ウマ娘×仮面ライダー 作:名無し
私の有情な行動でシャカール君は皐月賞に出ようとしてくれているようだねぇ…。
彼女がどのような変化を遂げるのかは定かではないが、私としても彼女には成長してもらわなければ計画に支障をきたす…。
私の計画?それについては34話で語るとしようか。
タキオン「ふぅン…?まるで調子を取り戻したかのような見せかけだねぇ…」
カフェテリアの様の喫茶スペースで複数の新聞紙を広げて幾つかのレースの結果を眺める
そのレースの勝利者はエアシャカール
…だが
タキオン「だが、実際は違う…こんなもの、格下相手のイジメだ、勝てると踏んだレースに参加し、荒らしているようなものだ」
重賞を避け、選んだ作戦は全て対応が難しい逃げ
タイムも決して早くない
タキオン「……ハズレだったかな、てっきり私を押し上げてくれるなら彼女だと思っていたんだが…。
まあいい、カフェ、紅茶を持ってきてくれるかい、ミルクと砂糖ありありで」
カフェ「お断りします、コーヒーなら淹れても構いませんが」
タキオン「……トレーナー君」
内海「過度な糖分の接種は体への悪影響がでます、睡眠障害や肩凝り、疲労が溜まりやすくなったり脈や心臓などにも影響がある。
レースのことを考えると糖分は抑えるべきです。」
タキオン「…別に砂糖を飲んでるわけじゃないんだから良いだろう…?
それに紅茶に砂糖を入れて飲むとだね…」
内海「ポリフェノールに含まれる抗酸化作用を大きく超えた値の砂糖に含まれる老化物質を摂取しています。
そして砂糖のエネルギー効率は理解できますが摂取し過ぎれば肥満の原因になります。」
タキオン「……カフェー、カーフェー、なんとか言ってくれよ〜」
カフェ「お断りします」
内海「溶解度を越えようとしなければ私も見逃すつもりでしたが、流石に糖分の取りすぎです。
エネルギー摂取が目的ならば他の食事で十分に摂取できるように調整しています」
カフェ「…タキオンさんの食事まで用意しているんですか?」
タキオン「そうだとも、凄いだろう?実験台に志願し、3食用意して身の回りの世話までしてくれる…まさに完璧なモルモットだよ!」
カフェ(うわぁ…)
カフェ「…大変ですね」
内海「以前秘書をしていた際に同レベルの方を相手していたので、さほど苦はありませんでした」
カフェ(…コレと、同レベル…?)
タキオン「……なんだいカフェ、随分と変な目つきになっているが…」
カフェ「いえ…」
タキオン「…さて、と…折角だからわざわざ来てあげたよ」
シャカール「…なンで来やがった?」
タキオン「もちろん君が避け続けてきた重賞を走るからさ、今回はGⅢとはいえ、徹底して避け続けただろう?」
シャカール「片手程も走ってねェのに決めつけんな」
タキオン「いいや、確かに公式戦はまだ数戦、だが模擬レースに参加し、必ず勝って帰ると聞いているよ。
キミの悪い噂は最近絶えないねぇ…今回も、確実に勝てるレースを選んだように見える」
シャカール「悪い噂……ハッ…好きに言ってろ、もうノイズは聞こえねェ」
タキオン「……!」
エアシャカールはそれだけ吐き捨ててその場を後にした
…それは十分すぎる収穫だった
タキオン「……このレース、見に来た価値があるのか…!?
まさか…いや、まだわからないが…!」
胸が高鳴る
エアシャカールは確実に壁を越えた
ノイズ全てを断ち切って、往こうとしている…!
タキオン(逃がしてなるものか!1人で行くなんて許すものか!
その研究は私だ!私のものだ!)
タキオン「観覧席に、行かなくてはね…」
タキオン「む……うわっ!?」
内海「どうかしましたか」
タキオン「どうしたもこうしたもないだろう!なんで蒸血してるんだい!目立つし恥ずかしいじゃないか!」
内海「ナイトローグのゴーグルには分析機能がついていますので。
それと……血管の発光が抑えられないので、何かで全身を覆わないと入場できませんでした」
タキオン「……つまり私のせいか、まあそれなら仕方ない…。
と、そんな事より…そこで他人のふりをするのはやめてくれないかい?」
戦兎「…いや、俺ナイトローグとか知らないんで、ちょっと声かけないでもらっていいですか」
内海「自分で作っておいて知らないは無いだろう、桐生戦兎」
タキオン「まあ、無駄話は置いておいて…2つ聞いておこう、最近の出走レースの選び方、脚質適正を無視した作戦を選ぶ理由、この2つ、答えてもらおうか」
戦兎「…それは、このレースが答えだ」
タキオン「ふぅン…?」
スタートと同時にエアシャカールが先頭に位置取り、逃げる
タキオン(今までのレースより後続との距離が詰まっているようだね、流石に重賞用に仕上げてきた娘達相手にはやや苦しいように見える…。
だが、コレが答えだとするなら…なんだ?何がある?)
レース終盤に差し掛かり、エアシャカールのすぐ後ろにまでウマ娘が迫るものの…
なんとか最後まで逃げ切りエアシャカールが一着を取る
タキオン(…ギリギリもいい所だ、コレが答えだと?
…今の彼女にGⅠを真っ向から挑んで勝つ実力などあるようには見えない、トップスピードがアレでは…)
ウイニングランを途中で止め、シャカールが観客席を睨む
シャカール「皐月を獲るのはオレ達だ、楽しみに待っとけ」
タキオン「…あんな走りで私に勝つと?本気かい?」
シャカール「
タキオン「キミと競った覚えは……いや、あの順位当てゲームの話ならちょっと短気すぎやしないかい?
それにもしアレを負けたと認めているのなら、今のままでは勝ち目のないことも理解できるはずだろう…私に負けたシステムでは」
シャカール「…メにもの見せてやるよ」
タキオン「……帰ろう、トレーナー君、残念ながら収穫になりそうなものは何もない」
内海「…わかりました」
シャカール「だってよ、戦兎」
戦兎「……」
タキオン「…ふざけているのか?それとも……納得できない、理解できない、こんなの許してたまるか、何のためにカフェではなくキミを選んだのか…!
より確実な昇華の為だ!なのに、あんな腑抜けたレースが…あんなものが私を押し上げるはずがない!」
内海「レース映像の解析データが完成しました、タブレットに転送します」
タキオン「不要だ!…いや、ダメだ落ち着け…。
こうなっては、完全勝利で目を覚まさせるほかない、向こうが私を研究していると言うなら、こちらも……っ…?」
タブレットに表示されたデータを睨む
前半3ハロンのタイム36.5秒…そして後半3ハロンのタイム34.2秒
タキオン(…よくある、逃げながらも多少の脚を残し、最後の最後で解放するタイプ…か…?
……いや、まて、何か引っかかる…)
コースの記録は?エアシャカールの動きは?
タキオン「……わからない、なんだ…この違和感は…!」
タキオン(焦るな、落ち着け…!タイムは確実に私の方が早い、焦る必要はない…!
…いや、ダメだ…考えろ!負けたくないんだ…!)
引っかかるものはある
なのにその正体は尻尾も掴めない
タキオン「トレーナー君!他のデータは!?」
内海「ここに」
タキオン(クソッ…!これでもない、なにか、決定的な何かを…!)
内海「一つ、質問しても良いでしょうか」
タキオン「今は忙しい!……いや、ダメだ、悪い熱が入りすぎているな…手短に頼む」
内海「あなたの目的は三冠ウマ娘の称号か、それとも可能性の先を見る事ですか」
タキオン「目的だと…?今更何を…いや…そうだ、私は、可能性の果てを見たいんだ…!
シャカール君がダメなら次だ、もっと強い相手を探すまでだ!」
内海「……」
タキオン「プランAは続行!このまま並行的に皐月を取るための仕上げにかかる!」
内海「わかりました」
ーー皐月賞当日
つまり、この日に今年の三冠ウマ娘への挑戦権を手にするものが決まる
これを逃した時点で三冠の夢は、絶たれる
内海「そっちの仕上がりはどうだ」
戦兎「内海さん…偵察ですか?でももう始まりますけど…」
内海「今日のレース、勝つのはそっちだろう…」
戦兎「え?」
内海「だから、今のうちに答え合わせがしたい」
戦兎「ちょ…ちょっと待ってください、何を…」
内海「納得いかないか?誰がみても、この中で1番早く、コンディションも最高のアグネスタキオンが負ける様が想像できないか?
いいや、負ける。
今日のレース、必要なのは相手の作に一切惑わされずペースをキープする能力、もしくは…この距離を指したまたま有り余るスタミナだ」
戦兎「……こっちの作戦はもう…」
内海「解析済みだ、だが、何一つ対策を立てていない」
戦兎「…何故?」
内海「果てを見るためには必要ないからだ。
私たちの目的に必要がないことなら、たとえどんな道を歩もうとも」
戦兎「…最っ悪だ…」
シャカール「…隣か」
タキオン「今日はよろしく」
シャカール「チッ…」
タキオン「そういえば…彼女も見に来ているようだね」
タキオンが客席をチラリと見る
シャカール「クラシック三冠を賭けた大一番だ、そりゃみんな来るだろうよ」
タキオン「随分落ち着いているねぇ?いや、あれ以来あの刺々しさがなりを潜めたか…」
シャカール「るせェ、黙って集中してろ」
タキオン(差しを狙う私としては、ここで君の気が逸れて逃げに失敗してくれると重畳だが…流石に妨害になりかねないしやめておこうか)
シャカール「一つ教えてやる」
タキオン「なんだい?」
シャカール「今年の皐月賞、1番賢いヤツが勝つ」
タキオン「…ふぅン…?」
シャカール(…全員纏めて、撫で切ってやるよ)
ゲートが開く
タキオン「なッ!?」
エアシャカールが少し出遅れ、スタートを切る
タキオン(まさか現実になるとは…いや、だがこの距離なら多少消耗しても逃げの位置に…)
シャカール「ふッ…はッ…!」
タキオンの予想通り、大きく加速したシャカールが逃げの位置につく
タキオン(だがあの無茶な加速は消耗が大きいはず…それがわからないほどの間抜けでは無いと思うが…)
シャカール(乱すなよ…まだ乱すな…!)
シャカールは集団のやや前を走り、そして後のウマ娘がそれを追いかける形…
タキオン(…沈んだ!)
シャカールが大外に外れながら失速し、集団に追い越されかけたところで再加速する
タキオン(な、なんだ…!?なにをやって…)
まだレースは中盤に差し掛かったあたり、半分以上を残しているのに誘うような動き
それに乗るように周りのウマ娘も加速する
タキオン(…しまった、全体のペースが上がっている!このペースならスタミナも尽きない…このままでは間に合わなくなる!)
シャカール「……ハッ」
シャカールが何人かに追い抜かれ減速する
タキオン(諦めた…?)
シャカール「……見てろよ…」
シャカールが小さく呟き、最後方まで置いていかれる
タキオン(…なん、だ?…なんだこの違和感は、おかしいぞ……。
待て、なぜ…エアシャカールは息が乱れていない…あれだけ速度を上げ下げしたらかなりの消耗が……ッ…!?)
脳裏によぎる可能性、上がり続けたスピードを抑えた時にはもう遅い
シャカール(タキオンは気づいたか?…だが、それも予定の内、しかもそこでストップかけたんじゃ…苦しいのはお前だ)
タキオン「!」
先頭のウマ娘がカーブで大きく外に外れる
シャカール(そうだよな!そうなるよな!)
タキオン(な、なんだこれは!全体のスピードがグンと落ちて…ッ…脚が…!)
シャカール(…ここだ)
タキオン「ッ…!」
シャカールがタキオンを抜き去る
タキオン(まさか…!…やはり…やはり君はあの日のサイレンススズカになるつもりか…!
させるものか…させてたまるか!)
シャカール(前の連中、オレがアガって来たのに気にも止めてねェ…ほりゃそうだろうよ)
最終コーナーで先頭と最後方までの距離はおおよそ7バ身程度
タキオン(このコース、コーナー後の直線、登り坂…!これが、これが狙いだったのか……)
シャカール(逃げ打ったってコトは散々トばして後半はバテ気味…ちょっとばかし、浅ェな!!)
登り坂に差し掛かった途端、エアシャカールがスイスイと他のウマ娘を抜き去り…
シャカール(この展開を作ろうとしてたんだ!スタミナもとことん鍛え上げてきた!それこそ、2000メートルには有り余るくらいにな!!)
とうとう先頭に躍り出る
タキオン(嘘だ…!嘘だ!こんなもの!まだだ、まだ終わってない!終わってたまるか!)
タキオンの伸びた手は、シャカールの尾に触れる事すらなく、レースの幕は降りた
シャカール「…クッ…ハハハッ…!!…証明完了…か、最ッ高だ…!」
タキオン(…負けた…この私が、負けた?
何故だ、シャカール君の作戦に振り回された?…確かに、気付ける要素はあったのに…)
タキオン「何故だ…!何故、こんな…こんな無様なレースを!」
…このレースのゴールタイムはレコードより大きく遅れ、レース展開も速さを競う勝負とは到底言いがたい
スタミナの使い方を狂わせてぐちゃぐちゃにされた、もはやレースと呼べるかも怪しい…
シャカール「決まってンだろ、勝つためだ。
真っ向からやり合ったら勝てねェ事くらい分かってる、だからこんな手を使った…もう使えねェけどな」
タキオン「これもあの機械が作った作戦か!巫山戯るな!」
シャカール「違ェ、これはオレが望んで作った結果だ、Parcaeならオレの大敗を予想してた」
タキオン「…なんだって?じゃあ君は自分でこんな大博打を…」
シャカール「そうだ、オレが選んだ、Moiraiが提示した複数の道から、オレが選んだ」
タキオン「…モイライ…名前をギリシア神話に変えたところで何が変わると言うんだ!」
シャカール「Parcaeは、自身の想う最善の道をオレに教えてくれた、だがオレは納得しなかった。
Moiraiはオレに幾つかのマシな道を提示してくれた、そしてオレはそこから選んだ。
行き着く果てがわかる道と、わからない道。
可能性なンて曖昧なモンじゃねェ、全くのゼロ、その先の事なんて何もわかってねェンだよ」
タキオン「…つまり、全部賭けじゃないか、いきあたりばったりの…」
シャカール「当たればラッキーなンてロジカルじゃねェ、全部考えて、考え抜いて、筋道立ててオレはその道をアタリにする。
それがこの第一歩だ、皐月賞を勝つのは1番賢いヤツってな」
タキオン「くッ…!」
内海「お疲れ様です」
タキオン「…気づいていたんだろう、君は」
内海「はい」
タキオン「…何故だ、何故教えなかった、何故私が三冠を取れないように仕向けた!貴重な機会だった!
得られるもの全てが失われた!栄光なんかじゃない!新たな知見を得るにも有利に働いたはずなのに…!」
内海「それは、可能性の果てを見るには不要だと判断したからです」
タキオン「!」
内海「二兎を追うものは一兎をも得ず、あなたが追うべきなのは可能性の果てだけだ。
こんな一戦のためだけに貴重な時間を使うなんて、勿体無い」
タキオン「……ククッ…ハッ……アーッハッハッハ!…そうか、その眼だ…だから、だから気に入った!やはり君は面白い…!そんなに狂った眼をしてくれるのか…!
良いだろう…なら、君のプランに乗ろうじゃないか!」
シャカール「…ンだと…?…わざと、負けた…?」
戦兎「ああ、向こうはここから仕上げてくる…最速になって」
シャカール「チッ…やってみろって話だ、確かに今のオレは遅ェ、だからこんな手を使ったが…ダービーはベストコンディションに仕上げてやる…!」