転生したらディルムッドだったけど、団長の距離が近い気がする   作:自害せよランサー

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ここ前世ゼミでやったところだ!

 フィオナ騎士団では多くの戦友が出来た。未来視と遠隔視を持つ騎士、丘の端から端までひとっ飛びの恐るべき跳躍力の騎士、背中に黒山羊の毛が生えてる常識人な騎士、とバリエーション豊かで個性が濃い。

 

「個性と言うなら君も相当な物だろう騎士ディルムッド」

 

「これは我が主。御身程ではありませんよ」

 

 独り言に返答してきたのは、我が主たるフィオナ騎士団団長、フィン•マックールだ。いつも通り、距離が近い、いい匂いする。芳しいしゃらりとした長い金髪を揺らしているこの人は、そうは見えないが息子と孫がいるのだ。ただ、息子は実の子ではないとの事。私は特に孫のオスカと仲が良い。

 

「如何かね、ディルムッド。今宵も我が家にて夕餉を共にするというのは。オイシンとオスカも喜ぶだろう」

 

「お言葉に甘えさせて頂きましょう、主よ。実は先日友人から猪を貰いまして、1人では食べきれぬと困っていた所です」

 

 先日ディムナが「お裾分けだよ。深い意味はないけど騎士団の仲の良い人と一緒に食べたら良いと思うよ。深い意味はないけど」と言って大きめの猪(ケルト基準)を丸々一頭置いていったのだ。切り分けて、干し肉に加工するにしても多かったのだ。

 

「ほう、可愛い団員が困っているとなれば、栄光あるフィオナ騎士団団長として捨て置く事は出来ないな。あまり良い思い出では無いが、私もかつては師の元で調理の腕を磨いていた身。期待してくれても構わないぞ?」

 

「おお、有り難き幸せです我が主」

 

 恭しく下げた頭を上げて、顔を見合わせてどちらともなく笑い出す。いつものじゃれあいのような物だ。

 

「しかし、最近上王の娘と仲が良いそうではないか。他の騎士が噂していたぞ?」

 

「ああ、あー、グラニア姫の事ですか」

 

 そう、史実においてディルムッドが死ぬ要因となった言っても過言では無い女性。グラニアとひょんな事から知り合ってしまったのだ。彼女箱入りだったようで、ほぼ初めて会った男性に優しく接された事で妙に懐かれてしまったのだ。なんか部活の先輩に憧れるマネージャー、みたいなポジションに収まっている。なんで? 

 

 この時点で知り合ってるとかおかしくないか? 史実なら団長殿との結婚式で、老年の男より若い男と結婚したいと、その場にいた初対面のディルムッドを強制的に駆け落ちに巻き込む筈なんだが、なんでこんな事になっているんだ。

 団長も騎士団入った時から全然老けないから、アニメで見た老年の姿はなんだったのかと思っていたら、威厳を出す為対外用に用意した幻術みたいだった。それなら、グラニアが結婚拒否する理由はない筈なんだが……嫌な予感がする。

 

「ふぅむ、彼女なら或いは…………」

 

「? どうなさいました主?」

 

「いや、今宵は猪のシチューと香草焼きにするのはどうかと考えていたのだ」

 

「それは良いですね、楽しみです」

 

 こうして、フィオナ騎士団での日々は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と君の婚姻の話が上がっている。君のお父上は、君がディルムッドに熱を上げている事に危機感を持ったようだ」

 

「っ! ———————」

 

「ああ。だが、先程話した通り、これが私の本当の姿だ。普段の姿は幻術、対外的な場では威厳を出す為、老年の黒髪の男という姿に調整している」

 

「…………。—————?」

 

「君に提案がある。悪くない話だ。このままでは私と彼が結ばれる事はない。そして君が彼と結ばれる事も————ない」

 

「————!」

 

「そうだ。だからこうしよう『人としての生』は君のもの。『その後』は私が貰い受ける」

 

「……。————」

 

「私には彼しかいない。一人目の妻は親友としての存在だった。二人目の妻はどうせ長く無いからと、全てを知った上で婚姻してくれた。亡くなる時に、私の恋を応援されてしまったよ。素敵な女性だった。彼女もまた、私の親友だ。…………だからこそ私は諦めるつもりはない。……君はどうする?」

 

「…………。…………。——」

 

「契約成立だ。これで、私と君は同じ男を愛し、愛した男を欺く共犯者だ。頼んだよ————グラニア」

 

「ええ、私の方が彼に愛されても恨まないでね、フィン————いいえ、ディムナ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 なんやかんや、原作通りグラニア姫と逃避行する事になってしまった。どうして? 

 

 史実の流れと同じように、フィン団長とグラニア姫の結婚式でグラニア姫が出席者全員の飲み物に眠り薬を盛ったわけだが、この人万が一召喚されたらアサシンのクラスなんじゃなかろうか。本来ならオイシンに断られたから消去法で私になる筈が、今回は最初から私だった。

 断ったものの、ゲッシュで押し切られた。黒子は制御出来てるから素でこれなのである。私以外に唯一眠らなかったオイシンから「頑張って下さい」と同情的な目で見られた。

 

 それでもちょっと粘ってみたが駄目だった。ゲッシュ強い。ただ粘ってる時「心に決めた美しい銀髪の女性がいるので! いるのでー!」と言った時、倒れ伏してるフィン団長がピクっと反応して、グラニアとオイシンがなんか優しい目でフィン団長を見てた気がする。なんだったんだろうあれ。言葉にするなら「良かったね」みたいな雰囲気だった。

 

 その後は、かつての戦友である追手の騎士達から逃亡する日々なのだが。

 

「おのれー、ディルムッドー。騎士団の裏切り者めぇー。食糧と水が詰まった皮袋の一撃を喰らえー」

 

「こっちは着替えと靴だー。くらえー」

 

「酒樽もあるぞー、ひとたまりもあるまいー」

 

「助かる! 助かるが樽は無理だ樽は!」

 

 一時が万事この調子で皆協力的なのだ。気が抜けるにも程がある。たまに切りかかってくる騎士も手合わせ感覚だ。

 グラニアも伝承程好き放題やってない。やってはいけないと言った事はやらないし、大人しく待ってて欲しいと言った時は大人しく待ってる。こうして考えると史実のグラニアって…………。

 

 ただ、時折りこっちを挑発してくる事はある。ゲッシュを利用してこないで、あくまでこちらから手を出させようとしてくるのだ。そこはフェアなのか…………。だから憎めないんだよなこのお姫様。

 

「まあ! 見てくださいディルムッド様。馬車が跳ねた水が私の足に……」

 

「これはいけません、すぐに拭いましょう」

 

「ありがとうございます。…………それにしても、この水滴の方がディルムッド様よりよっぽど勇敢ですね」

 

「なっ!? それはどういった意味でしょうか。このディルムッド、かつてはフィオナ騎士団で最も勇敢な騎士と呼ばれた者。聞き捨てなりません!」

 

「ここまで言われても手を出そうともしないディルムッド様が、勇敢だなんて。ちゃんちゃらおかしいですわ。こんな小娘にこんな事を言われて、悔しいですか? 悔しかったら、どうするんですの? どうせ何も出来ないのでしょう? 雑ぁ魚♡雑ぁ魚♡」

 

「こっ、このっ!」

 

 こちらが下手に出て入ればこの女! フィオナ騎士団最強の騎士を怒らせたらどうなるか、わからせてやる! 

 

 

 ——瞬間、ディルムッド•オディナの脳内に溢れ出した()()()()()()。具体的にはメスガキ同人誌の記憶。

 

 

 危ねぇ! 完全にその流れだった! ここ前世ゼミでやったとこだ! 

 

「…………フッ。その手には乗りませんよ、グラニア姫。さぁ、日が落ちる前に今宵の宿を探しましょう」

 

「つれない人…………」

 

 鋼の精神を必要とする、辛い逃避行だった……。普通に可愛いからねグラニア姫。誰か褒めて欲しい。因みに何度かフィン団長の老年の姿は幻術だと、伝えようとしたが「えっ!? 何ですって!? 何も聞こえませんでしたわ!」と聞く耳持たずだった。なんなのこの人……。

 

 こんな旅を数年続けた結果、いつものやる気がない追手から、『二人を許す為戻ってくるように』との命令を伝えられて帰ることになった。辛いこともあったが、ほぼ観光旅行みたいな逃避行だった。

 まあ、なんとか頑張って手は出してないし、原作の流れにはならないでしょ(慢心)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々はもちろん誇り高き騎士ディルムッドの言を疑ってなどいないが、外部からグラニア姫の純血を疑う声も多い。このままでは嫁の貰い手も無いやもしれん。よって、騎士ディルムッドと婚姻という事で」

 

 えぇ…………。わからなくも無いけど、雑ぅ……。

 




誤字報告ありがとうございます!
雑にwikiなどを見た時はフィアナ騎士団だったのですが、型月世界ではフィオナ騎士団が正しいようです。お恥ずかしい限りです。
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