ペロロンチーノの転生録【オバロ二次】   作:taisa01

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第二話 転生したら貴族だった件

 

 最初は自分が何者なのかわからなかった。

 

 ただ本能のままに生きていたような気がする。

 

 実際にその通りなのだろう。誰かに抱かれた時の温かさが心地よく、ふと感じる風のようなものになぜか心が引かれた。お腹が空けばそれを訴え、気持ちが悪ければそれを伝えようと声を出す。

 

 三歳になる頃、自我という積み木がある程度積みあがった時、自分が誰だか理解することができた。

 

 ペロロンチーノ・ヘッセン

 

 現カッセル・ヘッセン方伯の三男である。長男のカールは九つ上の十二才。次男のパウロは十一才。間に姉フィアーネ、ジータの二人。俺で五人目。どうやら父上はあと一・二人を望んでいるらしい。そろそろ母上が限界じゃないか? 体力的に。

 

 ペロロンチーノが名前を自覚し、自分が裕福な家庭に生まれたことや、日課の散歩で自然が豊かなことを知った。乳母に抱き上げられ、兄や姉と触れ合い、半年もするとここが夢でもなんでもなく一つの世界であり、自分が別の記憶を持って転生したと言う風に考えるようになった。

 

「あの世界じゃないのか」

 

 最初の感想がこれである。

 

 初めて木に触れ、そのごつごつとしているがどこか柔らかい感覚。胸いっぱいに空気を吸い込めば、ほのかに感じられる不思議な香り。美しい青空を見上げれば優雅に飛ぶ鳥の姿をどこまでも追いかけることができる。

 

 裕福な家庭とかその辺を度外視にしても、この世界では人間がまだ生きること(・・・・・)を許されている。そんな風に感じることができた。

 

 とはいえ元はエロゲー イズ マイライフを座右の銘とした俺が転生したのだから、いろいろ考える。

 

 

 メイドさんの胸に抱かれてウトウトすることだけがすべてではない。ホントウダヨ。

 

 

 さて話を戻すと、実はすごい特典能力があるのでは? なんて考えてステータスとか、気の修行? などいろいろやってみたが何も起きなかった。

生まれが恵まれているといえばそれまでだろうが、家族や使用人たちに、子供の遊びと思われていたようなので、ひとまず問題なしとした。

 

 ただこの世界には魔法や武技という技、そして固有スキルとも言うべきタレントというものもあるというのだ。

 

 オラ、ワクワクしてきたぞ。

 

 だが、同時にひっかかる。

 

 

 ペロロンチーノ。

 

 

 他の兄弟とか家族とまったく関連性が見えない自分の名前。なにより、ペロロンチーノ自身に覚えがあるのだ。

 

 DMMO―RPG ユグドラシル

 

 前世で遊んだゲームの中で、たぶん一番長く遊んだゲームにおける、自キャラクターの名前だ。

 

 もっともゲームの中では、異形種のバードマンで、今のペロロンチーノとは似てもにつかない。一瞬、俺この後バードマンに変身でもするのかと考えたが、そんな雰囲気はもちろん無かった。

 

 結局名前だけかとおもったが、どうも違うようだ。それは次男パウロの魔法の授業を見学した時に判明した。

 

 この世界の魔法はどうみてもユグドラシルの低位階魔法なのだ。

とはいえ、三才児のペロロンチーノにできることなど、たかがしれている。家族、乳母やメイドが読み聞かせをしてくれる絵本やお話が中心となるが、できるだけたくさん触れるようにした。

 

 そのおかげで、いろいろ知ることができた。

 

 まずは生まれであるヘッセン家は伯爵。正確には方伯という地位の貴族であること。バハルス帝国建国前の時代から、この地を治めており、現帝国においてもかなりの高位貴族のようだ。現当主である父親の姉が現皇帝の妃の一人であり、俺と同じ年の男児を授かっていることからも、その権力の強さが伺える。

だが男児は他にも数名いるらしい。

 

 両親は家とこの地を守ることを第一としているようだ。権力欲についてはさすがに子供の視点からはわからない。だが、継承権第二位の男子が、血縁ということとなれば、確実に後継者レースにも巻き込まれる。てか、従兄弟が皇族って、ペロロンチーノ自身の身もヤバイのでは?と戦々恐々したものだ。

 

 さて家のことが出たので領地について少し。

 

 ヘッセン方伯家の領地は帝国の南方に位置する。かなり抽象化された地図っぽいものが、書庫にあった。しかしいわゆる世界地図のようなものは無く、帝国を中心とした周辺国家のものだけ。縮尺は分からないが正直いって狭いと感じた。人類の生存圏は、この地図にある程度というのが原因のようで、この地図の外にどれほどの大陸や異種族の国家が存在するかわかっていないようだ。

 

 決定的なことは人類は種として相当下位らしい。単純な戦力で言えば亜人・魔獣・魔物・異形・果てはドラゴン。いろいろいるようだが、人間は、それ以外の種とくらべて圧倒的に弱いらしい。

 

 そしてヘッセン領も他人事ではない。南西に位置するカッツェ平野がある。ここは一時期を除いて年中薄い霧に覆われ、その瘴気のせいか四六時中アンデッドが発生する危険地帯というのだ。

つまりヘッセン領は、対アンデッドの最前線。帝国守護の一端を担っている。

 

 こんな特色ありまくりのヘッセン家。貴族らしくしっかり家系図や先祖の記録というものがのこっている。

なにより実質初代様のお話を題材とした子供向けの絵本まであった。さてその中身だが、内容は単純明快。カッツェ平野のアンデッドを時の領主は放置していた。それはアンデッドの習性というものが、理解されていなかったからとされている。そんな時、集まり過ぎたアンデッドの中から強力な個体デスナイトが現れ、この地域は壊滅の危機に瀕した。それを救ったのは当時どこからともなく現れた冒険者の初代様。初代様がデスナイトをみごと打ち倒し、あまねくアンデッドを駆逐して平和を取り戻したそうだ。そして残された領主の姫君と結ばれました。めでたし、めでたし。

 

 まあ、先祖の偉業をこんな形で啓蒙するのは、ある意味で権力維持の一役を買っているのだろう。その上でアンデッドは放置してはいけないよ。という戒めにもなっている。ヘッセン領の村には必ずこの本があり、領民は最初にこのお話を学ぶそうだ。アンデッドが四六時中発生するような危険地帯に隣接しているのだ。アンデッドへの対策というわりと現実的なお話なのだから、二百年ほどたった今でも残っているのだろう。

 

 しかしデスナイトね~。ありきたりな名前だけど。ユグドラシルのアレを思い出す名前だ。レベルの割には面倒な特徴をもっていて、死霊系がメインの親友がよく盾役で使っていたよな。

 

 まあ、デスナイトもそうだが、魔法もそうだ。そこかしこにユグドラシルを彷彿とさせる名前が見つかるのだ。その片鱗は戦闘系の職種の名前にもでてくる。この世界は、あの世界に何か関係あるのだろうか。

もしかしたらあのゲームが終了して数百年後の世界に転生したというものだろうか。

 

 そんな仮説を立てながらペロロンチーノが四才になる頃、さすが貴族、毎日遊びの中に勉強や礼儀作法が組み込まれていくのがわかる。日々の会話や生活から習慣として学んでいくのだ。そんな中で特に驚いたのが武芸十八般ではないが、多種多様な武術を教えられることだ。

 

 貴族って自衛の武器さえ碌に持たない権力にふんぞり返った存在をイメージしていたのだけどな。

 

 兄姉に聞けば、全員共通なのは馬。一番上の兄は剣と槍。二番目の兄は剣と棒術。二人の姉も短剣と護身術という感じで、適性にあったものを学んだそうだ。もっとも、二人目のパウロ兄はちょっと特殊で魔法がメインとなっている。だから棒術なのだろう。

 

「パウロ兄様。なんで武術を学んでいるのですか?」

「ペロはまだ戦場に出たことないからわからないかもしれないけど、自分の身も守れないと、部下や周りの迷惑になってしまうのだ。だから自分の身を守れるぐらいに頑張りなさい」

「はい!」

 

 元気にペロロンチーノが返事をすると、パウロはにこやかに笑う。ん~これで十一才児。すでに対アンデッド戦の初陣を済ましているだけあって、言うことが違うな~。ちょっとお兄ちゃん風吹かせたい気配が見え隠れしているけど。ペロロンチーノも妹や弟ができたらそうなるのかな? でも兄が分かっていて言わなかったことが何となく理解できてしまった。

 

 貴族というより、権力を持つ側であるゆえのアレ。じゃなきゃ戦場にでない姉達も武芸に手をだしている理由はない。たぶんあるのだろうな~暗殺。あ~やだやだ。

 

 そんな勉強につぐ勉強。遊びという名の鍛錬の合間、記憶が薄れる前に覚えていることを吐き出すことが日課となっていた。

 

 どこまで役に立つかわからないから、ある程度優先度をつけてかたっぱしから書く。たとえばあからさまに過去の日本ではないため、日本の歴史などは後回しにして書きまくる。幸い三歳の誕生日に大きな鍵付きの日記帳を貰った。しかし謎の象形文字が数ページ書かれて放置されていたのは三歳児の限界だろうか? そいつを再利用するよう、日記のように知識を書き連ねる。足りなくなれば、また日記帳が欲しいとおねだりをする。寝るまでメイドのサーニャかメイのどっちかが付いているが、はたから見れば謎文字(日本語)を書いているのだから、子供の落書きにしか見えていないだろう。 

 

 そして最後に、他に転生者はいるのか? と探してみたがそこは貴族の子供。家の庭までしか行動できず、結局家族やメイドや執事、家庭教師など、特定の人物にしか会えず頓挫。家の中には文明レベルにそぐわないものがちらほらあるが、これが転生者の残滓なのか、それともそんな風に独自進化した結果なのかわからなかった。一番恐れていた姉や母親が転生前の姉であるという事態だけは避けたようなので、よしとすることとした。

 

 まあ、会いたくないかといえば、別だけどさ。

 

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