ウマ娘×仮面ライダー 作:名無し
フィリップ「天皇賞・秋、エンペラーズカップを前身としたレースである天皇賞の秋開催。
日本の八大競走にも数えられ、有馬記念、ジャパンカップと並べて秋シニア三冠と呼ぶ人も…」
翔太郎「おいフィリップ、今それはいい。
…で、天皇賞・秋に出るってのは…どうしてだ」
スズカ「逃げたくないんです、あの恐怖から…。
そして、今言ってくれた様に、天皇賞・秋はとても大きなレースです、そこで勝てば…私が無事なことを伝えられる」
翔太郎「でも…飛び降りてダメージがあるんじゃないのか?」
スズカ「天皇賞・秋まで後3日あります、出走登録はもともと済んでますから…そこまでしっかり休んで臨むつもりです」
フィリップ「…今の君の状態を見た上で…ボクはオススメしないね」
スズカ「私は出ます」
翔太郎「本当に大丈夫か…?」
スズカ「私速いですよ」
翔太郎「……あ…?…いや、だとしても脚は…」
スズカ「でも私の方が速いです」
翔太郎「……」
フィリップ「…翔太郎、今のは…ボクからすると、会話が…」
翔太郎「ああフィリップ、成立してねえ…会話が成立してねえ…!」
フィリップ「どうやら、彼女も質問には答えてくれない様だね」
翔太郎「クソ、照井のヤツ…変なこと教えやがって…!」
スズカ(……今の脚で、私は天皇賞を走りきれるのかしら…。
きっとあの時言われた脚の問題は私にガイアメモリを使わせる嘘、だとしても…今のこのダメージじゃ…私の全力に耐えきれるの…?)
翔太郎「おい」
スズカ「え?」
翔太郎「早く行くぞ」
スズカ「何処に…」
翔太郎「トレセン学園だよ、アンタを帰さなきゃならねえ…」
スズカ「…わかりました」
スズカ「…あの、もう学園についたのに…何処に連れて行かれるんですか?」
翔太郎「…アンタは俺の依頼人じゃねえ、でも照井の依頼人だ、ならできる限りのことはしてやる」
スズカ「え?」
そういって翔太郎はある部屋の扉の前に立ち、ノックする
引き戸が開き、顔を出したのは…
タキオン「ふゥん…?珍しいペアだねぇ…」
スズカ「…どうしてここに…?」
翔太郎「ここで終わりじゃねえ」
スズカ「え?」
翔太郎「やれる事やって見ようぜ…そんな死んだツラしてねえで」
翔太郎(天皇賞に出走ってのは…良くも悪くも目立つ…。
病院から姿を消した奴さんも…狙ってくるならそこだ)
タキオン「まさか君達と組む事になるとはねぇ?」
シャカール「ハッ…こっちのセリフだっつーの、なンで他人サマのレースの手伝いなんか…」
タキオン「データが欲しいと言い出したのは君だろう?それに、抜けてくれても構わないんだ。
サイレンススズカの状態を考えたまえよ、そして後2日と半日という短い時間、ノイズは必要ない…違うかい?」
シャカール「チッ……!
いいか!このサンプルを見せてやンのは今日だけだからな!わかったらちゃンとしたデータを寄越せ!」
スズカ「えっと…はい…」
タキオン「なぁに、心配する事はない、君用の蹄鉄も明日にはできる、走り方も大きく変わるかもしれない…だが…
異次元の逃亡者にとって、それは問題ではない…そうだろう?」
シャカール「こっちが手を貸してンのは、マジのお前のデータが欲しいからだ…
そンだけ目をつけられてンだよ、お前は」
スズカ「……」
タキオン「…オイオイ、今更怖くなった…なんて言わないでくれたまえよ?」
シャカール「もしそうならさっさと言え、時間が勿体無ェ」
スズカ「……全て…」
タキオン「全て?」
スズカ「……全て、振り切ります」
タキオン「へェ…そうこなくては」
シャカール「始めンぞ」
スズカ「…はい」
タキオン「さて、蹄鉄は完成したかい?トレーナー君」
内海「これが、難波蹄鉄・改!基準の内でできる限り…」
タキオン「その辺の話は興味を持っていないだろうから置いておこう、さて、次はそっちの番だ」
シャカール「だってよ」
戦兎「ジーニアスボトルでガイアメモリの毒素を浄化する、これでドーピング検査にも引っかからないはず…」
スズカ「…ありがとうございます、私のために…」
シャカール「ここまでやらせといて勝てませんでした、じゃ…許さねェからな」
タキオン「全くだ、今回の天皇賞には君の敵になる相手はまずいない、人数が割れたのか適性が合ってないものまででてきているくらいさ…
故に、圧勝を期待しているよ」
スズカ「……」
スズカ(…私は、走る事しかできない…生かしてもらった恩返しに、勝つ事しかできない…。
天国に行ってしまった人に返せるのは、それしか…)
シャカール「オイ」
スズカ「え?」
シャカール「何考えてたかしらねェけどよ…思い詰めんな、メンタルが悪いと実力がフルに出ねェのは数字に出てんだよ」
スズカ「……」
タキオン「私も同感だよ、もし君が何かを背負って走ろうというのなら…それは随分とバカバカしい話だと思うね。
それが例えなんであれ、君の走るレースと何の関係があるというんだい」
スズカ「それは…」
シャカール「お前はいつも通り、「
スズカ「言ったことないと思うけど…」
タキオン「そう言いながら走ってるという目撃情報は…あるねぇ…」
スズカ「嘘でしょ…?!」
シャカール「ああ、ウソだよバーカ」
スズカ「……」
タキオン「今、「この人達頭がおかしいんだわ」…と、思っただろう?」
スズカ「え?…いや…」
スズカ(どうしてわかったの…?)
シャカール「マジに思ってやがるな…まアいい、その感じだ、一瞬だけでも頭空っぽにして目の前のことにだけ感情を送れ」
スズカ「…?」
タキオン「つまり、君が今私たちをバカだと思った時、他に何も考えていなかっただろう?思い詰めていたことも、何もかも」
シャカール「天皇賞、勝ちてェなら…全力で臨め、それだけに集中しろ、そういうことだ」
スズカ「……集中…」
タキオン「出走10分前に聞くのも野暮だが…大丈夫だと思うかい?彼女」
シャカール「無理だろ、あんなの…そもそも脚、レントゲンは撮ったのか?飛び降りたンだろうが」
タキオン「ああ、撮ったとも、これさ」
シャカール「……オイ!これ…!ヒビ入ってんじゃねェか!!」
タキオン「承知の上さ」
シャカール「テメェ…!ふざけンなよ!そンな状態で全力疾走でもしようもンなら…死ぬかもしれねェ!わかってンのか!?
ウマ娘が全力疾走してる時に転ぶだけでもどンだけヤベェか知ってンだろ!?
二度と走れねぇ身体になった奴も山ほどいる!死ンだ奴も…」
タキオン「彼女自身、死ぬつもりだろうねぇ」
シャカール「…は…?」
タキオン「彼女はどうやら悪党に襲われ、命が危うかったところを助けてもらったらしい、だが、助けてくれた命の恩人は悪党に殺された…。
つまり、彼女は自分が生きるべきかを試したいんだ」
シャカール「なンだよそれ…!知ってて自殺の手伝いさせやがったのか…!!」
タキオン「違うさ、私は死ぬとは毛頭思っていない」
シャカール「あ…?」
タキオン「彼女は無事、完走して…正しく振り切るだろう、全てを」
シャカール「……っ!…そうか……勝利の、法則は…決まった…か……いけンのか…!?」
タキオン「紙より薄い隙間を通れるのなら、或いは」
シャカール「…オイ、出てきたぞ…!」
スズカ「……」
タキオン「……まるで、屍人の顔つきだねぇ…」
シャカール「なんだあのジャケット、アイツあんなの着てたか?」
タキオン「勝負服に一切取り入れていない赤一色だしサイズも合っていない……なるほど、どうやらアレは助けてくれたヒーローの遺品…と言ったところだろう」
シャカール「マジで死ぬ気かよ…!」
タキオン「さあ…面白くなってきたじゃないか…!」
シャカール「チッ……イカレが…!」
タキオン「そう悲観する事はないさ…もし彼女が死にかけたとすれば…きっとそのヒーローは助けに来る…キミも、それを理解していると思っていたが?」
シャカール「………」
医師「ククク…まさかあの脚で出走するとは…最早、私が手を下すまでも…」
『
医師「な、何…!?何故だ!何故…!?」
照井「俺に質問をするな…」
医師「何故生きている!?!?」
照井「変……しぃん!!」
『
医師「くっ…!こうなればやるしかない!」
『
照井「さあ…振り切るぜ」
スズカ「っ!」
ゲートが開き、先頭争いが始まる
タキオン「スタートは良好だ、脚への負荷も軽減できている」
シャカール「…あァ…計算では、500メートル時点で勝負が見えてくる」
サイレンススズカの周りを突き放す大逃げという作戦
あまりにも圧倒的なレース展開
スズカ「…!!」
シャカール「……速ェ…!どうなってやがる!今までのデータより速ェだろ!?」
タキオン「無茶な加速の仕方をしてる様には見えない…完全な仕上がり…とでも言うべきか…!」
スズカ(このまま…!)
照井「やはり、お前自体は弱い…わざわざドーパントに襲わせる戦法を徹底したあたりで察してはいたがな」
医師「く…だ、だとしても!!」
テラードーパントが大量のメモリを掴む
照井「な…!まだそんなに有ったのか…!」
医師「確かに私自身は戦闘力はない!だが……この力を…ククク!溜め込んだ恐怖心に宿らせる!」
『
恐怖心のエネルギーがガイアメモリの力でドーパントとして姿を表す
照井「ふん…」
照井がドライバーからアクセルメモリを抜き取り、メモリにブースターを装着する
『
アクセルの姿が赤から黄色に切り替わる
『
医師「なっ…!なんだ!その姿は!」
照井「俺に…!質問をするなぁぁぁッ!!」
実況「速い速い!サイレンススズカ!グングンと引き離しにかかる!」
タキオン「…ククク…このペースならレコードも簡単に…!」
シャカール「とンでもねェバケモンを産ンじまったのか…!?」
スズカ(行ける…行ける!!…っ!?)
タキオン「っ…!」
シャカール「保たなかったか…!」
大欅を超えた辺りでスズカが失速し、脚が減速する
そして…とうとう止まる
シャカール(……あの脚で、ここまでやれただけでも十分奇跡だな)
タキオン(…転ばなかったのは、不幸中の幸い…いや、精神力の成せる業とでも言うべきか…)
2人は、何を言う事もなく心の内で称賛した
負傷した脚で常識を遥かに超える、異次元の逃亡を見せた事に
スズカ「……っ…!」
スズカの脚が、一歩進む
シャカール「…っ!?」
タキオン「…まさか…まだ進むつもりか!?」
『
照井「はあぁァァッ!」
医師「なんだこの強さは…!私の作り出したドーパントが次々と…!」
倒したドーパントのメモリが音を立てて地面に落ちる
照井「…毒を食らわば皿まで…か」
医師「…なんだ!何をするつもりだ!?」
照井が落ちたメモリを拾い上げ、エンジンブレードに挿し込む
『
照井「うおぉぉぉッ!!」
トリケラトプスの力を加えた刺突でドーパントを貫き倒す
『
『
倒したドーパントのメモリを次々に使い捨てる
医師「クソッ!くそぉっ!!」
ウェザードーパント「…!」
ウェザードーパントの放った雷がアクセルを掠める
照井「…次はお前を……っ!?」
バチバチと音を立て、メモリについていたブースターが壊れる
照井「何…!?」
医師「はっ……はっ…ハハハハハ!こ、これで形成逆転だ!お前はそのブースターがなければウェザードーパントには敵わない!」
照井「……」
『
シャカール「オイ!もう止めろ!それ以上進もうとするな!」
タキオン「何故止まらない…!?激痛に襲われてるはずだぞ!」
スズカ「……」
サイレンススズカは、ただ…前だけを見て…一歩、一歩と確実に歩を進めていた
その脚は、疾うに限界を迎えているはずなのに
スズカ(……走り、切る…)
もう後方集団も追いついて、何人かに抜かされているのに…
医師「トライアルか…!だが、それだけでは倒しきれまい!」
照井「……全て……」
スズカ「……」
スズカが、強く踏み込み…走った
タキオン「マズい!これ以上はダメだ!二度と走れなくなるぞ!」
シャカール「…いや…もう無駄だ、止めたところで無駄だ…!
アイツ…この状況から……残り800メートルの最後方から…!勝とうとしてやがる…!」
スズカ(先頭の景色は譲らない…誰にも……私の、私だけの景色…!そこには、私しか居ない…!恐怖も、そこには無い!!だからこの脚にまとわりつく恐怖は、要らない!)
スズカ「…全て…!」
スズカ/照井「振り切ります!/振り切るぜ!」
アクセルがトライアルメモリを抜き取り、空中へと投げる
照井「耐久性がウリだとか言っていたな…なら、壊れるまで…!」
蹴り、蹴り蹴り蹴り蹴り蹴り蹴り
ただひたすらに蹴りまくる
その蹴りの残像がまるでTの形を作るほどの…
医師「こ、こんなことが…!」
照井(10発で足りないなら100発…それでもダメなら1000発…まだ足りないなら10000発…!)
ウェザードーパントがアクセルの蹴りを浴びて吹き飛び、テラードーパントを守る盾が全て無くなった
医師「ひっ!?」
残された時間の全てで、蹴りを打ち込み続ける
そして、降ってきたトライアルメモリをアクセルが掴む
照井「9.9秒…それがお前の絶望までのタイムだ」
『
照井「…ぐっ…!?」
実況「ありえない!サイレンススズカ再浮上!まるで追い込みかの様に先頭集団へと食らいついていきます!!」
タキオン「届くのか…!?あそこから…!」
シャカール「…届け…!」
スズカ(もっと、もっと…!まだ
実況「残り200!先頭まであとわずか!」
タキオン「…行け…!」
実況「100を切った!……これは…!」
タキオン「っ…!」
シャカール「……」
スズカ「……っ…はぁ…!……追いつけなかった…!」
会場はただ、静まりかえっていた
正しく、
実況「1着は…サイレンススズカ!サイレンススズカです!」
シャカール「オイオイオイ!ウソだろ…!あそこから……ハ、ハ…!逃げで追い込みかけやがった…!」
タキオン「…一体どんなスタミナをしているというんだい…!実に興味深いじゃないか…!」
スズカ「……ぁ…」
スズカが一瞬揺れ、そのまま倒れる
シャカール「アッ!?」
タキオン「担架!担架はどこだ!早く持ってきてくれ!」
スズカ「……っ…?…ここは…」
タキオン「病院さ」
スズカ「あ…」
シャカール「オイ、よくも自殺の手伝いさせやがったな?」
スズカ「…あの…レースの結果は…」
タキオン「覚えてないのかい?キミが一位だよ」
スズカ「……そうですか」
シャカール「なんでしょぼくれてンだよ」
スズカ「…追いつけなかった…あの時、確かに私の前に1人いたのに…青い、青い、メタリックな…」
タキオン「カフェのお友だち、みたいなことを言い出すなキミは」
スズカ「…納得する勝利を…届けられなかった…でも、アレは私の最高でした、景色が溶け出して、風が叫んで…」
ノックと共に病室の扉が開く
翔太郎「お、目醒めたか」
スズカ「…あなたは…探偵さん」
翔太郎が病室のカーテンを開く
翔太郎「よう照井、目ぇ醒めたらしいぜ」
照井「…ああ」
カーテンの向こうにいたのは、包帯巻きの照井…
スズカ「…え?…刑事さん…?」
タキオン「…彼がかい?死んだと言ってたじゃないか」
シャカール「ンだよ!早合点かよ…」
スズカ「でも…私、本当に殺されたって聞いて…」
翔太郎「コイツはそうそう死にやしねえ…な?」
照井「……確かに危うかったが、なんとか滝壺から這い出し、ヤツは撃破した…もう、襲われる事はないはずだ」
タキオン「滝壺から…」
シャカール「こいつ人間か?バケモンだろ」
スズカ「…あの…ありがとうございます」
照井「気にしなくていい、それよりキミの方は…」
スズカ「…私は…多分、もう走れないと…」
タキオン「それについては心配しなくていい、リハビリにみっちり付き合ってくれる人員を確保しておこう」
シャカール「暇はさせねえから、覚悟しとけよ」
スズカ「え…?」
タキオン「思ってたより脚は耐えていたよ、あの程度の状態なら、きっと治癒する…信じられない事だけどね、まるで不死身かと思ったさ」
シャカール「ジャケットの持ち主も不死身っぽいし、そのジャケット変な呪いでもあンじゃねえの?」
スズカ「あ、ジャケット…!こ、今度洗って返します!」
照井「それも気にしなくていい、同じ物を持っている…気に入らないかもしれないが、アレはそのまま持っていてくれて構わない」
スズカ「え…?」
照井「……」
翔太郎「お祝いって事だとよ」
スズカ「…ありがとうございます…!」
翔太郎「で?照井、亜樹子にはなんて説明するんだよ」
タキオン「結局のところ、彼についてはどう思っているんだい?」
シャカール「そのくらいは聞かせてもらおうじゃねェか、既婚者ぽいけどな」
スズカ/照井「でも私の方が速いです!/俺に質問をするな!」