異世界のウマ娘 ~Ancestral Loyality~【サイレンススズカ】 作:もっそ
2枚目の分厚いステーキをなんとか食べ終えてカフェオレを飲んでいると、スマホが鳴った。
「トレーナーだわ」
こうして電話をかけてくるとは、なにか急用だろうか。とにかく通話ボタンを押す。
「どうしたんですか、トレーナー」
『どうしたもこうしたも……おまえ、いきなりタイキシャトルとマッチレースなんて聞いてないぞ』
「え……あのどうして、トレーナーが……あ、エアグルーヴ」
それは通話画面に新たに表示された着信履歴であった。
そしてすぐタイキシャトルのスマホが軽快なメロディーを鳴らした。
「ワオ! エアグルーヴ!」
『タイキ! 貴様、どういうつもりだ! ああ、ええい、スズカはそこにいるのか!』
「イエース! テレフォンタイムナウ!」
二人の通話を聞くにエアグルーヴも知っているようだ(ついでに怒っているようだ)。
「あの、それで……どうしてトレーナーたちが、レースしたことを知っているんですか」
『どうしてって、おまえネットでニュースになってるんだよ。動画も一緒にアップされて』
「そ、そうなんですか」
話を聞いてタイキシャーロックがタブレットを出して調べ始めた。
「本当だね。ふむ、ウマテレのアメリカ支部、動画もスマホで撮影したものだ」
そう言って見せられたのはたしかに今朝のレースの動画だった。まさか撮られていたとは。しかもそれが日本で記事になっているとは。
「キミは自分の話題性に無頓着で、アメリカ人もキミのことを知らないと思っているようだが、アメリカにいる日本人はそうではないことを念頭に置いておくべきだったね」
それからシャーロックは記事の見出しを読み上げた。
「1mph Derby。ワンマイルワンミニッツ。奇跡のウマ娘、サイレンススズカ。渡米初日にタイキシャトルとマッチレース」
「1マイル1分!?」
思わず大声を出してしまった。
「はっは。当然、有り得ないタイムだ。動画はどう見ても1分30も切っていない。くだらないトバシの記事だ。それも夢ではないという締めくくりだ」
1分30秒でも日本レコードだ。唖然とするスズカにトレーナーの声がかかる。
『現地メディアでは渡米の注目度は低いと思っていたが、そうか、日本の雑誌の海外記者か……スマン、盲点だった』
「私もごめんなさい。勝手にレースしてしまって」
『ああ、それはまあ、いい、というか。脚は大丈夫だったか』
「はい。問題ないと思います」
『そうか。それならいいんだ。おまえはなにも気にせず思いっきり走れおわああああああ!』
「???」
『スズカさーん!』
「……スペちゃん?」
『はい! スペシャルウィークです! スズカさん、すっごく! すっごくかっこよかったです!』
『おいスペ、おまえぐええええ!』
『やっほー、スズカ~、すっごいじゃーん!』
『スズカ先輩、サイッコーにかっこいいっす!』
『スズカせんぱーい、なにか必要なものありますかー』
「みんな……」
この通話の向こうで繰り広げられている光景が容易に想像できる。
隣りではタイキシャトルが同じようにエアグルーヴと話し続けている。エアグルーヴはまだ怒っているようだが、それに応えるタイキシャトルはどこ吹く風という具合だ。
「私は大丈夫よ。まだ着いたばかりでわからないことばかりだけど、ちっとも不安じゃないわ」
『スズカさん……』いま向こうにいるのはスペシャルウィークだろうか。『スズカさぁぁぁぁん! わだじ、ざびじいですぅぅぅぅぅ!!』
「あら……ふふっ」
『わだじ、ズズガざんがいなくてざびじぐで、にんじん食べずぎで5キロも太っちゃいまじだぁぁぁ!!』
「スペちゃん……それは食べ過ぎよ……」
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