異世界のウマ娘 ~Ancestral Loyality~【サイレンススズカ】   作:もっそ

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 昨日は大騒ぎだった。

 ブラッドストックファームに集合した数百人のウマ娘と噂を聞いてやってきた大勢のレキシントン市民が夜通しでパーティをしていたのである。いや、今もやっているようだ。朝日が差し込めるカーテンの向こうから陽気な音楽と笑い声が聞こえている。

 

 スズカは本来なら主賓のはずだが、旅行の疲れもあり、十時頃にはうとうとして先に眠っていた。

 目を覚まして部屋を見渡すと、ベッドとクローゼットとパソコン以外なにもないがらんとした部屋だった。直感的にタイキブリザードがスズカの為に用意した部屋だと思った。

 

 足にのしかかる重みに気づいて視線を落とすと、そこにはタイキシャトルが寝ていた。どういう寝相なのか、スズカの膝下に腹ばいになって半分ずり落ちた毛布の端を抱きしめている。

 

 自分でやったのか、近くのスタンドで充電されているスマホを見ると、アメリカ時間で午前四時頃、つまり早朝だ。

 途端に体がうずうずとしてきた。いつもならこの時間にはランニングに出ているのだ。

 

 知らない土地という不安があるが、外にはまだたくさんの人がいる。スマホも持てば大丈夫だろう。

 スマホに届いていたいくつかのメッセージに返事をして、タイキシャトルを起こさないようにそっとベッドから抜け出すと、旅行カバンに詰めていたジャージに着替えた。その時ころんと転がり出てきたヘアブラシとスプレーを見て、あまり風呂に入っていなかったことに気づく。クローゼットに鏡がついているので見てみると、いつもの寝ぼけまなこが三割増しになっている。髪もぼさぼさだ。

 こういう時に思い出すのはいつもエアグルーヴだ。彼女は女性としてのコンディション管理を怠りがちなスズカ(本人談)をいつも心配していた。そもそものことを言えばスズカが自分の容姿が他人にどう映るかを気にするという時点でエアグルーヴにとっては大きな進歩である。

 

 フェイスオイルとスプレーとヘアブラシ――すべてエアグルーヴがカバンに入れさせたものだ――で手早く――スズカとしては充分だと思っている範囲に――見た目を整える。

 

(ひょっとしたらブリザードは起きているのかも)

 

 まだ外ではたくさんの人がいる。さらにこの部屋の外のことをあまり覚えていない。ブリザードが起きていれば心強いのだが――

 そう思いながらドアを開けようとした時である。

 

「ス~ズ~カ~~~」

 

「っ!?」

 

 声にならない悲鳴も束の間、振り返ったスズカの目の前には大きな黒い壁がそそりたっていた。それが毛布を頭上から広げたタイキシャトルだと気づいた時にはスズカの体は柔らかな感触に捕まえられていた。

 

「キャ~ッチ! ア~ンド! ホールドデース!!」

 

「タ、タイキ……! ちょっと……離してぇ!」

 

「ノーノーノー! ダメですスズカ、ユーはナニシニジャパンデスカ~~!?」

 

「な、なに言ってるの……ひゃん! だめ、くすぐらないで……」

 

「スズカは~~~レッツランニングにゴーしようとしましたネ~?」

 

「そ、そうだけど……あはは! もうやめて……!」

 

 そう言った直後、ぴたりとくすぐる手が止まった。残る余韻に体をくねらせながらタイキシャトルを見ると、その顔は今までにないくらい真剣な表情だった。

 

「タイキ……?」

 

 途端に大きな目の端が垂れる。タイキシャトルは数センチ先の表情に哀しみを溜めていた。

 

「スズカはケガしました。それにステイツではまだひとりぼっちデス。エアグルーヴからいきなりランニングに行ったりしないようにミハッテロって言われてマス!」

 

 そんなことまで……さすがに過保護ではと思ったが――

 

「ナノデ~、ワタシも行キマース!」

 

「……えっ?」

 

「ワタシもイッショならバッチグー! チョットだけウェイトゥ~~!」

 

「ウソでしょ……」

 

 呆然とするスズカを置いてタイキシャトルがドアを開けて飛び出す。

 

「ブリザード~! ブリザード~!」

 

 家主を呼びながらどこかへ行ってしまったタイキシャトル。

 取り残されてしまったスズカは、一人でログハウスのようなアメリカの住居のつくりを観察していたが、ふと入り口から誰かが入ってきて、身構えた。

 

「おはようございます。スズカさん」

 

 レイチェルだった。ファームの作業をしていたのだろう。大きめの綿シャツとデニムパンツが泥で汚れている。

 

「お、おはようございます」

 

「朝食の用意をしましょうか。シリアルかパンで良ければそちらのキッチンにありますが」

 

「だ、大丈夫です。おかまいなく……」

 

「そうですか」と言って、レイチェルはドアを閉じて行った。

 

 その間、レイチェルの表情はとくに変化がなく、笑顔を見せることもなかった。

 はじめて会った時から感じた虚無も気のせいではないとスズカは確信した。

 

このお話を楽しみにしてくれますか?

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  • とてもします
  • 日本のウマ娘を出してほしい
  • アメリカの名バを知りたい
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