異世界のウマ娘 ~Ancestral Loyality~【サイレンススズカ】 作:もっそ
天地が割れるような大歓声を浴びながらサイレンススズカはまず、大きく背伸びをして空を見た。
(太陽がほとんど真上、それに、きれいな輪っか。なんていうんだったかしら。走る時間でも見られる景色は違うのね)
たっぷり二十秒は景色を堪能してから、スズカは観客席のほうを向いた。観客にとって、二十秒はとても長く感じたに違いない。静まりかけた歓声と拍手が再びレース場に沸いた。
「ありがとうございます」
スズカの小さな言葉は歓声にかき消されてしまうが、高く上げて振った手はしっかりと見えている。三度目のスタンディングオーベーションを受け取ってから、スズカはコースを下りていった。
コースから検量室に向かう途中でタイキブリザードとクラブオーナーになるハリー氏と、タイキシャーロックが迎えてくれた。
シャーロックは手にタブレットを持って、その向こうにいるチームスピカのメンバーを映している。
『スズカさぁぁぁぁぁぁぁん!! すっっっっっっっごかったですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!』
鼻が押し潰れんばかりのスペシャルウィークにスズカも自然と笑みがこぼれた。
「ありがとう。スペちゃん、起きててだいじょうぶ?」
日本では深夜の一時ごろだ。
『だいじょうぶです! 明日はみんなお休みです!』
『そうだよー、トレーナーに言って調整してもらったんだからー。今日から毎回見るよー』
「そうなのね。ふふ、ありがとう」
「スズカ」
横からタイキブリザードが声をかける。
「あ……ごめんなさい、ブリザード、オーナー」
慌てて頭を下げると、ハリー氏はグッと親指を立ててみせた。
「コングラチュレーション。ワクワクするレースだった」
「……ありがとうございます」
「たしかに文句のつけようのないレースだった。さぁ、ミーティングは後にして、検量したらライブの準備をしないと」
「……ライブ?」
タイキブリザードの言葉に、首を傾げたスズカだったが、一瞬後に血の気が下がっていった。
「……まさか…………」
「忘れて……ました……」
その場にいる全員が唖然としていた。
「しかも……アメリカの……ライブ……」
こうしてスズカはアメリカのデビュー戦で勝利した後、見事な棒立ちライブを披露する――前に、最終レースまでの二時間みっちりなんとか形になる程度のレッスンを受けて、歌も他の出走ウマ娘の協力を受けてなんとか乗り切ったのだった。
――まるで、初めてつかまり立ちした赤ん坊のようなダンスだった。
あらんかぎりの称賛の喝采を書き連ねた勝利記事の締めの文章がそれであった。
――つづく
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日本のウマ娘を出してほしい
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アメリカの名バを知りたい