鬼滅の刃 蝶と日と   作:毛利カトリーヌ

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手毬遊び

毬の爆弾のようなものが部屋に飛んできて、カナエと炭治郎は禰豆子が寝ているベッドの前で身構える。

 

ベッドの後ろでは、愈史郎は珠世を庇うようにして覆い被さっていた。

 

花の呼吸 弐の型 御影梅

 

カナエは飛び出し、飛んでくる毬を斬って回りながら侵入者に立ち向かっていく。

 

「キャハハッ! 矢琶羽の言う通りじゃ! 何もなかった場所に建物が現れたぞ!」

 

女性の鬼だ!

 

「巧妙に物を隠す血鬼術が使われていたようじゃな。それにしても朱紗丸、お前はやることが幼い、というか、短絡、というか…、儂の着物が汚れたぞ」

 

今度は男性の鬼の声がした。

 

「うるさいのう。私の毬のおかげですぐ見つかったのだからいいだろう。たくさん遊べるしのう」

 

「お言葉ながら」

 

カナエが鬼たちの会話に口を挟む。

 

「遊ぶのは結構だけど、人に危害を加えない形で遊んでくれないかしら?」

 

「キャハハッ! 見つけた、見つけた! 何か言うておるわ~! しかもあの方が仰っていた、花札の耳飾りをつけた少年もおるぞ! 十二鬼月である私に殺されるのを光栄に思うがいい!」

 

女の鬼こと朱紗丸は笑いながら毬を数回、地面に叩きつけるや否や再び投げて来た。

 

十二鬼月?

 

炭治郎は一瞬、身震いしたが深呼吸して動揺を鎮める。カナエさんとあれだけ修行してきたんだ。対応できないはずがない!

 

一方、カナエも極めて冷静に対処する。その大きな双眸は真剣そのものとなり、深く息を吸い……

 

花の呼吸 弐の型 御影梅

 

再び技を出し、毬をことごとく斬って回りながら朱紗丸に迫っていく。

 

炭治郎もカナエの後を追っていく。男性の鬼は近くに隠れているのか、姿を消している。

 

「私の毬を躱してきたのか?」

 

朱紗丸が初めて怯えをみせる。

 

「これから本気の毬で……」

 

花の呼吸 肆ノ型 紅花衣

 

カナエがピンクの日輪刀を一閃させると、朱紗丸の頚は宙に飛び、地面にドンと落ちた。

 

「なんで? もう遊べないのか? もっと遊ぼ……」

 

そう言いながら、朱紗丸は灰となって消えていく。

 

「言ったでしょう。遊ぶなら誰かに危害を加えないようにって」

 

カナエは眉を顰めて言った。その間に珠世が出てきて短刀を刺し、朱紗丸が完全に消滅する前に血液を採取した。

 

「この短刀を使って下さい。これを鬼の身体に刺せば自動的に鬼の血を採取してくれます」

 

「ありがとうございます」

 

炭治郎は短刀を受け取ると、鼻を利かせて警戒を強める。

 

「カナエさん、もう一人どこかにいます」

 

「そうね」

 

とカナエが返事した刹那、炭治郎に矢印が飛んでくる。これを受けるとその矢印の方向に飛ばされてしまう。

 

花の呼吸 弐ノ型 御影梅

 

カナエは矢印を相殺しながら突進していき、炭治郎も続くと、矢琶羽は木の上に居るのがわかった。

 

花の呼吸 肆ノ型 紅花衣

 

カナエは大きく飛んで木の上の矢琶羽に斬りかかり、頚が胴体から離れたと思った瞬間、矢琶羽は飛び降りてきた。

 

「土埃を立てるな」

 

ボン!

 

再び矢印を飛ばしてきたので……

 

ヒノカミ神楽 円舞

 

炭治郎が矢印を相殺している間、カナエが矢琶羽の間合いに踏み込み、矢琶羽もカナエに手を向けると……

 

花の呼吸 陸ノ型 渦桃

 

身体を大きく捻って矢琶羽の矢印を避けつつ、日輪刀を彼の頚に掛ける。

 

その間に炭治郎も動き出す。

 

ヒノカミ神楽 飛輪陽炎

 

カナエ、炭治郎師弟の刀が見事に矢琶羽の頚に当たり、落とすことに成功した。

 

「バカな……おのれ! 汚い土に私の顔をつけおって!」

 

頚から上の矢琶羽が地面の上で惨めにも喚きたてるのをカナエがピンクの刀で斬り刻んで止めを刺す。

 

「ごめんなさいね~。この姿になっても矢印を飛ばそうとしていたので」

 

凄い……、これが柱か! 常に敵を先読みしている!

 

戦いは終わり、炭治郎はまだ消滅していない頚から下の部分に短刀を刺し、血液を採取すると、カナエと共に刀を納めて珠世たちの所に戻ってきた。

 

部屋は破壊されているが、珠世たちと禰豆子は無事なようだ。

 

「大丈夫でしたか?」

 

そう聞くカナエも毬がかすったのか、僅かに顔にかすり傷を負っている。

 

「あなたたちが戦ってくれたお陰で、私たちは大丈夫です。ありがとうございます」

 

そう言って頭を下げる珠世に、炭治郎は短刀を返す。

 

「いえいえ。無事でよかったです! 男の鬼の方の血液を採取してきました」

 

「ありがとうございます。カナエさんならお分かりと思いますが、あの鬼は残念ながら十二鬼月ではありません。あの毬を投げた鬼が勝手に名乗っていただけです」

 

「十二鬼月なら、目に上弦か下弦と壱から陸までの数字が書いてありますからね」

 

カナエの言に、珠世はそうです、と言って続ける。

 

「ところで炭治郎さん。炭治郎さんの呼吸法は日の呼吸ですね?」

 

「日の呼吸?」

 

炭治郎とカナエが同時に聞き返す。

 

「俺が使ったのはヒノカミ神楽で、先祖代々受け継がれた舞であり、それを剣技に取り入れただけですが……」

 

「炭治郎さんの呼吸は日の呼吸といって、継国縁壱様という過去、鬼無辻を追い詰めた唯一の剣士と同じ呼吸です。まさか縁壱様と同じ呼吸の剣士が現れようとは……」

 

「……」

 

心底、感動している珠世に、炭治郎は啞然としていた。そもそも炭治郎はまだ「剣士」ですらないのだが……

 

「炭治郎のヒノカミ神楽、全集中の呼吸に通じるものがあると直感して、毎日練習させていたのですが、まさかそんな凄い呼吸法か何かだったのですか?」

 

カナエも驚いた様子で聞いている。炭治郎のヒノカミの舞は剣技に活かせると直感はしたものの、それが日の呼吸という呼吸法だとは全く知らない様子だった。

 

「日の呼吸は鬼殺隊で初めて生まれた呼吸法です。だから始まりの呼吸とも言われ、縁壱様は始まりの剣士と言われています。縁壱様は鬼無辻を追い詰めたのですが、鬼無辻は細胞を粉々に分裂させることで何とか逃れ、縁壱様が生きている間は身を隠していました。縁壱様がお亡くなりになってから再び姿を現し、日の呼吸を知る剣士を抹殺してしまいました。だから日の呼吸に関する情報が途絶えていたのだと思います。それがこういう形で継承されていて、嬉しいです」

 

そう言って珠世は炭治郎をギュっと抱きしめた。

 

「……」

 

愈史郎のただならぬ視線を感じ、炭治郎はどうすべきか困惑する。しかもカナエも目が笑っていなかったのだが、それは気付いていない。

 

「ありがとうございます。珠世さん!」

 

炭治郎は珠世から身体を放し、続ける。

 

「俺、珠世さんのためにも、そして家族の仇を取るためにも、縁壱さんのためにもこのヒノカミ神楽を極め、鬼無辻に刃を振るいます!」

 

「頑張ってくださいね。ところで禰豆子さんについてですが、私たちがお預かりしましょうか?」

 

「えっ?」

 

「絶対に安全とは言い切れませんが、戦いの場に連れていくよりは危険が少ないかと」

 

炭治郎が答える前に、カナエが口を開く。

 

「いや、禰豆子ちゃんは既に私たちの家族となりました。これからもそうです!」

 

「カナエさんの言う通りです! 禰豆子は常に俺と一緒です!」

 

「わかりました」

 

珠世は微笑みながら炭治郎たちの意向を尊重する。

 

「では、武運長久を祈っております。今度是非、しのぶさんと会わせて下さい」

 

「わかりました。今日は危険な目に巻き込んでしまい、ごめんなさいね~。では」

 

「じゃあな」

 

最後に愈史郎がそっぽを向きながらぶっきらぼうに挨拶した。

 

炭治郎はニヤッと笑ってみせ、禰豆子を箱に入れてカナエと共に毬ですっかりボロボロになった屋敷を後にしたのだった。




読んで下さっている皆様、私のささやかな二次創作に付き合って下さり、ありがとうございます。

来年も、カナエと炭治郎の熱い物語を鋭意、執筆しますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います!

よいお年を!

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