シャルロットとの甘い日々   作:nightマンサー

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最近感想いっぱい貰えて嬉しい作者です。

注)この作品での束さんは原作以上に容赦なくなってます。ご注意ください。


福音事件編2 浮かれる者、沈む者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー臨海学校2日目の朝。

臨海学校といえ学校行事であることには変わりなく、今日からはISの実習授業に入る。

この臨海学校で行う校外学習は主に各国が開発したIS用新装備の機能テストだ。

生徒が新装備のISを操縦し、整備科の生徒がテストデータを取得する形で行われる。

そして専用機を持っている者達は、その専用機に合わせた新装備のテストを行う予定である。

ちなみに俺のISは専用機ではなく、シャルロットの父親の会社であるデュノア社製の第2世代量産型IS『ラファール・リヴァイヴ』であるが、

個人持ちということで立場上、専用機持ちと同じ扱いらしい。

 

「よし、専用機持ちは全員揃ったな?」

 

織斑先生の言葉に俺は疑問を抱く。

疑問に思っているのは他に集まった一夏達も同じのようだーーーただ1人を除いて。

 

「先生、箒は専用機持ってないでしょ」

 

みんなの疑問を代表して鈴が織斑先生に告げる。

そう、この場には専用機を持っていない箒も集まっていたのだ。

その事を指摘されると箒はバツが悪そうな顔をする。

 

「私から説明しよう。実はーーー」

 

 

 

「ちぃぃぃぃぃちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

 

 

 

織斑先生が説明しようとした瞬間、何か叫びつつ砂を巻き上げながら誰かがこちらに物凄い勢いで迫ってくる。

凄まじいスピードでその誰かは織斑先生に向かっていき、あわや激突するかと思いきや、織斑先生は突っ込んできた人の頭を掴むと、

その人の勢いを上手く受け流し停止させた。

織斑先生には悪いのだが正直な感想を言うと、人間離れし過ぎではないだろうか…

 

「やぁやぁ会いたかったよちーちゃん!さぁ、ハグハグしよ!愛を確かめ合おう!!」

 

突っ込んできた人も、織斑先生にアイアンクローされていることを気にせず織斑先生に話しかけていた。

 

「五月蝿いぞ、()

 

織斑先生が相手の名前を呼んだことで、一夏と箒を除いた全員が驚愕した。

束と言う名前をこの世界で知らぬ者はいないと言ってもいい程に有名だ。

今の世界で欠かすことの出来ないISの生みの親である天才科学者、それが彼女の肩書きである。

ちなみにISの根幹とも言える『コア』は篠ノ之博士しか作ることが出来ないため、この人は全世界指名手配中である。

 

「相変わらず容赦のないアイアンクローだね、ちーちゃん!」

 

こうして見ている分には、そんな天才科学者には見えないが、

織斑先生のアイアンクローを受けて普通に会話している時点でこの人も相当なのだろうと確信した。

 

「ほうきちゃーん!やぁ!」

 

「……どうも」

 

そうして難なく篠ノ之博士は織斑先生のアイアンクローから抜け出すと、岩陰に隠れていた箒に明るく声をかけていた。

箒の方は苦手なのだろうか、いつもの凛とした姿勢はなりを潜めている。

 

「いやぁ、こうして会うのは何年振りかな!少し見ない間に大きくなったねぇ!特におっぱいがーーー」

 

そこまで口にした所で篠ノ之博士の顔面に木刀が突き刺さり、かなりいい音が砂浜に響いた。

 

「殴りますよ」

 

「殴ってから言ったぁ!ほうきちゃんひどーい!」

 

何故かコントじみた事をしているが、そもそも何故篠ノ之博士が此処にと疑問に思って状況を再確認し、1つの仮説が浮かんだ。

もしかして…箒の専用機の作製、もしくは既に完成していてその受け渡し?

 

「っと、感動の再会はこれくらいにして……はい、大空にご注目ぅ!」

 

その言葉と共に空に向けて指をさす篠ノ之博士。

それに従って皆が空を見上げると、キラリと何かが光って此方に近付いてくる。

数秒後、辺りに轟音に響かせて降ってきたのは菱形の物体。

それが一瞬で消え、中から鮮やかな紅色のISが姿を現した。

 

「じゃじゃーん!

これが現行ISのスペックを大幅に上回る、束さんお手製のほうきちゃん専用機、第4世代ISーーー『紅椿』!!」

 

篠ノ之博士の言葉を聞いて、周りの全員が再び驚愕する。

今篠ノ之博士は確かに第4世代と口にしたからだ。

現在世界各国が心血を注ぎ、ようやく第3世代ISの開発が行われデータ収集を行っている最中である。

つまり、第4世代ISというのは未だ机上の空論に等しいものであるのだが、

篠ノ之博士が言ったことが本当であれば、それを既に完成させたということになる。

 

「ほうきちゃんのデータは先行である程度インプット済だから、後は実際に装着して微調整するだけだよ!」

 

そんな周りの驚愕なぞ、どこ吹く風と言わんばかりに進めていく篠ノ之博士。

 

「篠ノ之さん、もしかしてあのIS貰えるの?」

 

「身内だから特別扱いってこと?何それずるい」

 

当然ながら此処には他にも生徒がいる。

そんな中で見せびらかす様に専用機を貰えば、箒には悪いがこういった反応をする人が出てきてもしょうがない部分がある。

まぁそう言った生徒は織斑先生が軽く睨んだ事で離れていったが。

 

「ほい、フィッティング終了。ほうきちゃん、試運転してみようか」

 

篠ノ之博士の言葉で『紅椿』の試運転に入ったのだが、そこからは圧巻の一言だ。

機体のスピード、装備の威力、更には《展開装甲》という攻撃、防御、スラスターとして使える万能兵器をも搭載している。

そうして『紅椿』が圧倒的性能を見せていた最中ーーー

 

「お、織斑先生っ!」

 

山田先生が何か焦ったように此方に走ってきて、何か織斑先生に耳打ちする。

 

「本日の機能テストは中止する!生徒は全員直ちに撤収し、旅館にて待機!

以降これを破ったものは法的処置の対象となる!迅速に行動しろ!」

 

耳打ちされた織斑先生は一瞬だけ顔を顰め、次いで大声で指示を飛ばした。

それを聞き生徒全員が疑問に思うものの、法的処置の対象と聞いて急いで展開していた装備を片付けに移る。

 

「それから、専用機持ちは全員着いてこい。やってもらいたい事がある」

 

織斑先生の言葉に疑問は残りつつも、自分達専用機持ちは織斑先生の後に続く。

 

 

 

 

 

ーーーこれが、後に『福音事件』と呼ばれる騒動の幕開けであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アメリカとイスラエルで共同開発された第3世代IS『シルバリオ・ゴスペル』ーーー通称『福音』が制御下を離れ暴走。

監視空域を離脱後、衛生による追跡で現在の飛行軌道から此処から2キロの空域を通過することが分かった。

IS学園上層部の通達により、我々がこれに対処する」

 

旅館のとある一室を作戦会議室として、織斑先生によって現在の状況が伝えられる。

どうやら暴走したISの対処が任務のようだが、1番近くにいるからといって、代表候補生とはいえ学生に任務を任せるのかと疑問が残る。

 

「『福音』の詳細なスペックデータを見せる。言っておくが、これは国の機密に当たる。

もし漏洩すれば査問委員会による裁判と、最低でも2年の監視生活が始まると思え」

 

確かに国の共同開発したISのデータなんて、今の時代では値千金の価値あるものだ。

 

「広域殲滅を目的とした、特殊射撃型……私の『ブルー・ティアーズ』と同じ、オールレンジ攻撃を行える機体ですわね」

 

「攻撃と機動の両方を特化した機体、この手の機体は機動力の分装甲はそこまで厚くないけれど…厄介ね」

 

「この特殊武装が曲者って感じがするね。防御か回避をするとしても連続は厳しそうだから、撃たせないよう立ち回るのが良いと思う」

 

「このデータでは格闘性能が未知数だ。特殊射撃型なら懐に入るのがセオリーだが、これだと懸念が残る」

 

国のIS代表候補生ともなると、こういった事態への対処法も訓練するのだろうか、

提示されたデータを見ながら、シャルロット達が各々意見を述べていき、俺と一夏は完全に置いてけぼりとなっていた。

 

「『福音』は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは1回が限界だ」

 

「1回きりのチャンス……では、やはり一撃必殺の攻撃力を持った機体であたる必要がありますね」

 

織斑先生の言葉に山田先生が案を出す。

確かに今聞いた『福音』の速度だと、一撃で落とせなければすぐに距離を離されて逃げられるだろう。

一撃必殺の攻撃力と聞いて俺は、というよりこの場にいる皆の視線がある1人に集まる。

 

「……えっ!?」

 

皆の視線を受け、驚く一夏。

 

「アンタの《零落白夜》で落とすのよ」

 

鈴の言葉に皆が頷く。

一夏の専用機『白式』に備わっている単一仕様能力(ワンオフアビリティ)である《零落白夜》は、

対象のエネルギーを消滅させることが出来る。これによりエネルギー兵器の無力化は勿論、

ISのシールドバリアを切り裂きシールドエネルギーに直接ダメージを与えられる、正に対IS最強の武器と言って良いだろう。

但し、使用中は『白式』自身のシールドエネルギーを消費するという諸刃の剣だ。

 

「織斑、これは訓練でなく実戦だ。男性操縦者で専用機持ちとはいえ、代表候補生でもない一生徒だ。

例え断っても、お前に一切非はない」

 

これは織斑先生の優しさだろう。だが、それは結果的に一夏の背中を押したようだ。

 

「…やります。俺が、やってみせます」

 

そう口にした一夏の目に迷いはなかった。

こうして一夏の《零落白夜》で決める事となったが、どうやって一夏を『福音』の所まで運ぶかという次の問題が出てきた。

《零落白夜》と言えど、確実に『福音』を落とすために一夏のエネルギーは全て攻撃に費やさなければ厳しいだろう。

そうなると、超音速飛行している『福音』の元に運ぶもう1人が必要不可欠だ。

 

「では、専用機持ちの中で最高速を出せるものをーーー」

 

「ストップ、ストップぅ!!その作戦はちょっと待ったなんだよー!」

 

織斑先生が専用機持ちの中で速度の出るもう1人を選出しようとしたタイミングで、

天井の一部が開いて篠ノ之博士が部屋に入ってきた。

 

「ちーちゃん!私の頭の中にもっといい作戦がナウプリンティングぅ!」

 

「うるさい、早く出ていけ」

 

鬱陶しそうに篠ノ之博士を退出させようとする織斑先生。

 

「ここは断然、『紅椿』の出番なんだよ!」

 

その言葉に、織斑先生含めその場の皆が驚く。

 

「さっき見せた『紅椿』の《展開装甲》をスラスターにすれば余裕で超音速出せるからね!

まぁ、ほうきちゃんが初めてだからちょっと調整するけど、まぁ7分あれば余裕余裕!」

 

心底楽しげに語る篠ノ之博士。

こうして『福音』強襲作戦は、一夏と箒の2人に託された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦実行まであと数分。

一夏と箒の準備も完了し、現在は出発地点の浜辺に向かっている所だろう。

自分を含め、他の専用機持ちは作戦行動中は作戦室にて待機なので、トイレを済ませ作戦室に戻っている所である。

 

「やぁやぁ、キミが2人目の男性操縦者だよね?」

 

その途中にある廊下にて、篠ノ之博士が立っていた。

 

 

ーーーその姿を見た瞬間、背筋に凄まじい悪寒が走った。

 

 

何故かは分からないが、ここに居るのは不味いと本能が警鐘を鳴らしている気がする。

それなのに、まるで蛇に睨まれた蛙のように身体が言うことを聞いてくれない。

 

「ふーむ、ふむふむ!」

 

そんな俺を他所に篠ノ之博士は俺の周りを回りながら俺を見てくる。

 

「…うんうん、なるほどねぇ!」

 

暫くして何度も頷きながらわかった、と言葉にする篠ノ之博士。

自分は何一つ分かっていないのだが、何がわかったのか意味が分からず、何か自分に用でもあるのか聞こうと口にしようとしてーーー

 

 

 

 

「なんでお前みたいな有象無象がIS使えてんの?さっさと死ねよ」

 

 

 

 

ゾッとするような声で篠ノ之博士から放たれた冷酷な言葉に、俺は動きを止めた。

 

 

「いっくんが唯一の男性操縦者として全世界の注目を集める筈だったのに、邪魔してくれちゃってもー!

知ったのが入学後じゃなかったら、完全に消してたのに、ざーんねん。ま、今日はちーちゃん達に会えて気分良いからどうでもいいや!

メインイベント(・・・・・・・)がこれからだしね!」

 

次の瞬間に口調と声は皆と居た時のものになっているが、言っている内容は変わらず酷いものだ。

言いたいことを終えたのか、篠ノ之博士はいつの間にか目の前から消えていた。

俺は先程の悪寒がこれだったのかと冷静に納得していた。

この自分本位で言いたいことだけ言って、理不尽に攻撃をしてくる感じ。それは、 昔俺を虐めていた女とよく似ていた(・・・・・・・・・・・・・・・・)

気分は最悪だが、ここにいても仕方ないため作戦室に足を向けようとしてーーーさっきの女の発言が頭に引っかかり嫌な予感がしてくる。

 

 

ーーーそうして立ち尽くして数秒後、俺は踵を返し旅館の外へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、『福音』強襲作戦を開始する」

 

織斑先生の号令で、浜辺に居た一夏と箒が『福音』の元に飛んでいく。

僕や他の皆は作戦室で見守っているのだけれど…

 

「デュノア、アイツはまだ戻ってこないのか?」

 

「は、はい。トイレに行くって言ってからまだ…」

 

織斑先生の言葉に応える。

実は、作戦実行の少し前にトイレに行った彼がまだ戻ってきていなかった。

 

(気になるけど、今は作戦を見届けないと…)

 

少し前に見せてもらった『紅椿』の性能と、『白式』の《零落白夜》なら勝算はかなり高いのだが、

『紅椿』に乗ってからの箒の浮つき具合が少し気になる。

織斑先生も言っていたけど、念のため僕も出発前に気を引き締めてと声をかけた。

でも問題ないと言いきられてしまって、結局不安なままとなってしまった。

 

 

 

ーーーそして、この不安は的中することとなる。

 

 

 

初撃を回避されたけれど、その後『紅椿』が『福音』を抑えることでもう一度チャンスを作ったのだが、

運悪く『福音』の攻撃先に密輸船がいて、一夏は助けるためにエネルギーを消費してしまった。

箒が気付いて見捨てろと言ったのを聞いて、一夏が否定し箒らしくないと悲しげに告げる。

そんな決定的な隙を『福音』は見逃さない。防御する一夏だが、《零落白夜》のデメリットでエネルギーがなくなってしまった。

シールドエネルギーのない無防備な一夏に向けて『福音』のエネルギービームが直撃すると思われた、その時。

見慣れたISが一夏とビームの間に割り込んだのが見えた。

 

「今の、でも、なんで…!」

 

ビームによる水飛沫が止み、映像がはっきり見えるようになる。

そこには『ラファール・リヴァイヴ』を装着し右手に大盾、左手に気絶している一夏を抱えた状態の彼の姿があった。

瞬間、彼は通信で自分が何とか時間を稼ぐから、その隙に一夏を連れて離脱するように箒に伝えた。

 

「そんな、駄目っ!」

 

箒も彼が囮になることを拒んだが、彼は自分が一緒だと速度差で離脱出来ないと言う。

やがて苦渋の表情で箒は一夏を連れてその場を後にした。

 

「駄目だよっ!早く逃げて…!」

 

僕は必死に彼に逃げるように伝える。

けれど、彼は自分はもうそんなに動けない状態であると告げた。

『福音』の元まで慣れない高速移動を行い相当疲弊してしまっていたのだ。

一夏が当然のように動かしているから忘れられがちだが、そもそも彼と一夏はISを動かし始めて日が浅い。

そんな中で高速移動を使用し、自力で『福音』の元まで駆けつけただけで凄いと言える。

だからこそ、それ以上彼が何か出来るとすれば…それは大盾を持っての囮しかないのだ。

 

「嫌だよ…いや、いやぁぁぁぁ!!」

 

それは最早戦いではなく、一方的な蹂躙だった。

『福音』から放たれる大量のビームを大盾で防ぐことしか出来ない彼。

彼と彼を護る『ラファール・リヴァイヴ』がボロボロになっていくのを、ただ見ているしか出来ない僕。

 

 

ーーー2分。

それが彼が『福音』から稼いだ時間であり、箒と一夏を離脱させた何にも代えがたい時間だ。

 

 

 

その時間を稼いだ彼は、『福音』に撃ち落とされ今も行方が分からない。




読んで頂きありがとうございます。
シリアス続きますが、この先のイチャイチャ目指して頑張ります。

シャルの心の準備が……

  • 出来た(R-18作成)
  • まだ出来てない(本作のみ)
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