異世界のウマ娘 ~Ancestral Loyality~【サイレンススズカ】   作:もっそ

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 ケンタッキー州に戻る飛行機の中で、スズカは日本の地方重賞、かしわ記念を観戦していた。

 タイキシャーロックが出走している為だ。

 

 スズカの二走目が終わった翌日に、タイキシャーロックは日本へ帰国していた。

 

「ボクの今回の旅の目的は充分に果たしている。帝王賞に出走するスケジュールだからね。しばらくは日本にいる」

 

 キーンランド空港で、初めて会った時と同じホームズスタイルでタイキシャーロックは鳥打ち帽をつまみ上げた。

 

「そう……今までありがとうね、シャーロック」

 

 本心からスズカは言った。

 彼女がいなければスズカは休暇でレキシントン市内へ遊びに出かけたりしなかったし、また、出来なかっただろう。

 ファームの全面的なサポートがあるとはいえ、アメリカで暮らす日本人タイキシャーロックの存在はとても大きな助けになっていた。

 

「おいおい、まるで今生の別れみたいな言い方はやめておくれよ。キミも夏になれば一度日本に帰ってくるだろう?」

 

「ええ、そのつもり」

 

「その時に他人のふりをしないでくれれば、ボクは満足だ」

 

 ジョークのつもりだろうが、あまり笑えなかった。

 

「レイチェルについて、なにかわかったことがあったら教えてくれ」

 

 そう付け加えられたが、一緒に暮らしているファーマーウマ娘のレイチェルについて、スズカにわかることは何もなかった。

 第一印象で感じた深い哀しみの闇の正体は皆が知っていることであるし、それを解決する手段も既にあらゆる手立てが試されている。

 仲が悪いということもないが――というよりお互いに自己主張が少ない――レイチェルと特別に何かをするということもなかった。だいたいトレジャーがまとわりついてくるし。

 

「ボクやブリザードのような近しい者よりも第三者の気づきが重要なこともある。ミステリにおいては定番といっていい」

 

 シャーロックは葉の入っていないパイプを噛んで含み笑いの目線を投げかけて、搭乗口のゲートをくぐっていった。

 

『さぁ、三コーナーから四コーナーへと流れてまいります。単独の二番手に黄色いホームズ帽のタイキシャーロックが上がってまいります。その前はただ一頭だけ10番キクノウイン、その後ろにタイキシャーロック。さぁ、大歓声巻き起こった! 最後の直線追い比べ! 内のほうからサプライズパワー! サプライズパワーが今脚を伸ばして先頭に替わったか!? オースミジェットがやってきております! あとはタイキシャーロック! スノーエンデバーであります! さぁ先頭はサプライズパワー! タイキシャーロックかサプライズパワー! サプライズパワー! サプライズパワー優勝ーーー!!!!』

 

 タイキシャーロックは二着オースミジェットとクビ差の三着に終わっていた。

 かしわ記念に三年連続三着という珍しい記録だという。帝王賞への出走は先着したオースミジェットも中央所属ということもあり、微妙なところらしい。

 飄々としたタイキシャーロックも落ち込むことがあるのだろうか。だとしたら連絡を取るのは悪いのだろうか、スズカは悩みながら飛行機の窓の外へ視線を向けた。

 

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 『Silence Suzuka Pray of Horseshoe』

 ~サイレンスズカ、蹄鉄投げをする~

 

 六月初週

 

 この日、サイレンススズカはケンタッキー・ダービー・パークのホースシューイベントにゲスト出演した。

 

 ホースシューは蹄鉄シューズのことで、シューズに使っている蹄鉄を8~12メートル離れた先の杭に輪投げのように投げ入れるゲームである。シューズとシュートがかかっていると思われる。

 元々は使い古して捨てる予定の蹄鉄を遊び道具にしたことが始まりだが、現在では公式の組織とルールがあり、専用の蹄鉄も作られているほどポピュラーなゲームである。

 

 日本のトレセン学園にも愛好会があるが、サイレンススズカはそれほど熱心なプレイヤーではなかったらしく、付き添いのウマ娘タイキトレジャーからレクチャーを受けながらゲームを楽しんでいた。

 

 はじめは10フィートも飛び越えた場所に投げて赤面する様子を見せていたが、徐々にゲームに慣れて、ゲームを決めるラストシュートでステーク・オン(杭の頂点に蹄鉄が乗る)を決めた時には満面の笑みがこぼれていた。

 

 来週にはマンハッタン・ハンディキャップ・ステークスに出走することになるサイレンスズカは明日から追い切りに入るので、その前の最後の休養日を存分に楽しめただろう。 ――藤井泉助

 

 

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『キミは放っておくと本当にいいようにされるねえ(UMAIN通話先のタイキシャーロック)』

 

「言わないで……」

 

 

   ――つづく

 

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このお話を楽しみにしてくれますか?

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