異世界のウマ娘 ~Ancestral Loyality~【サイレンススズカ】   作:もっそ

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 ケンタッキー州を代表するものは三つある。

 

 まず、ケンタッキー・フライドチキン。

 カーネル・サンダースの敬称で知られるサンダース・カフェの人気商品で、そのレシピを教えて使用料を取るというフランチャイズスタイルで莫大な利益を上げた世界一のフライドチキンだ。日本でもマクドナルドと並んで知らない人はいないだろう。

 

 そして、ケンタッキー・バーボン。

 アメリカ独立に寄与したフランスのブルボン朝に由来するバーボン郡で生産されたウィスキーは品質と量産の両方で高水準となり、アメリカを代表する酒類となった。当然ながらスズカたちは飲むことができない。

 

 最後のひとつが、ケンタッキー・ブルーグラス。

 西洋芝と呼ばれるもので、乾燥した地域であれば一年を通して生育を続けられて背も伸びにくい。コースのみならずレース場全体の緑化に適している為、世界中に輸出されている良芝である。

 

 チキン、酒、芝。この三つが同時に消費されるもの。

 それは精神を熱くするスポーツに他ならない。

 

 ゆえにベースボールチームがあり、バスケットボールチームがあり、フットボールチームがあり、ダービーレースがある。

 

 日本語でウマ娘と呼称される種族名は英語圏では〝ダービー〟に置き換わる。

 マン・ウーマン・ダービーである。

 ダービーの後にダービー市が作られ、ダービー卿が設けられてダービーステークスが開催された。

 

 今では、世界中でダービーが開催される。

 

「その中でアメリカのダービーこそが、ケンタッキー・ダービーということなんだよ」

 

 飛行機の中でこれらのことをあらためて話したのは帯同者のタイキブリザードである。

 サイレンススズカはおとなしくこれを聞いていた。渡米前に勉強していたことだが、現地のウマ娘から直接聞かされると、文字だけの知識に実感が湧いた。

 スズカを挟んで反対側にはタイキシャトルがブランケットをかぶって眠っている。爆睡だ。スズカに会えるのが楽しみすぎて夜に眠れなかったらしい。シートにつくなり数分で夢の中へ行ってしまった。

 

 機内のテレビモニターではエリザベスタウンという映画をホームで紹介していた。ケンタッキー州のエリザベスタウンが舞台で、デザイナーの仕事に大失敗した主人公が父親の故郷であるエリザベスタウンで生きる喜びを取り戻すヒューマンドラマだ。

 

 大きな別離と小さな別離、大きな出会いと小さな出会い――それはまだ幼さ残るサイレンススズカも経験したものだった。

 

 じわりとにじみ出た雫をぬぐうと、見計らっていたかのように機内アナウンスが到着までの時間を知らせる。

 

 すでにサイレンススズカの身体がケンタッキー州を飛んでいることを実感するのだった。

 

このお話を楽しみにしてくれますか?

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