴らす。
すると洞窟がサラサラと砂へと変わり崩れ落ちた。
「美鈴ちゃんがいてくれたら砂漠での野宿が楽で良いわねぇ。今日は綺麗な満月で良い夜だし、のんびり行きましょう?」
「いやいや、いくら私が土属性の魔法が得意といっても、魔法を維持するのはとても疲れるのですよ!それよりもお師匠様、次に進むべき道はどっちですか?」
「ん〜とねぇ。・・・綺麗なお月様に向かって進み続けてみましょう。綺麗だからねぇ。」
「分かりました!今日こそは砂漠を抜けてお師匠様の故郷のある、西の大陸に少しでも近づきますよー!お師匠様、しっかりと掴まっていて下さいね。」
「はいはーい。頼りにしてるわぁ。美鈴ちゃん。」
金髪の少女を担いだ美鈴は気合いを入れ直すと移動速度を早める。
人間には出せない速度で走る美鈴はまっすぐに、月が浮かぶ方向へと走り続ける。
そうして気合いを入れた美鈴であったが、彼女達が目的地である、紅魔館へ到着するのは今から50年後の事である。
方向音痴の彼女達の旅はまだまだ続く・・・
Asyl perspective
・・・ぼやけた世界に沢山の小さな光が瞬いている。
《貴方達は私が護りますから、だから、ゆっくりと寝ていて下さい。起きる頃には全て終わっていますから》
誰に言った言葉なのか、とにかく
《そんな顔しないで?・・・大丈夫。大丈夫。私に任せて、良い子だから、みんなおやすみ。》
そんな子達は愛おしく、愛らしい。だから、私はこの子達を守る為に・・・
《私は貴方達の居場所を、時間を、世界を護ります。だから、さようなら。元気でね。》
最期に見た彼女達の顔はどうだったか。
絶対に忘れる事のないはずのあの子達との記憶なのに
その事だけは・・
なんでだろう・・・
覚えていない。
「・・・ふぁぁ。・・夜、ですか。」
目を覚ますと外は夜更けのようで、真っ暗ではあるが、吸血鬼である私の目は月明かりだけでもまるで、昼間の如く辺りを見ることができている。
ふかふかベッドでぐっすり寝たからか、身体が軽い。
昨日、ヴァルターに名付けをしてから感じていた倦怠感も無くなった。
銀髪のサラサラな長い髪が布団の上に垂れ下がっているのを見て、昨日から始まった銀髪少女としての生活を再度自覚する。
昨日は、ヴァルターと小悪魔と一緒にお風呂に入って、小悪魔に魔法についての興味深い話を聞いて、それで部屋で寝ようとした時に誰かが、枕元にでてきて・・・。
・・・・・えっ?怖っ!?
ま、枕元に誰かがいたのですか!?
それで私は気にせずに寝ちゃったんですか!?
自分の事ながら、あまりにも呑気でびっくりする。
疲れていたからって普通知ってる人ならまだしも、知らない人が枕元に立っていたらビックリして飛び起きると思うのですよ。
というか誰だったのでしょうか・・・。
昨日の寝る前の事だったからか、記憶があやふやで思い出せない。
それに、なんか寝ている間、昔?前世?の夢を見ていた気がする。
昔というよりかは今はタイムスリップみたいなもので西暦500年代のヨーロッパにいるもんだから、未来の夢?・・・まぁいいや。
とにかく、記憶の断片を夢で見ていたような気もするが、残念だが全く内容はおぼえていない。
ものすっごくもどかしい・・・
・・・まぁ、記憶はゆっくりと取り戻していくと決めたのだ、あまり気にしないようにしよう。
それよりも、昨日このベッドの枕元に誰かいた事の方が大事で衝撃的だ。
普通にめっちゃ怖い。
それに、なんか言っちゃいけないことを、失礼な事を言っちゃったような気もする。
私は枕元にいた誰かに言っちゃいけないような事を言って、そのまま眠ってしまったのだろうか。
・・・大丈夫?何もされてないですよね?
怖くなって、着ていたネグリジェも脱いで身体のあちこちを確認する。
・・・ふぅ。
どうやら変なイタズラはされていないようだ。
コンコンコン。
着ていたネグリジェを盛大に脱ぎ散らかして身体にイタズラされていない事を確認してホッとしていると部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「アズールお嬢様。お目覚めでしょうか?入ってもよろしいでしょうか?」
ノックの音とともに部屋の外から扉越しにヴァルターの声が聞こえてきた。
「おはようございます。ヴァルター、開けても大丈夫ですよ。」
そう声を掛けるとガチャりと扉を開けてヴァルターが入ってきた。
「失礼します。アズールお嬢様、お食事の準備ができ、わひゃぁ!?な、なんで素っ裸なんですかぁ!?服を、服を着て下さい!」
部屋に入ってきたヴァルターはきっちりとした執事服に身を包み、落ち着いた所作で私に声を掛けてきたようだが、素っ裸の私を見てワタワタとし始めた。
慌てて顔の前にしっぽを持ってきて、自分の眼を隠し素っ頓狂な声を上げて顔を真っ赤にして照れているヴァルター。
とても可愛い。
女の子なんだから、メイド服でも良いのに、変な所で律儀な彼女は、私が名付けた
まぁ、ヴァルターが良いなら良いですけど、可愛いお洋服を着せ替えさせたい私としては、執事が着る燕尾服以外も着て欲しい。
というか、燕尾服はこんな古代のヨーロッパに存在していただろうか?
この世界は基本は私が知る世界と変わらないようであるが所々で、私の記憶と相違があるようだ。
まぁ、常識に囚われてはいけないという事で、あまり気にしないでおこう。
「女の子同士なんですからそんなに恥ずかしがらなくても、というかなんでヴァルターが恥ずかしがってるんですか・・・。」
「女の子同士とは言え、恥ずかしいものは恥ずかしいです!それに、私は元々種族:狼〖男〗。まぁ無性みたいなものでしたが、感性は男よりだったんですから余計に恥ずかしいんです。」
・・・それは、本来なら見られた私が恥ずかしいと思うべきなのだと思う・・・。
でも、ヴァルターが元々男の感性を持っていたとしても今はもう可愛らしいもふもふお耳ともふもふ尻尾が付いてる女の子なのだ。
裸を見られても全然、気にならない。
・・・ん?
あれぇ?
・・・そういえば。
「ヴァルター、今日はもう満月じゃないはずですが、姿が人間の姿のままですね。てっきり、狼の姿に戻ると思ってたんですが。」
「・・・どうやら、種族が人狼に進化したおかげで、今の姿が私の基本の姿となったようです。狼の姿にも戻れますが、変化に妖力を使うので今の姿の方が楽で良いです。」
ふむふむ、どうやら満月の日じゃなくても、もふもふは健在のようだ。
これでいつでもモフる事ができます!やりました!
「・・・アズールお嬢様、いきなり尻尾や耳に触るのは禁止ですよ。もしいきなり触ったら、怒りますからね!」
釘を刺された。
ちくせう。
まぁ、いきなりは触らなくても、成り行きで触ってしまうのはしょうがないだろう。
虎視眈々と機会を伺うのだ。
「ヴァルター、改めておはようございますですかね?それともこんばんはですか?食事を用意してくれたのですね。ありがとうございます。」
「アズール様。妖怪の常識では夜はおはようございます、です。食事はホールにご用意してあります。ですが、食事の前にまずはお召し物を。」
あっ。
そうだった。
今の私は素っ裸だった。
さっきのネグリジェを着ても良いが、また寝巻きに着替えるのは何だかだらしないような気もする。
着替えの服はあるだろうか。
そう思った私だったが、突然黒いモヤが身体からでてきて全身を覆ったかと思うと、昨日着ていた服が現れた。
深い青色のロングスカート、薄い緑色のドレスの上に黒に近い藍色のローブを着た、いわゆるゴスロリでRPGの魔法使いみたいな服装。
どうやら、魔力で服も作れるようだ。
魔法ってすごい。
「・・・いや、無から服を作り出す魔法なんて聞いた事も無いですが・・・。まぁアズール様は色々と規格外なので気にしないでおきます。」
遠い目をしたヴァルターが何やら言っているが、気にしないでおく。
それよりも早く魔法を研究したい。
溢れんばかりの知識欲は私の行動力を底上げするようで、用意してもらったご飯(何か血が入ってるようだが、今の私は吸血鬼らしいし気にしない事にした。てか、ご飯おいしい。ほっぺた落ちる。)を食べた私はそのままの足で、紅魔館へ向かい、何故か空いた酒瓶だらけの部屋で疲れた顔をしている小悪魔とスカーレット伯爵に許可をとって魔導書を月光館へと持って帰り、その日から読書、研究を始めた。
スカーレット伯爵や小悪魔も時折様子を見に来てくれたが、特に働けやら出ていけやら言われずに過ごしていけた。
小悪魔には数年で「私が教えられるものはもうありませんね〜。」と魔法使いとしての免許皆伝をいただけた。
ヴァルターも、そんな私にとても良く尽くしてくれた。
ご飯やお風呂や、屋敷の掃除、魔法の研究に使う材料集めなど、幅広く私の身の回りの世話をしてくれた。
最近では引き込もり気味の私に困っているようであるが、私の飽くなき探究心は全て魔法に注がれているのです。
研究すればする程に、理解すればする程に魔法とは奥深く、とっても分かりやすい法であると理解することができた。
魔法とは、実に興味深い、物理法則のような、一種の法則です。
よくあるRPGの魔法の概念のようでいて、その実全く違う。
誰しもが持つ魔法への解釈。
すなわち、妄想。
それこそが、魔法の原動力であり、妄想できる事柄はこの世界では、全て魔法として表出する事ができる。
限度はありますが・・・。
私は前世から妄想は得意だったようだ。
ありとあらゆる魔法に対する妄想は網羅していると言って良い程に魔法の事ばかり考えて時が過ぎていった。
そうして、紅魔館にあった蔵書を全て読み終わり、一通りの魔法を極めた後も、独自に魔法の研究ばかりしていた私は、館に引き込もってから50年の年月が流れていても、気にならない程に魔法に熱中していた。
〖後書き〗
これから物語は少し加速して行きます。
今回はいきなり50年も年月が流れました。
しかし、今作品に登場する妖怪は長命で変化に乏しいと設定しているので、基本状態などは、年月によって変化しません。
変化するのは経験値くらいでしょうか。
さて、今回新たに2人のキャラが登場しました。
内1人は原作キャラで、少し原作改変もあったかとおもいますが、どうぞよしなに|ω・`)
次の話からさっそくこの2人のキャラが主人公と絆を紡いでいきます。
投稿頻度については1週間に1話のペースで頑張って投稿していきたいと思います。
またまたたくさんのUA、お気に入り登録ありがとうございます!
作者のニヤニヤの口角が上がり続けて天を貫きそうです!( ´艸`)
まだまだ、物語は続いていくので楽しみに待っていただけると幸いです!