ボクは蛇や   作:遊吉‪α‬

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顔合わせ

 平和の象徴『オールマイト』と対をなす存在、巨悪『オール・フォー・ワン』。その存在が逮捕されて少し経った頃。国立多古場競技場で校外活動(インターン)に向けてのヒーロー仮免許取得試験がおこなわれていた。

 

 「エラい気合い入ってるみたいやね」

 「よく見ておけ。アイツらがお前の教育実習で受け持つ生徒たちだ」

 

 雄英高校1年A組。

 一癖も二癖もありそうな生徒ばかりだが、実力はやはりプロヒーローと比べると見劣りする。

 しかしそんななか、

 

 「あれは・・・?」

 

 明らかにひとり、生徒とは思えないほどの技量を持った存在を見つけた。マジシャンなどがよく使う『視線誘導(ミスディレクション)』に、戦闘時特有の『息継ぎの隙』を組み合わせた技術。暗殺や隠密の技だ。

 

 「相澤センセ、あの子は?」

 「ん?彼女は『現見ケミィ』。士傑高校の二年生でお前とは関係ないぞ?」

 「・・・ボク、ちょっと行ってきますわ」

 

 何かを感じ取った市丸がそう言ってモニタールームから出ようとするも、相澤を含む雄英教師陣に止められる。

 

 「待て待てなにをするつもりだ?」

 「お前が動くとロクなことがないからな」

 

 市丸はこの一年、数々の困難に打ち勝ち、大きく実力を伸ば(Plus ultra)した反面、教師たちからの信頼を失っていた。

 

 それもそうだろう。

 

 去年の体育祭ではテレビ放送されていることなど気にせず生徒を完膚なきまでに叩き潰し、職場体験ではお世話になるプロヒーローに喧嘩を売り、仮免試験では根津校長にトラウマを思い出させたのだ。

 

 そんな教師たちの狼狽に嘆息しつつ、市丸は冷静に自身の見解を述べる。

 

 「あの子、ヴィランやろ。なんや『悪意』いうのがビンビン伝わってくるわ」

 「なっ!?」

 「そのケミィいう子がヴィランなんか、それともヴィランが変装してるだけなんかは知らんけど、早よせな逃げられるで?」

 

 雄英の教師、そして市丸が再びモニターを見ると、既にそこには現見ケミィは居なかった。

 

 「あ、今度はあっちの子から『悪意』感じるわ。やっぱり変身出来る個性なんかな?」

 「あれはウチの生徒で麗日お茶子だ」

 「でも、同じ顔の子が向こうにもおるで?」

 「なっ!?すぐに士傑の教師に連絡を!!現見ケミィの個性が変装系でなかったならヴィランの可能性がある!」

 

 瞬時に慌ただしく動き出す教師たち。

 結局、現見ケミィの個性は『幻惑』でカメラ越しに個性を発動することは出来ないとのことだったが、彼女をヴィランと仮定して行動した教師たちが会うことはなかった。

 

 少しハプニングはあったものの、結局、被害という被害はなくヒーロー仮免許取得試験は終了した。1年A組はなんと合格者18名という、市丸をして驚きの結果だった。

 

 

▌▌▌▌▌

 

 仮免試験が終わり、1年A組の教室には生徒たちが集められた。

 何があるのかとワクワク顔の彼らの前に現れたのは四人の先輩たちだ。

 

 「じゃ、本格的にインターンの話をしていこう。職場体験とどういう違いがあるのか、直に経験している人間から話してもらう。多忙ななか都合を合わせてくれたんだ。心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する四人──」

 

 誰あろう、ビッグ4の四人である。

 

 「じゃあ手短に自己紹介から」

 

 相澤の指示のもと、天喰環、波動ねじれ、通形ミリオの順に無難とは言えない自己紹介がされ、次は遂に市丸の番となる。

 

 「ボクは市丸ギン。よろしゅう」

 

 何とも端的な、無難すぎる自己紹介に、生徒たちは先ほどまでとは違った意味で呆然とした。

 

 「アハハハハ!市丸くん!もう少しちゃんと自己紹介した方がいいよ!皆もきっと聞きたいだろうし!」

 

 今度は通形に促され、「そうやろか」と呟くと、再び市丸は自己紹介をし始める。

 

 「まあ、なんや。ボクはこんなかで唯一の二年生や。個性は『伸縮』。ボクが触れたもんはよう伸びて、よう縮む。明日からちょっとの間、教育実習生として君らの授業受け持つらしいから、よろしゅうね」

 

 と、こんな感じで市丸と1年A組との顔合わせは終わるかに思えた。

 しかし、そこに相澤が待ったを掛けた。

 

 「せっかくだ。市丸、少し揉んでやってくれ」

 「エエの?ボク、手加減苦手やで?」

 

 市丸がそう言うと、今度は天喰から待ったが掛かる。

 

 「相澤先生・・・やめた方がいい。皆がみんな上昇志向に満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」

 「あ、聞いて!知ってる?昔挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって問題起こしちゃった子がいたんだよ!知ってた?」

 「ウーン、市丸くんやり過ぎちゃうからなー!俺が代わりにやろうか!?」

 

 誰ひとり、市丸が負けることを考えていない。

 そんな様子に、少なからず困難を乗り越えてきた1年A組の生徒は苛立ちを見せた。

 

 「我々はハンデありとはいえプロとも戦っている。そして(ヴィラン)との戦いも経験してます!」

 「そんな心配されるほど俺らザコに見えますか?」

 

 相澤がニヤリと笑った。

 

 「決まりだな」

 

 どうやら謀られたらしい。

 市丸は呆れたように嘆息すると、ヤレヤレと首を振り、相澤に指示された体育館γ(ガンマ)へと向うのだった。

 

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