………無数の眼に見つめられるという、少し気味の悪い廻廊を歩く。先導する女性に声をかけようとして、何を言えば良いか解らずに口を閉ざす
「着くまで少し時間があるから、聞きたいことがあるなら今のうちに答えてあげるわよ?」
「む………そうだな。取り敢えず、俺を選んだ理由からかな」
「理由ね………貴方の言う“神隠し”、私達で言うところの“幻想入り”だけど、本来なら条件があるの」
「条件?」
そういう言い方をするということは、超常現象の類ではないということか?
「幻想入りの条件………それは、“世界から忘れられる”ことよ」
「………は?」
どういうことだ?世界から忘れられるって………
「人々の記憶から消えるってことか?」
「端的に言えばそうね………でも、今回の“幻想入り”はその限りではないと考えているわ」
「………つまり、外的要因による幻想入り、ということか?」
正解、と言うように微笑む紫。その答えを確認して、次の疑問を口にする
「外的要因の検討は?」
「それについては推測だけど………貴方達の世界から来た人によるモノだと考えているわ」
「………俺達の世界に、超常を起こせる人間なんて居ないぞ?」
「貴方達の世界ではそうでしょうね。でも、幻想入りした人達はそうじゃない………能力を得るわ」
「能力?」
「ええ………今歩いているこの廻廊も、能力の産物。“境界を操る程度の能力”よ」
境界………と言われて入口を思い出した。なるほど、確かに現実と廻廊の境界を操っていたな
「成程。そして、能力は“幻想入り”することで手に入ると………ようやく合点がいった。始まりは偶然の幻想入りだが、その後の“失踪事件”は人為的なものだったのか」
「そういう事でしょうね………そして、その“失踪事件”にあった人の誰かが、“事件”を起こしたの」
「事件?」
俺達の世界の人間が起こす事件………普通に考えたら傷害事件だけど、能力の存在を知った今、並大抵の事では無いだろうと推測する
「能力による、他人の精神への介入………私達は“失意異変”と呼んでいるわ」
「失意異変………意識を奪うってことか?」
「いいえ………能力を暴走させて周囲に実害を与えようとしたの」
「対応策が意識を失うってことか………だが、俺を選ぶ理由になってないな」
「貴方の能力が、解決策になるのよ」
「………へぇ」
俺にも能力が身につくという事か………興味あるな
「その能力を扱いこなす為に、最優先で助けてほしい子の所に出口を用意したわ………私はこのまま、実行犯を探るわ」
「わかった。俺の事は話してあるのか?」
「ええ、私が連れてきたと言えば伝わるわ」
「了解だ………では、行ってくる」
さぁ………本格的な“幻想入り”と参りますか