最強の対魔忍とは誰か?
その問いに多くの人は『井河 アサギ』と答えるだろう。少なくともその評価に偽りは無い。実際彼女の戦闘能力は一騎当千の多い対魔忍達の中でも群を抜いている。
だが、その井河アサギ本人は違う人の名を口にする。近くで『彼』を見てきたからこそアサギは絶対の自信を持ってその男の名前を呼ぶ。
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「フラッシュ」
「なんだ?」
時刻は昼過ぎ頃、フラッシュは模擬戦を終えた後どういう訳か校長室に呼び出されていた。今のフラッシュは戦場を離れ、教師をしている。教師であるならば校長室に来ることもある。それ自体はなんらおかしいことではない。
おかしなことがあるとすればフラッシュを呼んだ妙齢の女性の額に青筋が浮かんでいることか。
「今日って模擬戦のはずよね〜?」
「そうだが?」
圧をかけるような女性の問いに、毅然と返すフラッシュ。女性の聞き方的に明らかに何か問題があったことは間違いないのだが、フラッシュの表情は崩れることは無い。むしろ、何が問題なのか分からないと言った様子だ。
そんな様子を見せられた五車学園校長『井河 アサギ』は・・・当然キレた。
「どうして模擬戦でグラウンドがあんなにめちゃくちゃになるの!?」
「あれは俺ではなく紫のせいだ。俺はあんな力任せな攻撃はしない」
「・・・当の本人は白目剥いて倒れていたらしいじゃない」
「当たり前だ。俺と戦って勝てるわけないだろ」
「そういうことを言いたいんじゃないの・・・」
フラッシュのある意味堂々とした態度に頭を抱えるアサギ。いっそのこと嘘だと言って欲しかった。でも、嘘ではないのだ。
生徒の模範として模擬戦を行った・・・それはまだ分かる。アサギとしても生徒の手本となるならそれが一番効率的だし、メッセージ性も強く良い案だと思っている。だが、実際の結果はグラウンドはボロボロ、紫は気絶、模擬戦の相手をしたフラッシュは逃走、挙句の果てにはグラウンドを元に戻したのは残された生徒たち。これが授業だと言うからもはやお笑いである。
「・・・あなたの実力は買ってるわ」
「当然だ」
「あなたがそこに立つまでに凄まじい努力をしてきたことも含めてね」
「・・・・・・」
フラッシュが先生に向いているかと言われるとアサギとしては首をひねる自信はある。むしろ彼は現場でこそ活きるタイプの対魔忍だ。だが、彼が誰よりも努力したということは知っている。
その姿勢、自己鍛錬に対する厳しさで生徒たちを刺激したいからこそ頭を下げてお願いしたのだ。
「無理に生徒に合わせなくていいわ。でも最低限、生徒を導くことはしてちょうだい」
「・・・善処しよう」
アサギの誠意がこもった言葉に流石に悪いと思ったのかフラッシュも顔を背けながらも肯定する。
フラッシュとしても今回のことに関しては自分にも落ち度があることを心の底では思っているのだろう。
(でもプライド高いから・・・絶対言わないわよね)
なぜフラッシュが己の非を認めないのか、それはある意味対魔忍らしくもあるプライドの高さが原因だった。そして長くフラッシュと共に戦ってきたアサギはいい加減フラッシュの
もっともプライドが高いのはアサギも同じなのだが。
だからこそ、彼を説得する手段など始めから決まっていた。
「さて、この後時間空いてるかしら?」
「なんだ?雑用なら引き受けんぞ」
「ふふ、ちょっとした
フラッシュに向ける熱い視線。それが昔から何を意味しているのかフラッシュにも理解出来たし、むしろ彼自身も燃え上がった。
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場所は変わって、五車学園の地下にある特別修練場。ここではあらゆる敵、場所、はては気候までもバーチャルによる仮想空間でシミュレーション出来る訓練施設だ。
その中でも特に広く、大きい一室に向かい合うのは二人の男女。
男の方は黒い対魔スーツに白いマントを羽織り、片手に身の丈に届きそうな程長い太刀を握りしめている。
もう一人、女性の方は男と同じようにピッチリと肌に張り付く白い対魔スーツを身にまとっており、豊満なボディーラインがくっきりと表れている。そしてその腰に小太刀を二本携えている。
「ん〜、お姉ちゃんも
そんな二人の様子を管制室からモニタリングするのは、井河アサギの妹、井河さくらである。
姉のアサギが本気で挑む時の対魔衣装を身にまとっていることにさくらは姉の
「・・・アサギお姉様が模擬戦をすると言ったが、こういうことか」
「あ、むっちゃん!」
管制室に入ってきたのは先程、目が覚めたという八津 紫だった。(一応)気高い紫に『むっちゃん』という愛称を付けるのはこの学園ではさくらくらいなものだろう。
「・・・むっちゃんはやめろ」
人懐っこく近寄るさくらだが機嫌の悪い紫は拒絶する。当然と言えば当然かもしれない。なにしろ自分の憧れと対峙しているのはついさっき自分を負かした男なのだから。
「あ〜そういえばむっちゃん、フラッシュに負けちゃったの〜?」
しかし空気を読まないさくらはそんな紫の様子にお構いなく傷口を抉りにいく。
「・・・あぁ負けたな。せっかくだから
と、そんなさくらに紫は殺気混じりに応える。流石に身の危険を感じたさくらは冷や汗を流しながらピョンと身を引く。
「で、でもあの二人が模擬戦するのはいつぶりだろうね!」
睨みつけてくる紫の気を逸らすためにとりあえず話題を振るさくら。紫は鋭い目つきを変えることなく返答する。
「私が知ってる限りでは数年前に一度・・・喧嘩?だったか、それで白黒つける時にここを使用していた」
「喧嘩で・・・血の気多いな〜」
我が姉ながら呆れると言わんばかりに両手を広げるさくら。さくらとしても姉は好戦的な所があるというのは知っていたが、喧嘩で模擬戦になるのは『相手がフラッシュ』だからだろうと思っている。なぜなら──
「お姉ちゃんの相手なんて片手間には務まらないからね〜。そんなこと出来る人なんてフラッシュ以外に知らないもん」
最強の対魔忍、井河アサギと模擬戦。それは聞く人からすれば熱くなるようなことではあるが、仮に対峙することになったら勝つことはまず諦め、どれだけ食い下がれるかに思考がシフトする。
それほどまでにアサギの実力が高いということをさくらはこれまでの闘いでよく知っていた。
高い実力にそれに見合ったプライド、さくらはアサギを密かに自分の目標としていた。
だからこそ最初の一手は
「不意打ち!?」
何を言っていたのかは分からないが、明らかに二人は会話をしている途中だった。それにも関わらず、唐突に仕掛けたのは・・・アサギだった。
プライドの高い姉だからこそやるなら正々堂々と勝負すると思っていたからこそ、さくらにはこの攻撃がとても衝撃的だった。
腰に付いている二刀による斬撃。並の対魔忍ならとても避けることは出来ない攻撃を不意打ちで行う。・・・そんなもの避けられるはずがなかった。
もっとも相手は『並』なんてものではなかったが。
アサギの不意打ちにフラッシュは顔色一つ変えずに太刀を抜刀。アサギの二撃を打ち落とした。
「それだけフラッシュのことを認めているということだ」
アサギの行動の真意を紫が代弁する。もっともその顔は納得いってないという意思がありありと伝わるものだったが。
「アサギお姉様とて忍び。もし自分より強いだろう相手がいるなら不意打ちの一つくらいするだろう。・・・私の時は一度もなかったのに」
自分がアサギよりも上回っているという考えは微塵もない紫だが、フラッシュに負けているというのが心の中ではかなり
不意打ちから流れるように蹴りを放つアサギとその蹴りをかわし、そのままカウンターで蹴り出すフラッシュ。
超スピードで修練場中を駆け巡る二人を見て、紫は一層モヤモヤとすることとなった。
「おぉ〜すごーい!」
一方、さくらは二人の闘いに語彙力を失っていた。
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「ふふ・・・」
口から自然と笑みが零れる。それが戦闘への興奮なのか・・・それとも別の何かか。少なくとも私自身はそれが何か、この刹那の中でそんな
求められていることはただ一つ。『相手より速くあること』。
会話の中で突如仕掛けた自分らしくない不意打ち。でも、この男ならその程度容易く対応してみせる。そう信じていたからこその一撃。
案の定止められ、追撃もかわされてカウンターをもらう始末。
私とてここ五車の里では『最強の対魔忍』と呼ばれる程度には強い。だけど打ち合ってみて分かる。スピードが、技が前よりも格段に上がっている。・・・そして自分がそれに置いていかれていることに。
そう、アナタは昔から変わらなかった。
そのスピードでいろんなものを置き去りにしていく。
どんな敵も、如何なる奸計も、あらゆる理不尽も──
そして、私たちも・・・。
「さぁ行くわよフラッシュ!もうあなたに
────『殺陣華』!!!
私がもつ異能『隼の術』で限界まで引き上げられたスピードにより生み出した分身で敵を粉微塵にする奥義。
普通なら瞬殺、否、『瞬』もいらない。だけどきっとこの男は───
「ふ、ふふふふふ・・・あはははは!!!!!」
かわし、時には斬り伏せ、私やその分身が作り出した攻撃の全てに対応するフラッシュ。
やはりこれくらいは
────『光陣華』!!!!!!!!
一気に周りがスローモーションになる。周りが遅くなったのではない。私の感覚が極限に研ぎ澄まされ、遅くなったように感じるだけだ。
これが『隼の術』の真髄。限界を超えて引き上げられたスピードはもはや光速にすら到達する。
しかし全てが遅く映る世界で一人だけ、いつも通り動く男がいた。
「フラッシュ!!!!!!!!」
私はその男にめがけて、最速の突きを放った。
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拝啓、昔の俺、小さい頃の俺はとにかく速くなるために走り込んでいるのかな?
そんなお前に一つだけ警告しておく。
真の敵は『味方』だ。信頼出来る仲間ですらお前に牙を向けることがある。
なぜそんなことを思うのか・・・それは──
現在進行形で命を狙われているからだ。
『殺陣華』、アサギの異能『隼の術』というスピードがめちゃくちゃ速くなる俺が一番欲していた能力を用いた多重分身波状攻撃をさばくのももう慣れたものだ。何体もの分身が超スピードでこっちに迫ってくるのは並の敵なら、懺悔をする間もなく消え失せる・・・が、俺は違う。
なぜなら、そう『俺より遅いからだ』。
この閃光のフラッシュ様に日に日に近づきつつある俺に速さで勝る者はいない。俺より遅いなら俺に勝つことは決して出来ない──つまり最強、ふふふ。
だが、そんな中でも例外は存在する。それが井河アサギが厳しい鍛錬の果てに『殺陣華』を昇華させた『光陣華』だ。
光──文字通り光の速さになる・・・らしいその速さの過剰供給は一時期は俺すらも凌駕した脅威となっていた。
はっきりいってそんなもの撃たれたら俺でも勝てない──
そう、
俺とて最強を、フラッシュ様になることを目指す身。その障害となるものがあるならそれを研究し、鍛錬し、乗り越える。
だからこそ分かる──これは乗り越えられる試練だと。
申し訳ないがアサギ、一昔前ならここで終わっていた闘い。だが、もう俺は先にいる。
俺に言わせてもらうのであれば──
「努力が足りんな」
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「はぁ、負けちゃったか・・・」
修練場で大の字になって寝るアサギ。もはやそんなことをする歳でもないが今回ばかりは気持ち的にヤケになっているため、周りの目などどうでもよかった。
「すっかり鈍ったな。前の『光陣華』の方が速かったぞ」
「・・・これでも鍛錬は欠かしていないつもりだったんだけど」
フラッシュは相変わらずの無表情でアサギを見下ろし、冷静に戦闘の評価を始める。
そんな様子を見て、アサギは悔しがる・・・ことはなく、むしろ昔を懐かしむような顔をする。
「おつかれさまー!」
「お疲れ様です、アサギ
ちょうどその二人の間に割って入るように、さくらはフラッシュの方へ、紫はアサギの方にタオルを持ってくる。
「・・・ありがとう」
「不要だ」
それぞれ正反対の対応を示すが、さくらは持ち前の明るさ、そしてフラッシュが『そういう人だ』ということを知っているため遠慮なくタオルを顔に押し付ける。
一方、紫はアサギが使ったタオルをいつ回収しようか思考を張り巡らせていた。とても悪い顔をしている。
「フラッシュ凄かったねー!ズバッて!シュバッて!」
さくらが興奮混じりにフラッシュの速さを絶賛するが、フラッシュは何も答えない。というよりそれが当然だという顔で汗を拭いている。
「・・・さくら、今フラッシュは私と話してるから」
「えー、お姉ちゃんばっかりズルい!私もフラッシュと久々に話したい!」
フラッシュに詰め寄るさくらに何か思うことがあったのか、アサギがさくらに物申す。しかし当のさくらはそんなことお構いなくフラッシュに猫のように擦り寄っている。
「・・・・・・おい、近いぞ」
「近づいてるからね〜!」
フラッシュもさくらの行動に抗議するが、さくらは止まることはない。しかしフラッシュも無理やり引き剥がすようなことはしなかった。
「ちょ、ちょっとフラッシュから離れなさいよ・・・!」
「・・・・・・・・・勘弁してくれ」
流石に見てられなかったのか、アサギもさくらとは反対側に陣取る。必然的にフラッシュは井河姉妹に挟まれる形となる。
「・・・キサマァ」
親愛なるお姉様であるアサギを取られた紫は、模擬戦以上の殺気をフラッシュにぶつける。
もはや場も混沌とする中で、フラッシュは一人思う。
(帰らせてくれ・・・・・・・・・・・・)
実際、漫画版の方のフラッシュがどれくらい速くなるか未知数なのでとりあえず『速さ』の一点において作中最強という感じにしています。
皆さんの性癖(対魔忍仕様)はどんなものですか?
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感度3000倍
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箱化
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ふた〇りレズ
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石化
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AV堕ち
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その他