ウマ娘×仮面ライダー 作:名無し
シャカール「オレ、エアシャカールだ。
と言ってもまあ、組んでる理由なんかコイツの未知のデータと、トレーナーとの契約を無理やり迫る学園のせいだけどな」
そんなこんなで契約を結んだ俺たちは、エアシャカールの相棒である自作PC
シャカール「オイ!なンでParcaeと戦うみてェなノリのあらすじになってんだよ!
ッたく…!こんな調子で31話はどうなンだ!?」
……まず、一言言わせて欲しい
このオレ、エアシャカールがこんな蛮行に出たのは“執着”のせいだ
本来なら「バカバカしィな」と吐き捨てるほどの話だが…最早、どこにも否定のしようがなかった
Parcaeがどんなに完璧な結論を持って来ようと、その完璧な結論の隙間のイレギュラーを望んで病まない
三冠ウマ娘、そうなる事への隠せない程の執着心がオレを変えたと言うべきか…だが…
シャカール(そのツケがこのざまか…?ハハ、笑えねェ…)
ぼんやりとベッドから窓の外を眺める
何をやったかといえば至極簡単な事、走り過ぎだ
指示も無視したオーバーワーク、戦兎の指示も聞かねぇでひたすら走り続けたザマがこれか?
シャカール(担当と大喧嘩、ムシャクシャを何とか誤魔化すためにと久々に始めた手慰みの曲作りもままならねェ
たまたま外走ってる連中に感化されて走りまくったら脚攣ってコケてケガ…)
そのせいでこんな昼間から保健室で寝てろ、なんて
ここまでダサい事続きでは、最早…最早イラつきも何かに八つ当たりする気力すらも湧いてこない
シャカール(このまま、走るの辞めちまうのも…アリかもしれねェな…。)
結局の所、適性が無かったのだ
適性が合わないのに“執着”した
最終コーナーまで抑えて走ればよかったのに、ダービー直前にギア入れりゃ良かったのに、こんな中盤に走りまくって
所謂“掛かり”というやつだ
レース以外でこんなことになるとは思わなかった
シャカール(…クソッ…らしくねェ…。
違うだろ?エアシャカール…なに可能性感じてんだ、そんな信用できないもの、信じてんじゃねぇよ…ダッセェ……。
レースに執着するのも、もうダサすぎてやってらんねェ……そうだ、Parcae、お前が終わらせてくれ)
…絶望を期待して、相棒に問いかける
オレの中にある絶望を具現化し、徹底的にあきらめるために…
シャカール「……ッ…。」
Enterが押せない
…ここで押せば、本当に執着をやめて終わる
エアシャカールというウマ娘が、終わる…
それは…それだけは…
そんなオレの悩みを無視するように、横から入ってきた指がEnterを押す
そして並べられる絶望の数々
シャカール「なッ…!?テメェ!…なにしやがる!!戦兎!」
…いつの間にかすぐ横に居て、いつの間にか勝手にParcaeのキーを叩いて、オレを終わらせやがって…!
戦兎「21222」
…212メートル22センチ
これがどれほど絶望的な差かわかるだろうか?
ウマ娘は時速約60キロで走ると言われている
212メートルを走るのにかかる時間は約12.7秒そこら、だが、212メートルの差を開けるようなウマ娘だ、時速がもっと落ちたら?
15秒?20秒?どれほどの差が開く…?
オレの心の中にある執着心が、音も立たずに消えていくのがよくわかる
無理、絶対無理
よくもまあここまで絶望的に突きつけてくれやがる、でもこれで…
戦兎「誰かさんが怪我したせいで、7センチが約3000倍だ」
シャカール「…あァ…?」
…オレのせいなのは間違いない、でもこの言い方に納得できなかった
無性に癪に障る
腹が立つような言い方だった
戦兎「オレも今まで
シャカール「ンだと!!」
戦兎「最初から諦めてる奴に勝ち目なんてない」
シャカール「ッ…!」
…諦めては、いた
無理だとわかっていたから
Parcaeがそう言ったから
戦兎「だから俺が勝つ気にさせてやる」
シャカール(わざわざレース場の裏に連れて来やがって、しかもやるのは模擬レース…。
走れねえのにここに連れてきたってことは…レースを見せる為、か……ン?)
スズカ「…。」
シャカール「…サイレンススズカ…?…おい、なんでアイツこっちに向かってくるンだよ」
スズカ「それは、用があるから」
シャカール「…オレに、か」
スズカ「そう、あなたに…これは、私なりの恩返しだから」
シャカール「…恩返しだと…?何言ってやがる…?」
…いや、待てよ、なんでこいつ勝負服なんか着てるんだ?
スズカ「あの時の御礼はする、だから待ってて」
御礼の意味もわからぬまま、去りゆくスズカの背中を見送る
シャカール「……オイ、戦兎」
戦兎「Parcaeの導き出した結論では、エアシャカールはダービーを除く二冠を獲得した、そしてその後、一度も勝つことなく引退した。」
シャカール「…前まではな、今となってはオレがこれから勝つことも…」
戦兎「まだ、結果は確定していない」
シャカール「…ンだと…?」
戦兎「Parcaeの導き出した結論は、実験前の仮説だ。
これからそれを証明する」
戦兎がParcaeをオレの手から奪い取り、データを打ち込み、見せる
シャカール「…なんだ、このメンバー…!
オイ、どうやって集めやがった、こんな奴ら…」
皐月賞と同じ芝2000メートル
走るのはサイレンススズカ…だけじゃない
どいつもこいつも名有りの化け物揃い…
そして、その中でParcaeが勝利者として名指ししたのは…
シンボリルドルフ
シャカール(…カタいな、確かにこのメンバーの中でも会長様はトップの成績だ、となればここはカタい。
他のメンバーもかなり濃い、トウカイテイオー、メジロマックイーン、アグネスデジタル、アドマイヤベガ…誰もがこの距離なら一位の素質があるくらいには強い…。)
シャカール「本当にどうやって集めやがった」
戦兎「俺は意外と友達が多いんだよ」
シャカール「あり得ねえな、性格が悪過ぎる…。
スズカは終盤で差されて五着か…成程な…一人に抜かされた時点で失速するのか?」
ずいっと顔を近づけて画面を覗き込む戦兎を押し退ける
シャカール「オイ、邪魔だ!」
フィリップ「っとと…ふむふむ…なるほど、なかなか興味深いねぇ」
…押し退けたのは戦兎のつもりだったのだが、聞こえてくる声が違う様な…
フィリップ「パソコンひとつでそこまで予測するのか、しかも…まだ成長すると思うと…ゾクゾクするねぇ…」
シャカール「…だれだお前!?」
フィリップ「僕はフィリップ、2人で1人の探偵さ」
シャカール「…意味わかンねェ……なンで探偵なんかがこんなトコに居ンだよ」
フィリップ「観戦は自由だって聞いたからね、僕も相棒が担当する娘に興味があるんだ」
シャカール「…ンだそれ…?」
満席の観客席
それも当然だろう、エキシビションマッチとでも言うべき大物揃いのこの対戦、入ってるのは学園関係者だけって話だったが…
シャカール(いつの間に触れ回りやがった…?
…いや、元々予定されてた興行レースだろ、オレをその気にさせるために用意したなんて嘘まで…)
万丈「おい、戦兎!どうなってんだよこれ!」
ちょっと目を離した隙にヤンキーみたいなのに絡まれてやがる…
戦兎「えーと…出走はあと30分後か…」
万丈「オイ!無視すんなよ!」
シャカール「…知り合いじゃねえのか?…ってか、コイツ確か…」
ナリタタイシンのトコの…?
戦兎「あー、はいはい、今忙しいからバナナでも食ってろ」
万丈「ウッキー!バナナだ!…じゃねえよ!!」
シャカール(…おかしい、今、ポップなアニメ調の猿が降ってきた様な…ついに頭もイカれたか……?)
万丈「なんだよこの観客の数!話と違うって蹴られたじゃねぇか!」
ナリタタイシンのトレーナーの両肩が叩かれる
万丈「あ…?」
幻徳「俺とルドルフの宣伝力の賜物だ、もっと感謝しろ」
猿渡「あ?どう考えてもデジたんの描いてくれたイラストのビラを配りまくったおかげだろうが!」
シャカール(…マジにコイツらが集めたのか?…いや、そもそもコイツらあの自称天才の友達なのか?)
幻徳「いいや、俺達だ!」
猿渡「ンだとこのヒゲ!」
シャカール(うわ…喧嘩始めやがった…めんどくせぇ………ン?こっちに来るのは……。
ナリタタイシン?…後ろにはシンボリルドルフにアグネスデジタル…)
タイシン「ねえ、ちょっとどいてくれる?」
万丈「…んだよタイシン、なんか用か?」
タイシン「さっき知ったんだけど、このレース、トレーナーとの繋がりのあるものを持って走れってさ、ほら」
万丈「はぁ…?」
コースの方でアップをしているスズカは普段の勝負服の上から赤いジャケットを羽織っている
あれがトレーナーとの繋がりの証?
シャカール(前見た死装束じゃねえか…)
タイシン「って訳で、そのスカジャン貸して」
万丈「なんでだよ!…ほら!このプロテインやるからこれ持って走れ!」
タイシン「…あーもう!良いから貸せッ!」
無惨にも着ていた青いスカジャンを剥ぎ取られる者1人…
ルドルフ「あー…そう言う訳だ、言い難いんだが…」
幻徳「フッ……俺とお前の間に言葉なんていらない…」
シンボリルドルフのトレーナーがジャケットの内に着込んだシャツを見せる
“OKだ”と書かれたカラーシャツを
シャカール(うわ、ダサ……てか仕込ンでたのかよ!)
ルドルフ「ああ、ありがとう」
シャカール(…なんだ?新品の文字入りシャツ…?…いや…!)
その場で”快調な会長”と書かれたシャツを取り出し、満足げなシンボリルドルフ…
ルドルフ「うん、出来上がったか…良い出来だ…」
シャカール(ダジャレティーシャツだと…!?
いや、なんでそんな満足気なんだよ…!)
デジタル「…あの…私にも何か…」
猿渡「…俺は……コレを」
シャカール(ジャラジャラとした…ネックレス?……いや、違う…)
デジタル「こ、これ!三羽烏の皆さんの…!それにトレーナーさんのも…」
シャカール(ドックタグ…?…関係性までは知らねェケド…それを渡すって事はアレはつまりそう言う事だよな…模擬レースなのに1人だけ重すぎンだろ…)
デジタル「そういえばみなさん元気ですか?」
猿渡「この前温泉行って来たって」
シャカール「……ハァ…」
戦兎「どうした?元気ないな」
シャカール「……頭が痛ェ…」
シャカール「このレースをお前が仕組んだのも理解した、友達が多いのも認めてやる。
でもわからねェ…なンでここまでやったんだ?
なンの為に今、こンな事してンだよ、元ヒーロー」
戦兎「明日を創る為」
シャカール「…明日?」
戦兎「俺は今、エアシャカールの明日を創ろうとしてる」
シャカール「……オレの、明日…?」
戦兎「さあ、実験を始めようか」