正直シャルのこの部分上手く持ってくようにしたかったんで中々難産でした…
僕が転入した次の日、ドイツの代表候補生ーーーラウラ・ボーデヴィッヒさんが転入してきた。
2日連続の転入生という異常なことにクラスがザワつく。
更にボーデヴィッヒさんは自己紹介を名前だけで終わらせると、
一夏に近づきその顔に平手打ちをした為、先程より一段と疑念が深まることとなった。
◆
「やっぱり胸がキツいなぁ…」
転入してから数日、彼や一夏の皆と放課後にISの特訓や模擬戦を毎日していて、
1度だけボーデヴィッヒさんが乱入してきた以外は特に問題なく行えている。
今は特訓を終え、彼は用事があるということで、部屋に戻って来ておらず僕1人なのでシャワーを浴びている。
寝ている間も彼より起きるのが遅かった時に見られる可能性があり外すことが出来ないので、
シャワー中だけが常時付けているローテクを外せる唯一の時間なのだ。
「やっぱり優しいな、彼…」
そうして考えるのは同室である彼の事だ。
この数日、IS学園の授業は勿論ISの特訓に加えて同室である為、殆どの時間を彼と共に過ごしている。
そんな中で彼は僕にとてもよくしてくれた。
一夏が気にしないから一緒に着替えようと言ってきた時に宥めてくれたり、IS学園の分からない場所へ案内してくれる。
織斑先生に頼まれたのもあると思うけど、初日に浴室に入らないよう約束したり元々細かな気遣いが出来る人なんだと思う。
でも、彼が優しいからこそ騙していることへの罪悪感が日に日に募っていく。
そもそもこうやって安心してシャワーを浴びられるのも彼の配慮のお陰だ。
「そんな彼を騙して……酷いな、僕」
シャワーの音が、嫌に頭に響く。
スパイ行為という犯罪に手を染めてまで、自己承認してもらおうとしていた筈なのに…
そんな考え事をして油断していたせいだろう。
うっかり着替えをベッドの上に忘れた為にバスタオル1枚でシャワー室と部屋を繋ぐ通路を開けてしまい、
それとほぼ同時に部屋の扉が開いて彼が戻ってきて鉢合わせしたのだ。
僕と彼の間の抜けたあ、という声が重なり数秒…ごめんと言いながら僕は扉を閉める。
扉を閉めた後で僕はきっととてつもなく赤くなっている顔を、両手で覆って蹲るのだった。
◆
今度はジャージをちゃんと着てからシャワー室を出る。
何故着替えられたかと言うと、ベッドに置いてあった着替えを彼が扉をノックして伝えに来て、
しかもわざわざ扉を少しだけ開けて僕に渡してくれたからだ。
僕がシャワー室から出て見ると、彼はベッドに腰掛けており、テーブルにはお茶が2つ用意されていた。
「お、お待たせ…」
緊張気味の僕の言葉に、彼も緊張気味ではあるが返事を返してくれてお茶をすすめてくれる。
彼の気遣いを嬉しく思いつつ、お茶を一口貰う。
それから暫く沈黙が続いていたが、やがて彼が恐る恐るといった具合で僕に尋ねる。
尋ねたと言っても、彼は自身の希少価値を分かっていたため、自分や一夏目的で接触してきたのでは、
と僕の大体の目的を言い当てられてしまい、ほぼ確認作業で僕が自分で話したのは僕の身の上とデュノア社の内情くらいだった。
「今まで、騙していてごめん」
僕は彼や皆を騙していた事に対して謝罪した。
勿論こんな謝罪なんかでどうこうならないのは分かっている。それでも、言葉にせずにはいられなかった。
そんな僕に彼は大丈夫だと言って、女とバレた僕がどうなるのかを気にしてくれている。
「女である事がバレたから、きっと本国に呼び戻されると思う。
後のことは分からない。よくて牢屋行きかな」
フランス政府から僕がどう扱われるか全く分からない。
父と本妻の人は僕の事はIS適正の高いだけの駒としか見ていなかったから不要になったら捨てるだろう事は予想がついてしまう。
僕の残りの人生はろくな物にならない事だけは確実だと、そう考えていた。
彼は僕の言葉を聞くと、おもむろに自分の端末を操作しだす。
そうして操作が終わったのか彼が手を止めて数秒後、僕の端末が何かを告げるように画面が目の前に開く。
「……え?」
僕は信じられないものを見て固まってしまう。
そこにあったのは、彼のISの稼働データだったからだ。
余りの事に声も出せずにいると、これで最低でもシャルルが酷いことになることはないよね、と彼が口にした。
「ど、どうして!?だって僕は、キミを騙してて…それに、このデータはーーー」
出すとこに出せば、それこそとてつもない大金が手に入る価値があるものだ。
一夏のデータもかなりの価値だと思うが、彼は既に専用機が与えられている。
対して彼は専用機が用意されておらず、何の因果かデュノア製の第2世代量産機『ラファール・リヴァイヴ』が一時的に彼専用として与えられている状態である。
つまりこのデータは男性がそれなりの期間、量産機を動かした実績を持つある意味一夏のデータよりも貴重なものだ。
察しのいい彼にそれが分からないとは思えない。
僕が納得いかない顔で彼を見ると、彼はしっかりと僕の目を見てーーー
ーーー俺が決めたんだ。俺のデータでシャルルが助かるなら、この使い方が良いって。
照れくさそうに、だけれどそれ以上に真剣に彼はそう言った。
そんな彼の言葉に僕は、心を射抜かれてしまったんだ。
◆
あの時の出来事は僕の中で1番忘れられない、忘れたくない大切な思い出だ。
その後にあった父と彼との出来事もかなり印象的なのだが、この話はまた次の機会にしよう。
何故なら彼との出会いを思い出していたのは…まぁ、僕が女の子である事がバレた時の状況が数分前に起こったからで、
現在目の前では彼が土下座した状態だからだ。
(別に、キミにはもう全部見せちゃってるのに…真面目なんだから)
その事が可笑しくて、笑ってしまう。
その声に疑問を持ったのか、彼が顔を上げて不思議そうに首を傾げた。
「なんか、僕が女の子ってバレた時の事思い出しちゃって」
そう僕が言うと彼は顔を逸らして頭を搔く。
一緒にいるようになってから知った彼が照れている時の癖だ。
彼的にはあの時の言葉はくさすぎる、もうちょっと言い方があったと思っていて言われるのがむず痒いらしい。
そんな照れている彼にそっと近付いて、抱きしめた。
「僕達恋人同士なんだからそんなに謝らないで。
急に見られたら、恥ずかしいけど、キミになら…大丈夫だから」
僕の言葉を聞いて、ありがとう、と告げて抱き締め返してくれた。
(僕の方こそ、ありがとう。何も無かった僕に、居場所をくれて)
「…大好き」
主人公vsシャルの父親まで書くと更にかかりそうだったので一旦ここで区切ることにしました。
次はリクエストか福音事件のどっちかになりそうです。
シャルの心の準備が……
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出来た(R-18作成)
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まだ出来てない(本作のみ)