ウマ娘×仮面ライダー 作:名無し
オレの名前は矢車想、トレセン学園にて中堅位の実力を持ったトレーナー…と言われているが…
オレ自身はウマ娘、そしてトレーナーの連携によって生み出される
オレのチームは、確実にURAを、勝ち抜ける……そう信じていた
ライス「トレーナーさん、今日のトレーニングはこれで終わり?」
矢車「ああ、お疲れ様、ゆっくりケアをして明日に備えてくれ」
互いのことを理解し合い、互いに高め合い、そして完全調和の元に生み出されるレースプラン
メイクデビュー前の下馬評ではオレ達はパッとしないチームだとすら言うものがいた、だというのに
快進撃、そう評されるほどに圧倒的だった
オレ達は無敗で、菊花賞に臨むこととなった
ライス「今日の相手…ブルボンさんなんだよね…ライス勝てるかなぁ…」
矢車「大丈夫だ、オレ達なら誰が相手でも負けたりしない」
…惨敗だった
ライス「ごめんなさい…ライスのせいで…!」
矢車「謝るな、仕方なかった…」
ライスシャワーは元々暗く、陰のある少女だった
しかし、オレと共に勝ち進み、明るく、元気な姿を多く見せるようになっていた矢先にこれだ
矢車「ライス、お前は悪くない、気を取り直して次を勝とう」
…そこからだった、地獄が始まったのは
ライス「ごめんなさい…ごめんなさい…!ライスのせいで…!」
…ライスは自分を攻め続けた
だが、オレはライスを責めることなく、ただ次へ次へと手を打ち続けた
無関心に見えるだろうか
内心不安はあったが、完全調和を目指す事で俺もなんとか平静を保っていた…
矢車「…今日は、オレたちが取る、オレ達が復活する日だ」
ライス「…うん、でも…」
矢車「大丈夫だ、ライス、オレを信用してくれ」
そう言ってライスを送り出し、挑んだ天皇賞・春
ライス「やった!ライスやったよ!」
矢車「ライスシャワー!」
…勝利の歓喜は、一瞬のものだった
次の瞬間、観客席から浴びせられたのは…
心のない罵声だった、メジロマックイーンの邪魔をするな、と
…ライスシャワーの心は深く傷つけられた
ライスシャワーは、かつてのような陰のある少女になり…
成績も落ち込んだ
そんな状態のライスシャワーにさらに災厄が降り注ぐ
故障…
脚の骨折、選手生命も断たれかねない故障…
しかし、ここで現役を引退してもライスシャワーになにが残る?
悪役としての人生しか残らないではないか
オレは引退しようとするライスを説得し、現役を続行した
ライスシャワーの復帰には2年を要した
そして、2年後の天皇賞・春
ライスシャワーは勝利した、かつてのような罵倒はなかった、しかし…
その時は出走していれば最有力だったナリタブライアンが出走していなかった
それ故にライスシャワーへの評価は払拭しきれずにいた
それに焦ったオレは、疲労の溜まったライスシャワーを…宝塚記念に送り出した
ライス「…トレーナーさん、行ってくるね」
矢車「ああ、ライス、今日ここで勝利すれば…キミを悪く言う奴なんて誰もいなくなる」
ライス「うん…ライス頑張るよ、トレーナーさんの為に」
矢車(オレの為…?)
…その時のオレは気づいていなかった
ライスシャワーが走る理由はいつしか自身のためではなくオレのためになっていた
オレへの悪評を払拭したい…
そう想っていた事は…このレースの後に読んだライスシャワーの手記で知ることになる
簡潔に綴ると、ライスシャワーは…最悪の結末を迎えた
筆舌し難いものだった
オレは崩れ落ちることしかできなかった
…ライスシャワーの事を考えているのなら、オレは宝塚記念を見送るべきだったのに
ナリタブライアンが出走せず、この年は特別にライスシャワーが得意な京都競馬場での開催となった
その好機を逃したくないと…これこそ天運が味方した完全調和だと…
…なにがパーフェクトハーモニーだ
ライスシャワーに想いを向けられず…いや、汚名返上に必死になり
ライスシャワーを見捨てて1人で突き進んだ末路だ
…そのレースの後、オレはただ途方に暮れるしかなかった
…ある瞬間までは
矢車「…これは」
「お前はそれを持つに相応しい」
矢車「……なんなんだ、これは…」
バックル…?
「…おばあちゃんが言っていた、たとえ世界を敵に回しても、守るべきものがある」
矢車「……そう、か…」
いつの間にか、オレの足元には…ソイツが現れていた
矢車「変身」
バックルにソイツを…ゼクターを挿し込む
『HENSHIN change Kick Hopper!』
「苦しい道だぞ」
矢車「……たとえ罪を犯すことになっても、オレはオレの信じた道を往くだけだ」
羽音ともに、目の前の男の手元に別のゼクターが現れる
「…変…身」
『HENSHIN』
「キャストオフ」
『Change Beetle!』
「来い…」
目の前の男がかざした手の中に、新たなゼクターが現れる
矢車「……ハイパーゼクター…それが、オレの運命か…!」
「…どうする」
矢車「…オレの手で…掴み取るまでだ!!」
バックルに装着されたゼクターを操作する
『RIDER JUMP!』
「…ハイパーキャストオフ」
『Hyper Cast Off! Change Hyper Beetle!』
矢車「ライダーキック!!」
『RIDER KICK!!』
矢車「…これで、オレは運命を…」
手にしたハイパーゼクターを、握りしめる
矢車「…バックルに装着できない…?……どうすれば…」
「…これを使え」
瀕死の男が差し出した腕輪を手首につける
矢車「…これで…」
「…おばあちゃんが言っていた人は人を愛すると弱くなる…けど、恥ずかしがる事は無い…それは本当の弱さじゃないから…弱さを知ってる人間だけが本当に強くなれるんだ」
矢車「……」
ライダーブレスにハイパーゼクターを装着する
矢車「だとしたら…オレは、修羅の如く…強くなるだろう」
『Hyper Cast Off! Change Hyper Kick Hopper!』
矢車「…ハイパークロックアップ」
オレは…運命を掴んだ
だからどうした?…オレの未来は暗いものだ
矢車「オイ」
ライス「ひっ!?」
矢車「…お前、オレの妹になれ」
そして、ライスシャワーの未来も…オレが地獄へと導く
メイクデビューに向けて、オレは再び動き始めることとなった
ライス「…あの…お兄様…」
矢車「オレ達は闇の住人だ、光を求めるな」
ライス「…う、うん…」
矢車「…
ライスシャワーの戦績は、前とは違いパッとしないものとなった
だが、これでも構わない
ライス「…お兄様…見て…あの子……あんなに褒められてる…いいなぁ…」
矢車「……」
ライスシャワーには、かなり苦しく、辛い思いをさせ続けることになった
レースプランを理解せず、嘲笑する者もいた
矢車「…今、オレの妹を笑ったか?」
「い、いや…!」
矢車「笑ったな…!笑うなぁぁ!!」
…オレは、ライスシャワーを笑わせない
菊花賞…まずは、菊花賞のために
ライスシャワーは、菊花賞を取る
その為に、センライト記念、京都新聞杯捨てた
ライスシャワーは両レースにてミホノブルボンに僅かに届かなかった
…でも、問題はない
矢車「…ライス…」
ライス「わかってるよ、お兄様…」
陰の深い立ち姿となったライスシャワーは
1段階目の成長を遂げたと言えるだろう
ミホノブルボンを…打ち負かした
ライス「や、やった…!」
歓びに打ち震えるライスの前に立ち、言った
矢車「喜ぶな…光を求めるな…オレたちは闇の住人だ、わかっているはずだ、オレたちは陽の光の道を歩けないと…」
ライス「で、でも…」
…その直ぐ後、ライスシャワーへの罵声が場内に響くこととなった
雨でも降りそうな、曇天だった…
その時、確かに一筋の光が雲の合間から差した
「おばあちゃんが言っていた、子供は宝物、この世で最も罪深いのは、その宝物を傷つける事だ」
その一言で場内がシン…と静まり返った
全員の視線が、太陽の光を追う
雲の合間から差した太陽の光は、観客席の2人を照らしていた
ウララ「凄かったねー!すっごく早かったよ!」
「ああ…だが、少し粗い…お前」
男がオレを見て言う
「おばあちゃんが言っていた、男の子がやってはいけないことが二つある、食べ物を粗末にする事と、女の子を泣かせる事だ」
矢車「……お前」
「俺か?……覚えておけ、天の道を往き、総てを司どる男…その名も…」
矢車「天道…総司…!」
天道「…そして、春に咲く麗かな少女だ」
ウララ「ハルウララだよ!よろしくね!」
ライス「ハル…ウララ…」
ハルウララとの出会いは、ライスシャワーへ良い影響を与えた
まるで太陽のような少女だった
ライスシャワーはハルウララの影響を受けて笑顔を多く見せる子になった
…オレは、ライスシャワーを泣かせてはいない
しかし、あの時天道が現れなければ、ライスシャワーはオレの言葉と観客の言葉を重ね、泣いていただろう
…だが、オレは泣かせていない
ライスシャワーは笑っていてはいけない
…それはオレと共に闇を歩むのなら…の、話だ
矢車「ライス、選べ」
ライス「…そんな…いきなりそんな事…お兄様かウララちゃんなんて…選べないよ!!」
矢車「選べ!!」
オレの歩む闇の道は、地獄の道は…
太陽に照らされてはならない
だが、それにライスシャワーを巻き込むべきなのか
幸せな道があるのかもしれない
それを選ぶのは、ライスシャワーの自由だ
ライス「…ライスは…」
矢車「……どうした、そんなもんか」
ライス「まだ、ま、だ…!」
ライスはオレと歩む道を選んだ
そして、オレは…ライスを完全な
メジロマックイーンを…潰すと
ライスシャワーの限界を、突き詰めた
矢車「もう一本だ」
ライス「っ……後、三本いけるよ…!」
矢車「ライス…やっぱりお前は最高だ…!後五本追加だ!」
ライス「お兄様こそ…!」
…そして、迎えた天皇賞・春
ライスシャワーはメジロマックイーンを再び下した
…ライスシャワーへの罵声は、無かった
誰も声を上げられなかった
その目を、直視できるものはいなかった
矢車「……ライス、それでいい」
…ライスシャワーは故障した、矢張り現役続行を望み、治療に2年を要した
…ライスシャワーはこの療養期間も油断をしなかった
地獄の道を歩む事を躊躇わなかったライスシャワーは…復帰後の天皇賞・春を快勝し、宝塚記念に臨むことを望んだ
矢車「……兄妹…それが、お前の臨む事なら…」
ライス「…お兄様…ライス、わかったんだ…お兄様がなんで地獄へとライスを誘ったのか…なんでライスに陽の光の道を歩ませなかったのか…」
ライスシャワーが勝負服の青い薔薇を一つ摘む
ライス「お兄様にあげる、知ってる?青い薔薇って…不可能って花言葉があるの、生み出すことのできない青い薔薇…」
矢車「…その薔薇は、何年か後に生み出されて…こう言う花言葉を持つ…夢が叶う、奇跡の薔薇だ…それと…友が言っていた…花は全ての女性を輝かせる」
ライスシャワーから薔薇を受け取り、帽子に一つ足す
ライス「お兄様は…時々、不思議な事を言うね…ライス、さっきまで自信なかったんだ…このレースに出るのが不安だった…それにね、実は…約束があるの、ウララちゃんと一緒に走るって」
矢車「…ハルウララと?」
ライス「今年の有馬記念、2人で出るって約束したの…だから、お兄様…ライスがもし、帰ってきたら…」
矢車「行ってこい、時間だ」
…ライスの言葉を最後まで聞く事なく、オレは観客席へと向かった
柵に寄り掛かり、天を仰いだ
天道「おばあちゃんが言っていた、友情とは友の心が青くさいと書く」
矢車「…ああ」
天道「…有馬記念で待っている」
矢車「…これが、太陽か…」
いつぶりかに見た太陽は、嫌に眩しかった
矢車「…まだオレと行くのか?ライス」
ライス「お兄様となら…どこまでも」