異世界のウマ娘 ~Ancestral Loyality~【サイレンススズカ】   作:もっそ

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よし、今回もトレスズがあるな!

今回の話から会話はすべて英語で行われていると思ってください。
その中でも英語が出てきたらより強調されたりスラングだと思ってください。

かしわ記念1999
https://www.youtube.com/watch?v=UgdjqQ-B2Pc

ウマ娘 サイレンススズカが主役のお話です。

アニメウマ娘1期が終了して、アメリカに渡ったサイレンススズカと、アメリカで出会う不思議なウマ娘との物語になります。
ともあれ、そういう話はだいぶ後のほうになり、まずはアメリカのウマ娘レースについてあれこれする話が多くなると思います。
(※物語の仕様上、200%ぐらい独自設定がはいります。ご容赦ください)


異世界のウマ娘 ~Ancestral Loyality~ 4
-20-


 

『さぁ、サイレンススズカ! 今日はスタートからずっと先頭に立ってきましたサイレンススズカが今第三コーナーに入っていきます!』

 

『サイレンススズカ! サイレンススズカ! まだ逃げる! 後続のウマ娘たちとが距離が縮めてきますが、さぁどうだ!』

 

『最終コーナーから直線へ! 2バ身から3バ身! サイレンススズカもスピードを上げています!』

 

『直線向いて残り400! あっ、サイレンススズカ! サイレンススズカが来た! サイレンススズカが伸びる! 先頭に立ったままサイレンススズカが伸びてくるこの脚だ! 追いすがるアメリカのウマ娘たちを後目にリードを広げて4バ身! これ以上は広がらないが縮まらない! サイレンススズカだ! サイレンススズカだ! サイレンススズカ圧勝ーーー!!』

 

『ようやく見せてくれました! 逃げて差すサイレンススズカ、スタートからゴールまで他バの追随を許さない逃げ切りのレースでした!』

 

~~

 

 五月二週。

 かつてないほどの盛り上がりを見せた祝祭のダービーウィークが終わった翌週、サイレンススズカはダービーが行われたチャーチルダウンズレース場のリステッド競走で一着となり、アメリカデビューから無傷の二勝目を飾った。

 

 ――今年はダービーが二回あった。

 ――始まりはサイレンススズカ、終わりはサイレンススズカ。

 ――ベルモントパークはサイレンススズカの為に外側コース(ダート)に芝を植えるべきだ。

 

 そう書かれたのは日本びいきの雑誌であるが、確かにレース場にはサイレンススズカを見る為に満員の観客が集まっていて、一番人気で勝利後はマンハッタン・ハンディキャップへの期待が寄せられた。

 

 レースは「重賞級のウマ娘が一般競争に出たらこうなる」というものを地で行く内容であり、出走数も六人と成立ギリギリであった。

 日本では生中継の時間が深夜の三時になったが、異様とも言える視聴率を記録した。実況がずっとサイレンススズカを連呼することが揶揄されもした。

 

 ただし、レースを終えたサイレンススズカを迎えたタイキブリザードだけは拍手をしながら苦い表情をしていた。

 

「ハンディが重くなるから勝ちすぎるなって言ったんだけどね」

 

「あ……ごめんなさい、忘れちゃってたわ」

 

 興奮冷めやまぬといったスズカにブリザードも肩をすくめる。

 スズカは自分がアメリカの大地に順応して、身体の奥底から力が湧きあがってくるのを感じていた。

 何の不安もない。これに近い昂揚感はあの年以来だろう。

 しかし、スズカがそう感じるほど、周囲の不安は高まっていく。

 

『スズカ、脚は大丈夫か』

 

「大丈夫です。トレーナー」

 

 ライブも終えてレーシングクラブに戻ってきてすぐチーム・スピカとのビデオ通話をつなぐと、開口一番がそれである。

 毎日通話の始まりがそれなので、スズカとしては少々野暮ったく思い始めていた。せっかくいろいろと話せるのに、始まりはいつも同じ話題である。

 

「それより、スペちゃんの天皇賞(春)はどうでした? あと、ラスカルも」

 

『ああ、それがな。テイエムオペラオーにやられたよ。スペは六着、ラスカルが二着だ』

 

 天皇賞(春)は昨日行われたが、スズカは今日のレースがあったので何も聞かずにいた。結果は直前の阪神大賞典に優勝したテイエムオペラオーが一番人気に推されて優勝した。

 スペシャルウィークは阪神大賞典で既に一敗しており「これはスズカさんへの未練を断ち切れずにんじんを食べ過ぎた私の怠慢です!」と奮起して、にんじんを一本食べる度に「これはスズカさんの分」といって一本貯蓄して週末にスズカに送るという厳しい(?)願掛けを始めた。

 もう既にスズカの部屋の一角をにんじんの詰まった段ボールが占拠している。最初は一箱届いた段ボールが先週末は四箱になっていた。

 

『まあ、その、スズカに合わせる顔がないって部屋に引きこもってるらしい』

 

「そうですか……」

 

 スピカの他のウマ娘たちも深夜三時という時間に堂々と起床はできず、部屋でこっそり中継を見て、スズカのスマホにメッセージを送っていた。

 

『スペは宝塚記念でリベンジだな。グラスワンダーも出てくる。ラスカルは落ち込んでるようには見えなかったが、違うチームだし、スズカのほうからちゃんと声をかけてやってくれ』

 

「はい、わかりました」

 

 二人とも、まさかこれが一年にわたる世紀末覇王劇場の幕開けであるとは思いもしない。 

 それからは、今年クラシック期になったメジロマックイーンが右脚すねのソエ(骨膜炎)が完治せず、日本ダービーも見送ることになるというスピカの話、世界最大級のウマ娘記念公園ケンタッキー・ダービー・パークで各国伝統のバ術を見たというスズカの話を交換した後、今日のレースを振り返った。

 

『百点満点だ。文句のつけようがない』

 

「はい。私も最高の走りができたと思います」

 

『あとはどれくらいハンデが積まれるかってところだな。うーむ……』

 

 画面の向こうで何かを手元に引き寄せて眺める。おそらく去年のレース結果だろう。

 

『去年優勝したヤグリーは12.2ポンド……えーっといくつだ……』

 

「5.5キロです」

 

 1ポンドが約0.45キログラムなので、10%減した後に半分にすればいい。

 即答してみせたスズカに資料から顔を上げて目をしばたたかせる。

 

『頭いいな、スズカ』

 

「いえ、その……シャーロックに教わりました」

 

『そうか。そいつが一番重い重量で優勝してる。例年12超が最大重量みたいだな』

 

 そこまで読んだところで、ふと呟いた。

 

『日本より軽いな』

 

「はい、日本より軽いです」

 

 日本では負担重量はシニア期ならば5.7キロが基準であり、またアメリカでもほぼ同様である。トップハンデ(最重量負担)で5.5キロということは通常のレースより軽い負担重量となる訳だ。

 例えば九月に出走を予定しているシニアG1のマンノウォーステークスでも一律12.6ポンド(5.7キロ)に設定されている。

 一方でヨーロッパでは負担重量は増える傾向にある。6.0キロを超えることも珍しくない。凱旋門賞では5.95、キングジョージでは6.03の重量が課せられる。

 

 日本でハンディキャップレースが行われる場合、トップハンデには5.6から5.8が課せられることが多い。

 対して前回のマンハッタン・ハンディキャップでは最大で5.5となり、下は4.8まで軽減される。

 ちなみに、スマートフォン1つが200グラムほどである。スマホをポケットに入れて走るとけっこう負担になることはヒトと同じ体格のウマ娘も同じだ。

 

 ハンデが軽いといっても、もっと軽いハンデのウマ娘もいることになるマンハッタン・ハンディキャップで、スズカの負担重量がどうなるかは注目すべきポイントだった。

 前回優勝のヤグリーが基準になるとして、日本の宝塚記念に優勝し、アメリカのリステッド競走でも圧勝してみせたスズカがトップハンデを背負わされる可能性は高い。

 

 それに、いつもより軽い重量で走ることは事故の危険性にもつながる。とくに最速で大逃げをするスズカは他のウマ娘との間隔が掴めず、ペースとの折り合いを欠いてスタミナを切らすことになる。

 

『その為の新しい作戦な訳だが、全く問題なさそうだな』

 

「はい、しっかりとタイムを数えることができました」

 

 スズカの新しい作戦――それはレース中の体内時計の精確さを鍛え上げることだった。

 極端な話をすれば、芝2000メートルを1分55秒で走れば勝てる。レコードタイムだからだ。

 スタートから1ハロンごとに12秒で走り続ければ、2分でゴールできる。あとはスパートで1秒でも2秒でも縮める。

 

 それができれば苦労しない――誰もが思うことだろう。

 レース中に自分のペースをキープすることはウマ娘の基本であり、極意でもある。1000メートル通過時のタイムが1秒違うだけでラストの脚が相当削られる。

 

 しかしスズカはそれをしようとしている。それが新しい作戦だった。

 抑えて溜める逃げは過去に失敗した。スタートから加速し続ける大逃げも、走り慣れていないアメリカではリスクが高すぎる。

 一見して最初こそは大逃げだが、加速はしない。かといって後ろを気にしてペースを落とすこともしない。国籍雑多なアメリカのG1レースでは日本の教科書的な展開は難しい。

 それなら、最初から最後まで自分のペースを貫いて走ろう。最終的にスズカとトレーナーが決めたのはシンプルなことだった。

 

 そして、スズカならそれができると言われれば、たやすく信じられた。

 その根拠はスズカの中にだけしっかりと根付いている。

 

『よし! 後は本番に向けて時計の精度を高めていくぞ!』

 

「はい、トレーナー」

 

 大きく息を吸い込み、拳を握りしめて見せたスズカは、やる気十分である。

 

 

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このお話を楽しみにしてくれますか?

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