ダンジョンにグルシャンを求めるのは絶対に間違っている。 作:ガラクタ山のヌシ
古びた、というかもはやボロボロの教会の地下室。
ヘスティアファミリアのホームにて、ベル・クラネルは困惑していた。
と言うのも、目の前のリリルカ・アーデと名乗る少女の様子が明らかに穏やかでは無いからだ。
原因は分かるが、まさかそこまで目くじらを立てられることだったか。という思いが頭をよぎると同時に己の無知を恥じる。
「……今、なんとおっしゃいましたかベル様?」
ジロリとベルを見るその目は怒りに燃えている。
「えっ?いや…だから…」
「…………」
これが無言の圧力と言うやつだろうか。
冷や汗がたらりと額を流れ、その不快感を拭うようにベルは己の先ほどの言葉をなぞる。
「えっと…シャンプーを割るのにジュースとか使ってもいいの?って…」
「ハァ…」
リリルカは何を言っているんだこいつは…という表情を浮かべている。
「いいですか?ベル様。リリが何度も何度も言うようにシャンプーを割るのは水かお湯です。ジュースの味を楽しみたいなら最初からジュースを飲めばいいじゃないですか」
ジト目でそう言うリリルカ。
「いやまぁ、そうなんだけど…」
「確かにお酒やジュースの飲み方として、そう言った楽しみ方があるのは確かです。しかしことグルシャンにおいてはその限りでは無いとハッキリ言っておきます」
出来るだけ声を荒げないよう、リリルカは気を遣っているのだろう。
「ふぅ…仕方ありませんね。ここはソーマファミリア広報担当のリリが一から教えて差し上げます」
どこからか取り出した眼鏡をスチャッとかけるリリルカ。
何気に似合っている。
「まず我々ソーマファミリアはグルシャンの製造、販売、普及を目的としてはいますが、なにも強制的に買わせようだなんて無粋な真似はいたしません。もちろんたくさん買っていただけるに越したことはありませんが、嗜好品である以上一番は興味を持っていただくこと。ベル様はそもそも知らなかったので先ほどの発言をなさったのでしょうが、先ほどの発言はグルシャンに携わるものとして看過できません」
「そ、そうなの?」
ベルはリリルカのテンションに若干引き気味だが、リリルカは気にせず続ける。
「それはそうでしょう。何せグルシャン文化の歴史はそのままソーマファミリアの歴史でもありますからね」
そう言うとリリルカはふんすと胸を張る。
「女神フレイヤのわがままに対する意趣返しとしても知られてますね」
それは最初にリリルカにされた話だ。
なんでも、女神フレイヤが地上に降り立ったばかりの弱小どころか零細ファミリアの主神をつとめていた酒の神であるソーマにある日いきなり無理難題を吹っかけ、それに対してソーマはフレイヤの望み以上のもので返したとか。
まぁ、これは本神達も実際に言っていることらしいので、神話というよりは昔話程度の話だろうが。
「そこでベル様に問題です」
「えぇ?」
いきなり出題されることにベルは驚きの声を上げる。
「シャンプーを泡立てるのに何を使いますか?」
「え?えーっと、それはお湯…だよね?」
少なくともベルは入浴の際そうしている。
眼鏡をクイっと上げながらリリルカは「正解です」と返す。
「分かりますか?今の解答こそ、グルシャンに関して重要なところです」
あっ、この話長くなるな。とベルはその時確信した。
その後実際にベルは小一時間リリルカによるグルシャン講座を受けることになったのは余談である。
そして蛇足だが、その時にした質問が再びリリルカに火をつけることになるのは本当に余談だ。
続…くのかなぁ?