神社、石段下_
「ここは………神社、か」
八雲紫に送り出された場所は、中々時代を感じさせる古めかしい神社だった。そこそこの時間人の手が加えられてないのか、多少落ち葉等が散乱しているものの、こういうところは身が引き締まる思いになるな………
「お待ちしておりました」
「ん………おぉ」
石段の上に視線と意識を向けていたからか、俺は声がするまで人の接近に気づかなかった。だが、視線を向けた先に居たのは、人間と言うには少々無理があるだろう………何とも見事な、九尾の狐の尻尾を揺らし、八雲紫に近しい雰囲気を漂わせる女性が居た
「私の名は八雲藍。妖怪の賢者、八雲紫様に仕える式です」
「能力の次は式神の類か………本当にファンタジーな世界だな。嫌いじゃないけどさ」
「………ここからの案内は私が担当させて戴きます。実は、紫様はご存知無いのですが、“失意異変”の被害者は全員一箇所に集めて避難させてあるのです」
「はてさて、妙な話だな。妖怪の賢者であり、君の主人である八雲紫に報告無しに動かしたと?」
「郷の総意です。しかも、紫様が貴方を迎えに行った後に決定したことでしたので………」
「まぁ確かに、被害者が三々五々に散っていてはケアも苦労するからな。それで、ここからだと結構遠いのか?」
「はい………ですので、ここからは“飛んでいこう”かと」
………は?今なんて言った?“飛んでいく”?どうやって?疑問が頭の中で浮かんでは弾けて消え、混乱しているといつの間にか傍まで来ていた八雲藍に抱きかかえられた
「え?ちょ、ま………!」
「初飛行ですので、今回は私が抱えて飛行します。勝手を掴んでいただくにはこれが最善かと」
いや、それはいいんだけど!あーもー!女性らしい体つきしてるのが異性に抱きつく事に抵抗とかないんか!?あったらやってねぇだろうけどさ!
(くそっ、感じたことのない温もりが………って阿呆!余計なことは考えるな、俺ぇ!)
「それでは、向かいます。しっかりと捕まっていてください」
「どこを掴めと………………うわぁぁぁぁ!?」
一気に重力から解き放たれたのか、俺を抱えた八雲藍は、何の迷いもなく、大空へと飛翔した………うん、女性に密着してるとか、異変解決にはどうしたらいいんだろうかとか、そんなもの全部吹き飛ぶくらいには、人生で初の“生身での飛行”という体験には、不覚にも心が躍ってしまった。人間が誰しも望んだであろう体験を今しているんだから………