・東方作品
・キャラ崩壊の危険性高
・更新頻度低
・その他諸々
桜が風に舞い上がり、視界を染め上げて、新たな一日の始まりを告げる。そんな風景をただ何となく見上げながら、俺は退屈を紛らわすようにため息をつく………そんなことをしても何もならないと判っていながら、今日も一日を浪費するのだと感じながら
「………つまらないな」
最早通例となりつつある独り言が虚空に消えていく………つまらないと言いながら、何か行動を起こすこともない。動いたところで、何も変わらないのだから
『………それはどうかしらね?』
突然耳に届く、不可思議な声。視線を多方に向けたが、声の主らしき姿は見えず、誰何する
「誰だ?どこに居る?」
『………今はまだ、その時ではないわ。でも、いつの日にか貴方を連れて行ってあげる………忘れられた者達が集う、幻想の郷へ』
………声が聞こえなくなると同時に、“何故か”その場で棒立ちになっていた自分に首を傾げる
(何をやっているんだ、俺は。このままじゃ遅刻だ)
スマホで時間を確認する………走る程ではないが、あまりのんびりしている暇はないな
学校に着くや否や、俺は喧騒の中を掻い潜って自分の席につく。窓際最後列という至高の位置を手放したくないものの、どうなることやら
「おはよう、神崎くん。今年もよろしくね」
「おはよ………秋沢さん」
隣の席の美少女、秋沢美夜さんか声をかけてきた。黒の綺麗な髪をリボンで纏め上げ、モデル顔負けのスタイルで去年の入学当時から絶大な人気を誇っている彼女は………何故か俺相手に異様に親しくしてくるのだ。全く意味が分からないが
「そういえば、また“神隠し”があったみたいだよ?」
「ははっ………ただの失踪事件を“神隠し”とは、オカルトじみてるな」
彼女の言う“神隠し”とは、正しく俺が言った“失踪事件”だ。丁度1年前くらいからだろうか?高校生の失踪が散発して発生しているのだ。毎月一人だったり数人だったり、多いときは十数人規模で忽然と消息を断っている
「でも皆して“神隠し”って言ってるよ?」
「そういう流布は感心しないが………で?今度は誰って話だ?」
「隣町の不良だって………なんか不思議だよね」
「不思議?」
神隠しの話題が出てから出しておいたノートに発生日と人物像を書いていると、何やら引っかかる事を言ってきた
「だってそうでしょ?“神隠し”の被害者って、大半が不良生徒なんだよ?意図的に狙ってるのかな?」
「………人為的なモノならいざ知らず、“神隠し”なんて超常現象チックなモノだったら狙いようがないんじゃないか?」
「そうだけど………って、それ何?」
ノートに視線を向けていた秋沢さんの問いに、数秒思考してから答える
「被害者の人物像と発生時期の一覧だよ………警察が出張ってるとはいえ、興味本位で調べるのも面白そうだと思ってな」
「へぇ………うわ、細かく書いてあるねぇ」
スッと身を寄せて覗き込む彼女から自然な流れで少し距離を取る………別に気にしてないが、周囲の男子生徒からの殺意が面倒くさい
「ほら、そろそろ席に戻りな。授業始まる………ぞ?」
肩を押して席に促そうとして、俺は本格的におかしいと感じた。視線が、表情が………いや、世界が急に“鼓動を止めた”
「な、んだ………?」
席を立ち、周囲を見渡す………誰も彼も、銅像と言わんばかりに動いていない。咄嗟に時計を見上げるが、それも止まっている
「くそっ!何がどうなって………」
『………お待たせ、ロストチャイルド』
取り敢えず駆け出そうとした瞬間、目の前の景色が姿を変えた………無数の“眼”が見つめる、不気味な空間から現れた謎の女性。俺は無意識に数歩後退り、警戒心たっぷりに問う
「アンタ………誰だ?朝にも聞いた声だ」
「………朝のことを覚えていたの?私は“八雲紫”。こことは違う場所………“幻想郷”の管理者よ」
「………なにを言っている?」
その人の言葉の意味が理解出来なかった。幻想郷?そんな世界がある筈がない………だが、この人の目は嘘を言うような目ではない。直感が、俺に“信用しろ”と訴えている
「解らないのも無理ないわ。幻想郷とは“忘れられた者達が集う場所”。貴方に分かるように言うなら、“神隠しの被害者が行き着く先”よ」
「っ!?なら、そこに失踪した連中が!?」
「ええ………ただ、その話は後でもいいかしら?今は、私のお願いを聞いてもらえるかしら?」
こんな超常現象を起こしているであろう人からの“お願い”………ねぇ。正直聞きたくない。絶対面倒なことに巻き込まれるから
「………先に聞きたい。その願いを叶えたら、俺の“退屈”は紛れるのか?」
「………そうね。保証するわ」
「………………分かった。行こう」
………そうして俺、神崎悠は幻想郷へと向かう事になった