作者のクトゥルフ神話技能は中途半端ですが「アーカムそして星の世界へ」とか大好きです。
君は古今東西のオカルトの存在を信じているだろうか?俺は全部が全部という訳では無いが、実在する”そういうもの”があると俺は知っている。そしてそんな俺には奇妙な同居人達がいる。俺の名前は興路木 未知(こうろぎ みち)。この話はひょんなことから変な世界に足を踏み入れた俺のなんとも言えない話だ。
「ミッチー!朝だよ!」
ドアの向こうから声が聞こえる。しかし俺は起きる気はない。何故なら今日は日曜日だからである。日曜日の朝はゆっくりしたいものだ。すると部屋の扉を叩く音が聞こえてくる。
「ねぇー!起きてよぉー」ドンドンと叩かれる音にさすがの俺も嫌気が差す。
「あぁもうわかったよ。今行くって」
俺は仕方なくベッドから出てリビングに行く。そこには朝食の準備をしている女性がいた。
「おはようございます。“いぐ”さん」
「うんおはよう。早く顔を洗ってきなさい」
そう言って台所に戻っていく女性。彼女は“いぐ”さん、今日の朝食の担当で同居人の一人である。顔を洗い終わりテーブルに着く。目の前にはパンやベーコンエッグなどが置かれている。「いただきます」と言って食べ始める。美味しい。
「あれ?“ゔるとぅーむ”さんと“ぼくるぐ”ちゃんは?」
他の同居人達の姿が見えない。特に“ぼくるぐ”ちゃんはさっき俺を呼んでいたはずなのだが。
「ヴルトゥームは君より前に朝餉を食べ終えて部屋に戻ったぞ。ボクルグはトイレに行っているようだ」
なるほど。納得した。“ゔるとぅーむ”さんはよく食べるもんなぁ。
「ところで昨日は何時に寝たんだね?」
うっ、痛いところを突かれた。実は昨日の夜中、ネットサーフィンをしていたら面白そうな動画を見つけてしまい夜更かししてしまったのだ。
「12時くらいですかね……」
「全く……若いとはいえ限度というものを考えろ」
はぁいと返事をして食事を続ける。
「ごちそうさまでした」
食事を終えて片付けをする。その後歯磨きなどを済ませ自室に戻る。部屋に戻ると机の上に手紙が置かれていた。内容は『昼になったらリビングに来なさい』とのことだ。なんだか怖いなと思いながら布団に入る。しかし眠気は全くない。仕方ないのでスマホをいじり時間を潰す。
「暇だぁー」
結局1時間も持たなかった。俺は渋々リビングに向かう。リビングに入ると既に“ゔるとぅーむ”さんと“いぐ”さんがいた。二人は何やら真剣な雰囲気で話し合っている。邪魔しちゃ悪いかなと思ったので話しかけずにソファに座って待つことにした。
「ねぇ!あなたも話に加わりなさい!」
急に声をかけられて驚く。声の主はもちろん“ゔるとぅーむ”さんだ。彼女はこちらに来て俺の隣に座る。
「いったい何があったんだ?」
俺が聞くと“いぐ”さんが答えてくれた。どうやら今から5分後に大事な話し合いがあるらしい。そのためにも早く来てほしかったそうだ。
「じゃあなんの話なのか教えてくださいよ」
「それは秘密だよ」
えぇ〜いいじゃん別にぃと言うと睨まれたため黙ることにした。
5分ほど経つと“ぼぐるぐ”ちゃんが入ってきた。これで全員揃ったので話し合いを始める。
「それではこれより会議を開始する」
そう言ってゔるとぅーむ”さんは立ち上がりホワイトボードの前に立った。
「まず最初に言うことはこの集まりは非公式であるということ、次に“わし”は地球人ではないこと最後にこれは我々だけの秘密だということよ」
“ゔるとぅーむ”さんはそう言ってペンを持ち書き始めた。
・種族について
ゔるとぅーむ:花のような見た目をした巨大な女性。は植物型神話生物であり、よぐ=そとーすを祖とする存在である。また、ゔるとぅーむは星辰が正しい位置になければ行動できない。
いぐ:大きな蛇人間、時には東洋の巨大な龍の姿をした神話生物。ゔるとぅーむと同じく星の配置により行動できる。
ぼくるぐ:巨大な水蜥蜴の神話生物。ゔるとぅーむと同じく星の配置により行動できる。
「うん……つまり“ゔるとぅーむ”さん達は神様みたいなものって認識でいいのか?」
俺がそう言うと“ゔるとぅーむ”さんは少し驚いたような顔をした後笑顔になって言った。
「よくわかったわね、地球人が表せるところなら大体そんな感じよ。それで今回の議題なのだけど……」
“ゔるとぅーむ”さんは一度咳払いをし再び話し始めた。
「どうしたら出来るだけ穏便に地球を侵略できるかなんだけど」
「もう侵略って時点で穏便じゃないんですけど」
俺はツッコミを入れた。他の二人も余り興味がなさそうだ。しかし“ゔるとぅーむ”さんは気にしていない様子だ。
「まぁ確かに。でもさぁ……地球の土地とか色々欲しいわけよ」
「なら普通に交渉すればいいんじゃないですか?“ゔるとぅーむ”さんは偉いんでしょ?」
「それが出来たら苦労しないのよ」
“ゔるとぅーむ”さんは苦笑いをしながらそう言った。
「ヴルトゥームはこの星では新参者だからな」
“いぐ”さんがそう補足する。
「そうなの?」
“ぼくるぐ”ちゃんは顔に疑問符を浮かべる。
「ボクルグは幻夢境(ドリームランド)の方が縄張りだからなこっちに疎いのも無理はないだろう」
“いぐ”さん。俺もその辺りの事情よくわからないんですけど。詳しく聞いても良いんでしょうか?
「構わないとも」
マジすかありがとうございます。話の腰折らない程度に聞かせてください。
「はいはい分かったでは説明しよう。簡単に説明するとだ……」
この星には今人類と呼ばれる者達が栄えているが、その人類が誕生する前から外宇宙から地球にやって来た者達がいた。そこにいるヴルトゥームの兄弟や私のような存在だ。彼らは地球に根を降ろし地球環境を大きく変動するまではそこらを支配していた。そして所謂封印された状態にあるが今でも地球の領土を狙っている者達がいるのさ。
「なるほど、対して“ゔるとぅーむ”さんは…」
「悔しいけどわしは火星から来たばかりで他の奴ほどの影響力もないのよ。旧神も厄介だしね」
“ゔるとぅーむ”さんは腕を組みムスッとした表情で言う。
「旧神?」
「こっちの言葉で近いものを言えば警察のようなものよ。兄弟達が攻勢に出られないのもそいつらがいるからね」
その言葉を聞きながら俺は“ゔるとぅーむ”さんに初めてあった日の事を思い出していた。
☆☆☆
この年は火星が地球に接近することで話題となっており、連日テレビで報道されていた。夜になるとよく星空が見える場所のあちこちで望遠鏡を持った人が天体観測をしていた。そんなある日の夜、バイトが終わった俺は帰り道を歩いていた。その日は良く晴れていたので俺も火星見てみようかなーとか思いながら夜空を見ていると、やけに明るい星があることに気づいた。
「なんだあれ」
その星を見ているだんだん大きくなってくる。もしかして隕石?と思った時には火の玉と形容できるそれは自分の頭上を通過し、ここから少し離れた場所にある田園地帯に落ちていた。俺は野次馬根性をだしてその火の玉が落ちた場所へ向かった。
「隕石ってあんなに大きいものなのか?」
休耕地の真ん中に落ちていたそれは自動車くらいの大きさで辺りは落下の余波か地面は大きくえぐれ、焼け焦げていた。好奇心を抑えられずに隕石らしきそれに近づくと、それは音を立てて割れた。
「えっ!?」
その中には、金髪で頭に花飾りを着けた女性が居た。それもすごい美人の。
まさか、宇宙人!?驚いていると女性は、
「フハハハハハハハハハハ!!」
と笑い出した。それにびっくりした俺は思わず尻もちを付いてしまった。
「ようやくやってきたぞ!地球に!クトゥルフ!ハスター!待っていろ!わしは――」
女性はそこまで言うと、こちらに気づいたようだ。
「むっお前はこの星の原住民ね?名を何という?」
「は、はい!興路木 未知です!」
「ミチか…わしは、“ゔるとぅーむ”」
“ゔるとぅーむ”さんがこちらに近づく。
「ミチよ、わしをお前の住処に案内しなさい。そうすればお前は賢明な投資をこのわしにすることになるわ」
「わ、分かりました…」
その言葉の通り、俺はアパートの自室に彼女を連れてきてしまった。慣れない仕草で“ゔるとぅーむ”さんにお茶を入れると、彼女は少しばかり湯吞を観察し、一気に飲み干した。
「悪くない味ね」
「その、“ゔるとぅーむ”さんは一体何者なんですか?」
俺は“ゔるとぅーむ”さんに尋ねてみる。
「それはおいおい話すわ。それにしても、この住処は狭すぎると思わない?もっと広い場所はないの?」
「えっと、フリーターの俺にはこの部屋が限界というかそこまでお金がないんで…」
「そうか、ちょっとその端末を貸しなさい。」
「このパソコンですか?一体何を……」
“ゔるとぅーむ”さんはパソコンを操作する。
「まずはこの星で相応しい拠点を手に入れるの…これは古い通貨制度ね」
こうしてなし崩しに“ゔるとぅーむ”さんを居候させることになったのだが、
「これ、俺の通帳だよな…?なんで億以上の金が入ってるんだ?」
「引っ越しの手続きは済ませたから早くしたくしなさい。」
あれよあれよといううちに俺は億万長者になっていて住宅地の一等地に一軒家が立っていた。
「これでやっと拠点ができたわねミチ」
「あの、“ゔるとぅーむ”さん。貴女は一体何が目的なんですか」
「そうね、この星で言うならわしの目的は……」
☆☆☆
そこまで思い出していると、
「ミッチー、ボーっとしてるけど大丈夫?」
“ぼくるぐ”ちゃんの言葉で現実に戻った。
「相談があるのだけど」
“ゔるとぅーむ”さんがこちらを見る。
「えっ!?俺ですか?」
急に話を振られて驚く俺。
「ええ、そうよ」
「なんでしょう?」
俺は首を傾げる。
「わしと一緒にこの星の覇権を狙わない?」
「はい?」
思わず変な声が出る俺。
「具体的にはわしと共に地球を制圧してわしの支配下に置くの。そうすればわしの影響力が自然と大きくなるでしょう?」
「ちょっと待った!」流石にそれは駄目ですよ。
「何でだい?」“ゔるとぅーむ”さん。
「まず第一に地球には人間の文明もあるんですよ!それに地球を支配しても“ゔるとぅーむ”さんの望み通りにいくとは限らないと思いますし……」
「そんな事はないと思うがねぇ」
「いえ、絶対とは言えませんよ」俺は強く言い切る。
「まぁ、そうかもしれないけど……」“ゔるとぅーむ”さんは少し困り顔になる。
「次に第二ですが“ゔるとぅーむ”さんが地球を支配するにしても“ゔるとぅーむ”さん一人の力では不可能だと思うのですが……」
「うーむ……確かに。ヴルトゥームは強い力を持っているがまだ若い。ヴルトゥーム一人では難しいかもな……」
「そうね……貴方の言う通りだわ」
“ゔるとぅーむ”さんは納得したように深く何度も首肯している。
「しかし確かに君の言う事も一理あるね」
“いぐ”さんも同意してくれる。
「そうなるとやはり地球の支配は諦めるしかないのかしらね……」
“ゔるとぅーむ”さんが溜息をつく。
「まあ、前に聞きましたが“ゔるとぅーむ”さん達はとても長い時を生きているんでしょう?なんなら人類が滅びた後くらいにもチャンスが来ますよ多分」
俺は励ますつもりで言ったのだが“ゔるとぅーむ”さんはまたもムスッとする。
「そんな悠長なこと言ってられないのよ。わしはそんなに起きていられないし」
「へえ~“ゔるとぅーむ”さんはどれくらい起きていられるんですか?」
俺は興味本位で聞いてみた。
「ざっと千年程かしらね」
「ええっ!!」
俺は驚きの声を上げる。予想以上に長生きだった。
「私達は長寿種だからな」
“いぐ”さんが補足する。
「それじゃ今のうちにやりたいことをやっておくべきだと思いますよ」
「例えば?」
“ゔるとぅーむ”さんは俺に尋ねる。
「え?えーと……」
俺は考え込む。
「特に無いなら無難に金貯めたり、友達作ったりするべきじゃないですか?」
俺の答えに二人は呆れた顔をする。
「いやいやいや、もっとスケールの大きな話しなさいよ」
「そうだぞ。君らしくもない」
「すみません……」
「全くこれだから人間は……」
“ゔるとぅーむ”さんは鼻を鳴らして腕を組む。
「“ゔるとぅーむ”さんは何かしたいこととか無いんですか?」
俺が質問すると“ゔるとぅーむ”さんは顎に手を当てて考える素振りを見せる。
「そうねぇ……やっぱり若い地球を堪能したいわね」
“ゔるとぅーむ”さんはニッコリ笑いながら言う。
「堪能?」
「代り映えしない火星の地底と違って地球の色々な場所を見て回りたいのよ」
「なるほど」
俺は相槌を打つ。
「それに美味しい物とか食べたいし、綺麗なものや面白いものも見に行きたいわ」
“ゔるとぅーむ”さんは楽しそうに語る。
「でも“ゔるとぅーむ”さんの見た目だと人間社会では色々面倒くさい事になりそうですね……」
「どういうこと?」
“ゔるとぅーむ”さんは首をかしげる。
「“ゔるとぅーむ”さんが地球人と同じ外見をしていれば、“ゔるとぅーむ”さんの正体を明かすことなく地球で暮らせるかもしれませんけど“ゔるとぅーむ”さんの姿は地球ではちょっと目立ちすぎますからね。“ゔるとぅーむ”さんが地球で行動する際は姿を隠した方がいいと思います」
俺は説明する。
「ふむ。確かにその通りだな」
「言われてみるとそうかもしれないわね」
「その辺も踏まえて旅行計画を立てるのもいいかもしれません」
「確かにそれはいいかもしれないわね」
“ゔるとぅーむ”さんは嬉しそうに微笑む。
「まぁ、とにかく頑張ってください」
「ありがとう。頑張ることにするわ」
“ゔるとぅーむ”さんはそう言って席を立つ。
「さて、そろそろ昼餉にしますかね」
「ああ。そうだな次の当番は確か君だったな」
「はい」
「ふわあ…やっと話終わった?お腹すいたよ」
“ぼくるぐ”ちゃんが眠そうな眼を開ける。途中から会話に参加してないと思ったら寝ていたようだ。
「じゃあ昼食を作りに行きますんで」
俺は昼食を作りに台所に向かうのだった。
☆☆☆
人と花と蛇と蜥蜴と+αの話のはじまり
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