フォールアウト4 二人の生存者   作:バケツ頭 小説もどき家

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団結か死か

 放送のお陰で、サンクチュアリの人口は十五名程に増え、テンパイズや他の入植地とも連絡が取れた。

 

 彼らは新生ミニッツメンの理念に賛同し、ネイト達に協力を申し出た。

 

 余裕のある入植地は作物をミニッツメンに提供し、求められれば入植者の何人かを新生ミニッツメンの民兵として送り込む事を誓った。そして立地も食糧事情も最悪な入植地に住む人々はサンクチュアリに移住することを決断し、彼らの何人かは新生ミニッツメンに入隊した。

 

 パイプライフル、ハンティングライフル、ピストルにショットガン、はたまた前装式のマスケット。入植者の手にする武器は実に様々であった。

 

 今は無理でもいずれは装備を統一させる必要がある。

 

 

 ネイトはプレストンに新生ミニッツメン初代将軍に推薦された。

 

 サンクチュアリ民兵隊の直接指揮はもちろん、彼は各地から召集した民兵隊の指揮も執ることとなった。

 

 サンクチュアリ民兵隊の訓練と将軍不在時の指揮は旧ミニッツメン時代に軍曹を努めたプレストンの役目となった。

 

 入隊した新兵は狩人や自衛の為に銃の腕を磨いた農民であり、真の兵士とは言い難かった。居住地を防衛するだけなら申し分なくとも、新生ミニッツメンがかつてのミニッツメンの様になるには規律と士気を鍛える必要がある。

 

 プレストンは農作業の合間に新兵を訓練し、演習に励んだ。

 

 起床前、食事中、夜中。プレストンとネイトらは時間を選ばず、緊急訓練を実施した。召集をかけられると、新兵達は急いで武器を抱えて各地の居住地へ急行するのだ。

 

 新兵にとっては嫌な訓練だが、必要不可欠な訓練である。

 

 いざという時に準備に遅れ、救援に間に合わない事態に陥れば、新生ミニッツメンの信頼は地に落ちるだろう。そのような事は避けなければならない。

 

 

 訓練のお陰で新兵達はみるみる成長した。

 

 ジョンとエミリーは分隊長として部隊を指揮し、訓練から二週間後に起きた最初の襲撃、スターライト・ドライブインの戦いを乗り切った。

 

 

 スターライト・ドライブインの入植者達と後から駆けつけたミニッツメンは、レイダーの集団を完璧に打ちのめし、撃退した。

 

 

 リジーも愛する夫と共に戦闘に参加し、皆と勝利を分かち合った。

 

 メアリーやカイルも姿を現した。二人はリジーの隣で善人たちの勝利を喜ぶのであった。

 

 リジー以外の誰の目にも見えない存在であったが、確かに彼女達はそこにいたのである。遺した姉や父の側、悲しみから立ち直った父親の隣に。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 居住地の連携は直ぐにレイダー達を苦しめた。

 

 居住地を襲いに向かった襲撃隊は武器を向けられるか手強い抵抗にあって追い返され、レイダーのボス達は好ましくない状況の変化に危機感を募らせた。

 

「レッドトゥレットとタワートムに使者を送れ!」ジャレッドは唸った。「舐めきったふざけた野郎どもを潰す必要がある……徹底的にな」

 

 

 ジャレッドの号令にレイダーの各勢力は応え、“軍隊”を差し向けた。大規模な戦力を選たジャレッドはサンクチュアリへの総攻撃を決断し、実行に移した。

 

──ミニッツメンもこれで終わりだ。

 

 勝利の自信に満ちたジャレッド。

 

 しかし、彼は知らなかった。  

 

 戦闘の勝敗を決めるのは数ではなく、日頃の団結力と士気の高さだということを。

 

 

 

「レッド・トゥーレットとタワートムの奴らが引き返した?!」

 

 コンコードの博物館に陣を構え、戦いの成り行きを見守っていたジャレッド。スターライト・ドライブインの入植者達を北へと追いやり、サンクチュアリへの総攻撃を指揮していた彼は思わぬ報告に驚いた。

 

「一体何があった?!」

 

「わかりやせん、ボス! ……ただレッド・トゥーレットの手下が引き上げると、タワートムの奴らも下がってしまいやした!」

 

「あいつら……」

 

 “盟友”の勝手な行動にジャレッドは憤怒した。

 

 この時点のジャレッドには知る由もなかったが、レッド・トゥーレットの撤退は彼女の本拠地がタワートムの別働隊の強襲を受けた事によるものだった。

 

 

 アバナシー・ファームとvault111方面の攻撃を担当していた二つのレイダーが撤退したとなると、ジャレッドの作戦は崩壊したも同然だ。ただでさえオールドノースブリッジの前での戦闘は上手くいっていない。その状況で左翼の戦線が崩れたとあっては戦況はますます悪化の一途を辿る。

 

 

 

「お知らせしやす! 敵がダイナーを奪い返しました!」

 

「うおおお!!」

 

 新しい報告にジャレッドの怒りは頂点に達した。彼はショットガンの引き金を引き、怒りを部下にぶつける。肉片と化した仲間を見てヤク中の男女は震え上がった。

 

「どいつもこいつも使えねえ!!」

 

 部下の使えなさと敵の反撃にジャレッドは怒り狂った。

 

 敵左翼の空白に気づいたミニッツメンはアバナシーファームとvault周辺に展開させていた守備部隊に反撃を命令、コンコードを占拠していたジャレッドの部下達が対応するよりも先にダイナーを奪い返したのだった。

 

 ドラムリン・ダイナーが奪還されたということは、コンコードはおろかレキシントンやコルベカが危ない。もはや作戦の継続は不可能だった。

 

「畜生! 引き上げだ!! コルベカまで引くぞ!」ジャレッドはヌカコーラの瓶を床に叩きつけた。「クソッタレ!!」

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 レイダーの主力部隊が撤退を始めると、ネイトは追撃戦を命じた。サンクチュアリ隊はネイトとリジーに率いられ、レッドロケットを奪還。そのままの勢いでコンコードに攻め入った。

 

 アバナシーファームからダイナーまで進出した部隊はコンコードを包囲することなく、ネイトの指示通り防御に徹した。

 

 臆病な動物も逃げ場を失えば牙を向ける。ネイトは追い詰められた敵の怖さをアンカレッジで充分に体験していたため、相手に逃げ道を与えた。

 

「畜生!! 後退だ!!」

 

「おい! 置いてかないでくれ!!」

 

 コンコードのレイダーは波に飲まれる砂の城のように崩壊し、コルベカへと引き返していった。

 

「斥候の報告によると、レイダーは完全にコルベカに引き上げた様だ」プレストンが言った。「大勝利だな」

 

「ああ、奇跡だ」ネイトは丘の上からコンコードを見下ろした。「アバナシー農場を攻撃していた敵が撤退しなければ我々は負けていたかもしれない。今回は敵の団結力の無さに救われた。……油断は禁物だ」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

「クソッ!」

 

 レッドトゥーレットは激怒していた。本拠地が攻撃されているとの連絡を受け、ミニッツメンとの戦闘を切り上げて急いで救援に駆けつけたトゥーレットは、タワートムのレイダー団を食糧備蓄倉庫から追い出すことに成功した。食糧も人員も被害は少ない。が、レッドトゥーレットは何よりも大切なものを失った。妹のリリーだ。

 

──妹の命が惜しいなら要求に従え。

 

 タワートムはリリーを誘拐し、食糧を渡すように要求してきた。すぐにでも血祭りにあげてやると憤怒するレッドであったが、妹が人質に取られている現状では手も足も出せない事も理解していた。

 

「クソッ! クソッ! クソ!」

 

 頼れるリーダーの激怒ぶりに周りの部下たちは沈黙した。これまで彼女が部下を傷つけることはなかったが、今日下手な真似をしたら殺されるだろう。両親が死んで以来、必死に守ってきた妹が卑劣な男に誘拐され、レッドはいつもの冷静さを失っていた。

 

 涙を隠すかの様に暴れ、自室をメチャクチャにするレッド。彼女はひとしきり暴れると、その場に座り込んだ。呆然とするリーダーを部下たちはただ見守る事しかできなかった。

 

 




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