時系列は福音事件後ですが、内容は8割思い出しの所謂過去編です。
「オルテナウスの防御力は凄まじいね。
でもやっぱりその反面、攻撃面に不安が残るのが課題かな」
放課後のアリーナにて、俺とシャルは模擬戦を行い今はその模擬戦内容の反省会中である。
福音事件後、正式に自分の専用機となった【ラファール・リヴァイヴ・オルテナウス】。
シャルの言う通り、防御面のみなら第4世代ISである箒の専用機『紅椿』すら超える程であるーーーのだが、当然弱い部分もあり、それが攻撃面である。
《円卓の盾》のデメリットとして、一夏の《零落白夜》と同じで《円卓の盾》1つで
そのため他の専用機持ちの皆との模擬戦戦績は、遠距離攻撃且つ多方向から攻撃出来るセシリア、AICによって動きを完全に止められるラウラ、技量で盾の防御の隙をついてくるシャルには全敗。
射撃攻撃はあるが基本近距離戦がメインの鈴とは所謂盾によるゴリ押しで極稀に勝つこともあるがほぼ負け。
「どうにか攻撃面を補いたいけど、
自分もシャルの意見に同意なので、盾での戦い方をもっと学びつつ経験を積むことをこれからの目標にすることを決める。
実際福音事件で俺がやれたことは皆のサポートであり、直接戦闘に参加出来たとは言い難い。
「仕方ないよ、そもそもISを動かし始めてまだ半年も経ってないんだもん。むしろここまで動かせてるのは凄いことなんだよ!」
ふんすと擬音語がつきそうな感じでシャルが俺を褒めてくれだおかげで、沈んだ気持ちが少し楽になったのでシャルにお礼を言う。
「そんな、ありがとうなんて。当然だよ、だって僕はキミの、その……か、かの、彼女っ、だから」
顔を赤くしつつも言い切るシャルに、俺も顔が赤くなるのを感じる。
ーーーピピピッ!
そんな静寂を破ったのは、シャルの端末の電子音だった。
「うわぁぁ!?って、つ、通信?一体誰からーーー」
シャルが突然の電子音に驚きつつも、端末を操作して通信してきた相手の名前を見て固まった。
何事かと思ってシャルに問いかけると、シャルは少し言いづらそうにしていたが、やがてその口を開いた。
「えっと、その……お父さん、から」
シャルのお父さんという言葉に、まるで鈍器で頭を殴られるような衝撃を感じると同時に、その初対面時の記憶が思い起こされた。
◆
シャルルの事情を知った次の日。
俺が最初に行ったのは、織斑先生と山田先生に助力願いだ。
織斑先生は恐らくシャルルが女であることに勘付いていると予想したからで、山田先生は俺が知る限りこのIS学園で一番信頼出来る大人であったからだ。
そうして現在、俺は生徒指導室にて織斑先生と山田先生にシャルルの事情を話した所だ。
「まさか、シャルル君が女の子だったなんて……」
「それで?この話を私達にして、お前はどうしたいんだ?」
山田先生はシャルルが女であることに驚いていたが、織斑先生の方は反応が薄い。どうやら俺の予想は当たっていたようだ。
俺は織斑先生の目を見ながら、2つお願いを聞いてほしいと頼む。1つはシャルルが女の子であることを暫く黙認してもらうこと。
そしてもう1つは
俺の2つ目のお願いに織斑先生と山田先生は目を見開く。
「まさかそんな要求をされるとはな。見かけによらず図太いんだな」
そう言う織斑先生に、待機状態の『ラファール・リヴァイヴ』を見せながら言葉を紡ぐ。
ーーー自分が使用しているISの製作会社の社長に挨拶したいっていう、至極真っ当な理由での……ただのお願いです。
◆
織斑先生達にお願いしてから数日後。
放課後に俺は織斑先生に呼び出され、応接室の前に来ていた。
「私と山田先生は扉の前で待機しておく。何かあればすぐに呼べ、いいな?」
織斑先生にお礼を言ってから、応接室への扉を開き中に入る。そこには顎髭を生やした厳格な雰囲気の一人の男性の姿があった。
彼こそデュノア社の社長であり、シャルルの父親であるアルベール・デュノアその人である。
軽く自己紹介を行い、IS学園に来てもらったことに対してお礼を言葉にする。
「キミが世界で2人目の男性IS操縦者か。知っていると思うが、デュノア社のCEOアルベール・デュノアだ」
そう言って握手を求めてくるアルベール。
ーーー
そんなアルベールに対して俺は、初手顔面ストレート
「……そうか、娘であると既にバレていたか」
だが、アルベールは当然だと言わんばかりに肩を落としてみせた。予想と違う反応に戸惑う俺に、アルベールは言葉を続ける。
「それで、キミはそのネタで私を脅すのかな?」
そのあまりの開き直りのような態度に、俺は腹の奥から苛立ちが立ち昇ってくる。
ーーー……娘のことが、大切ではないんですか。
俺の精一杯紡いだ言葉に、アルベールは即答した。
「勿論大切だとも。だからこそ、このIS学園に送り込んだのだ」
アルベールの言葉に、俺の何かが切れた音がした。
ーーー巫山戯るな!シャルルがどんな思いで過ごしてきたか、アンタにわかるのか…!
母親が亡くなって、傷付いている女の子にスパイをやらせるなんて、自分がされて嫌だと感じないのか!!
相手が社長であることも忘れ、怒りのままに本心を口にする。
そんな俺の様子を、アルベールは暫し呆然と見て…
「……そうか、それほどシャルロットを大切に思ってくれている人が出来たか」
何故か、心底安心したような表情を見せた。
ーーー貴方の態度は何処か腑に落ちない。いったい……
言いたいことを言い切って冷静になれた俺は、流石に変だと思いアルベールに問いただした。
「……そうだな。君には話してもいいかもしれない」
そうしてアルベールが語ったのは、デュノア・グループの内情についてだった。
経営不振に陥っていたことはシャルルから聞いていたが、なんとそれを皮切りにデュノア社内で他社と協力して乗っ取りを画策する派閥が出てきたという。
だがそんな派閥にとって邪魔な存在がいた。そう、アルベールの血を引くシャルルーーー本名シャルロットである。仮にアルベールを排除したとしても、アルベールの血を引く正当な後継者であるシャルロットがいると後々厄介であると考えた彼らは、先にシャルロットの排除ーーー暗殺を計画。
アルベールは何とか事前に察知することに成功したが、勢いを増している派閥を止めることは難しかった。
そこでアルベールが目をつけたのがIS学園であった。
IS学園にいればデュノア社から離れることができ、3年間は安全が保証される。
シャルロットを男としたのは、派閥の妨害があったとしてもIS学園に確実に編入させるための苦肉の策であり、スパイ行為も派閥の人間を欺くためのものであると。
正妻がシャルロットに酷いことを言ったのは本当だが、それにも彼女なりの理由がありそれを派閥の者に唆された為で、現在はシャルロットに直接会って謝りたがっているそうだ。
「キミからすれば、娘をスパイとして送り込んだ非道な父親の戯言に聞こえるかもしれないがな」
全てを話し終えたアルベールはどこかすっきりとした表情で俺を一瞥すると、そのまま部屋の扉へと向かう。
「シャルロットがIS学園にいる3年の間に会社を立て直すつもりだ。私はこれからシャルロットが男であると虚偽していた件を学園に報告する。1度入学してしまえば、外部干渉も退学もそう出来ない」
ーーー貴方は、本当に娘を、シャルロットを大切に思ってるんですか。
そう言って部屋の扉に手をかけるアルベールに、俺は自然と呼び掛けていた。
「勿論だ。あの娘は、私の娘なのだから」
こちらを向いて即答したアルベールの瞳が、俺には嘘をついてる人の眼には見えなかった。
ーーー待ってください。まだ肝心な話が終わってません。
だからだろう。呼び止めた俺を不思議そうに見るアルベール
ーーー俺の後ろ盾になってくれませんか、アルベール社長。俺のISのデータを渡します。報酬は、シャルロットの解放で。
俺の発言にアルベールさんは呆気にとられていたが、やがて優しい表情でこちらに向き直り、手を差し出す。
「……それでは釣り合わないな。キミに渡す報酬は、私が出来得る限りの全てにしよう」
部屋に入った時に拒んだアルベールさんの手を、今度はしっかりと握った。
「……っ」
ーーー部屋の前で話をすべて聞いていたとある存在に、2人は気付くことはなかった。
◆
それから学年別トーナメントVT事件後に、シャルロットは女性として改めて自己紹介し、皆に受け入れられた。……VT事件後のお風呂も相当な出来事だったが、今は割愛する。
「うん……うん、元気だよ」
アルベール社長と会話後、シャルロットは父親との仲を改善出来たらしく、今では定期的に話をしていると聞いている。
「うん……ぅえ!?あ、いや、その…」
だが福音事件後に掛かってきたのはこれが最初のようで、つまりは恋人になって初めて掛かってきた父親からの電話ということになる。
吃っているシャルに俺は電話を変わってもらえないかと頼んだ。
「えっ!?えっと……うん。その、彼が話があるから、変わっていいかな?」
暫くして、シャルから端末を借りる。
『久しぶりだね。稼働データ助かっているよ、いつもありがとう』
端末からシャルの父親のアルベール社長の声が響く。
こちらこそ、援助助かっていますと言葉を返した。
『話があるとの事だけれど、何かな?』
そう聞くアルベール社長の声に、俺は軽く息を吐いて心を落ち着かせてから、言葉を紡ぐ。
ーーー大切なお話があるので、直接会うことは可能でしょうか。
流石に娘さんと付き合っていますと電話で言うのは誠意が足りないのではと考えて、直接会えないか確認することにした。
とにかく会える日取り聞いてから準備をーーー
『あぁ、もしかして娘と交際している件かな?』
アルベール社長の一言で、俺の頭は真っ白になった。
◆
福音事件後、IS学園で俺とシャルの交際は既に広がっており、そこからどういう経路かは分からないがアルベール社長の耳にも入っていた様だった。
『あぁ、安心してほしい。勿論キミとシャルロットの仲は認めているとも。逆にキミ以外では私は認めないだろうな』
親公認であることは嬉しいのだが、親への挨拶がこんなにあっさりなのは流石に不味いのではと思って、後日改めて挨拶には行くことを何とか伝えた電話を切った途端に力が抜けて、その場に崩れるように腰を下ろした。
「だ、大丈夫?」
シャルが心配そうに覗き込んでくるが、今はゆっくりしたいと心から思った。
そろそろ甘々書きたい(糖分不足)
シャルの心の準備が……
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出来た(R-18作成)
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まだ出来てない(本作のみ)