転生したらディルムッドだったけど、団長の距離が近い気がする 作:自害せよランサー
彼女は名前を名乗らなかった。その集落の族長は何か深いわけがあるのだろうと察したらしく、金色の髪を意味する『フィン』というあだ名を彼女につけた。その為、私達は彼女をそう呼ぶようになった。
フィンという名前にそんな意味があったことは知らなかったな。そういえば、FGOのフィンも金髪だった。金髪なんて珍しくもないだろうし、ポピュラーな名前なのかも知れない。性別が違うから、同一人物って事もないだろうし。
フィンはなんでも出来た。天に愛されているのではないかというくらいなんでも出来た。ハーリングもそうだし、武芸も、魔術もである。
あんまりなんでも出来るので、他の子供からは少し遠巻きにされていた。だから、余所者同士2人で遊ぶ事がほとんどだった。
そうして、2人で森の小路を散歩している時の事。
「ディル。君は私と遊んでいていいの?迷惑じゃない?」
「迷惑だなんて思ったことはないよ。何故そう思うんだ?」
フィンは少し俯いて語る。
「村の女の子達が、ディルが迷惑してるんじゃないかって。前はみんなと遊んでたのにって、そう言ってたの……」
それを聞いてなんとなく察した。私が転生したこのディルムッドという男は、魅了効果を持つ『愛の黒子』の効果を抑えていたとしても、顔が良いのだ。自惚れではなく単なる事実として顔が良いし、子供は嫌いではないので、よく面倒を見ていたこともあって割と村の女の子達には好かれているのだ。つまりは幼い嫉妬だろうと思われる。
「もう一度言うけど、迷惑だなんて思ったことはないよ。俺は君と一緒にいると楽しいからそうしているだけだ。魔術の話とか武芸の話とかは、フィンとしか出来ないから、ついフィンを誘ってしまうんだ。逆にフィンは迷惑じゃないかい?」
「迷惑じゃない!ディルと一緒にいると私も楽しい!」
「なら、良かった。よし、今日は野うさぎでも狩って村に持っていってやろう。血抜きの時にフィンの水魔術があるとすごく助かるから、期待してるよ」
「うん、任せて!」
ついでに甘い果実でも持って帰って、配ろうかな。フィンが打ち解けるきっかけになるだろう。
結論から言うと思惑は上手くいった。フィンはその美貌もあってか、人を惹きつけるカリスマのようなものがある。私と散策に行った時は、何かしらのお土産を持って帰るようにすれば、何か言われる事も無くなった。あの年頃の子供は常にお腹を空かせていると言っても過言ではない。この時代、何かと物騒なので大きく育って欲しいものだ。
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ある時、2人で湖で歌を歌っていた時の事。休憩中に二人で並んで微睡んでいると、なにやら意を決した表情の彼女に、こちらも姿勢を正して向き直る。
「ディル、貴方にだけは知っていて欲しいの。私の本当の名前を————」
彼女曰く、ある権力者の子供である彼女は名前を隠すように保護者に言われていたらしく、敢えて名乗らなかったそうだ。
「私の名前は————ディムナ。この名を貴方に預けます」
「俺の名前はディルムッド•オディナ。俺も君にこの名を預けよう」
その日から私は彼女と2人きりの時は本名で呼ぶようになった。
「そうだ、これを渡そうと思っていたんだ。受け取ってくれるか?」
先日習ったばかりのルーンを刻んだお守りだ。ディムナの為に作った物だし、良い機会だから渡しておこう。
「これは、ルーンを刻んだ石?に穴が空いてる」
「ああ、自然に穴が空いた石は魔術的に良い素材になる。そこに革紐を通して首からかけて、お守りになるかと思って」
「——ありがとう、ディルムッド。とても、とても嬉しい。肌身離さず大事にするね」
「うん。そうしてくれると俺も嬉しい。そのルーンは火を意味するけど、太陽という意味も持つ『ソウェル』というルーンだ。太陽のようなディムナにぴったりのルーンだよ」
少し、照れ臭い説明を聞いた少女は、胸元でお守りを抱きしめて太陽みたいに笑った。
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それから俺も彼女も別々で旅に出て、再会の度に修練の成果や旅先の話をする様になった。
ある時は、俺が養父から貰った2本の槍と2本の剣でどう戦うか2人で模索したり——結局原作同様ニ槍流と双剣のスタイルに加えて、1番しっくりくる一刀一槍のスタイルになった——もした。
また、ある時はディムナの親友たる女妖精が攫われたので、一緒に捜索したり。結局見つからず、彼女を慰めるのに一年くらいは一緒にいた。
また、ある時は悪霊っぽいもの——後から聞いたところ堕ちた神霊とかいうヤバいものだったらしい。怖い——を2人で協力して倒したり。
俺の騎士団入団をディムナがお祝いしてくれたり。
結構楽しく過ごせていたと思う。
ただ、ある日の森で会った彼女はフード付きの外套を目深に被って、暗い表情をしていた。親友の妖精が攫われた時のようだ。何かあったのだろうか。
「どうしたディムナ。何があった?ってその髪は……」
近づいてみて彼女がフードを外した事で彼女が暗い顔をしている理由がわかった。彼女の陽の光のような金の髪は、その色をまるで反転させたように銀に変えていたのだ。
「ディルムッド。実は、実はね…………」
彼女曰く、一人旅で女の身ではいらぬ厄介ごとを招く為、男装していたのだがその姿に惚れ込んだ邪悪な姉妹に呪いをかけられたのだそうだ。
「ディルムッドが太陽のようだと言ってくれた髪が、こんな色になってしまって……」
「そうか、ディムナ、君は何か勘違いしているな」
「えっ?」
「ディムナ、私が太陽のようだと思ったのは、初めて会った時に見せてくれたような、君の笑顔だよ。その色も似合っているよ。月のようなその髪と、太陽の様な君の笑顔が合わされば、最早並ぶものは無いくらいに美しいだろう」
要約すると『月と太陽が合わさって最強に見える』という意味だ。我ながら口説き文句みたいな台詞回しだが、この時代の騎士はこんなものだ。長い付き合いだ。本心である事はディムナにも伝わっているだろう。
「あ、う、うん。ありがとうディルムッド。貴方は本当にずるい人だね……。ずるいくらい素敵な人……」
照れているのか、顔を赤く染めた彼女は今度は別の理由で顔を隠すように俯いて、私の衣服の裾を握る。
この日は結局木陰に腰掛けて2人でうたた寝して過ごしたのだった。
「そういえば、ディルムッド。騎士団はどう?」
「我が父のような質問をするな君は。お陰様で、上手くやっているよ」
養父にこの間同じ事を聞かれた。思春期の子供に、父親が『学校はどうだ?楽しいか?』と探り探り聞くような質問だったので、少し笑ってしまった。ディムナとの、切磋琢磨した日々や冒険の日々が、私の実力を著しく引き上げて、既に騎士団でも一目置かれている。
「団長殿には特に目をかけて頂いていてな。なんだか、あの方は十数年来の友人のように馬が合うんだよ。不思議なことに私より年上の筈なのに、同年代のように話せるんだ」
「そ、そうなんだ。な、何か困ってることとかある?」
「騎士団での事か?そうだな、強いて言えば——」
「強いて言えば?」
「——団長殿の距離感が近いんだよな。いや、不快では無いんだが、たまに花のような良い香りがして、驚く事がある」
「あー、そ、そうなんだ。今後、気をつけ、いや、気をつけて欲しいね!」
「ん?そうだな。ああ、もしかしたら君が旅をする時にしているように、魔術で変装している女性かも知れないな、ハハハ」
「わ、私っ!?ま、ま、ま、まさかそんな幻術なら年齢まで誤魔化せるからってそんな————」
「なんて、そうそう、そんな事あるわけないよな。……すまん、今何か言ってたか?」
「あ、ううん。なんでも無いよ…………」
なんだか、ホッとしたような、残念なものを見るような目で見られた。なんでさ。
雑にWikiとかで調べた所、史実ではフィン一人目の妻は妖精で、邪悪なドルイドに攫われたとの事です。その後、そのドルイドと妖精の子供が現れて、その子をフィンは自分の息子とします。
この作品では妻ではなく親友となってますので、後々親友の子供を息子として引き取る形になります。
自分の妻をさらった相手との子を引き取る史実よりはマシな感じです。